徒然日記

街の小児科医のつれづれ日記です。

先天性風疹症候群・その後

2016年06月29日 15時10分44秒 | 小児科診療
 2年ほど前に話題になった風疹流行と先天性風疹症候群(CRS)。
 追跡調査の結果、なんとCRSの2割の赤ちゃんが亡くなっていることが報告されました。
 本人たちには何の罪もなく、しかもワクチンで助けられた命であることを知る我々は、くやしくてなりません。

■ 先天性風疹症候群の子ども 死亡率20%超
2016.6.27:NHK
 平成24年から25年にかけての風疹の大流行で母親の胎内にいるときにウイルスに感染し、「先天性風疹症候群」と診断された子ども45人のうち11人が、相次いで死亡していたことが国立感染症研究所などの調査で分かりました。専門家は「死亡率が20%を超えるというのは衝撃だ。ワクチン接種を改めて徹底し、流行をなくしていくことが求められる」と話しています。
 国立感染症研究所などのグループは平成24年から25年にかけて起きた風疹の大流行で、母親の胎内にいるときにウイルスに感染し、耳や目、心臓などに障害が出る「先天性風疹症候群」と診断された子どもたちの追跡調査を進めてきました。
 その結果、「先天性風疹症候群」になった子どもは全国で45人に上り、このうち24%に当たる11人が心臓の病気や肺炎などのため、生後1年余りまでに死亡していたことが分かったということです。
また、死亡した11人以外についても詳しく調べたところ、「先天性風疹症候群」の主な症状として知られる心疾患や難聴、それに白内障以外にも、肝臓や脳などにさまざまな障害が出るなど深刻な症状に苦しむ子どもも多かったということです。
 国立感染症研究所の砂川富正室長は「死亡率が20%を超えるというのは衝撃で子どもたちの症状も深刻なものが多い。妊娠を希望する女性だけでなく周囲の男性もワクチンを接種し、風疹の流行をなくしていくことが重要だ」と話しています。
◇ 娘を亡くした女性は
 おととし生後4か月の娘を亡くした女性は妊娠の初期に、職場の同僚が相次いで風疹を発症していたといいます。女性は妊娠中、風疹の症状は出ませんでしたが、娘は生まれたとき、全身に出血斑があり、検査の結果、「先天性風疹症候群」と診断されました。
 女性は、子どものころ風疹のワクチンを1回接種していました。しかし、身近で風疹が流行したことで知らないうちに感染し、胎盤を介しておなかにいた娘も感染したとみられています。
 娘は、両耳が聞こえにくい重度の難聴であることが分かり、ミルクもなかなか飲めず、体重も増えていきませんでした。そして、生後2か月の時に高熱を出して入院。肺炎が急激に悪化し、生後4か月で亡くなりました。
 女性は「風疹さえはやらなければ、娘といまも一緒に生活していたはずで、ほかの人には同じ思いをしてほしくない。風疹は注射1本で防げるものなので、男性も含めてワクチンを接種してほしい」と話しています。
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HPVワクチン副反応はえん罪?

2016年06月29日 11時08分47秒 | 小児科診療
 先日扱ったHPVワクチンの副反応ねつ造データがメディアに取り上げられました。
 EBMという世界の最先端でしのぎを削る大学教授たちが、このような非科学的な行為に走ることが私には信じられません。今まで積み上げてきた業績がゼロになり学会から追放されてしまうのですから・・・よほどの外部圧力があったのでしょう。

■ 子宮頸がんワクチン、厚労省の副作用研究に「疑い」...信州大が調査へ
2016年6月28日 読売新聞
 信州大学は、子宮頸がんワクチンの副作用の仕組みなどを研究している厚生労働省研究班代表、池田修一教授(脳神経内科)の発表内容について、学内で調査することを決めた。
 発表は3月16日、厚生労働省内で池田教授が行った。自己免疫疾患を起こしやすいように遺伝子操作したマウスに子宮頸がんなど3種のワクチンなどを打ったところ、子宮頸がんを打ったマウスだけに脳を攻撃する異常な抗体が出来た、などと説明した。これに対して今月20日頃、外部の研究者から、「実験を行ったマウスは1匹ではないか」「実験手法やデータに疑いがある」などの指摘があった。


