2020.7.22から「Go to キャンペーン」が始まります。
東京では1週間単位で新型コロナ陽性者が倍増して先週は300人/日レベルに達した今、タイミングが悪いのではないかという声があちこちで聞かれます。
一方で、ずっと我慢を強いられてきた観光業から
「もう限界、これ以上自粛が続くなら廃業せざるを得ない」
という声が上がり、政府は板挟みの状況下で苦渋の決断をしたわけです。
日本国民もそれはうすうす認識しています。
感染対策も重要だが、厳しい活動自粛が長期にわたると経済が破綻し、自殺者が出てくるかもしれない。
このジレンマに正解はあるのでしょうか?
参考に、世界の状況を見渡すと・・・
(経済対策>感染対策)アメリカやブラジルは今や感染拡大が止まらない悲惨な状況。
(経済対策<感染対策)中国・台湾では流行がコントロールされ経済が復興しつつあります。
(経済対策=感染対策)日本は微妙、収束のめどが立たず、経済も苦しい状況が続く。
こう見ると、やはり「感染対策を優先して流行をコントロールして初めて経済復興が期待される」と感じてしまいます。
しかしその状況では、いつまたクラスターが発生するかビクビクしながらの生活が長期間続くつらい条件付き。
たぶん、その国の市民は緊張感の続く生活に心が折れてしまい、他罰的になり、魔女狩りのような雰囲気になっていくことでしょう。
もしその間に、治療薬やワクチンが開発されれば、すべてが解決するのですが、現時点ではまだ見通しが立ちません。
特殊な例としてスウェーデンがあります。
壮大な社会実験として「集団免疫」を目指して緩い自粛と経済活動制限を続けてきたスウェーデンは、ある意味期待されてきた存在。
(経済対策>>感染対策)緩い対策のスウェーデンでは?
しかし現状を分析した最近の記事(⇩)では、
「経済を人命より優先したため、結局、両方が大きなダメージを受けた」
とマイナス評価されています。
▢ コロナ禍「経済優先」したスウェーデンの悲惨 死亡率が増え、経済も近隣国同様の状況に
欧州で新型コロナウイルスが出現して以来、スウェーデンは独自の社会実験で世界から注目されてきた。パンデミック中に政府がほとんど行動制限を加えず、通常の生活を続けるとどんなことになるのかは、スウェーデンを見ればわかる。
スウェーデン方式の成果はこうだ。まず死者数がロックダウン(都市封鎖)を実施した近隣諸国を大幅に上回った。そして経済も近隣諸国と似たようなダメージを受けている。
「本当に何のメリットもなかった」と語るのは、アメリカのワシントンDCに本部を置くピーターソン国際経済研究所のジェイコブ・カークガード上級研究員だ。「自ら傷口を広げただけで、経済的に何の得にもなっていない」。
◆ 健康を犠牲にしても経済は回復しない
スウェーデンの経験は、スカンジナビア半島から遠く離れた地域とも無関係ではない。新型コロナの感染が恐るべき速度で拡大しているアメリカでは、トランプ大統領に背中を押される形で多くの州がロックダウンを回避したり、時期尚早なタイミングで制限を解除したりした。職場や店舗、レストランに人々が戻れば、経済は回復すると考えたのである。
イギリスでは、自らもコロナに感染して入院したジョンソン首相が7月下旬、経済活動を通常の姿に近づけようとパブやレストランを再開した。
このような政策アプローチで暗黙の大前提となっているのは、政府には国民の生命を守るのと同時に雇用を守る責務があり、これらの間でバランスをとらなくてはならない、という発想だ。経済にとってプラスとなるのなら、ソーシャルディスタンス(行動規制)を緩めて国民の健康が多少犠牲になったとしても、その政策は正当化される、という考え方である。
だが、高い死亡率と他国同様の経済悪化というスウェーデンの悲惨な結果は、「国民の命か、経済か」という選択肢が間違っていることを示唆している。行動を規制しなければ、生命と雇用の両方が犠牲となりかねない。
スウェーデン政府は国民の良識を信じ、行動規制をほとんど加えなかった。レストラン、ジム、店舗、観光施設の営業は許可され、大半の学校が休校措置をとらなかった。デンマークとノルウェーはこれとは対照的に厳格なロックダウンを選択。大人数の集まりを禁止し、店やレストランも休業させた。
あれから3カ月以上が経過し、スウェーデンのコロナ死者数は5500人を突破した。アメリカの死者が13万人を超していることを考えれば、それほどひどい数字には見えないかもしれない。しかしスウェーデンの人口は、たったの1000万人なのだ。100万人当たりに換算すると、その死者数はアメリカを4割上回り、ノルウェーの12倍、フィンランドの7倍、デンマークの6倍にもなる。
