
’08/08/12の朝刊記事から
米兵事件の裁判権放棄
通達文書 閲覧禁止に 法務省 国会図書館に要請
米兵が起こした事件の処理について、重要事件以外では事実上の裁判権放棄を指示した1953年の通達を掲載した法務省資料をめぐり、同省が5月下旬に「米国との信頼関係に支障を及ぼす虞がある」として、所蔵する国会図書館に閲覧禁止を要請、6月上旬に図書館の目録から資料が削除されていたことが11日、分かった。

米兵らの事件処理を規定する日米地位協定に関する公文書が一転して非公開となったことは、知る権利との関係から議論を呼びそうだ。
国会図書館は削除した理由について「政府の意思を尊重した」と釈明するが、資料は90年に入手、その後閲覧対象となっていた。
閲覧再開は困難としている。

資料は、法務省刑事局が72年に作成した「合衆国軍隊等に対する刑事裁判権関係実務資料」。
米兵の事件処理について、53年以降に法務省刑事局や最高検察庁が作成した通達などを掲載、解説している。
裁判権行使については「この種事件の特殊政党に鑑み、捜査処理上留意を要する」と記載。

重要事件以外は裁判権を行使せず「起訴猶予」とするよう指示した53年の刑事局長通達や、日本側の第一次裁判権が及ばないとされる「公務」の範囲を通勤や職場の飲酒にまで拡大した文書も含んでいた。
こうした通達は日米地位協定の運用に影響しているとみられる。
国会図書館は「文書作成機関の要請に配慮する必要があり、その意思が変わらなければ、閲覧再開は困難」としている。

国内向けにつじつま
日米地位協定に詳しい本間浩法政大名誉教授(国際法)の話
法務省が米兵事件処理に関する文書非開示を要請したのは、「刑事裁判権の放棄はない」などとする日本政府の国内向け説明を守ることが目的ではないか。
日米合意に基づく、一連の通達が非開示とされているのは米側の意向が働いているのだろうが、米国には一定年数を経た政府文書について情報公開の原則が確立されている。
日本の司法を含む当局が、米兵が事件を起こしたとき被害者となりうる国民の人権に関する重要な情報を隠してしまったことは情けない。

米国との信頼に支障
法務省刑事局の話
資料集は「秘扱い」のもので公開対象になっているのは適当ではないと判断し国会図書館に公開対象から外すよう要請した。
公開されれは、米国との信頼関係や、公共の安全と秩序維持に支障を及ぼす虞がある。
資料集の中身については回答を差し控えたい。
撮影機材
Kodak DC4800