’07/10/25の朝刊記事から
金大中事件報告書 韓国政府の謝罪 焦点
主権侵害 責任免れず
【ソウル24日井田哲一】韓国政府の「過去事件の真相究明委員会」が24日、1973年8月に韓国の野党指導者だった金大中(前大統領)が東京都内のホテルから拉致された「金大中事件」について、情報機関である韓国中央情報部(KCIA、現在の国家情報院)の組織的犯行であったことを認める最終報告書を公表したことで、盧武鉉政権が今後、日本政府に対し、公式謝罪するかどうかが焦点となった。
他国への主権侵害を認めた以上、韓国政府は国家として何らかの責任を取ることが迫られる。
しかし、日韓関係という特別な事情から、韓国世論が盧政権の日本への公式謝罪を許す可能性は、まずない。
盧大統領は、軍人出身大統領による歴代政権下での人権弾圧や不法行為の真相を解明するため2004年11月に同委員会を発足させ、金大中事件や87年の大韓航空機爆破事件などについて調査を指示していた。
報告書は、韓国政府の「組織的な関与はない」との主張を日本政府が受け入れ、事件から2カ月後に日韓両政府が不透明な「政治決着」を図ったことについて、両政府の責任は免れないと指摘。
韓国政府が被害者の金氏に公式謝罪する必要性を提起した。
金前大統領の秘書官は24日発表した声明で、報告書が当時の朴正煕大統領の指示を明確にしなかったのは「優柔不断であり遺憾だ」と批判した。
日本政府が「日本の主権を侵害した」として、韓国政府に対し謝罪などを要求していることについて、韓国大統領府(青瓦台)の報道官は同日の会見で「(事件は)不幸で遺憾なこと」とした上で、今後の対応について「青瓦台が立場を明らかにする必要があるなら、その時に対応する」と述べ、謝罪について具体的言及は避けた。
’07/10/25の朝刊記事から
「2島返還で平和条約」
ロシア紙 日本側打診と報道
【モスクワ24日藤森一朗】ロシアの有力紙コメルサントは24日、日本が北方領土問題の解決に向け、歯舞、色丹2島の返還を前提に平和条約を結び、国後、択捉島の帰属については継続交渉とする案を非公式にロシア側に打診した、と報じた。
日本外務省は同日、打診の事実はないと否定したが、4島一括の帰属確認を目指す日本側の従来の方針は交渉前進に結び付いておらず、今後、歯舞、色丹2島の引き渡し方針を明記した日ソ共同宣言を基盤にした打開の可能性があらためて注目される可能性がある。
記事は、タス通信のゴロブニン東京支局長が寄稿した。
記事は複数の筋の情報として、「日本はあくまで非公式な形で、日ソ共同宣言に立ち返るために極めて大胆な提案をした」と説明。
同案では、日本は平和条約を締結して歯舞、色丹2島を手にし、国後、択捉島については係争地であることを明確にして交渉を継続する-としている。
森喜朗元首相は、プーチン大統領が2000年9月に日ソ共同宣言の有効性を確認したのを受け、同案に似た二段階解決を模索する姿勢を示したが、01年に退陣。
日本側はその後、「日ソ共同宣言を基盤とすると、2島返還で幕引きされる」(外務省筋)との見解から、4島一括の帰属確認を目指す方針を堅持している。
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外務省ロシア課は「全く(打診の)事実はない。4島の帰属問題を解決して平和条約を締結するとの基本方針に従い、強い意志を持ってロシアとの交渉を進めていく」と話している。
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’07/10/24の朝刊記事から
ミート社 元社長きょう逮捕
食肉偽装事件 幹部3人も
【苫小牧】苫小牧市の食肉加工製造卸会社「ミートホープ」=破産手続き中=の食肉偽装事件で、道警は23日、田中稔元社長(69)や三男の田中恵人元専務(34)ら同社幹部4人が豚肉などを混ぜたミンチを「牛100%」と偽って販売するなど偽装を主導したとして、不正競争防止法違反(虚偽表示)容疑で4人の逮捕状を取った。
24日に逮捕する方針。
