徒然日記

街の小児科医のつれづれ日記です。

新型コロナ後遺症、アップデート(2022.4.29)

2022年04月29日 12時00分00秒 | 新型コロナ
新型コロナウイルス感染症の後遺症は“long-covid”とも呼ばれて注目されています。
これに関する最近の記事を整理してみます。



たくさんありますね・・・。
後遺症には急性期の症状が長引くパターンと、
治ってから「あれ、おかしい?」と新たに現れる症状があります。

その原因は未解明ですが、可能性として、
・ウイルスに感染した組織(特に肺)への直接的な障害
・感染によって免疫の調節機能に影響が起こることによる炎症の持続
・血液が固まりやすくなる状態が続くことによる血栓症
・集中治療後症候群(PICS)
などが挙げられています。

後遺症状の種類は、大阪府の新型コロナ受診相談センターの統計では、
・倦怠感
・嗅覚障害、味覚障害、
・咳、呼吸苦、
・脱毛、
・頭痛
の順で頻度が高いようです。

新型コロナに罹患した患者さんのどれくらいに後遺症が出現するかについては、さまざまな報告があり数字は一定しませんが、30-40%程度のようです。イギリスでの50万人以上の住民を対象にした新型コロナ後遺症に関する大規模調査では、新型コロナに感染して何らかの症状があった人のうち、37.7%で発症から12週時点でも症状が続いており、女性・高齢者・重症者・喫煙者・肥満に頻度が高かったと報告されています。

また、日本国内での457人の新型コロナから回復した方の調査では、発症時もしくは診断時から6カ月経過時点で26.3%(4人に1人)、12ヶ月経過時点で8.8%(11人に1人)の人で少なくとも1つ以上の症状が残っていたそうです。

新型コロナの急性期に心臓合併症(心筋炎、心筋梗塞)が出ることがわかっていますが、後遺症としてはどうでしょうか。

アメリカの在郷軍人病院の新型コロナ患者および、非感染者とを比べた臨床研究では、感染から1年後の心血管系の合併症のリスクは、非感染者と比べて、
・脳梗塞 1.52倍
・不整脈 1.69倍
・心筋炎 5.38倍
・心筋梗塞 1.63倍
・肺塞栓 2.93倍
・深部静脈血栓症 2.09倍
と軒並み高くなっているそうです。

そのほかにも、
などの後遺症も報告されています。

気になるオミクロン株の後遺症はどうでしょうか。
知りたいところですが、まだ解析されたデータは公表されていません。
ただ、相談センターでは実数が増えているそうです。

後遺症を避けるためには・・・罹らないことが大原則。
感染対策を励行し、ワクチン接種で自身の身を守り・・・

以上で終わりのはずだったのですが、
先日、これらのすべてをひっくり返す情報を目にしました。

森内浩幸Dr.のWEBセミナーで紹介されたフランス発の論文
自己申告で“新型コロナ罹患”した患者さんに対して、
罹患後症状と血清抗体価の関連を統計処理した内容です。

“自分は新型コロナに罹りました”と申告する人に、
血液検査で新型コロナに対する抗体を調べると、
上昇している人と上昇していない人が出てきます。
上昇している人を「真のCOVID-19」
上昇していない人を「偽のCOVID-19」
として統計処理をすると・・・

血清学的診断(新型コロナに対する抗体上昇が証明された真のCOVID-19)と関連があったのは「嗅覚障害」のみであった
という衝撃的な結論。
他のすべての症状は抗体価と関連がなかったのです。

つまり、嗅覚障害以外の後遺症状は「思い込み」、
言い換えれば「心理社会的ストレスによるもの」という可能性が否定できません。

HPVワクチンによる多彩な副反応も、接種者と非接種者で差がないと証明された「名古屋スタディ」もありました。

事ほど斯様に、人間というものは、様々なストレスに心理的に反応してしまう生物であることを前提に考えるべきなのでしょう。

でないと、科学の進歩が人間の漠然とした不安により妨げられかねません。

<参考>
新型コロナウイルス感染症診療の手引き:別冊「罹患後症状のマネジメント」

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濃厚接触者の隔離期間(自宅待機期間)を再確認(2022.4.24)

