徒然日記

街の小児科医のつれづれ日記です。

次のインフルエンザ・パンデミックの有力候補は?

2018年10月29日 08時13分24秒 | 小児科診療
 2000年頃は、「次のパンデミックはH5N1(鳥インフルエンザ)が最有力候補」と云われていました。
 しかし蓋を開けてみると、2009年にパンデミックを起こしたのはH1N1(豚インフルエンザ)でした。
 これは専門科の間では“想定外”だったのですね。
 幸いなことに、強毒性ではなかったので以前のパンデミック(スペイン風邪、香港風邪、アジア風邪)ほど多数の死者は出さずに済みましたが。

 さて、次のパンデミックもいつ起こるかわかりません。
 本日のニュースで、
「パンデミック用のインフルエンザワクチンをH5N1からH7N9へ入れ替える」
 と衝撃的なことを言ってました。
 これは、次のパンデミックの最有力候補が、H5N1ではなくH7N9に変わったと判断したということ。

■ ワクチン 「H7N9」型のワクチンに順次切り替えへ
2018年11月3日:NHK
 新型インフルエンザが流行した場合の対策として備蓄しているワクチンについて、国は、中国を中心に1500人以上の感染が報告され国際的に警戒が高まっている「H7N9」型と呼ばれる新しいウイルスから作ったワクチンに順次、切り替える方針を決めたことがわかりました。
 「新型インフルエンザ」は、鳥インフルエンザウイルスが変異して、ヒトからヒトに感染するようになったもので、免疫を持たないため世界で大きな流行となることが予測されるため、国は、これまで最も警戒されてきた「H5N1」型と呼ばれる鳥インフルエンザウイルスから作ったワクチンを備蓄してきました。
 しかし、WHO=世界保健機関によりますと、5年前に新たに報告された「H7N9」型と呼ばれる鳥インフルエンザウイルスが、主に中国で5年間に1500人余りに感染して600人以上が死亡し、「H5N1」型の20年間の感染者の2倍程度に達するなど新たなウイルスに対する警戒が高まっています。
 このため国は、予算を確保したうえで、現在備蓄されているワクチン1000万本について、2年後から期限が切れしだい、順次、「H7N9」型のウイルスから作った新しいワクチンに切り替え、最終的にはすべてを置き換える方針を決めました。
 新型インフルエンザのためのワクチンの備蓄は12年前に始まりましたが、ウイルスの種類を変更するのは初めてです。
 厚生労働省結核感染症課の丹藤昌治室長は「H7N9型は新型インフルエンザに変わる可能性が高いと言われているため、できるかぎり早く備えたい」と話しています。


■ 【厚科審小委員会】プレパンワクチン備蓄切替え‐H7N9を1千万人分
2018年6月1日:薬事日報
 厚生科学審議会感染症部会の新型インフルエンザ対策に関する小委員会は5月23日、鳥インフルエンザ対策として備蓄するプレパンデミックワクチンのタイプについて、2019年度中に「H7N9」に切り替える方針を示した。現在はH5N1ウイルスに対応したワクチンを備蓄しているが、来年度中にH5N1ワクチン900万人分が有効期限を迎えることに加え、海外でH7N9ウイルスによる感染・死亡例が急増していることなどを踏まえた対応で、1000万人分を備蓄する。
 この日の会合では、H5N1ウイルスの感染事例が近年では減少している一方、中国でH7N9ウイルスに感染・死亡した患者が急激に増加していることなどを踏まえ、H7N9ウイルスを「危機管理上の重要性は高い」と指摘したワクチン作業班の議論を説明。その上で、H7N9ワクチンを1000万人分備蓄するよう切り替える案が示された。


 パンデミックになり得るかどうかは、そのウイルスがヒトへの感染性を獲得しているかどうかで決まります。
 有力候補の現況を教えてくれる小文を読みましたので、メモしてきます。

■ 「鳥インフルエンザ、H7N9は次のパンデミックになるのか」(田村大輔、自治医科大学小児科)「月刊薬事」2018.10月号

・インフルエンザウイルスはオルソミクソ科に属するマイナス鎖RNAウイルスである。A、B型が有名であるが、C、D型もあり合計4種類が存在する。
A型:本来の自然宿主はトリ(とくにカモなどの水鳥)。ヒト以外の動物にも広く分布している人畜共通感染症ウイルス。
B型:主な感染宿主はヒト。アザラシからも分離されている。
C型:主な感染宿主はヒト。ブタからも分離されている。ヒト、特に小児を中心に小規模の流行を起こし、急性上気道炎、いわゆる“かぜ”として診断されることが多い。
D型:ウシで検出されている。ヒトへの感染は不明。
C、D型ウイルスは、A、B型と比較して臨床へのインパクトが小さいことから迅速診断キットはなく、特別な抗インフルエンザ薬もない。


 抗インフルエンザ薬は、パンデミックインフルエンザには有効と考えられていますが、季節性インフルエンザの兄弟分には無効ということですね(意外)。

・過去100年にヒトで流行したA型インフルエンザのサブタイプは、H1N1、H1N2、H2N2、H3N2亜型。
・現在は、H1N1、H3N2亜型。
・将来の候補は、H5N1、H7N7、H7N9、H9N2亜型 ・・・これらはヒトへの感染も確認されているが、局地的および散発的な流行にとどまり、“パンデミック”には至っていない。


【H5N1】
・1997年、トリで流行していたインフルエンザウイルスが突然ヒトに感染し重篤な肺炎や多臓器不全を起こした。
・患者から分離されたウイルス遺伝子は、8本の遺伝子分節すべてが鳥インフルエンザ由来であり、ヒトへの感染性を獲得していなかった。H5N1/97は「トリで流行しているトリインフルエンザウイルスが特別な状況下でヒトに感染した」と考えられた。
・当初は東南アジア(インドネシア、ベトナム、中国など)での報告が多く、その後中央アジア、欧州、アフリカへと広がった。とくにエジプトでは2014年後半から感染者が増え、2015年1月からの半年間で130名以上の感染者が出た。しかし検出されたウイルスに新たな遺伝子変異は見つからず天候や家禽飼育環境の変化などの多因子が重なりヒトへの感染が増加したと考えられた。
・2018年3月現在、2003年以降のヒトへの感染確定者は860名、うち死亡者は454名(WHO発表)。


