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'07/03/20の朝刊記事から
米軍再編推進法案「アメとムチ」
23日審議入り
日米両政府が合意した米軍再編の実施を目指す「米軍再編推進特別措置法案」が23日、国会で審議入りする。
同法案は米軍再編への協力度合いに応じ、国が関係自治体に財政的な優遇措置をとる「アメとムチ」が最大の特徴。
米軍再編への賛否によって、道内外の対象自治体への対応を変える露骨な選別が始まろうとしている。
岩国 米軍機移転反対、市庁舎建設補助 突然打ち切り
今回の米軍再編で最も負担が増える自治体として、米軍機移転に反対している山口県岩国市では、国から財政支援の停止という「ムチ」が振るわれている。
米軍岩国基地には、米軍厚木基地(神奈川県)から空母艦載機59機が移転。
岩国の航空機数は2倍以上の120機に増えるが、国は市庁舎建設の補助打ち切りで受け入れを迫る。
「兵糧攻め」に遭う岩国市の苦悩を見た。(東京政経部青山修二)
「兵糧攻め」
補助金は、米軍普天間飛行場(沖縄県)から空中給油機12機の移転に同意した見返りに、05年度に支給が始まり、新庁舎も同時に着工した。
これまで約14億円が配分され、市は07年度に約35億円の補助金を見込んでいた。
突然の打ち切りに、市は起債で新年度予算案を編成せざるをえなくなった。
国の措置には、井原勝介市長を揺さぶる狙いがあるのは明白だ。
井原市長は、空母艦載機の移転の是非をめぐる住民投票で反対票が多かったことを根拠に、反対姿勢を貫く。
市長は反発
補助金の打ち切りに対し、井原市長は「国との信頼関係を覆すものだ」と反発。
米軍再編推進特措法案についても「本来、国は安全や安心の面で市民が納得する提案をすべきなのに、カネで自治体の意思を左右しようとする姿勢が見える」と批判する。
防衛施設庁は補助金の打ち切りに「心苦しい」とするが、補助金の復活は米軍再編の容認を条件とする立場は崩さない。
移転先は現行よりも1キロ海側に移設される新滑走路。
長年の住民要望を受け、騒音対策のために造成され、08年度に完成する。
住宅地に隣接する厚木に比べ、「騒音対策上、有利になる」(久間章生防衛相)という岩国の環境が裏目に出た格好だ。
岩国基地の地元自治会の会長を務める土肥慶久さん(71)は「滑走路が遠くに離れて、ようやく騒音が小さくなると思ったら、これ幸いと艦載機がやってくる」と嘆く。
千歳 戦闘機訓練 受け入れ表明 防音工事費が倍増
米軍再編による戦闘機訓練の移転先となった全国6基地の周辺自治体で、最初に受け入れ表明したのが千歳市だった。
国は防音工事費や防衛施設庁の補助事業を手厚く配分し、協力度の高い千歳市への優遇策をはっきりと打ち出した。
2007年度に全国に配分される再編交付金は総額51億円。
戦闘機発着の航路直下の18町内会で作る千歳飛行場騒音鉄東地区整備協議会の役員は「交付金が多く受けられるよう、市には頑張って欲しい」と期待する。
山口幸太郎市長も交付金獲得へ精力的に動いた。
昨年7月の訓練容認表明の4日後、07年度予算の概算要求をにらみ、地域振興策を国に緊急要望。
治安や騒音対策の協定締結に加え、防衛施設庁の補助金で水道施設建設、廃棄物の破砕処理場建て替え、小学校増築の3事業の採択、住宅防音工事の待機世帯解消などを求めた。
その結果、3事業のうち、小学校増築の防音工事費約2千万円を本年度の補正予算で全額獲得。
ほかの2事業も新年度以降の予算化を検討しているという。
また、米軍再編に伴い国が本年度の補正予算に計上した防音工事費約30億円のうち、約13億円が千歳基地分に配分。
当初予算の8億円と合わせて21億円に膨らみ、前年度の17億7700万円(約790世帯分)を大きく上回った。
千歳市幹部は「本当は訓練移転はないほうがいいが、山口市長は振興策など国の前向きな姿勢を確信し、容認を決めた。実際、国は市の意向を認めてくれた」と話す。