新鹿山荘控帳

山荘管理人が季節の移ろいを、書きとめました
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DVD「ミュンヘン」

2015-08-13 18:02:22 | 芸術鑑賞
久しぶりに「映画を見た」気分になりました。
朝から雨で、30度前後、DVDを見ることにしたのです。

【物語】
1972年ミュンヘンオリンピックでイスラエルのアスリート11名が、パレスチナゲリラ”黒い九月”のメンバーによって殺されました。イスラエル機密情報機関”モサド”は暗殺チームを編成、指示された11名の暗殺リストをもとに順に暗殺を実行していくのです。
リーダーは妊娠7か月の妻を残して、ヨーロッパに飛びます。
爆弾で暗殺すれば、大きく報道され報復が世界中に宣伝されるという国の意向で、爆弾を使用する。一方一般人を殺すなとか他国の情報機関を巻き込むなとか、難しい制限も課せられます。

初めのうちは主人公も愛国心に燃えて誇りを持って暗殺を実行していきますが、次第にテロ行為の結果では報復合戦になっていくのではと、後半には任務に悩みます。事実パレスチナ側も暗殺チームの存在に気が付き、空港無差別襲撃とか各国でテロが多発します。

ユダヤ人のスピルバーグの監督ですから、イスラエル色満載かとも思っていましたが、淡々と暗殺者の心情を書いています。派手なアクションはありません。もちろんイスラエル側からの書き方ですが。千年以上昔からのイスラエルとパレスチナの戦いは、多くの映画で語られています。やはりアメリカ映画での作成が多かったのでイスラエル寄りでしたが。
はたしてこの戦いはどちらが正しいとか言えないでしょう。長い歴史の中での問いかけは、その切り取った時代時代で見る立場が異なってしまいでしょう。

またこのテーマを別にして、ヨーロッパにおいて各国の情報機関やテログループが日常的に活動しているのは、日本では考えられない状況です。他国へ渡って、まったく別の国の人間を殺してゆくのです。またさらに驚いたのは、主人公のテロリストの情報収集に応ずる私設の情報機関が存在しているのにびっくりです。どこの国にも属さず、情報機関のメンバーとその家族のために高額の報酬を、どの機関からも要求しているのです。この組織はフランス郊外にもコミュニティーを作っているのです。
自国の領土内で、他国の情報機関が殺人を連続して実行しているのに、その国の警察や情報機関は対抗手段をとらないのでしょうか。モサドのしていることは仕方ないと思っているのでしょうか、一般市民のうかがい知ることのできない、裏の世界なのでしょうか。

このチームはテロリストの最高指導者をスペインの隠れ家で暗殺に失敗し、活動を中止します。ただイスラエルとしては11名のうち9名まで暗殺するのです。他にも暗殺チームが活動していたのです。
チームは暗殺中にロシアの情報機関の人間を巻き込んで殺してしまい、ロシアからも命を狙われるのです。

イスラエルに帰国後、モサドからの圧力を避けるため家族をニューヨークに逃がし、彼も米国に渡ります。
ここで、この黒い九月のリーダーがCIAとつながっていた事実を知らされます。

ラストシーンの遠景にあの今はない、ツインタワーが写っています。

国と国とのメンツをかけた戦いと、報復の殺し合いはいつまでも永遠に続くのだろうと思ってしまう映画です。

最近期待外れの映画が多かった中では、充実の映画でした。

コメント
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