前回の続きです。
『人新世の資本論』です。
本日は、第一章 『気候変動と帝国主義的生活様式』の小見出し『17.時間的転嫁・・・大洪水よ、我が亡き後に来たれ!』です。
美味しい果実は、お先に頂戴して、それによって引き起こされる弊害は、次の世代に先送りするやり口です。
マルクスが森林の過剰伐採を論じて「大洪水よ、我が亡き後に来たれ」と、呟いたそうです。
現代においては「化石燃料の大量消費 → 二酸化炭素増加 → 時を経て → 気候変動」この原因と結果にタイムラグがあるために、世の中は、いろいろ揉めていたのでした。
いまでは、「気候変動・温暖化」の犯人は「二酸化炭素」で、それなりに見解は統一され、受け入れられていますが、二酸化炭素の量的・期日的規制については、未だ時間的余裕はある派、もう余裕は無い派、もう遅い派、と、各派で、いろいろ揉めています。
また、規制を緩めようとする経済界と云うか、規制される側の「企業経営者」に対して、規制を強めようとする環境派、おいしいとこ取りの先進国に対して、責任だけを押しつけられる発展途上国、この間のせめぎ合い。
でも、しかし、最近、巷で耳にするのは、気候変動問題で、最大の影響力を持っているのは、世界を股に掛け、莫大な資金を動かす、投資家集団=資本家だと、その筋で語られているそうです。
資本家が環境規制強化の先頭で、最大の影響力を行使しているそうです。もちろん狙いはただひとつ金儲け!
私も、以前より、何となく、薄々、クサイと思っていたのです。気候変動対策で、一儲けを企んでいる輩がいると、睨んでいたのです。
以前、「温暖化・気候変動・二酸化炭素主犯説」に懐疑的だったのは、どうも、これには裏があり、金に絡んだ怪しい仕掛け人が居る、と、思ったからです。
そして、金に絡んだ怪しい仕掛け人は、裏では無く、いまでは表で、堂々とその姿を、我々の前に現しました。
それで、去年の12月22日の朝日の朝刊コラム『多事奏論・・・脱炭素マネー高すぎる削減目標に透ける思惑』と云う記事で、「怪しい?仕掛け人」について簡潔に分かり易く解説されていました。
やっぱり、そうだったのか! 俺の山勘は当たっていたのだと、ひとり手を叩き、膝を叩き、足を踏み鳴らして、納得したのでした。
エネルギーの大転換、産業構造の大転換で大儲けなのです。
化石燃料から再生可能エネルギーで、既存企業はハイ!さようなら!で退場。
既存の企業からの、配当は、儲けは、たかが知れているのです。
脱炭素関連で、再生可能エネルギー関連で、新規企業の立ち上げは、金儲けの桁が違うのす。
それで、コラムでは、
『ここ数年、世界を脱炭素の急進路線に一気に舵を切らせた立役者はおそらくグレタ・トゥンベリさんや環境NGOではなく、世界の金融ネットワークである。・・・脱炭素に30年間で100兆ドルを投資・・・いまや温暖化そのものが巨大ビジネスとなった・・・』
と、述べています。因みに、最近の原油価格の高騰にも同じ輩が絡んでいます。
資本主義は、化石燃料で行き詰まり、脱炭素で再生する?人糞循環から化学肥料で生き延び、化石燃料から脱炭素で、またもや生き延びる?
これって、技術的転嫁で、次々と時間的転嫁が繰り返されると云う事に、なってしまう?
まあ、目的は別にして気候変動が回避されるのであれば、それは、それで、いいのか、と、思ったり。
これまでの本書の主張とは、かなり離れつつあるような、でも、この先で、きっと、この件についても、それなりに触れられると期待します。
でも、やっぱり、気候変動だけで、資本主義の矛盾をほじくっても、かなり、かなり、無理があると考えます。
そこで、と云うか、ここで、話題をぐっと身近に引き寄せて、近づきつつある参議院選挙の公約について、争点について、一言二言。
当面の、政策課題として、争点として、一番にコロナ対策が挙げられますが、これについては、与党も野党も大差ありません。野党は与党を後手後手と攻めるだけ。
消費税、年金社会保障、財政赤字、少子高齢化、ジェンダー問題、夫婦別姓・・・等々、まあ、外交・防衛はそれなりに重要で、喫緊の課題ですが、票にはなりません。
一番の政治課題は、誰が、何と云おうとも、「貧困と格差」です。これが諸悪の根源です。すべての問題はここから始まっているのです。
世界中の国々で「貧困と格差」が問題になっています。この根源は、つきつめれば、いまの、資本主義に突き当たるのです。
経済が成長すれば、所得が増えて、貧困格差は解消する?
日本では失われた30年で経済成長が止まり、所得もまったく上がりませんでした。しかし、他の欧米先進国では、経済は成長し所得は倍増しましたが、格差と貧困は無くなりませんでした。
1%と対99%問題です。
富が一部に集中している?1%に集中した富を、99%に分け与えても、たかが知れているのです。
そもそも、資本主義は、周辺部を失い、内部の、自国の、労働者のグローバル・サウス化で生き延びているのです。
豊かな中間層を、もう一度は、とても、とても、無理な話なのです。豊かな中間層が現れたのは、資本主義の歴史の中で、第二次大戦後のほんの十数年だけなのです。
岸田政権が企業に対して、税制面の優遇措置で、一時だけの、賃上げを実現しても、格差と貧困はなくなりません。
資本主義の主要な問題は、気候変動ではありません。
資本主義で一番の問題は、貧困と格差です。
本書『人新世の資本論』でも、これ以降、触れられ事と思います。
本日は、日頃の思いの丈を、思いつくままに、書き散らしてしまいました。
長くなりました。本日は、これでお終い。
それでは、また。