■ HPVワクチン研究に疑義 信州大が調査へ
2016.6.28:産経新聞
 厚生労働省研究班(代表=池田修一信州大教授)が行っている子宮頸(けい)がんワクチン接種後の障害に関する研究に疑義が寄せられたとして、信州大が事実関係を調査することが28日、大学への取材で分かった。研究不正防止の指針に基づき学内に予備調査委員会を設置し、本格的な調査が必要かどうかを判断する。
 研究班は3月、厚労省で「免疫異常を起こしやすいマウスにワクチンを打つと、子宮頸がんワクチンを打ったマウスの脳にだけ異常が現れた」とする研究結果を発表。しかし、研究デザインやデータの取り方について外部の研究者らから疑義が寄せられた。大学は近く調査を始め、必要があれば外部委員を含む調査委員会を設置する。


 こちらも外部圧力をうかがわせるニュースです;

■ 子宮頸がんワクチン調査 名古屋市が結果を事実上撤回
2016.6.26:NHK
子宮頸がんワクチンの接種後に出た体の痛みや記憶力の低下はワクチンによるものかどうか、全国で初めて大規模調査を行った名古屋市が、ワクチンを接種したグループとしなかったグループとの間に症状の差は無かったとする分析結果を事実上撤回し、今後、データの分析はしない方針であることが分かりました。
このアンケート調査は、去年、名古屋市が市内の中学3年生から大学3年生の女性およそ7万人に、体の痛みや記憶力の低下など24の症状の有無を尋ねたもので、子宮頸がんワクチンを接種したグループとしなかったグループとで症状の出方に違いがあるかを比較する全国初の大規模調査として注目されました。
名古屋市は、去年12月、2つのグループの間に有意な差は無かったとする見解を発表していましたが、今月出された最終報告書では、この見解を事実上撤回して調査の生データを示すにとどまり、今後、データの分析は行わない方針であることが分かりました。名古屋市は、12月のデータの分析方法に疑問の声が寄せられたためとしています。
薬の副作用の問題に詳しい京都大学の川上浩司教授は、名古屋市が独自に調査したこと自体は評価されるべきだとしたうえで、「専門家の間でもデータの分析のしかたで意見が分かれることもあるが、調査は7万人の市民に協力を求めたもので、市民がいちばん知りたい疑問に答えるべきではないか」と話しています。
ワクチンと症状との関係については、国も同様の調査を行っていますが、結果がいつ出るのか見通しは立っていません。
◇ 接種の積極的な呼びかけ中止して3年以上経過
子宮頸がんワクチンを巡っては、国が接種の積極的な呼びかけを中止して3年以上が経過する異例の事態となっています。
国は、呼びかけを再開するかどうか判断するため、全国の医療機関を通じて同様の症状が出ている患者の状況を確認し、ワクチンの接種と症状の因果関係を調べる調査を去年から始めています。しかし、現在は1万9000ある医療機関に対象となる患者がいるかを確認している段階で、患者の詳しい症状などを集めて最終的な分析結果をいつ出せるのか、見通しは立っていません。子宮頸がんワクチンを接種する人は、ピーク時の100分の1以下に減っている状況が続いています。
アメリカなどでは、病院のカルテの情報などを元にこうした調査を迅速に行える仕組みがあり、日本も同じようなシステムを一刻も早く導入すべきではないかと指摘する声が専門家から上がっています。


 これらをみていると、各メディアの微妙な立ち位置が見えてくるような気がします。
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ホタルがいなくなった。

2016年06月26日 10時05分06秒 | 日記
 昨夜、近くの川へホタルを見に行きました。
 中学生の頃は私たちの遊び場で、水中メガネ&ヤスで魚と突いて取った里川。
 岸辺の樹木に登り、つるでターザンごっこをした記憶もあります。

 でも、ホタルの気配さえ感じませんでした。
 昨年もそうでした。

 その前の年までは、多くはありませんがホタルの姿がありました。
 養殖ではなく、自然発生です。
 ネットにも載らないとっておきの場所だったのに。

 思うに、昨年行われた護岸工事のせいではないかと。
 安全と引き替えに、自然が失われてしまいました。
 残念です。
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医師も納得できる「子宮頸がんワクチン問題」の記事