【H7N9】
・2013年に発生、H5N1/97同様、トリで流行している鳥インフルエンザがヒトに感染している状況。
・2018年3月現在、感染者数は1567名、死亡者は615名。


 鳥インフルエンザが、まれながらヒトに感染するカラクリは・・・「ウイルスが認識する宿主細胞表面の糖鎖末端」に起因するそうです。

・ウイルスは宿主細胞の表面に突出しているシアル酸を感染ターゲットとしているが、鳥インフルエンザとヒトインフルエンザではその方が微妙に異なる。
・鳥のウイルスはシアル酸がガラクトースにα2-3結合したものを認識し、一方、ヒトのウイルスはα2-6結合したものを認識する。
・ヒトの鼻腔・咽頭・扁桃の細胞にはα2-6結合が圧倒的に多く、鳥のウイルスはヒトの上気道に感染するとはできない。
・しかしヒトの下気道にはα2-6結合が少なく、α2-3結合をもつシアル酸が多く存在する。このため、鳥インフルエンザウイルスに感染した鳥と濃厚接触した場合、塵となったウイルスを吸い込み、下気道までウイルスが到達すると感染が成立する。


 なるほど。
 鳥インフルエンザが増えそうで増えない理由がわかりました。
 ちょっと接触しただけでは感染は成立せず、気道奥深くまで吸い込んではじめて感染が成立するのですね。
 
<鳥インフルエンザの予防>
・死んだ鳥に近づかない。
・鳥を扱う市場などを訪問しない。
・鳥と接触する場合には、マスクをする


 まあ、当たり前のことです。
 その他の新型インフルエンザ候補の現況;

【H9N2】
・鳥由来ウイルス。
・アジア、アフリカ、中東の水禽で流行中、世界中で散発的にヒトへの感染が報告されている。
・臨床症状:軽度な上気道炎症状が中心で、重篤な症状はない。
・WHOは持続的な感染報告はないためパンデミックの可能性は低いと判断している。
【H1N1variant】
・ブタ由来のウイルス。
・感染者21名(2005年以降)
【H1N2variant】
・ブタ由来のウイルス。
・感染者13名(2005年以降)
【H3N2variant】
・2005年以降、全米各地で持続的にブタからヒトに感染を起こし、感染患者が増加している(CDC)。
・2005年以降2017年末までの合計患者数は434名。
・臨床症状はいわゆる風邪症状であるが、季節性ウイルス同様、ハイリスクグループが感染すると重症化する可能性がある。


<参考>
■ 「新型インフルエンザ対策の最前線」(ケアネット:2017/11/24
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

全日本ソフトテニス選手権大会2018(第73回天皇賜杯・皇后賜杯)

2018年10月27日 16時36分19秒 | テニス
 唐突ですが、私は中学から大学まで、軟式テニス(今のソフトテニス)をしていました。
 現在のように「部活制限」などない時代です。
 土曜日も日曜日も、コートが開いていなければふつうのグラウンドで乱打。
 相手の足元に返す練習はこれが一番よいと今でも思っています。
 おそらく、頭の中の7〜8割はテニス三昧の日々。

 戦績は・・・
 中学時代は、県大会3回戦。
 高校時代は、インターハイ出場。
 大学時代は、北日本優勝・東日本準優勝・全日本3位(ただし医学部限定の大会です)

 その頃、テレビ放送されるのは硬式テニスのみ。
 軟式テニスの方が競技人口は多かったはずですが、テレビ放送されることはほとんどありませんでした。
 硬式テニスも、今でこそグランドスラム(全豪、全米、全仏、ウインブルドン)の他にも日本選手が出場する大会は放送されるようになりましたが、当時はまだウインブルドンくらい、それも深夜放送でしかお目にかかれませんでした。
 
 と、日本中心のアジアにしか普及していないソフトテニス。
 ああ、アフリカにも少しあるかな。
 珍しくソフトテニスの試合中継をしていたので、録画して見てみました。

 私が現役だった30年前と大きく違うのは、サーブです。
 昔はファーストサーブはエースを狙って思いっきり打ち込むのがふつうでした。
 今はカットサーブがふつうなのですね。
 はずまないから攻められない・・・ちょっとストレスがたまりそう。
 それから、ダブル前衛という布陣も昔はなく、斬新に見えます。
 
 さて、全日本ソフトテニス選手権大会(熊本開催)の男女決勝です。

 男子決勝: 船水颯人/上松俊貴(早稲田大学)vs 中本圭哉/鈴木琢巳(福井県庁)

 早稲田の前衛・後衛の布陣 vs 福井のダブル前衛の対決。
 なのでガップリ四つと言うより、どちらが得意な形に持ち込めるかの主導権争いというゲームでした。
 結局、船水選手のロブが効いて、福井ペアをあと一歩ネットに詰めさせなかった早稲田ペアが勝利をもぎ取りました。
 いや〜船水選手の腰を落としたストロークの安定性は素晴らしい。
 「腰を落として振り切ればどこへでもシュートボールが打てるんだぜ」と言わんばかりのプレイは、錦織圭君を彷彿とさせます。
 それから風上でもロブが打てるのが“半端ない”。
 相棒の上松選手の反応・センスも素晴らしい。
 あんなにそつなく無駄ない動きでボレーを決める選手は、そうはいないと思います。
 一方の、体が大きくてインパクトのある鈴木選手は、なんと4回目の決勝だそうですが、残念ながら優勝経験はなし。今回も勝利の女神は微笑んでくれませんでした。

 女子決勝: 林田リコ(東京女子体育大)/宮下こころ(明治大)vs 志牟田智美/泉谷朋香(東芝姫路)

 昨年は林田/宮下ペアが67年ぶりに高校生で優勝したそうです。
 それぞれ別の大学へ進学したため、所属大学名が異なります。
 一方の志牟田/泉谷ペアは、その前年の優勝者だそうです。

 ゲームはガップリ四つの、手に汗握る展開でした。
 定評ある林田の強打を志牟田がなんとかしのぎ、責めさせない配球でストローク戦は互角。
 前衛も持ち味を十分に発揮していました。
 最後は僅差で前年優勝の林田/宮下ペアが二連覇を達成。