6月の偽装発覚から4ケ月余り。
食品への消費者の信頼を揺るがした会社ぐるみの偽装事件の捜査は大詰めを迎える。
逮捕されるのは、田中元社長、恵人元専務のほか、苫小牧市内にある同社汐見工場の元工場長(59)、元現場責任者(64)の4人。
調べでは、田中元社長ら4人は、ミート社で昨年5月から今年6月までの間に、北海道加ト吉(赤平市)など道内と本州の冷凍食品メーカーなど取引先十数社に対して、牛肉100%の原料を使っていると虚偽の表示をして、実際には豚肉などを混ぜた偽装ミンチ約100トンを納入した疑い。
’07/10/23の朝刊記事から
薬害肝炎 197人の実名を把握
製薬会社 本人に通知の意向
汚染された血液製剤ヒィブリノゲンの投与でC型肝炎を発症、感染した418人に、厚生労働省と製薬会社が事実を伝えていなかった問題で、製造元のミドリ十字を継承した田辺三菱製薬が、197人の実名と、170人のイニシャルか名前の一部を把握していることが22日、分かった。
舛添要一厚労相は、同社の葉山夏樹社長に本人に早期に告知するよう指示した。
葉山社長は「患者のプライバシーに配慮し、迅速に対応したい」と、医療機関などを通じて通知する意向を伝えた。
舛添厚労相が同日午後、葉山社長を厚労省に呼んだ席で同社長が報告した。
厚労省が同日午前、公表した資料は実名2人、イニシャル116人。
同省はこれまで、個人を特定できるデータは持っていないとしていた。
厚労省は同日、調査チームを立ち上げ、本人に伝える努力をしなかった経緯を検証、関係者の法的、道義的責任の有無を判断することになった。
これらの動きに対し、同日会見した薬害肝炎訴訟全国原告団の山口美智子代表は「最初は『資料がない』、つつかれたら少しずつ出てくる。薬害エイズと同じ構造だ。今もって厚労省は責任の重さを全く感じていない」と怒りをあらわにした。
発症者情報を把握しながら本人に通知しなかったことに関し、葉山社長は、患者のプライバシー保護を理由に、「患者と接している医療機関と患者の間の対応」の問題とし、落ち度はなかったと主張した。
これについて舛添厚労相も一定の理解を示した。
’07/10/23の朝刊記事から
肝臓がん 血液1滴判定5時間
北大チーム特定糖鎖の存在解明
北大大学院先端生命科学研究院の西村紳一郎教授と同大学院医学研究科の藤堂省教授らの研究チームは22日、肝臓がんの存在を高精度で判定できる生体物質を発見したことを明らかにした。
細胞表面にあり、病気になると構造が変化する物質「糖鎖」の特定の組み合わせが、肝臓がん患者に特異的に存在することを突き止めた。
糖鎖の自動分析器も企業と共同開発し、数時間で少量の血液から対象の糖鎖を識別する方法も確立した。
独立行政法人科学技術振興機構(JST)のプロジェクト研究で、30日に東京で開かれる研究会で発表する。
糖鎖は遺伝子が生み出すタンパク質の情報を伝達・制御する物質で、がんや糖尿病などの疾患に関与しているとされる。
北大の研究チームは肝臓がん患者83人と健常者20人の血液中の細胞の糖鎖を分析したところ特定の4種類の糖鎖による3通りの組み合わせが、肝臓がん患者の方に健常者より10倍前後多く存在することを発見した。
肝臓がんの判定には、AFP(αーフェトプロテイン)という物質がよく使われるが、肝臓がんではない肝炎患者らにも反応してしまうことがあった。
研究チームが今回発見した肝臓がんの判定は103例のサンプルで誤差はゼロだった。
糖鎖の分析は従来、濾過や濃縮を繰り返し、多量の採血と4、5日以上の時間が必要だった。
西村教授は糖鎖の識別原理を基に樹脂メーカーの住友ベークライト(東京)、塩野義製薬(大阪)などと共同で糖鎖自動分析器の試作機を開発。
1滴の血液で1度に30-50種類の糖鎖を約5時間で調べられるという。
患者の負担が軽減されるほか、他の種類のがんに特徴的な糖鎖のパターンを迅速に見つけ易くなる。
研究チームは膵臓や大腸がんなどの研究にも着手、「より早期のがんや糖尿病など他の病気と、糖鎖の変化との関係分析にも当たりたい」(西村教授)としている。