2016年06月26日 06時24分40秒 | 小児科診療
 子宮頸がんワクチンに関する記事は玉石混淆で、「元横浜市立大学小児科教授・横田俊平氏」のコメントさえも第三者を納得させる科学的根拠が見つかりません。
 そんな中、医師の間で「この内容は信頼できる」と評価される村中璃子Dr.の記事を紹介します。

□ 「子宮頸がんワクチン問題」(WEDGE Infinity)

 賛成派も反対派も、この記事を踏まえた上で議論して欲しいものです。
 そうでなければ、耳を傾ける価値がないと思います。

<追記>
 上記の記事を評した記事を紹介します;

子宮頸がんワクチン研究班捏造問題を報じぬメディアの罪(2016/6/25:Japan In-depth)
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「ジカ熱」関連ニュース 〜 “虫除けスプレー”が変わる!

2016年06月25日 06時27分06秒 | 小児科診療
 以前「日本渡航医学会」に参加したとき、「アジアでは日本の虫除け剤は薬の濃度が低くて役に立たない、現地で買うべし」と聞いて驚いたことがあります。
 昨今、ジカ熱の話題で蚊対策が注目され、日本政府も重い腰を上げて動き始めたようです;

■ アース製薬、有効成分DEET濃度を30%まで高めた製品を開発へ
 製薬会社も厚労省も本気になった媒介蚊対策
 医療者やメディアが発信しなければならないこと

2016/6/23:日経メディカル) 勝田吉彰=関西福祉大学
 6月15日付で日本の蚊媒介疾患対策で大きなエポックとなるプレスリリースが出た。アース製薬が有効成分DEETの濃度を30 %まで高めた製品を開発するとともに、それに対して厚生労働省が医薬品製造販売承認の迅速審査を行うと通知したというものだ。海外製に見劣りすることなく、しっかり効果持続時間が確保され実用に耐える製品が日本国内でも販売される見通しが立ったわけである。が、同時に、我々医療側もしっかり発信していかなければと責任も感じることでもある。
 これまで、日本国内で発売されている昆虫忌避剤(虫よけ)は主要成分であるDEETが上限12%に規制されてきた。この濃度は肌に塗ったときの効果持続時間と相関し、12%ではおおむね2時間程度の持続時間になる。すなわち日本国内で販売されている虫よけでは2時間おきに塗り直さなければ効果が消失してしまう。このため、野外活動の少年たち(中高年たちも)は、塗り直しを忘れてしまいがちで、デングやチクングニヤ、ジカといった蚊媒介疾患に対して無防備になってしまうという問題があった。
 これは相当に深刻な事態で、筆者はいくつかのテレビ番組で、「日本のDEETは12%maxで2時間しかもたない。まずい」とか「自分用は調査研究でミャンマー行ったとき買い込んでくる」とか「2020年五輪を控えて何とかせにゃ厚労省」とか、いろいろ公共の電波でも訴えてきた。また一部の先進的なトラベルクリニックでは米国製を個人輸入して受診者に説明のうえ供給してきた。
 そうした障壁が確実に取り除かれ、他国並みに追いつこうとしているのは大変喜ばしいことだ。製薬会社も厚労省もあわせてやる気を見せた今、我々医療者、さらにメディアともども心しなければならないことがある。世間一般が正しくこの高濃度DEETを選択できるよう情報発信せねばならない。
 なぜか。これまで筆者が海外派遣者研修を担当してきたなかで、気になることがある。筆者は国際交流基金のプログラムで派遣前研修の講義を年3回ほど定期的に担当している。その派遣先はすべて東南アジアのデング熱などの発生国だから、当然媒介蚊対策も主要テーマの1つになる。
 虫よけについては「現地の空港に降り立ったところから蚊がいますから、日本で売られている薄いDEETも1本は買って行き機内持ち込みにすると良いです。しかし、それ以降は現地で高濃度DEETを買った方が確実に長持ちして身を守ってくれます」と強調している。そして筆者が(研究で通うたび)ヤンゴンで自分用に買い込んでくるオーストラリア製Bushman(DEET濃度80%)やタイ製Sketolene(DEET濃度20%)を見せて自分はこれを使っていると示している。