 ゲームを見ていると、体がムズムズしてきました。
 ああ、自分もテニスをやりたい。
 でも現役を退いて30年たった現在、もう走れません(T_T)。


<動画>
■ 男子準決勝:中本・鈴木(福井県庁) 対 村田・広岡(NTT西日本)
■ 男子準決勝①
■ 男子準々決勝 村田・広岡(NTT西日本) 対 桂・髙月(ヨネックス)
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

インフルエンザ情報アップデート2018

2018年10月27日 07時14分39秒 | 小児科診療
 毎年、秋になると医学系雑誌ではインフルエンザ関係の特集が組まれたり、書籍が出版されます。
 知識をアップデートすべく、何冊か購入して読むことが私の中で年中行事化しています。

 さて、「月刊薬事2018年10月号」に「流行シーズン目前! インフルエンザ予防から治療までのホント」という特集が目にとまりましたので購入して呼んでみました。
 
 企画は菅谷憲夫Dr.(けいゆう病院)で、言わずと知れたインフルエンザのオピニオン・リーダーです。
 菅谷先生の担当した「薬剤師が知るべきインフルエンザのポイント」は、とても役立つ内容でしたので、メモしておきます(緑字部分)。
 究極のポイントは、成人に関しては
ワクチンはA香港型には効きが悪いので、抗インフルエンザ薬の予防投与を積極的に検討すべきシーズンになる
 でしょうか。
 しかし添付文書上、予防投与の対象は限定されているので、小児に関しては菅谷先生の言う通りにはなりません。

・インフルエンザは毎年冬季に流行を繰り返し、人工の5〜10%が罹患する。日本では600万〜1200万人の患者が出ていることになる。死亡者の大多数を高齢者が占め、毎年数千人〜数万人が死亡する。

 あれだけマスコミが騒いでも、多くて国民の10%なのですね。
 1918年に流行したスペイン風邪は5億人が罹患(その時の世界人口は20億人・・・つまり25%!)し、5000万人が死亡したと伝えられています。

・オセルタミビル(タミフル®)は「合併症のない発症後48時間以内のインフルエンザ患者」に適応が認められている薬であり、「合併症のある重症患者、発症後48時間以降の患者」は適応外である。
 欧米では風邪を引いたときは“stay home”、つまり健康者は家庭で安静にして治るのを待つ、という考えが浸透しており、治療開始が発症後3〜6日と遅れるため著しく効果が低い。


 日本ではインフルエンザ流行期には発熱するとすぐに医療機関を受診してインフルエンザ迅速診断を受け、陽性なら抗インフルエンザ薬を処方されることがふつうです。
 しかし諸外国ではこのような医療は行われていません。
 欧米では「熱が出たら自宅安静、よくならなかったら病院受診」がふつうとのこと。
 ですから、病院を受診する頃にはすでに発症後48時間が過ぎてしまっており、タミフル®の使用タイミングを逃しているというのが現状であり、これが新型インフルエンザが流行した2009年に死亡率を上げた理由の一つであると指摘されています。

・タミフル®投与により、無治療のインフルエンザ患者では罹病期間5日のところ4日に短縮され、下気道感染症(気管支炎や肺炎)が40%減少し、入院も60%減ることが期待される。

 タミフル®の効果と限界を知って正しく使うことが重要ですね。

・インフルエンザワクチンを接種すると、約50%の発症予防効果があるが、A香港型には効果が低い。現行不活化ワクチンの効果を小児・成人別に記すと・・・

<小児>
① 小児では全体的に50%程度の発病防止効果がある。A(H1N1)pdm09では高く、B型はやや低めであるが、変異したA香港型においても30〜40%の効果が期待できる。
② ワクチン接種により、50%以上の高い入院防止効果がみられた。
③ 1歳未満の乳児には効果がなかった。

<成人>
① A(H1N1)pdm09とB型には50%前後の発病防止効果があるが、A香港型には低い(特に高齢者)。
② 健康成人であっても、発病防止効果は30〜40%と高くはない。


 インフルエンザワクチンの発症予防効果は、他のワクチンに比べると寂しいほど低いです。例えば、麻疹(はしか)や風疹(三日ばしか)のワクチン(MRワクチン)の発症予防効果は95%です。インフルエンザワクチンはこの半分位しかありません。
 これは、「予防効果を高くすると副反応が強くなる」というワクチン共通の性質があるため、日本人が「効果が低くても副反応が少ないワクチン」を選択したという要素も指摘されています。
 少し詳しく言うと、不活化ワクチンの効果を高めるためにはアジュバントと呼ばれる免疫賦活剤の添加が必要なのですが、現行の不活化ワクチンにはこれが含まれていないのです。
 そのため、まだインフルエンザに罹ったことのないまっさらな状態の乳幼児に接種しても免疫を造ることができません。だから1歳未満の効果は期待できません。
 一度自然感染して免疫がある人は、ワクチンを打つことによりそれが強くなるので効果があるというカラクリです。

・A香港型インフルエンザに対してワクチン効果が低い原因は、ワクチン製造の際の“鶏卵内での抗原変異”である。
 最近、A香港型ウイルスは鶏卵内での増殖が悪くなり、流行ウイルスと抗原性の一致したA香港型ウイルスも、鶏卵で培養すると鶏卵内で増殖性の高いウイルスが選択されて、結果的に抗原性に変化を起こしてしまうことがわかってきた。


 インフルエンザワクチンには4つのウイルス株が含まれています。その株選定は、WHOが流行しているウイルスを検討し、それに近い株を選択して推奨します。各国がそれを元に自国で使用可能な近似株を選択して鶏卵内で培養して造っています。
 WHOの選択が誤り、流行株とワクチン株の差が大きいとワクチン効果が低くなります。
 今まではこの「流行株とワクチン株が合っているかどうか」が議論の中心でした。
 しかし近年、選択したワクチン株は流行株に合っているはずなのに、効果が低いと報告されるようになり、「?」と検討したところ、培養する鶏卵の内部で変異が起こっていることが判明したのです。
 5年ほど前、初めてこれを知ったとき、衝撃を受けました。
 ホントにインフルエンザ・ウイルスって、賢いというか、たくましいというか・・・。

