アーク・フィールドブック

四万十フィールドガイド・ARK(アーク)のブログ

夏風カヌーと川遊びと

2010-05-14 | 四万十川 初夏

 最高気温23度。

 東風(こちかぜ)は、東南から吹く風。夏の四万十川に、よく吹く風。

沈下橋に腰かけた僕は、海から山に吹きぬける東風に吹かれながら、流れる雲をながめました。

今年も、風あつい夏がやってくるのだなぁ、と。

(夏季は、海よりも先にあたたまった陸地の上空に上昇気流がおこる。

そこに海風が吹きこんで東風が吹く。時にきつく。カヌーには向かい風)

 

 「赤鉄橋から下流を下るヤツはマゾである」

これは、四万十川をカヌーで旅するカヌーイストの定説?です。

中村の街にかかる四万十川大橋(通称赤鉄橋)から、海までは約10キロ。

その間の川は、市街地の中を、ひたすら真っ直ぐゆっくりと流れてゆきます。

人工物の景色が多い長いとろ場は、漕ぐのも見るのも、あまりオモシロクない。

おまけに夏は、昼前から吹くキツイ向かい風(東風)に、カヌーは翻弄されてしまうのです。

大抵のカヌーイストは、赤鉄橋で四万十川の川旅をおえます。

*とろ場:水の流れがゆるい区間のこと。水の流れの速さは水量でかわります。

 

 そして東風は、中流域の江川崎から下流でも、マゾ好みの長いとろ場をつくります。

水量が少なく、流れがゆるい、そんな状態の川に東風が吹けば、

向かい風の張り手と、ゆるゆる流れる水の焦らしが、Mの方には、ううっ、たまりません。

しかしMではないツアー参加者は思う。「はぁ、こりゃ漕ぐのしんどいなぁ・・・」と。

具体的には、・口屋内沈下橋上流・勝間沈下橋上流・三里沈下橋下流、などの長いとろ場です。

(山屋さんは、ぜんぜん苦にしないどころか、かえってイキイキと漕ぐ方が多いですが)。

 

 また、水量が少ない時の川は、瀬がグンと狭く浅くなり、

(喫水が浅い)カヤックでも、瀬の入り口で座礁しやすくなります。

座礁して、流れる水の中で、中腰でカヌーから降り、足元が滑る浅瀬をあるくコトも。

それは、なかなかしんどくキケンを伴う行為です。

 

 そんな、水量が少なく、向かい風が吹く夏の川(中下流域)を楽しく遊ぶコツは、

・その時の川の状況をよく観察し、距離にこだわらず、より「川遊び」が出来るコースを選ぶ。

・支流の(黒尊川など)「川遊び」も取りいれて、短い距離をのんびりと下る。

 

 山から海まで、大きく蛇行しながらゆったりと流れる四万十川は、水温が高い川。

そんな、水ぬくい川(真夏の川面の水温30度)には、水質&景観の良さがまだ残っています。

南国の川は、カヌーだけでなく「バシャバシャ川遊び」も、また楽しめるのです。

 大型連休が明け、まとまった雨がない四万十川の水量は少なめです。

毎日、川をながめていると、見慣れてしまうせいか、その変化に気がつきにくい。

しかしこのところは、定点で見ている箇所の水の下がり方が、かなり早いように思えます。

(最近、まとまった雨がないとしても)

 

 「昔の四万十川は、今よりも水量が多かった」とよく聞きます。

昔の豊かな水量は、水辺の植物が生息する場所を見てもわかるそうです。

・キシツツジ・シチョウゲ・トサシモツケなどは、川が少し増水した時、水に浸かるところに生える植物。

しかし、今の水面からその植物までは、ずいぶん遠く離れています。

 

 近年、四万十川の水量が少ないのは

・山の荒廃や乱開発による山の保水量の低下・津賀ダム&家地川ダムの影響

その2つの要素が大きいと言われています。

(家地川ダムでは、発電用にそっくり水を取ってしまい、その水のほとんどは本流には戻らない)

 

 今日の川の水はうす白く濁り、1、5メーターの川底がはっきりと見えない状態です。

四万十川は、エイャ!と川に飛びこみ、泳ぎたくなるほどに、まだ水質は良い。

しかし、多くの家の生活排水や田畑の農薬は、ちょくせつ川に。

あるいは、土壌に一度浸透させてから川に入っています(トイレは汲み取りが多い)。

そしてそれは、支流も同じです。

*一部の新しい公共の施設や家には浄化漕が整備されています。

 

 それでも、この川の水質がまだ良い理由は。

・過疎地であまり開発の手が入らず、流域の人口が少ないから。

・本流に流れ込む汚水の量よりも、深い山、多くの支流から入るキレイな水の量の方がはるかに多いから。

・川が持つ自然な水の浄化作用、人が川を保全する活動など。

 私たちが、次の世代が、本当にキレイな四万十川で遊べる時がくれば良いな、とせつに思います。



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