◆ 今年は4.5%のマイナス成長に陥る見通し
スウェーデン方式の結果、死亡率が高まったことは何週間も前からわかっている。ここに来て新たに見えてきたのは、経済に隣国と同程度の打撃が出ているという現実だ。スウェーデンは経済活動に制限を加えなかったにもかかわらず、ビジネスは壊れ、景気が後退している。
スウェーデンの中央銀行によれば、同国経済は今年4.5%のマイナス成長に陥る見通し。従来の1.3%成長見通しから大幅に下方修正されている。5月の失業率も9%と、3月の7.1%から跳ね上がった。オックスフォード・エコノミクスは最近の報告書でこう結論づけた。「経済全体に打撃が広がっており、回復にはかなりの時間を要する。失業率も高止まりが続くだろう」。
これはデンマークがパンデミックで受けた打撃とほとんど変わらない。デンマーク経済は、同国の中央銀行によると、今年4.1%縮小する見通し。5月の失業率も5.6%と、3月の4.1%から悪化した。
要するに、スウェーデンは期待された経済的なメリットを得ることもなく、圧倒的に高い死亡率を抱え込んだことになる。
新型コロナは国境を越える。スウェーデン政府は国内経済を回す決断を下したが、企業はほかのあらゆる国々に不況をもたらしたのと同じ要因で行き詰まった。そして国民はウイルスに感染する恐怖から買い物を控えるようになった。こうした国民の行動は死亡率の上昇を防ぐほどの効果はなかったが、ビジネス活動の衰退を引き起こすには十分だった。
ここには、おそらく全世界に当てはまる教訓がある。ロックダウンなどの政策を経済悪化の原因と見なすのは短絡的にすぎるということだ。すべての元凶はウイルスそのものにある。アジアからヨーロッパ、南北アメリカに至るまで、パンデミックのリスクはビジネスを混乱に陥れ、政府の政策がどうであろうと人々はショッピングモールやレストランを避けるようになった。
スウェーデンも国際貿易における不測の変化から逃れることはできない。パンデミックが始まった以上、スウェーデンにも経済的なダメージが及ぶのは明らかだった、と前出のカークガード氏は指摘する。
「サプライチェーンが寸断され、他国の製造業が操業を停止すると、スウェーデンの製造業も停止した。これは完全に予測できた展開だ」(カークガード氏)
◆ 高齢者の買い物自粛が教えること
しかし死者数については、政府の対応次第で結果は変わっていたはずだ。
カークガード氏が言う。「スウェーデン政府には自らの方針を疑問視する声もなければ、対策を見直す意欲もなく、このまま行けば本当に手遅れになる。これは驚くべきことだ。なにしろ、政府の主張する経済的なメリットがまったく存在しないことが明らかになってから、かなりの時間がたっている」。
これに対しノルウェーは、厳しいロックダウンに踏み切ったのが早かっただけでなく、ロックダウンの緩和でも先行した。感染拡大の速度が落ち、政府の検査態勢も大幅に強化されたためだ。
今では、経済も一段と短期間での回復が見込まれるようになっている。ノルウェーの中央銀行によると、変動の激しい石油・ガス部門を除く本土経済は今年3.9%のマイナス成長となる見通し。ロックダウン期間中に示された5.5%のマイナス成長予想から状況は大幅に改善してきている。
コペンハーゲン大学(デンマーク)の研究者はスカンジナビア地域で最大級の規模を誇るダンスケ銀行のデータを用い、デンマークで経済活動が制限されていた3月中旬〜4月上旬の消費パターンを分析した。これによると、パンデミックの影響でデンマーク人の支出は同期間に29%減少したが、自由を謳歌していたスウェーデンでも消費支出は25%減っていた。
さらに驚くべきは70歳を超える高齢者で、この層ではデンマークよりもスウェーデンのほうが消費の落ち込みが大きかった。スウェーデンでは通常どおりの経済活動が維持されたことから、おそらく外出がことさら危険視される状況が生まれたのだろう。
(執筆:Peter S. Goodman記者)
各国政府には絶妙なバランス感覚が要求されているのですね。
今後、どう経過し、どう分析・評価されていくのか、注視していく必要があります。
しかしこの新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)は手強い相手です。
もし死亡率がもっと高ければ感染対策重視に舵を切りやすいのですが、高齢者以外は低いという微妙な立ち位置。
しかも無症状者からの感染が5割を占めるという、人間に気づかせずに広がる巧妙さ。
敵の首をじわじわと真綿で絞めていく生物兵器としては優秀です。
そんな視点から「中国の武漢の実験室で開発したものが漏れたのではないか」という説が浮上したのでしょう。