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日本脳炎ワクチンは生後6ヶ月から可能です。

2016年06月19日 20時10分00秒 | 小児科診療
 少し前に取りあげた日本脳炎ワクチンの接種年齢に関する話題です。
 当地域の予防接種担当者にも情報提供しましたが、何も反応はありませんでした・・・そんな折、千葉県が動き始めました。
 本日のNHKニュースより;

■ 日本脳炎 生後6か月から予防接種呼びかけ 千葉県
2016年6月19日:NHK
日本脳炎の予防接種を受ける前とみられる幼い子どもが、日本脳炎を発症するケースがここ数年、相次いでいます。ウイルスを媒介する蚊の活動シーズンを前に、3歳からが標準とされる接種の時期を大幅に早めて、生後6か月から受けるよう、医師の団体や自治体が広く呼びかける全国でも例のない取り組みが、千葉県で始まりました。
日本脳炎は蚊がウイルスを媒介する感染症で、突然の高熱や頭痛、まひなどの症状が出て最悪の場合死亡することもあり、特に幼い子どもでは後遺症が残るおそれが大きいとされます。ワクチンの予防接種は生後6か月から受けられますが、標準的には3歳からとされています。
国立感染症研究所によりますと、3歳未満で日本脳炎と診断された子どもが過去7年間で3人いて、このうち千葉県では去年、生後11か月の赤ちゃんが発症しました。
このため、千葉県の小児科医会や医師会はウイルスを媒介する蚊の活動シーズンを前に、接種の時期を大幅に早めて生後6か月から受けるよう自治体と連携して広く呼びかける取り組みを始めました。
厚生労働省によりますと、こうした取り組みは全国でも例がないということです。
千葉県小児科医会の佐藤好範会長は「日本脳炎には根本的な治療法がなく、ワクチンで予防するしかない。かかりつけの医師に早めに相談してほしい」と話しています。
◇ 日本脳炎 感染リスク高い地域は
国立感染症研究所は毎年夏に、豚が日本脳炎のウイルスに感染した割合を、都道府県ごとにまとめています。
去年夏のデータでは関東では千葉県と茨城県、中部・近畿の太平洋側の県、中国・四国の一部の県と、九州北部の各県で豚の感染率が8割以上に達し、人間への感染のリスクも高いとされました。
こうした感染のリスクが高い地域について、日本小児科学会は、ことし2月、生後6か月からワクチンの接種を始めるよう呼びかける提言をまとめていました。
◇ 乳幼児検診の場で説明
千葉県内では日本脳炎のワクチンの早期接種に向けて、自治体も独自の取り組みに乗り出しています。
このうち、旭市では生後6か月から日本脳炎のワクチンを接種できることを保護者に知ってもらおうと、乳幼児検診の場で保健師が説明を行っています。3歳未満の場合、ワクチンの量が通常の半分になるため、接種のミスを防ごうと、独自の問診票も作成しました。今後は、ウイルスを媒介する蚊に刺されないための対策も呼びかけることにしています。
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2016-2017シーズンのインフルエンザ・ワクチン株決定

2016年06月15日 09時29分00秒 | 小児科診療
 早くも来シーズンのインフルエンザ・ワクチン株が決定したというニュースが流れました。
 毎年この時期に、南半球の流行株を参考に選定されます。
 2015-2016シーズンに日本も3価から4価ワクチン(A型2株とB型2株を含む)に変更され、来シーズンも4価ワクチンですね。
 その内容は;

A型株
・A/カリフォルニア/7/2009(X-179A)(H1N1)pdm09
・A/香港/4801/2014(X-263)(H3N2)
B型株
・B/プーケット/3073/2013(山形系統)
・B/テキサス/2/2013(ビクトリア系統)


 ちなみに2015-2016シーズンの選定株は以下の通り;

A型株
・A/カリフォルニア/7/2009(X-179A)(H1N1)pdm09
・A/スイス/9715293/2013(NIB-88)(H3N2)
B型株
・B/プーケット/3073/2013(山形系統)
・B/テキサス/2/2013(ビクトリア系統)


 比較すると、A型のH3N2タイプが変更になったのかな?