・A香港型が流行した場合はワクチンによる効果が期待できないため、抗インフルエンザ薬による予防を積極的に検討すべきである

 昨シーズンは積極的にワクチンを接種している高齢者施設でも流行が報告されました。これはA香港型に対する効果が低い影響が考えられます。
 ハイリスク患者と認定される高齢者に対しては、抗インフルエンザ薬の予防投与がより一般的になることが予想されます。
 しかし、施設で小流行が繰り返されると、予防投与が長期間にわたる恐れも出てきますね。

・高齢者用のインフルエンザワクチンとして、最も期待されるのが「高用量不活化ワクチン」である。ウイルスたんぱく量がスタンダードの不活化ワクチンの4倍含まれている。

 しかし現時点では日本で認可されておらず、流通していません。

・経鼻生ワクチン(Live Attenuated influenza vaccine: LAIV)は無効であり、アメリカでは2016-17、2017-18シーズンは使用中止となった。今シーズンも、アメリカ小児科学会は使用を勧めていない。

 不活化ワクチンの効果不足を補うはずだった生ワクチンが苦戦しています。
 こちらは、既に罹って免疫のあるヒトに対する上乗せ効果が少ない可能性等が指摘されていますが、まだその理由は正確に分析されていません。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

あなたが“加害者”になるかもしれない「先天性風疹症候群」

2018年10月17日 06時48分49秒 | 小児科診療
 2018年の風疹患者数がとうとう1000名を越えたそうです。
 そして患者の9割が成人。
 「え? 風疹はこどもの病気ではないの?」
 と感じるあなたは、もはや非常識・無常識といわれても仕方ありません。

 1962〜1978年生まれ(現在31〜56歳)の男性は、予防接種を受けていないので風疹に罹る可能性があります。罹った時は被害者ですが、イコール他人に移す加害者にもなり得ます。そして妊婦さん(特に妊娠初期3ヶ月以内)に移してしまった場合、お腹の赤ちゃんが障害を抱えて生まれてくる(先天性風疹症候群)リスクが高いのです。
 そして大切なことは、このような不幸な自体はワクチン接種で防ぐことが可能なのです。このわかりきっていることを国が主導してやらないために、風疹の流行が止まりません。つまり何の罪もない赤ちゃんが犠牲になる環境が野放しになっているのです。

 最近、毎日のように風疹関係のニュースが流れます。
 医療関係者にも患者が発生していることが判明し、私はにわかに信じられませんでした。
 ふつう医療機関は、職員の免疫状態を把握し、「医療関係者のためのワクチンガイドライン」に沿って、必要であればワクチンを接種することが常識だからです。

■ 風疹流行、医療関係者25人の患者報告も - 国立感染症研究所が「緊急情報」
2018/10/11:医療介護CBニュース
 国立感染症研究所は10日、「風疹急増に関する緊急情報」(3日現在)を発表した。2018年の風疹患者の報告数(952人)について、08年の全数届出開始以降では、前回流行した12年、13年に次いで多いと指摘。届出票の職業別の記載にも触れ、「特に配慮が必要な職種として、医療関係者が25人、保育士3人、消防士3人が報告された」としている。【新井哉】
 緊急情報によると、18年の都道府県別の報告数は、東京が307人で最も多く、以下は千葉(195人)、神奈川(108人)、埼玉(70人)、愛知(55人)などの順だった。
 同研究所は18年1月から届出票に追加された職業記載欄を調べた。医療関係者に関しては、看護師、医療事務(病院事務を含む)がいずれも6人、医師が3人、薬剤師が2人、放射線技師、作業療法士、看護助手、歯科医師、歯科助手が各1人などとなっていた。
 また、風疹患者の中心は、過去にワクチンを接種しておらず、風疹ウイルスに感染したことがない「抗体を保有していない集団である」と指摘。30代後半から50代前半までの成人男性の抗体保有率が特に低いことに触れ、「この集団に対する対策が必要である」としている。


 以下のニュースでは「体調に異変が生じたら速やかに受診する」とありますが、それでは遅すぎるし不十分です。症状が出ない潜伏期や不顕性感染でも感染力があります。
 この事態を終息させるためには、ワクチン一斉接種しかありません。それをしないで「東京オリンピックが開催される2020年までに撲滅」なんて本気で言っているのでしょうか?

■ 風疹流行拡大 妊婦への感染防止を最優先に
2018年09月25日:読売新聞
 生まれる子供に影響が及ぶこともある。風疹の感染拡大を抑えたい。
 関東地方を中心に、風疹の感染者が増え続けている。9日までに報告された患者は496人で、昨年全体の5倍に上る。このままでは、患者が1万人を超えた2013年に迫る流行になりかねない。
 国立感染症研究所は今後、全国に広がる可能性もあるとみている。警戒を怠れない。
 風疹にかかると、耳の後ろや首などのリンパ節が腫れ、全身の発疹や発熱の症状が出る。感染力は比較的強く、くしゃみのしぶきなどを通じて、他の人にうつる。
 発症するまでの潜伏期間は2~3週間だが、症状が出ない人もいる。知らずに感染を広げているケースもあるだろう。
 海外の流行地域に滞在中に感染しても、帰国時に症状が表れていないこともある。しばらくして体調に異変が生じたら、速やかに受診する。それが大切だ。
 特に注意すべきは、妊娠初期の女性だ。感染すると、出生児が先天性風疹症候群を発症する恐れがある。主な症状は白内障や難聴、心疾患だ。心身の発達に影響が生じる場合もある。13年の大流行では、乳児の死亡例もあった。
 感染予防には、ワクチン接種が有効だ。55歳以下の女性は原則として、過去に予防接種を受けているが、免疫が十分ではない人もいる。検査で確認したい。
 ただし、妊娠中の接種はできない。免疫のない妊婦は、周囲からうつされないよう細心の注意が必要である。家族にも、確実な予防策が求められる。
 拡大防止のカギを握るのは、成人男性だろう。今年の患者の9割が成人で、男性が女性の4倍に上る。中でも30~50歳代が多い。
 この世代のほとんどが、定期接種を受けていないためだ。風疹を媒介しないよう、検査やワクチン接種を心がけてほしい。
 職場は感染拡大の場になりやすいだけに、企業の役割も大きい。妊婦がいる場合はもちろん、海外出張が多い企業も、社員の意識啓発に努める必要がある。
 政府は、20年までに「風疹の排除」を達成する目標を掲げる。東京五輪まで流行が続けば、せっかくの祭典に水を差しかねない。
 13年の大流行時には、米疾病対策センターが、日本への渡航を避けるよう、予防策が不十分な妊婦に呼びかけた経緯がある。
 欧米では、ワクチンなどで風疹の排除が着々と進む。日本でも早期の流行終息が求められる。