2022年04月24日 21時44分56秒 | 新型コロナ
濃厚接触者の隔離期間はたびたび変わり、
現場は振り回されてきました。

現時点での私の基本認識は、

・陽性者と接触した翌日から数えて、無症状者は7日間
・陽性者と接触した翌日から数えて、有症状者は10日間

ですが、無症状者では検査を併用すると短縮できる場合がありますね。

・陽性者と接触した翌日から数えて4日目と5日目の両方が検査陰性なら解除
・エッセンシャルワーカーは、その日に検査をして陰性なら就労可能

さて、私の認識は正しいのでしょうか?
倉原優Dr.によるこちらの記事を参考にして、
現在の状況を確認しておきましょう。

まず、濃厚接触者と陽性者が同居しているのか、していないのかでスタートが異なります。
非同居者では接触日が特定できるので単純です(⇩)。



しかし同居者の場合は「はじまりはいつ?」と素朴な疑問が生まれます。
便宜上「感染対策を講じた日」を0日目とし(⇩)、
その「感染対策を講じた日」は具体的には「陽性判明した日」ということになります。



家庭内では、家族や兄弟が波状攻撃されるように次々と発症する場合が希ではありません。
すると、隔離期間がゴチャゴチャになっていつまで自宅待機すべきなのかわからなくなりがちです。
基本は下の図のように考えます。
すなわち、新しい陽性者が判明した時点で、無症状の濃厚接触者の隔離期間はリセット(再設定)されることになり、乳幼児期の兄弟がいる家庭ではエンドレスの隔離地獄に陥ります(⇩)。



ただし、この判断は自治体ごとに差があり、
子どもが大きくて感染対策を理解して十分対応できる場合は、
リセットしなくてもよいと判断されるケースもあるようです。

次に、検査により隔離期間が短縮できるお話。
基本は以下の通りです(⇩)。


エッセンシャルワーカーの内容も以前より明確化されていますね(⇩)。
勤務する場合は当日の検査で陰性確認できれば可能であることは私の理解通りです。


エッセンシャルワーカー以外の一般市民も、
検査を併用することにより短縮が可能ですが、
検査内容(抗原キットかPCRか)で多少差別化されているので注意が必要です。

濃厚接触者の具体的な生活について、倉原Dr.は以下のようにまとめています;



さて、濃厚接触者に指定された場合は以上のルールに従うことになりますが、
実は現場ではその濃厚接触者かどうかの判断に迷うグレーゾーンの患者さんが多くて悩ましいのが現状です。

濃厚接触者の定義そのものも変遷があり、
現在は保健所が判断するのは家庭内やクラスター(5名以上)のみで、
他は施設や現場に任されています。



基本的には「同居者」「1m以内、15分以上の接触」ですが、
私は小児科医ですので、後者の定義に悩まされます。

なぜかと言えば、
子どもに大人と同じような感染対策を強いても無理があるからです。
マスクも遊んでいる内にずれたり外れたりしますので。

なので、集団生活の場で「陽性者が発生したけど濃厚接触者と言われていない」という子どもでも、
「グレーゾーン」として症状のある患者さんには検査希望の有無を聞き、
希望される場合はPCR検査に誘導しています。

するとその半分くらいが陽性になります。

当然希望されないご家族もいるわけで、
しかし濃厚接触者ではないからこちらから強制もできません。

連日「本日の陽性者は〇〇名でした」と報道されていますが、
現実にはその数倍の陽性者がいるのではないか、と感じています。

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新型コロナ感染対策は消毒(接触感染対策)から換気(エアロゾル感染対策)重視へ

2022年04月24日 07時31分33秒 | 新型コロナ
前項の続きです。

新型コロナがここまで拡大し、かつ消えない原因は、
その「エアロゾル感染」という感染様式にあります。

接触・飛沫感染中心なら「環境消毒」は有効な対策ですが、
いくらそれを頑張っても新型コロナは消えませんでした。

私は以前から、クラスター発生の際の「環境消毒」に違和感を持っていました。
中国の街中全体を消毒して廻る映像、
日本の医療機関でも消毒液を吹き付けまわり、
「消毒完了」しないと再開できない・・・等々。

当院には医学書の類いがたくさんあるので、
もしクラスター発生した際に大切な本に消毒液をかけられてはたまらないと危険を感じ、
私は本棚にはビニールカーテンを付けたり、
本をビニールで包んだりしました。

つい最近ですが、
「環境には感染力のあるウイルスは残っていないらしい」
という科学的事実が報告され、
私の違和感が見事に解消しました。

▢ 環境表面を介したコロナ感染リスクは極めて低い
 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)パンデミックの発生当初、多くの人が、環境表面に付着しているウイルスに触れることで感染するのを恐れ、買ってきた食品を消毒していたことは記憶に新しいだろう。しかし、米デューク大学医学部教授のDeverick Anderson氏らが実施した新たな研究により、汚染された表面から新型コロナウイルスに感染する可能性は低く、このような消毒は不必要であることが明らかにされた。この研究の詳細は、「Clinical Infectious Diseases」に1月12日掲載された。
 Anderson氏らは今回、同大学病院に入院中のCOVID-19患者20人の部屋の内外の環境表面から、新型コロナウイルスの陽性判定後24時間以内、および3、6、10、14日目に検体を収集した。検体は、ベッドレール、シンク、準備スペース、室内のコンピューター、ドアノブ、室外の看護ステーションのコンピューターの6カ所から採取された。
 集められた総計347点の検体のRT-PCR検査を行ったところ、新型コロナウイルス陽性の判定が出た検体は、全体のわずか5.5%(19点)であった。陽性は、ベッドレールからの9点(9.2%)、シンクと室内のコンピューターからのそれぞれ4点ずつ(ともに8.0%)、準備スペースとドアノブからのそれぞれ1点ずつ(ともに2.0%)の検体で確認された。また、陽性検体の採取日は、新型コロナウイルス陽性の判定後24時間以内に採取されたものが6点、3日目が10点、6日目が2点、10日目が1点だった。
 さらに、培養細胞を用いて陽性の検体に含まれるウイルスの感染性を調べたところ、ウイルスの増殖が確認されたのは、下痢と発熱の症状があった患者のベッドレールから発症後3日目に採取した1点(0.3%)の検体のみであった。
 Anderson氏は、「パンデミックが始まって間もない頃の研究では、新型コロナウイルスが環境表面で何日も残存することが報告されていた。しかしこれは、ウイルスが感染力を持ち続けることを意味するわけではない。今回のわれわれの研究により、環境表面には、感染性のある生きた新型コロナウイルスはほとんど存在していないことが明らかになった」と述べている。
・・・
<原著論文>

コロナの「接触感染」リスクはそれほど高くない

PCR検査はウイルスのかけらを検出する手法なので、
PCR陽性イコール感染力がある、ではないのです。
つまり「PCR陽性≠感染力あり」。

ですから、感染対策も以下のようにシフトさせる必要があります。
消毒中心 → 換気・ソーシャルディスタンス〜マスク中心

以前にも書きましたが、ウイルス粒子・エアロゾル粒子はタバコの煙粒子と同じくらいの大きさです。
室内でタバコを吸うとしばらくニオイが残る=タバコの煙粒子が浮遊している状態です。
タバコをニオイを消すほど換気しないと新型コロナ対策として不十分なのです。
窓を少し開けておくくらいではタバコのニオイはしばらく残りますから、
不十分と言わざるを得ません。
その間、感染リスクが高い状況が続くことを認識すべきです。