 インフルエンザ・ワクチンの話題をもう一つ。
 データねつ造で話題になった「化血研」の熊本工場が熊本地震の影響でワクチン生産に支障を来し、そのほかの事情もあって、2016-2017シーズンは「プレフィルドタイプ(シリンジタイプ)が供給されない、バイアルのみの供給」との情報提供がありました。
 ちょっと現場が混乱しそうです。
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予防接種拒否は“育児放棄(ネグレクト)”として親権剥奪の司法判断

2016年06月13日 06時32分39秒 | 小児科診療
 予防接種拒否はネグレクト(育児放棄)のひとつ、と裁判所が判断した日本の事例を紹介します。

■ 乳児の接種拒否で親権喪失 家裁決定「子の利益侵害」
2016/6/8:共同通信
 九州地方の家庭裁判所が3月、乳児への予防接種を拒否した母親について児童相談所から「親権喪失」の審判申し立てを受け、「子どもの利益を侵害した」として認める決定をしていたことが7日、関係者への取材で分かった。家裁は、児相が昨年、母親の育児放棄(ネグレクト)により乳児を一時保護した経緯も重視。予防接種拒否の理由は医学・思想上の問題ではなく「児相職員への感情的反発」と認定した。
 親権喪失は、虐待など子どもの利益を害する行為について2年以内に改善が見込めない場合、無期限に認められる措置で、民法で規定されている。


 この事例はもともとネグレクトが問題視され児童相談所が介入していましたので、「予防接種拒否=ネグレクト」という短絡的な構図ではありません。
 しかし結果的には同じ状況になる「ワクチン反対という親のポリシーに基づく予防接種拒否例」は、どう扱われるのでしょう?

 子ども虐待は増え続けています;

■ 群馬県児相の一時保護所 定員超過が100日突破
2016/4/5:上毛新聞
 群馬県中央児童相談所(前橋市野中町)の一時保護所で、定員を超える子どもを保護する状況が続いている。2011年夏に定員を21人から36人に増やし、12~14年度は定員を超えた日はなかったが、15年度は2月末までに100日を突破した。虐待が疑われる事案の増加で、一時保護する子どもが増えているためだ。専門家は職員の増員など態勢強化が必要と指摘している。
 定員を超過した日が05~07年度に60日以上になるなど、定員超過が常態化したため、県は11年8月、新棟を建設して一時保護所の定員を15人増やした。12~14年度は定員超過日数はゼロだったが、15年度に入り状況が一変。多い日は40人の子どもが生活している。
 定員を超過した日は、1人部屋を2人で共有している。子どもがトラブルを起こさないよう、職員が時間外勤務で見守っているという。
 定員超過の背景には、虐待が疑われる事案の増加がある。15年に県警が受けた相談や通報は過去最多の186件に上った。児相が一時保護した人数は、12年度から4年連続で前年を上回っていて、15年度は2月末時点で465人となった。担当者は「保護が必要な子どもが増えている。命に関わるケースがあるので、定員オーバーだからといって断ることはない」と話す。
 施設の増設や職員の増員は今のところ検討されていないという。児童虐待に詳しい高崎健康福祉大の千葉千恵美教授は「難しい事情を抱えた子どもたちをよく観察し、心を込めてケアすることが望まれる。専門の職員を増やしたり、施設環境を良くすることが必要だ」と話している。
 【一時保護所】 児童相談所が保護した子どもを短期滞在させる施設。虐待される可能性がある子どもを保護したり、非行をした子どもに生活指導する。緊急性が高い場合、保護者の同意なしで保護できる。県内では中央児童相談所にしかない。


 その昔(約20年前)、虐待事例の主治医になったことがあります。
 児童相談所職員は、虐待事例を監視・介入かつ支援・サポートするという、敵と味方の両方の役割を担う複雑な仕事を担当しており、端から見ていても困難さが伺えました。当時既にアメリカでは、監視役と支援役は切り離されていました。
 この社説を読むと、日本の状況は改善されないようですね;