 加害者にならないためにはワクチンを接種して免疫を付けることが必要です。
 風疹ワクチンは現在、単独のものは流通していないのでMRワクチン(=麻疹・風疹混合ワクチン)を選択します。
 妊婦さんに接触ゼロという人はいないと思われ、国民のほぼ全員がワクチンを接種するまで、この事態は終息しません。
 子どもの患者がいないのは、MRワクチンを2回接種しているからです。

■ 風疹急増、7割が30~50代男性 ワクチン集団接種も
2018年09月26日:朝日新聞
 関東を中心に風疹の患者が急増している。今年に入ってからの累計患者数は642人で、昨年1年間の約7倍に上る。患者の7割近くが30~50代の男性だ。感染を職場ぐるみで防ごうと、ワクチンの集団接種に取り組む企業もある。
 病理診断の機器や試薬を製造販売する東京都中央区の「サクラファインテックジャパン」は2013年から、会社で風疹ワクチンの集団接種を始めた。費用は全額会社が負担。その結果、16年に社員の接種率が8割に達した。
 広報担当の山本晃さん(45)は「業務上、医療機関に出入りするので、社員が感染源にならないよう心がけている。仕事の合間に受けられることで接種率が上がった」と話す。
 1万4千人超の患者が出た13年の大流行では、20~60代の患者のうち、男性は7割弱、女性は4割弱が職場での感染だった。風疹は発熱などの症状を和らげる対症療法以外に治療法はなく、ワクチンで感染を防ぐほかない。妊娠初期の女性がかかると、赤ちゃんに難聴や心疾患などの障害が出るおそれがある。
 定期接種は1977年から95年までは中学生の女子のみが対象だった。このため、風疹ウイルスの抗体保有率は、女性が約94%に対し、男性は約88%。特に男性の40代は約80%、50代前半は約77%と低い。
 東京都港区の「新橋日比谷通りクリニック」の吉原秀樹院長(56)は「夏ぐらいから『結婚を控えている』『妻が妊娠した』など、女性に背中を押されて予防接種を受けに来る男性が増えている」と話す。
 国立感染症研究所は26日、直近1週間(10~16日)の風疹の患者数を発表。前週に続き100人超で127人だった。最も多かったのは東京で39人。次いで、千葉38人、神奈川14人、茨城、愛知がそれぞれ8人、埼玉7人と続いた。また、新たに滋賀、愛媛でも患者が発生。今年に入って感染報告があったのは36都道府県に上った。


 以下の記事の「ココがポイント!」は何回も何回も言われてきたことです。

■ 風疹流行、患者の9割超は大人 職場での予防が重要
2018/9/30:NIKKEI STYLE
 気になる感染症について、がん・感染症センター都立駒込病院感染症科部長の今村顕史さんに聞く本連載。今回は現在、首都圏を中心に大流行の兆しがある「風疹」について話を伺った。
【ココがポイント!】
●風疹は症状が表れない不顕性(ふけんせい)感染のこともある
●潜伏期間が2~3週間あるため、症状が出ないうちに感染を広げてしまう可能性がある
●風疹はインフルエンザの2~5倍の感染力がある
●主な症状は発熱や発疹、リンパ節の腫れ。大人は子供よりも重症になりやすい
●最も重大な問題は、母子感染による「先天性風疹症候群」
●予防にはワクチン接種が最善策。ただし、妊婦には接種できないため、妊婦と接する可能性がある人がワクチンを接種しておくことが大切
●風疹患者が多く発生している30代以上の男性は特に、積極的にワクチン接種を
●職場での積極的な風疹予防が、「先天性風疹症候群」の予防につながる


◇ 風疹患者の9割以上が成人、子供より症状が重い傾向も
――今年の8月ごろから、千葉県や東京都など関東を中心に「風疹」が発生しています。国立感染症研究所の発表によれば、2018年の全国の風疹累積報告数は、8月29日時点で273人、9月5日時点で362人、9月12日時点で496人、9月19日時点では642人と、いまだに拡大しているようです。この傾向は、まだしばらく続くと考えられるのでしょうか。
 この連載の第1回「はしか流行 感染を防ぐには予防接種が必須」で取り上げた麻疹(はしか)の場合は、症状が出ない潜伏期間が10~12日間程度あるとお話ししました。一方、風疹にはそれより長い14~21日間程度の潜伏期間があります。そのため、風疹の発生が増え始めた8月末に感染した場合、9月の後半になってから症状が出始めます。
 また、風疹は「不顕性感染」といって、感染しても症状が表れない場合もあり、自分が感染していることに気づかずに、人にうつしてしまうことがあります。8月は夏休みで人の移動が多く、潜伏期間中や無症状のうちに二次感染、三次感染と広がっている可能性があります。今後は関東だけでなく、それ以外の地域での発生にも注意する必要があるでしょう。ちなみに、9月12日時点では、愛知県や静岡県、長野県などでも報告があります。

――風疹といえば子供の感染症というイメージがありますが、2012~2013年の流行時には、成人の患者が多かったと聞きます。子供と大人とでは、症状に違いがあるのでしょうか。

 2012年には2386人、2013年には1万4344人の風疹患者が報告されていますが、その約9割は成人の発症でした。今年の9月19日時点の報告でも、約97%が成人の発症です。
 風疹の主な症状は、発熱や発疹、耳の後ろや後頭部などのリンパ節の腫れ。まれに、急性脳炎や血小板減少性紫斑病などを起こすこともあります。
 子供では、発熱がない場合やあっても微熱程度のことが多いのですが、大人では高熱が出ることもあります。また、子供の場合は平らな発疹がポツポツと現れるのが一般的ですが、大人の場合は、その発疹がつながって、全体的に赤くなっていく融合傾向が見られることがあります。
 子供の風疹は麻疹と比べて早く治り、軽症が多かったことから、以前は「三日はしか」と呼ばれることもありました。一方、大人は子供よりも症状が重くなる例が多く認められます。とはいっても、重篤な合併症が起こることはまれです。
 ただし、妊娠20週ごろまで、特に12週ごろまでの妊娠初期の女性が風疹に感染すると、生まれた赤ちゃんが「先天性風疹症候群」を発症する確率が高いため、妊婦の感染には厳重な注意が必要です。