一方で「過剰な接触感染対策を整理して減らしていこう」という声が、
ご意見番の医師からも聞こえるようになりました。

ビュッフェの手袋、エレベーターの抗菌シート・・・そろそろ過剰な感染対策をやめていこうッ!
忽那賢志:感染症専門医
2021/12/12:Yahooニュース)より抜粋;
・・・
新型コロナの感染経路は3つです。
接触感染:ウイルスで汚染した物、感染した人の手などに触れることで自分の手などにウイルスが付着し、その汚染した手で目や鼻など粘膜に触れる
飛沫感染:会話などで発生する飛沫を浴びる
エアロゾル感染:特に換気の悪い屋内では飛沫の飛ぶ距離(1-2M)を超えて感染が起こり得る
基本的にはこの3つの感染経路を意識した感染対策が重要です。
接触感染に対してはこまめな手洗い、飛沫感染やエアロゾル感染に対してはマスク着用と3密を避けることで感染を防ぐことができます。
◆ ビュッフェでの手袋は不要!
・・・結局ビニール手袋をつけたとしても、ビニール手袋であちこち触ればビニール手袋そのものが汚染してしまい、汚染したビニール手袋でトングを触ればトングも汚染し、何がなんだか分からなくなります。
なんとなく「ビニール手袋は汚染しないんだ」という謎の信頼感があるのかもしれませんが、ビニール手袋にもウイルスや細菌は付着しますし、ウイルスが付着したビニール手袋であちこち触ればウイルスは広がっていきます。
ということで、大事なのは食事を取る前にアルコールなどで手を洗うこと、そして取り終わった後にも手を洗うことです。
・・・スーパーのレジの店員さんもずっと同じ手袋をつけて接客をされているのを見かけることがありますが、あれも「手袋はウイルスに汚染されない神話」によるものではないかと思います。前述の通り手袋も普通に汚染されますので、手袋で触った商品もお釣りを渡したお客さんの手も汚染されていきます。これを避けるためには、こまめに手を洗うか、手袋を使う場合は毎回換える必要があります。
◆ ハンドドライヤーは普通に使ってもいい
・・・ハンドドライヤーは手を洗った後に使用するものですので基本的にきれいな手を乾燥させるために使用するものであり、そこに新型コロナウイルスがいて、エアロゾルが舞って感染するなんてことは極めて稀であり、そんなことを気にするよりはマスク着用と手洗いという基本的な感染対策を徹底することが重要です。
日本経団連のホームページにも、
「オフィスや製造事業場といった、基本的に有症者がいない管理された場所のトイレでのハンドドライヤーの利用での感染リスクは限定されること、また、ハンドドライヤーの利用で発生する水滴、マイクロ飛沫による感染リスクが極めて小さいことが、複数の実験と数値流体シミュレーションを組合せて確認できたことから、ハンドドライヤーの利用停止を削除する。」
と記載があり、経団連もこう言っていることですし、そろそろハンドドライヤーも普通に使いませんか?
最後に「トイレのフタ問題」についても言及したいと思います。
「新型コロナの感染対策としてトイレの水はフタを閉めて流してください」という張り紙を見かけることがありますが、これも流行初期にトイレの水を流すことでウイルスが舞い上がるのではないかというモデル上の仮説があったり、便から発生したエアロゾルがトイレの配管を通して感染に関与したのではないかという都市伝説的な症例報告があり、「トイレは危険だ!」ということになったのではないかと思いますが、もしトイレを介した感染が起こるとしても極めて稀な感染経路であり、フタをするしないで感染リスクが「ほぼゼロ」から「ほぼほぼゼロ」になるくらいのものでしょう。
◆ 感染対策はシンプルに
全く未知の感染症であった新型コロナも、この2年間で様々なことが分かってきました。当初はとにかく感染リスクを下げるために何でもやる、ということで行っていた対策の中には、現在では「ここまではやらなくてもいいんじゃないの?」と思えるものも出てきました。
マスク着用、こまめな手洗い、3密を避ける、といった基本的な感染対策を継続していくためには不要な対策はできるだけなくしシンプルにしていくことが大事です。

 トイレ問題に関しては、便中にウイルスが排泄され、それが便器や周囲に付着して感染するという考え方がありましたが、現在は便から排泄されるウイルスは基本的に壊れている“ウイルスのかけら”であり、感染力はないとされています。

新型コロナは接触感染・飛沫感染もしますので、
手指消毒が不要になることはありません。
しかし環境中のウイルスは感染力がないことが判明した現在、
それ以外の環境消毒は取捨選択して整理し、
空気感染対策(換気、ソーシャルディスタンス〜マスク)を重視する方向で考えていきましょう。
なお、マスクをする目的はソーシャルディスタンスが保てない場合のかわりの手段であることを再度強調したいと思います。

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新型コロナウイルスの“正体”見たり!

2022年04月20日 15時11分34秒 | 新型コロナ
新型コロナが登場してから約2年半が経過しました。
当初、正体不明の新たな病原体による“パンデミック”として、
人類を恐怖に陥れましたが、
少しずつその特徴が明らかになってきました。

私の認識は、ザックリ言うと、

・感染力が強く、無症状期から飛沫感染(エアロゾル感染)する。
・高齢者は重症化しやすいが、若年者・小児はそれほどでもない。

というものです。

では、この新型コロナ、歴史の中で恐怖番付上位のウイルスなのでしょうか?

昨日視聴した森内浩幸Dr.のセミナーの中に、そのヒントがありました。

結論は、
新型コロナウイルスはふつうのかぜウイルスと同じかもしれない
という、意外なもの。

そこに至るまでのお話をしましょう。

まず、コロナウイルスは昔から“風邪を起こすウイルス”(以後、“感冒コロナウイルス”と呼びます)として存在してきました。

小児科医は風邪の種類により季節の移り変わりを感じる人種です。

(冬)RSウイルス、インフルエンザ
(夏)プール熱(アデノ)、ヘルパンギーナ(コクサッキー)、手足口病(コクサッキー)
(春秋)ライノウイルス、コロナウイルス

と季節により流行するウイルスが異なり、
それぞれ症状に特徴があります。

というわけで従来は、感冒コロナウイルスは春と秋に流行る鼻風邪程度の認識でした。

森内先生の話では、
「年間を通して成人の風邪の原因は15%がコロナウイルス」
だそうです。

感冒コロナウイルスは4種類に分けられ、
その4種類とも4-6歳までに感染して免疫ができます。

果たして、感冒コロナウイルスはすべて軽症で済むのでしょうか?

感冒コロナウイルスも高齢者では重症化するという報告があります。
子どもでも2歳未満や基礎疾患のある場合は重症化することも報告されています。

あれ、この特徴「2歳未満・基礎疾患・高齢者は重症化しやすい」は、
新型コロナと共通しますね。

もしかしたら、
迅速検査がないので一般的に知られていないだけかもしれません。

では、従来の感冒コロナイウルス新型コロナウイルスの最大の違いはなんでしょう。

それは“疫学像”と森内先生は指摘されました。

感冒コロナウイルスは、
・子どもでは風邪
・大人はすでに免疫があるのでかかっても軽症で済む

一方の新型コロナウイルスでは、
・子どもでは風邪
・大人も初めてかかるので免疫がないから(特に高齢者では)重症化しやすい

これを聞いて、私は“なるほど!”と大きく頷きました。
高齢者は免疫力が落ちてくるので、新たなウイルスに反応できず、
炎症を抑えきれずにこじれてしまうのですね。

さて、今回以前にも“新型コロナウイルス”が席巻するエピソードが20世紀以降、何回かありました。

略称でMERSSARSと呼ばれています。
この2つは、おもに下気道(気管支・肺)で増殖するので重症化しやすいけど感染性は弱いという特徴がありました。
なので感染を抑え込むことができています(MERSは終息、SARSは消滅)。

しかし、感冒コロナウイルス新型コロナウイルス(COVID-19)では、
上気道(咽頭・喉頭)でも増殖するので感染性が強く、
そして新型コロナでは無症状期から感染力があるため、
感染拡大を止められないでいます。

症状がない人から感染するなんて、
なんて賢い生き残り戦略なのでしょう。
脱帽するしかありません。

次に病毒性・致死率について触れてみます。

季節性インフルエンザと比較した致死率データは以下の通り;
・季節性インフルエンザ   :0.01-0.09%
・新型コロナ(デルタ株)  :1.2-1.6%
・新型コロナ(オミクロン株):0.13%

デルタ株は突出していますね。
オミクロン株になっても、まだ季節性インフルエンザより高く、
“オミクロン株になってふつうの風邪と同じレベルになった”
とは言いがたい事実。