■ <社説>児相、介入に特化 子のために最善の対策を
2016/3/13:琉球新報
 厚生労働省の専門委員会は、児童相談所の役割を被虐待児の一時保護など強制措置を伴う「介入」と、一時保護した子どもを親元に戻す際の「支援」に特化する最終報告書をまとめた。SOSを発する子どもにとって最善の対策になるよう、報告書を踏まえ、国や各自治体は早急に児童福祉法の改正と実態に沿った施策を行ってほしい。
 全国の児童相談所が2014年度に対応した児童虐待の通告は約8万8千件で過去最多だ。1990年度の集計開始以来24年連続の増加で、初めて8万件を突破した。このうち県内は478件で過去最多だった。13年度の348件から37%増加した。
 最終報告書は、児相の負担を軽減し体制を強化するため、現在は都道府県や政令市にのみ設置が義務付けられている児相を、那覇市などの中核市や東京23区にも設置する。児相が現在担っている育成や養護、非行の「相談業務」は市区町村に移行させる。
 虐待の通告を受けた際の窓口を都道府県などに設置する機関に一元化し、緊急性に応じて警察や児相、市区町村に対応を振り分ける取り組みを試験的に実施するよう求めている。
 報告書の趣旨は理解できるが、現場の人手不足の解消や、専門知識を持つ人材の育成など多くの問題を抱えている。児相を拡大するために、心理学などを学んだ児童心理司や児童福祉司、幅広い事案に対応できる人材確保を急ぐべきだ。振り分けについては誰が、どのように行うのかという点を整理しなければならない。人口や財政、職員規模は市町村で異なるため、全国一律適用に向け財政措置なども今後、詰めなければならないだろう。
 報告書は児相が「介入」と「支援」に特化することを求めている。しかし一つの機関が強制力を伴って介入し親子を分離、その後親元に戻す支援をするのは無理があるとの指摘がある。欧米は別々の機関が担うという。児相の力を最大限に発揮できる役割分担について、なお検討が必要ではないか。
 虐待の背景として経済格差や家庭の孤立も指摘されている。特に県内の貧困状況は全国的に見ても深刻だ。家族への経済的支援と同時に、家庭が困った時に一声掛け支えられる地域力を高めたい。
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「かんの強い子」は「小児四肢疼痛発作症」という病気だった。

2016年06月03日 16時42分38秒 | 小児科診療
 癇の強い子どもは、発作的に手足が痛むために泣き叫ぶそうです。
 遺伝子解析で何でもわかってしまうこの時代。
 中学卒業頃には自然軽快していくらしい・・・「成長痛」と呼ばれてきた病態も含まれるのかな。

■ 幼少期の手足痛は遺伝子変異が原因 京大など研究チーム「小児四肢疼痛発作症」と命名
2016.5.26:産経新聞

 幼少期に手足の痛みなどの発作を起こす疾患の原因が、特定の遺伝子の変異にあることが分かったと、京都大や秋田大などの共同研究チームが突き止めた。患者の遺伝子を調べた結果、痛みに関連する「SCN11A遺伝子」に変異があることが共通していた。この研究成果を生かし、今後は疾患に効く鎮痛剤の開発などにつなげる。
 研究成果は米オンライン科学誌「プロスワン」に掲載された。チームは疾患の名称を「小児四肢疼痛(とうつう)発作症」と命名した。
 小児四肢疼痛発作症は、1~2歳ごろの小児期から、ひざやひじなど関節周囲に痛みを感じる病気。不定期に痛みが生じ、患者の中には不眠症になったり、学校を長期間欠席したりするケースもある。成人すると症状がなくなるという。
 研究チームは国内の患者23人の遺伝子を調査したところ、SCN11A遺伝子の変異を持つことで共通することが判明。患者の親や兄弟ら親族も同じ症状を体験した事例がみられ、遺伝が関係することも分かった。
 京大大学院医学研究科の小泉昭夫教授(環境衛生学)は「よく泣く子供は『疳(かん)が強い』といわれ、学童期の成長痛として見過ごされがちだった同症が、遺伝子診断で確認できるようになった。国内に患者が数多く存在する可能性がある」と話している。


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