◇ 風疹では母子感染による「先天性風疹症候群」の問題が
――「先天性風疹症候群」とは、どのようなものなのでしょうか。

 先天性風疹症候群(congenital rubella syndrome:CRS)は、風疹の母子感染により、生まれた赤ちゃんに難聴や白内障、先天性心疾患などを起こします。2012~2013年の流行時には、45例の先天性風疹症候群が確認されています。ただ、これはあくまで報告数なので、軽症で先天性風疹症候群と診断されていない場合なども含めると、もっと多く発症していることが推測されます。45例の中では残念ながら、その後に命を落としたケースも複数あります。
 今年も既に報告がありますが、先天性風疹症候群の症状は出産後しばらくたってから気づくことが多いので、今後さらに報告数が増えていく可能性があるでしょう。
 妊婦の感染に厳重な注意が必要と聞くと、男性や子育て世代以外の人はあまり関係がないと思ってしまうかもしれません。しかし、妊婦と接する可能性があるすべての人が、風疹を予防することが、先天性風疹症候群を防ぐことにつながります。

――風疹の予防には、どのような対策が有効ですか?

 風疹の感染経路は咳(せき)やくしゃみなどによる飛沫感染なので、空気感染する麻疹に比べると、感染力は低いといえます。ただし、同様に飛沫感染するインフルエンザと比べた場合は、風疹の方が2~5倍感染しやすいといわれています。
 風疹は麻疹と同じように、ウイルス疾患ですが治療薬はありません。ですから、ワクチンでの予防が最も有効な対策となります。風疹のワクチンは、1回の接種で約95%、2回の接種で約99%の人が免疫ができるとされています。
 ただし、ワクチンを2回接種しても、十分な免疫がつかない人もいます。また、妊婦にはワクチンの接種ができません。インフルエンザのワクチンは、ウイルスの毒性を完全になくした不活化ワクチンなので妊婦でも接種できますが、風疹のワクチンはウイルスの毒性を弱めた弱毒生(なま)ワクチンのため、妊婦には接種できないのです。その意味でも、妊婦と接する可能性がある人が、ワクチンを接種して予防することが重要です。

◇ 30代以上の男性は特にワクチンの接種を
――特にワクチンを接種しておきたいのは、どのような人でしょうか。

 妊娠を希望している女性は、妊娠前にワクチンを接種しておくことが大切です。ただ、ワクチンの接種後2カ月間は、避妊の必要があります。妊娠前、妊娠中の女性と暮らす家族も、ワクチンを接種しておいてください。
 そのほか、風疹にかかったことがない人、かかったかどうか分からない人、ワクチンを接種したことがない人、接種が1回のみの人、ワクチンを接種したことがあるか分からない人も、接種しておくことが勧められます。
 自分が風疹のワクチンを接種したことがあるかどうかは、母子手帳での確認が確実です。確認できない場合は、図1の予防接種の状況と自分の年齢を照らしてみると参考になるでしょう。



――この図を見ると、1990年4月2日より前に生まれた人は、ワクチンの接種が1回か、未接種だということが分かりますね。

 さらに、風疹患者報告数(2018年9月5日時点)を見ると、男性では40代での発症が最多で、次いで30代、50代以上となっています。女性では20代の発症が最も多く、続いて30代が多く発症しています。その大半は、ワクチンの接種歴が不明か一度も接種したことがない人です。20代の女性については、図1と併せ見て「ワクチンを2回接種しているはずなのになぜ」と思う方もいるでしょうが、そのような世代でもすべての人が接種しているとも限りません。また、既にお話しした通り、ワクチン接種をしても十分に抗体のつかない人もいます。実際、図2を見ると、20代の女性にも、抗体を持っていない人がある程度いることが分かります。
 そうしたことがあるとはいえ、男性の方が女性より約4倍も多く発症しているので、ワクチンの接種が1回か未接種の30代以上の男性は、特に、ワクチンの接種が勧められます。

◇ 職場ぐるみでの予防が重要
――風疹が多く報告されている30~40代の男性といえば、子育て世代でもありますし、働き盛りでもありますね。

 その通りです。ですから、風疹で最も重大な問題となる先天性風疹症候群を防ぐためには、職場での積極的な予防が重要です。先天性風疹症候群を発症する確率が高くなる妊娠初期は、本人が妊娠に気づいていなかったり、周囲にはまだ妊娠を知らせずに働いていたりする場合もあるでしょうから、普段から予防に取り組んでおく必要があります。
 例えば、東京都では職場における「感染症対応力向上プロジェクト」を実施しており、その中には風疹の予防対策を推進する「風しん予防対策の推進」コースが設けられています。参加する企業が従業員の抗体(免疫)の保有状況を確認し、抗体を保有していない人には予防接種などを促します。参加企業は「協力企業」として、抗体保有率9割以上を達成した場合は「達成企業」として、東京都福祉保健局のホームページに企業名が掲載される仕組みです。

――そうした対策が企業やほかの自治体にも広まっていくといいですね。

 職場単位でできることはたくさんあります。例えば、ポスターや社内報などで風疹の注意喚起や予防啓発の情報を伝えたり、風疹の既往歴やワクチンの接種歴の確認を促し、抗体が十分でない場合は、ワクチンの接種を勧めたりする。風疹が疑われたり診断されたりした人が出た場合に、休みやすい環境づくりをしておくことも大切です。
 職場を休む期間に特に決まりはありませんが、一般的には学校保健安全法で定められた出席停止の期間に合わせ、「発疹が消失するまで」とされることが多いようです。実際に風疹にかかった場合は、医師の指示に従ってください。