オミクロン株は致死率は低くなったものの、
患者総数が多いため、
死亡者数は第5波(デルタ株流行)よりも多くなっています。

この現象は、
第5波のタイミングが高齢者の2回接種が済んだ頃で、
第6波のタイミングが高齢者の2回接種後半年以上経った頃、
という説明で理解できます。

“高齢者の3回目接種が遅れたことは岸田政権の決定的な失策である”と森内先生は指摘しています。

私の印象は、
安倍政権の尻拭いをさせられたのが管政権、
管政権の頑張りの恩恵を被って生きながらえているのが岸田政権、
・・・ですね。

さて、まとめてみます。
最初に書いた私の認識、

・感染力が強く、無症状期から飛沫感染(エアロゾル感染)する。
・高齢者は重症化しやすいが、若年者・小児はそれほどでもない。

はその通りでした。
ただ、後者は新型コロナウイルスだけの特徴ではなく、
感冒コロナウイルスにも共通するもので、
今回は「すべての世代が初感染」という特殊な状況のため、
臨床像が従来の感冒コロナウイルスとは異なる結果となった、
という背景がわかりました。

子どもがかかると軽く済むけど、
大人がかかると重症化しやすい感染症は他にもあり、
水痘や麻疹が有名ですね。

現在、新型コロナワクチンの4回目接種が話題になっています。
4/21時点では「高齢者とハイリスク患者に対して3回目から5ヶ月後を目安に接種予定」と報道されています。

今回は医療関係者は外されるようですね。

さて、このブログの内容から、
「新型コロナワクチンは何回必要か?」
という問いのヒントも見え隠れします。

高齢者は、
初感染だから重症化する、
複数回感染した後は重症化しにくい・・・

現在の mRNA ワクチン接種は、
自然感染より抗体価が上昇するという優れものです。

つまり、
「ワクチン1回接種≒自然感染1回」
と考えられるわけで、
すると高齢者はすでに3回感染しているのと同じ免疫状態と見なすことが可能、
よって延々とワクチン接種を繰り返す必要はない、
という視点も有りです。
今回の4回目接種は、
「念には念を入れて、3回よりは4回の方がより重症化しにくい」
というスタンスですね。

ただし、新型コロナウイルスが変異しない、という条件付。
もし大きく変異すれば、また話は変わってきますから。

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2022年春、新型コロナ感染の主役は小児へ

2022年04月03日 08時56分31秒 | 新型コロナ
テレビのニュースで繰り返し報道されていますが、
第6波はピークアウトしたものの減少曲線の傾きが鈍く、
感染の主役は小児に移行してきたことが明らかです。

この世代の特徴は「ワクチン未接種」であること。
そして「感染しても重症化しにくい」こと。

感染しても重症化しにくいため、
ワクチンを接種するモチベーションが高まらず、
子どもを持つ親は接種すべきか悩みに悩んでいます。

ウイルスがその結論が出るまで待ってくれるはずはなく、
感染拡大は止まりません。
現状のままでは、
3回目接種率がなかなか上がらないこと、
オミクロン株のBA1→ BA2への置き換わりも影響し、
GW頃には第7波の襲来が予測されています。

オミクロン株と小児に関する最近の記事から;

新型コロナ 新規感染者 半数が10代と20代 3回目接種率低い傾向
2022年4月2日:NHKより一部抜粋;
先月29日までの1週間に、新型コロナウイルスに新たに感染した人を年代別にみると、10代と20代の若者が全体のおよそ半数を占めていることが、厚生労働省のまとめで分かりました。一方、この世代の3回目ワクチンの接種率はほかの世代より低い傾向が続いていて、専門家は「若者は活動範囲が広く感染しやすい状況なので、入学や就職などに伴う新生活で感染リスクを点検するとともに、ワクチン接種も進めてほしい」と指摘しています。
・・・
増加した人数を年代別にみると、20代が全体の26%にあたる1万1578人で最も多く、次いで10代が23%の9938人と、10代と20代の若者で全体の半数近い49%を占めています。
これに対し、3回目ワクチンの接種率は政府が1日公表した集計では、全人口の41.5%となっています。
接種率を年代別に公表している東京都のデータでは、3月31日の時点で70代や80代以上は80%を超えていますが、20代は23.8%、12歳から19歳は5.8%などと若い年代の接種率が低い傾向が続いています。
・・・
3回目のワクチン接種については「若い世代の接種率は低いが、若者は飲食の機会が多かったり活動範囲が広かったりして特に感染しやすい状況にあるので、接種を進めてほしい」と話しています。

