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Kodak DC4800
’08/02/04の朝刊記事から
利尻沖座礁船 撤去早くも”暗礁”?
【利尻富士】宗谷管内利尻富士町沼浦沖で1月1日、貨物船「DERBENT(デルベント)」(602トン)が座礁した事故で、モスクワ在住の船主ワジム・アシーラフ氏(30)が3日、稚内入りし、同町や稚内海保と船体の撤去方法について協議した。船主は早期に撤去したい考えは示したものの、具体的な時期などは明らかにしなかった。道内では過去に例のない「無国籍、無保険船」の事故のため、解決は長期化の様相を強めている。
ロシア人船主、現地入り
「無保険」がネック
貨物船は、韓国からロシア・サハリン州ネベリスク港に向かう途中、しけのため利尻島沖に避難して座礁した。船底は1.2メートルほど砂地に埋まり、周辺海域にはコンブの養殖ロープが張られている。
「離礁するには相当な技術が必要」(稚内海保)とされ、関係者によると費用は少なくとも2億円に上る。
協議の結果、船内で生活しているロシア人とウクライナ人の乗組員13人は4日にも稚内市内に上陸させることで合意。撤去費用の全額負担を求める同町などに対し、船主はサハリン州海難救助調整局の所有船で撤去する考えを示した。
しかし、同海保によると、外国の作業船が日本の領海内で作業するためには、外務省を通じて日本政府の許可を得る必要があり、実現するかどうかは不透明という。
多くの座礁事故の場合、撤去費用は保険で賄われるが、今回の貨物船は船主責任保険などの船体保険に入っていない。しかも国籍証書の切れた無国籍船であるため、「多くの悪条件が重なった」(同海保)というケースだ。同町の田村祥三副町長は「とにかく早く撤去してほしい」と話している。
国内で放置されたままになっている外国籍の座礁船は8隻あり、道内ではロシア船3隻が根室市周辺に放置されたままになっている。
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’08/02/04の朝刊記事から
内田樹の常識的 「子供」ばかりの日本社会
(うちだ・たつる=神戸女学院大教授)
この連載も今回で最終回、最後に今の日本についていちばん懸念していることを書いて読者諸氏の熟慮を促したいと思う。
日本のシステムは今うまく機能していない。政治も医療も教育も年金も、すべてがきしんでいる。危機意識はおそらく国民全員が共有している。だが、それに対してどう応じるかで国民は二分される。「誰か何とかしろ」という告発と叱責の言葉を口にする人と「困った。何とかせねば」と青ざめる人である。
システムの不都合を咎めることはシステムの保全のためにはむろん必須のことである。けれども、全員が不調を指摘するだけで、「すみません。すぐ治します」と言う人が出てこなければ、システムはそのまま崩壊する。
○ ○
システムの不調について専一的に批判するだけでよく、補修の義務を免除されているものを人類学的には「子供」と呼ぶ。子供はシステムの制度設計や運用にこれまで携わってこなかったから、システムの不調に責任がない。だから子供には思い切りシステムを批判する権利がある。
けれども、みんなが子供では困る。システムのメンテナンスを本務とする人が必要である。それが「大人」である。
大人と言うのは、たまたま割り当てられた仕事を粛々と果たしている人のことである。システムを一望俯瞰しているわけでも、全体をコントロールできる権限を与えられているわけでもない。彼にできるのは自分の持ち分の仕事だけである。
とりあえず、自分の割り前については、汗をかいて、きちんと仕事をする。担当部署で不備があると知らせを受けたら、すぐに駆けつけて補修する。そういう「まっとうに自分の仕事を遂行する」人たちが一定数確保されてはじめて共同体の骨格は保たれる。残念ながら、そのことはもう常識ではなくなった。
○ ○
社保庁のように役人たちがあれほど節度なく仕事を怠ることができたのは、「自分たちが少しくらいさぼってもシステムは揺るぎなく盤石である」と信じていられたからである。防衛事務次官が民間企業との癒着に久しく安んじていられたのも、少しくらい「つまみ食い」しても税金はさして目減りするわけではないし、自衛隊への国民的信頼が傷つくはずもないと「高をくくる」ことができたからである。