――ワクチンの接種を希望する場合は、どのようにすればいいでしょうか。

 風疹のワクチンには、風疹(Rubella)の単独ワクチンか、麻疹(Measles)と風疹を合わせたMRワクチンがあります。そのほか、海外から輸入されたMMRワクチンもあります。MMRワクチンは、麻疹と流行性耳下腺炎(Mumps/通称おたふくかぜ)と風疹を合わせたものです。
 これらのワクチンの接種を希望する場合は、小児科を併設している医療機関や総合病院、小児科診療の可能なクリニック、トラベルクリニックなどに確認してみてください。また、最寄りの保健所に問い合わせてみるのもいいでしょう。
 麻疹の場合は2015年から、日本特有の麻疹が3年以上発生していない「排除状態」となっており、海外から持ち込まれる「輸入感染症」となっています。しかし、風疹はいまだに排除状態とはなっていません。今後も国内で発生し、拡大する可能性が十分ありますし、気づかないうちに妊婦にうつし、生まれてくる子供に影響が及ぶ可能性もあるので、ぜひ積極的に予防を心がけてほしいと思います。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

「コウノドリ」風疹エピソードを緊急無料公開!!

2018年10月11日 20時59分41秒 | 小児科診療
「コウノドリ」風疹エピソード

日本人みんなが共有すべき風疹がもたらす不幸「先天性風疹症候群」。
ぜひ、拡散してください。
期間限定です(10月11日~10月24日)。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

2017-18シーズンのインフルエンザ流行とワクチン有効性を総括

2018年10月11日 06時14分11秒 | 小児科診療
 アメリカにおける2017-18シーズンのインフルエンザ流行を総括する記事を紹介します。
 このシーズンは統計を取り始めてから最大の流行だったそうです。
 メインはH3N2(A香港型)で、入院患者が万人、死亡が8万人!?
 小児も180名死亡し、そのほとんどがワクチンを接種していなかった。

 印象に残るのが「6カ月未満の子どもにワクチンは接種できないが、妊婦がワクチンを接種すると胎児にも抗体が移行するため出生後に感染から守ることができる」と妊婦への接種推奨で締めくくっていること。
 日本ではこんな記事は書けないだろうなあ。

■ 昨シーズンはインフルで8万人が死亡、米で予防接種呼びかけ
CareNet:HealthDay News:2018/10/11
 昨年の冬(2017/18)のインフルエンザシーズンにインフルエンザによって命を落とした米国民は8万人と推定され、過去40年で最も死者数の多いシーズンとなったことを米国の公衆衛生当局が9月27日に明らかにした。
 昨シーズンには特に病原性が高い亜型であるH3N2インフルエンザウイルスが米国全土で猛威をふるい、米疾病対策センター(CDC)のデータでは死亡者数や入院者数が史上最多となった。米公衆衛生局のJerome Adams氏は「昨年はインフルエンザワクチンの接種率が低下し、インフルエンザに感染しやすい状態の人が多かったことも事態を悪化させた」と説明した。
 Adams氏ら公衆衛生局の関係者らは27日の記者会見で、自分や家族をインフルエンザ感染から守るために毎年ワクチンを接種するよう、米国民に対して強く呼びかけた。
 CDCのスポークスパーソンであるKristen Nordlund氏がCNNに語ったところによると、昨シーズンのインフルエンザやその合併症による死亡者数は8万人と推定されており、CDCが統計を取り始めた1976年以降で最も多かった。なお、それまでは5万6,000人が死亡した2012/13シーズンが最悪だったが、同シーズンも主に流行したのはH3N2インフルエンザウイルスだった。
 CDCの推計では、2017/18シーズンにはインフルエンザによる小児の死亡者数も180人と2012/13シーズンの171人を上回った。Adams氏によると、死亡した小児の大多数はワクチンを接種していなかったという。
 また、昨シーズンはインフルエンザによる入院者数も90万人と史上最多を記録し、病人で溢れかえった病院の様子がメディアでも報じられた。さらに、全ての年齢層で重症度の高さが記録された初めてのシーズンとなった。
 しかし、インフルエンザによる打撃を受けたにもかかわらず、米国におけるワクチン接種率は2年前の59%から昨シーズンには57.9%と1.1ポイント低下した。特に感染弱者であり、感染すると周囲にも感染が広がりやすい特定の年齢層で接種率が低下したことは状況を悪化させた。例えば、生後6カ月~4歳の乳幼児で接種率の低下がみられたが、「これらの年齢層の子どもは、それまで健康であったとしても病気になると重篤な合併症を発症しやすい」とAdams氏は指摘した。
 米シアトル小児病院の医師で、二児の母親でもあるWendy Sue Swanson氏も「低年齢児が感染すると、免疫系の働きが低下した祖父母などの家族間や学校で感染が拡大する可能性もある」と説明する。
 昨シーズンは妊婦のワクチン接種率も低下したが、米マサチューセッツ総合病院のLaura Elizabeth Riley氏は「妊婦は免疫が低下しているためインフルエンザに感染しやすい。また、妊娠中に高熱が続くと子どもに先天異常が起こる可能性が高まることが分かっている」と指摘する。Adams氏も、「6カ月未満の子どもにワクチンは接種できないが、妊婦がワクチンを接種すると胎児にも抗体が移行するため出生後に感染から守ることができる」と話し、妊婦に対しても積極的な接種を呼びかけた。


 世界の流行状況の総括も見つけました。
 上述のアメリカではA香港型が猛威を振るったとありますが、日本を含めた諸国ではB型がメインとあります。

 ワクチン有効性(VE, vaccine efficacy)についても言及し、「全年齢でA/H1N1pdm09とB型には良好」「成人に対するA/H3N2は低い」とのこと。つまり「小児に対するワクチン有効性はすべての型で良好」でした。
 しかしよくみると、「小児はすべての型で59%、A/H1N1pdm09: 78%、A/H3N2: 51%といずれも有意に良好なVE」と、他のワクチンと比較するとやはり低いことは否めません(麻疹や風疹のVEは95%ですから)。

■ 2017/18シーズンの北半球のインフルエンザ流行解析とVE ― WHO
月刊ワクチン情報:ワクチンラボ:2018.10.1
◇ 流行ウイルスの型・亜型
2017/18シーズンは、B型が欧州の大部分の国で優勢であり、カナダや米国では30~40%、中央アジアでは40~50%を占め、山形系統が優勢であったことが特徴的である。北米においては、A型ではA/H3N2が2シーズン連続で優勢で、これが重症化や流行の長期化をもたらした。