接種率の低さの理由として、
・危機意識が低い(小児・若者は重症化しない)
・強い副反応への不安
などが垣間見えます。

要は、他人のことはさておいて自分中心に考えるか、
身内や周囲の人々、ひいては社会全体のことに思いが及ぶか、
の違いなのでしょう。

では、小児はオミクロン株でも重症化しないのでしょうか。
アメリカでは小児の入院数云々の話が聞こえてきますが・・・
日本小児科学会が公表しているデータを紹介した記事を読むと、
全体として小児の重症化率に変化はなく低いままです。

小児におけるオミクロン株の特徴として、
・発熱率が高くなった。
・それに伴い熱性けいれん合併率も上昇した。
・症状で増えたのは咽頭痛、嘔気/嘔吐。
・重症化の代表である肺炎合併率は低いまま。
・味覚・嗅覚障害の合併はより少なくなった。
などを挙げています。


小児コロナ症例、重症化傾向に変化はあるのか
2022/03/22:日経メディカルより一部抜粋;
 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の日本国内の小児例において、臨床症状と重症度の変遷が明らかになった。2020年2月から2021年7月の流行初期に40%ほどに認めた発熱は、オミクロン株流行期に入って80%に増加。また、肺炎の合併頻度は成人に比べて低率で推移し、デルタ株やオミクロン株の流行期でも大きな変動は認められなかった。日本小児科学会が実施しているレジストリ調査の結果で、2022年3月7日に中間報告・第3報として公開された。
・・・
 今回公表された中間報告・第3報は、臨床症状と重症度の変化に焦点を当てて解析している。調査対象は、2020年2月1日から2022年2月20日の間に、レジストリに登録された0~15歳の5129例。
 解析は、国内における主要な流行株をもとに、
(1)流行初期(2020年2月~2021年7月)
(2)デルタ株流行期 (2021年8月~12月)
(3)オミクロン流行期(2022年1月〜2月20日)
の3期に分類して行った。それぞれの症例数は、流行初期が1830例(55.2%)、デルタ流行期が1241例(24.2%)、オミクロン株流行期が1058例(20.6%)だった。
・・・
 オミクロン株流行期に入ってからの特徴は、発熱が倍増し、痙攣が熱性痙攣の好発年齢である1~4歳だけでなく、5~11歳の年長児においても増加している点だ。また、咽頭痛を訴える症例が増え、悪心・嘔吐も特に5~11歳において割合が増えていた。このうち、悪心・嘔吐のために「一部の患者においては補液や入院管理が必要となっていた」ことは懸念される。一方で、味覚・嗅覚障害はほとんど見られておらず、コロナに特徴的な症状が薄れていることには留意すべきだろう。
小児患者の重症化傾向は確認されなかった
 また、重症度では以下の4点が明らかになった。

(1)入院の割合は、流行初期 79.4%、デルタ株流行期53.4%、オミクロン株流行期28.6%と経時的に減少傾向を認めた。しかし、流行初期は隔離目的、経過観察目的などによる入院が含まれていた可能性が高いことから、「入院率で各流行期における重症度を評価することは困難」と結論している。なお、PICU入院率は、各流行時期で大きな変化を認めていない。
(2)酸素需要、呼吸・循環管理、抗ウイルス薬、抗体療法、ステロイド全身投与などの治療の実施は、デルタ株やオミクロン株などが流行した後も大きな変動は認めなかった。
(3)小児例における肺炎の合併は、流行初期に1.1%、デルタ株流行期に1.6%、オミクロン株流行期に1.3%だった。肺炎の合併は、成人と比較し低率であり、デルタ株やオミクロン株などの変異株流行においても変化は認めなかった。その他の合併症に関しても、デルタ株やオミクロン株などが流行した後も、それぞれの頻度に大きな変動は認めなかった。
(4)合併頻度は高くないものの、重篤な合併症である心筋炎・心外膜炎が、流行初期に0.2%、デルタ株流行期に0.1%に認めた。オミクロン株流行期には、今のところ認めていない。
 今回の報告は、対象症例の62.6%が入院例だった。また、レジストリに登録されているのは国内小児コロナ症例の0.5%に過ぎないことから、調査結果をまとめた日本小児科学会予防接種・感染症対策委員会は「国内においてはレジストリに登録されていない軽症外来患者が多数存在する」と推定。「レジストリには比較的重症度が高い症例が登録されている可能性が想定される」としている。
 その上で同委員会は、比較的重症度が高い症例が登録されているレジストリにもかかわらず、「オミクロン株を含む変異株の流行による小児患者の重症化傾向は確認されなかった」と結論付けている。

