2024年夏、マイコプラズマが流行中です。
そしてマイコプラズマに有効な抗生物質は「マクロライド系」ですが、
この粉薬は苦いことで有名です。
製薬会社は粉にコーティングして苦みが出ないように加工していますが、
それでも後味に苦みが襲ってくるので、それを一度経験した子どもは次を拒否します。
私は薬を飲んだ後、さらに口の中を洗い流すイメージで水分を飲むよう指導しています。
それから苦い薬を飲むときの定番であるココアを推奨します。
その関連記事が目に留まりましたので紹介します。
どうやら酸性飲料(酸味のあるジュース)と一緒に飲むと、せっかくのコーティングが剥がれてしまうので苦みが増すようですね。
痰を切れやすくするカルボシステイン(=ムコダイン)は一緒に処方されることが多い薬ですが、この粉薬も産生のため、同じ理由で苦みが増すとのこと。
■ マクロライドの苦みと飲み合わせ
(2024/08/07:ケアネット)より一部抜粋(下線は私が引きました);
苦味をマスクしているコーティングが剥がれるからです。
一緒に内服する薬剤のpHにも注意が必要です。
小児の服薬指導において、「薬を飲んでくれない」ということは永遠の課題です。・・・マクロライド系抗菌薬などのように苦味が強い薬もあります。マクロライド系抗菌薬の苦味はキニーネに匹敵するとされていることから、各製薬会社は小児用の細粒にコーティングを施してあります。コーティングによって口腔内のpH(6.8~7.0)では溶出しにくく酸性である胃の中で溶出するようになっているのですが、酸性飲料などと一緒に内服するとコーティングが壊れやすくなること、マクロライド系抗菌薬は酸性条件下で溶けやすいことなどの理由から、薬本来の苦味が表在化して、「苦くなってしまった」と感じるようになります1)。
注意するポイントとしては「マクロライド系抗菌薬は去痰薬との相互作用にも注意する必要がある」が挙げられます。同時に処方されることがあるカルボシステインはpHとして酸性であることが多く、シロップだけではなくドライシロップや散剤に関しても同時に内服したときにマクロライド系抗菌薬が苦くなることがあります2)。また、製薬会社ごとにpHやコーティング方法が若干異なるため、苦味の強度は組み合わせによっても変わります。
<参考文献>
小児科医の堀向健太Dr.も記事を書いていました。
具体的な対策として、
・マクロライド系抗生物質を飲む際に、酸性度が強いモノは避け、酸性度が低いモノを選択する。
・薬と飲み物は直前に混ぜてコーティングが剥がれないうちに飲む。
ことを提案しています。
実はマクロライド系抗菌薬の中で「苦くなくて飲みやすい薬」が存在します。
ミオカマイシンという薬です。
でもあまり効かないので、使われなくなっています。
■ 流行中のマイコプラズマ。『抗菌薬が苦くて飲めません』という話が多いのはなぜ?対策は?
堀向健太:医学博士。大学講師。アレルギー学会・小児科学会指導医。
(2024/8/18:Yahoo!ニュース)より一部抜粋(下線は私が引きました);
・・・マイコプラズマへの抗菌薬は、『マクロライド系抗菌薬』が使用されます[1]。
しかし、外来では『苦くて飲めないです。どうすれば良いでしょうか…』という質問を受けることもあります。
もちろん、薬を飲まずに治療をすることは難しいです。しかし、その苦みがなぜ起こるのかを知っていると、対策が立てやすくなるかもしれません。
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マクロライド系抗菌薬の名前の由来は、「大きな(マクロ)」「ラクトン環(ライド)」という構造を持っていることから来ています。
マクロライド系抗菌薬の歴史は1952年にさかのぼります。
最初のマクロライド系抗菌薬であるエリスロマイシンは、フィリピンの土の中から発見されました。
最初のマクロライド系抗菌薬であるエリスロマイシンは、フィリピンの土の中から発見されました。
その後、現在の主力であるクラリスロマイシンやアジスロマイシンなどの改良された『誘導体』が開発されていきました。歴史のある薬ということですね。
マクロライド系抗菌薬は、細菌のタンパク質を合成する装置(リボソーム)に結合し、細菌のタンパク質を作ることを邪魔することで増えることを抑えて効果を発揮します。
しかし、マクロライド系抗菌薬には大きな課題があります。強い苦味があることです 。
この苦味の原因は、マクロライド系抗菌薬の構造にあります。
▶ マクロライド系抗菌薬の苦味は子どもが飲むことを難しくするため、コーティングなどの対策が取られています。
ラクトン環という、マクロライド系抗菌薬の『抗菌薬としての作用の元』でもある輪っか状の構造が、苦味の元となっているのです。
子どもは、錠剤やカプセルの薬を飲むことが難しい場合が多く、より苦みを感じやすい粉薬を飲むことになります。
さらに、子どもは大人よりも苦味に敏感であるため、マクロライド系抗菌薬の服用が特に難しくなりがちです。
そこで、この苦味問題に対して、製剤の段階から様々な対策が取られています。
その一つが、薬の粒子をコーティングする方法です。コーティングにより、マクロライドのラクトン環が直接舌に触れるのを防ぐことができるのです。
▶ マクロライド系抗菌薬を飲むときは酸性の飲み物を避け、直前に混ぜて服用すると良いでしょう
しかし、このコーティングには弱点があります。
酸性のものと接触すると、コーティングが溶けてしまいやすいのです。そのため、マクロライド系抗菌薬を服用する際は、以下の点に注意が必要です。
1)苦味を強める飲み物を避ける。
・ 柑橘系のジュース
・ スポーツ飲料
・ 乳酸菌飲料
・ ヨーグルト
これらの飲み物は酸性度が高く、コーティングを溶かしてしまう可能性があります。
2)苦味を緩和する飲み物を選ぶ。
・ 牛乳
・ プリン
・ 練乳
・ アイス(特にチョコレートアイス)
・ ココア
これらの飲み物は酸性度が低く、苦味を感じにくくします。
3)服用のタイミングを工夫する。
薬と飲み物は飲む直前に混ぜることが重要です。
長時間置いておくと、酸性度が低い飲み物でもコーティングが溶けてしまう可能性があります。
これらの対策を活用することで、マクロライド系抗菌薬の苦味を軽減することができるでしょう。
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