◇ 患者発生動向
北米地域:ILI†外来受診率は、カナダでは過去5シーズンの平均値とほぼ同等であったが、米国では19週にわたりベースライン値を上回り、ピーク値は2009年のパンデミック(以下、パンデミック)時に次ぐ高さであった。累積入院患者数(率)はカナダでは例年並みであったが、米国では過去6シーズン中もっとも高く、うち基礎疾患を有する者は成人で90%超、小児では50%超を占め、妊娠可能年齢の女性の約33%が妊婦であった。インフルエンザ関連死亡は、カナダでは65歳以上が大部分を占め、小児は少なかった。米国では、肺炎およびインフルエンザ関連死亡は連続16週にわたり閾値を超え、ピーク値はパンデミック以後2014/15シーズンを除き、最も高かった。小児死亡例の年齢中央値は7歳で50%が基礎疾患を有する児であったが、ワクチン接種率は25%未満であった。
†ILI:influenza-like illness(インフルエンザ様疾患)

欧州地域:欧州8カ国**では、インフルエンザによる入院は27,560例で、うち9,385例がICU入室となった。欧州全体で流行期に超過死亡が観察され、2014/15シーズンよりは低く、2016/17シーズンと同等であった。
**欧州8カ国:フィンランド、フランス、アイルランド、ルーマニア、スロバキア、スペイン、スウェーデン、英国

東アジア地域:中国南部では、ILI患者が過去3シーズンより多かった。香港では、インフルエンザ関連入院率が過去3シーズン中で高く、0~4歳児でもっとも高かった。韓国では、ILI患者は2016/17シーズンと同等で、モンゴルでは、肺炎による入院患者の割合は過去と同等であった。

◇ VE(中間報告)
VEはカナダ、米国、欧州から報告され、外来患者におけるすべての型・全年齢層のVEは、25~55%と幅があった。型・亜型別では、A/H1N1pdm09とB型には良好であった(表1)。小児はすべての型で59%、A/H1N1pdm09: 78%、A/H3N2: 51%といずれも有意に良好なVEであった。成人(高齢者以外)はすべての型で33%、A/H1N1pdm09では51~63%と良好であったが、A/H3N2では10~27%と低かった(表2)1)。

<文献>
1)WHO: Wkly Epidemiol Rec. 93(34): 429-444, 2018.


コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

5年後には郵送されてきたインフルエンザワクチンを貼るだけでOK。

2018年10月10日 10時08分12秒 | 小児科診療
 以前も取りあげた「貼るインフルエンザワクチン」。
 だんだん現実味を帯びてきました。
 
 「パッチ型インフルエンザワクチン」の記事を紹介します。
 現在のインフルエンザワクチンは皮下注射(諸外国では筋肉注射)ですが、これは痛い。
 でも開発中のパッチ型は痛みを感じない程度の小さな針(マイクロニードル)がたくさんついており、医療機関に行かなくても自分で貼るだけでOK。
 アジュバントも使っているようなので、有効率も高いと思われます。

 もし実用化されれば、インフルエンザシーズンの診療風景が変わりそうです。

■ 自分で貼るワクチンでインフル予防接種が可能に?
ケアネット:HealthDay News:2018/10/02
 インフルエンザの予防接種で病院を受診すると鼻水をすすり、くしゃみをする患者で溢れかえった待合室で呼ばれるのを待たなければならない。しかし、代わりにパッチ型のインフルエンザワクチンを自宅に郵送してもらい、自分でワクチンを接種できる日は近く実現するかもしれない-。米感染症研究所のDarrick Carter氏らは、そのようなコンセプトで微小な針を備えた絆創膏状のワクチンを開発し、その予備的な臨床試験の結果を「Science Advances」9月12日号に報告した。
 Carter氏らは今回、病院を受診しなくても自分で接種できるように、パッチ型の新たなインフルエンザワクチンを開発した。このパッチはマイクロニードルと呼ばれるごく微小の針を備え、これを通してワクチンが接種される仕組みになっている。同氏によれば、かすり傷や浅い傷を負うと皮膚表面の免疫システムが反応するメカニズムを応用することで、筋肉注射が不要となった。また、ワクチン抗原には、別の企業から提供されたウイルス様の粒子を産生するようにリプログラミングされた植物細胞を用いたという。
 さらに、Carter氏らは、今回のワクチンに使用した効果増強のために添加されるアジュバントの液状製剤を、ワクチンとともにフェレットに投与する実験を行った。その結果、1回のワクチン投与でフェレットを完全にインフルエンザ感染から守ることができたとしている。
 このパッチ型ワクチンの安全性を検証するために100人の健康な成人を対象に実施した臨床試験では、ワクチンの重大な副作用は認められず安全性が確認された。また、この臨床試験はヒトにおける有効性の検証を目的としたものではなかったが、ワクチン接種群では非接種群と比べてより強い免疫応答が示されたことが分かった。
 以上の結果を受けてCarter氏らは「このワクチンであれば郵送することもできるため、使用者は自分で皮膚に貼ってインフルエンザの感染から身を守ることができるだろう」と説明している。この臨床試験は概念実証試験の段階であるため、同氏らは今後、ヒトを対象に次の段階の臨床試験に進みたいとしている。同氏によれば、全ての臨床試験がうまくいけば5年以内にもワクチンは承認される可能性があると展望している。
 この試験には関与していない米ボゲス医療センターのDavid Davenport氏は、今回の報告を受けて「このワクチンは“ゲーム・チェンジャー”になるかもしれない」と期待を示す。同氏によれば、ニワトリの卵を用いた現行の手法はワクチンの大規模な製造には不向きだが、植物ベースであれば3カ月以内に大量生産することも可能だという。また、Carter氏らが開発したワクチンは郵送も可能で自分で接種できることから、「接種率の向上にもつながる可能性がある」と話している。
 なお、米疾病対策センター(CDC)の推計によると、米国で季節性インフルエンザの予防接種を毎年受けているのは国民の半数以下とみられている。

<原著論文>
Carter D, et al. Sci Adv. 2018 Sep 12.
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする