
’08/08/20の朝刊記事から
ロシア軍、破壊活動続行 グルジアの弱体化狙い
【モスクワ19日加藤雅毅】グルジア・南オセチア自治州をめぐる軍事衝突で、撤退開始を表明したロシア軍がグルジア領内での活動を続けている。
軍事施設への攻撃に加え、交通などの生活基盤も破壊。
和平交渉で優位に立つとともに、サーカシビリ政権の弱体化を図る狙いだが、欧米からの批判拡大は確実だ。

「グルジアの北大西洋条約機構(NATO)加盟までに、できるだけ軍事施設を破壊しておこうということではないか」。
19日のロシア紙エルベーカーデイリーは、ロシア軍が撤退を遅らせている理由をこう推察した。
ロシアが強硬に反対するグルジアのNATO加盟は、早ければ今年12月にも実現するとの見方がある。
ロシアは加盟阻止は困難とみて、NATO軍がグルジアに入り込んでくる前に、軍事施設を徹底的に叩いておこうというわけだ。

大衆紙コムソモリスカヤ・プラウダは19日、今回の作戦に参加しているロシア軍約1万5千人のうち、半数に近い6千5百人が、南オセチア自治州とアブハジア自治共和国以外のグルジア領内に駐留していると伝えた。
ロシア軍はアブハジアに近い主要発電所を占拠。
グルジア政府によると、同国を東西に貫く主要鉄道の橋も爆破された。
ロシア側は、グルジア国内の生活基盤に打撃を与えることで、現政権を苦境に追い込むことを狙う。
ロシアのメドベージェフ大統領は18日、「自らの利益のため、罪のない市民を殺すことができるならず者の政治家がいることを、全世界が知った」と、サーカシビリ大統領を非難。
退陣を求める姿勢を鮮明にした。

ただロシアの侵攻を受け、グルジア国内のサーカシビリ氏への支持は高まっている。
欧米も現政権支持を強く打ち出しており、ロシアの思惑通りに運ぶとは限らない。
ロシア独立系シンクタンクの政治学者イーゴリ・ブーニン氏は「(ロシアの)軍人は、作戦がまだ終わりに達していないと感じており、精神的に撤退は難しい。駐留を継続する言い訳をいろいろ探している」と指摘。
当面は「撤退」ではなくグルジア領内での「移動」が続くとの見方だ。