システムの安定性を過大評価し、その保全は「誰か自分ではない大人」がちゃんと引き受けてくれるはずだという考え方を採用できる人は、実年齢にかかわらず子供である。この生き方の範を垂れたのは、「誰かが何とかしてくれるだろう」と後先考えずに政権を放り出した先の総理大臣であった。
これらの事実から推して、日本のエスタブリッシュメントの相当数はすでに子供たちによって占められているようである。
子供たちだけでもなんとか管理運営できてきたということは、それだけ日本的システムの「できがよかった」ということである。先人たちの築いてくれたこの社会の精妙さはおそらく世界に誇ってよいと思う。けれども、黙々とメンテナンスをしてくれる大人はもう絶滅危惧種になってしまった。子供たちだけしかいない社会システムがこの先どれだけ持つか。私にはよくわからない。たぶん、あまり長くないだろう。
2006/09/26 ~ 2007/09/26 第90代総理大臣 安倍晋三
2007/09/26 ~ 2008/09/24 第91代総理大臣 福田康夫
エスタブリッシュメント=社会的な権威を持っている階層。
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Kodak DC4800
’08/02/04の朝刊記事から
「証拠がない」募る日本不信
ネット通じ中国全土へ
【石家荘(中国河北省)3日佐々木学】中国製ギョーザ中毒事件の発生で製造元「天洋食品」のある中国北部の石家荘市では、住民の間で「証拠もないのに、なぜ中国を悪く言うのか」と日本への反発が広がっている。こうした思いはインターネットを通じ、中国全土に広がりつつある。
「工場は衛生管理がとても厳しかった」。天洋食品で5年前、アルバイト勤務の経験がある張春花さん(39)は、同社製品による中毒発生が信じられない表情で話した。勤務前にシャワーを浴び、作業服のほか帽子やゴーグルを付け、イチゴの洗浄を担当。1時間おきの手洗いも課せられた。
2日の天洋食品と地元検疫当局の記者会見は中国国内でも報道され、事件はようやく広く知られるようになった。地元では工場を擁護する一方、日本が故意に中国の悪いイメージを広めていると疑う住民が少なくない。
天洋食品の工場に近い団地内の青空市場で野菜を売る男性(36)も「中国側の原因とは限らない。証拠を示してほしい」と不快感を隠さない。
インターネット上では「真相がはっきりしてから議論を」と冷静な意見がある一方、「中国をおとしめる日本側の悪意」「原因は日本側にある」との憶測も流れ始めた。
食品の安全をめぐり、日本とは逆に、中国国内では日本への不信感が募っている。
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’08/02/03の朝刊記事から
GPS携帯やっぱり導入
防衛省 機密保持可能と判断
防衛省は2日、収賄容疑で起訴された前事務次官の守屋武昌被告が休日に業者とゴルフを繰り返していた問題を踏まえ、休日や夜間の幹部の所在を確認するため衛星利用測位システム(GPS)対応の携帯電話を導入する方針を固めた。一時はハッキング(不法アクセス)や傍受による情報漏れの危険があるため配備を見送ったが、防止対策が可能と判断した。
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’08/02/03の朝刊記事から
「原料から混入可能性は低い」
生協連が調査結果公表
中国製ギョーザの中毒事件で、日本生活協同組合連合会(東京都渋谷区)は2日、製造元の「天洋食品」工場での調査結果を公表し、有機リン系薬物「メタミドホス」がギョーザの原料から紛れ込む可能性は「ほとんどない」とした。被害を出した一部商品の包装袋に穴が開いていたことから、今後は工場内に鋭利な物がないか調べるという。
日本生協連によると、現地で天洋食品と契約する生産農家の農薬使用履歴を取り寄せたところ、千葉県で中毒が発生した昨年10月20日に製造されたギョーザの原料について、白菜などにメタミドホスが使用された記録はなかった。
会見した飯村彰常務理事は「原料から農薬が紛れ込む可能性はほとんどない」として、中毒は事故か何者かによる故意の可能性があるとの認識を示した。