アメリカからの情報もひとつあげておきます。
オミクロン株になってから小児の入院数が急増し、
小児科医の間で話題になっている「クループ症候群」の合併が問題視されています。

クループ症候群とは;
のどの奥の声帯がある辺りの炎症が強く、
赤く腫れ上がると声帯を変形させて声がかすれ、
犬が吠えるような(犬吠様)、オットセイのような、
のどの奥深くから出てくるような咳になる病態。
炎症によるむくみがひどければ呼吸困難に陥りますが、
ふつうの風邪では滅多にそこまで悪化しません。
春と秋にパラインフルエンザ・ウイルスによる発症が有名です。

ところがオミクロン株で5歳未満のワクチン未接種世代で発症すると、
重症化しやすく入院率が他のウイルスが原因の場合より高いと報告されています。
声帯より奥の下気道である肺炎の合併率は低いけど、
上気道が狙われているのですね。
その重症化率の高さを見ると、
やはり新型コロナウイルスはただ者ではないことがわかります。


乳幼児のオミクロン株感染、「クループ症候群」重症化の要因か 米研究
2022/03/26:Forbes JAPANより一部抜粋;
これまで子どもたちの大半は、新型コロナウイルス(SARS-CoV2)に感染しても軽症で済むとされてきた。だが、変異株のオミクロン株が流行の主流になったことにより、ここ数カ月は子どもの入院者数が急増しているという。
米疾病対策センター(CDC)のデータによると、米国ではオミクロン株の前に優勢となっていたデルタ株が中心だったころと比べ、新型コロナウイルス感染症(Covid-19)で入院する0~4歳の子どもの数が、およそ5倍にのぼっている。
そうしたなか、ボストン小児病院の研究者らが新たに発表した論文から、Covid-19にかかった子どもたちには、「クループ症候群」と診断される例が多くなっていたことが明らかになった。
クループ症候群は乳幼児に多い疾患で、犬の鳴き声のような咳(犬吠様咳嗽)と高音の雑音が混じる呼吸(吸気性喘鳴)が特徴だ。原因は呼吸器系ウイルスへの感染で、咽頭や気管、そして肺につながる気管支の周囲に腫れが生じる。
一般的には、クループ症候群は軽症で済むことが多く、Covid-19のパンデミック発生前には、入院が必要となる小児の患者は5%未満とされていた。
だが、新たに発表された研究結果によれば、Covid-19にかかった後にクループ症候群を発症した乳幼児の場合は、12%に入院治療が必要となっていた。さらに、その半数近くには集中治療室(ICU)での治療が必要だった。これらの子どもたちは全員が5歳未満で、SARS-CoV2のワクチン接種は受けていなかった。
研究チームがこの調査の対象期間としたのは、2020年3月~2022年1月だが、クループ症候群の患者のうち8割が、オミクロン株が主流になって以降に確認されていた。
・・・
SARS-CoV2に感染し、その後クループ症候群を発症した子どもたちは、ほぼ全員がステロイド系抗炎症薬「デキサメタゾン」による治療を受けていた。
また、クループ症候群の治療にはパンデミック発生前から、デキサメタゾンが一般的に使用されていた。Covid-19にかかり、その後クループ症候群を発症した子どもにはさらにエピネフリンも投与され、治療後は全員が回復し、退院している。

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