徒然日記

街の小児科医のつれづれ日記です。

最近、大人の食物アレルギーが増えています。

2023年04月28日 06時31分08秒 | 小児科診療
これはアレルギー学会でも話題になっています。
従来、食物アレルギーは“子どもの病気”というイメージがあり、
「食物アレルギー診療ガイドライン」も小児中心の記述でした。

しかし、大人の果物アレルギーが増えてきて、
今まで「特殊なタイプ」に分類されていたこの病気が、
「もはや特殊ではない」と認識されるに至り、
小児と併記されるよう改定されたのです。
                     ⇩⇩⇩


先日のNHKクローズアップ現代で、
「増加する大人のアレルギー」を取り上げていました。

▢ サーファーと納豆? 食物アレルギーを引き起こす意外な組み合わせ

キーワードは「交差反応」。
これは、あるアレルゲンに反応がする体質になると、
それと似た構造のアレルゲンにも「間違って反応」する現象です。
つまり、「誤認識&誤爆」ということ。

有名なのが、花粉症と果物です。
花粉症患者が増えるとともに社会問題化してきました。

例えば「ハンノキ花粉」に反応するアレルギー体質の人は、
下記のようにいろいろな果物に反応して口の中がかゆくなります。



当院ではアレルギー検査を受けた子どもに、
上記花粉アレルゲンが陽性に出ると、
「将来、果物を食べると口の中がかゆくなるかもしれないよ」
と説明を追加しています。

ただ、これらのアレルゲンの特徴として、
構造が似ているけど加工や消化液で簡単に分解されてしまうため、
加工品を食べても無症状だったり、
食べて消化吸収された後、強い全身が起こることはまれなこと(ゼロではありません)。

詳しく知りたい方は、こちらを参考にしてください;


さらに番組では、意外な交差反応の例にも言及していました。


サーファーと納豆?
ペットと肉?
医療従事者とバナナ、アボカド?

一見、関係なさそうな2つ事例、
実は以下のアレルゲンの交差反応でつながっているのです。
自然界の不思議ですね。

以前、調べてまとめました。
より詳しく知りたい方は、こちらをお読みください;


元々の原因アレルゲンを避けることで、症状は徐々に軽くなることがわかっています。





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2023年春、スギ花粉飛散量は昨年の3倍(群馬県)でした。

2023年04月19日 07時16分48秒 | 小児科診療
今年のスギ花粉症はひどかった…
と昨年も書いたような気がしますが。

統計では昨年と比較して、
東京都では2倍、
群馬県では3倍、
飛散したそうです。

大量飛散の翌年は飛散量が減ることが多いので、
来シーズンは少し楽になるかもしれません。

当院では重症のスギ花粉症患者さんには、
「舌下免疫療法」という体質改善の治療を勧めています。
現在、数十人が治療中ですが、手ごたえは上々で、
今シーズンも皆さん症状が軽度で済んでいます。

ところがこの舌下免疫療法に異変あり!
なんと原料のスギ花粉が足りなくなって、
新規開始ができなくなる状況に陥りました。

▢  『シダキュアⓇスギ花粉舌下錠 2,000JAU』限定出荷に関する お知らせとお詫び

希望者が多く、需要と供給のバランスが崩れてしまったのですね。
今シーズンは新型コロナの影響で私が裏技的に処方している漢方薬も入手困難となり、
いろいろ想定外のことが起こります。

 今年の花粉飛散 群馬県内では去年の3倍に「症状つらい」も増加 民間気象会社まとめ
2023/4/18:群馬テレビ)より抜粋;
民間気象会社のウェザーニューズは、3月末までの花粉の飛散状況についてとりまとめ、中国四国地方から関東地方までの多くの地域でスギ花粉の飛散が終了したと発表しました。また独自の花粉測定器による調査の結果、東京では去年の2倍、群馬ではおよそ3倍の飛散量だったことが分かりました。
 ウェザーニューズの発表によりますと、群馬県を含む関東地方ではすでにスギ花粉は飛散のピークを越えていて、ヒノキの花粉についても3月の下旬をピークに減少をしており、今月末頃にはシーズンが終了するものと予想されています。 
・・・
 ウェザーニューズ独自の花粉測定器による観測では、3月末までの全国の花粉飛散量は昨シーズンのおよそ2.6倍だったことが分かりました。東北北部など昨シーズン並みととなったエリアもありましたが、徳島県など西日本の一部では7倍となった地域もありました。
・・・

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思春期ニキビは皮膚疾患であり、保険診療できます。

2023年04月18日 15時05分25秒 | 小児科診療
小児科医の私ですが、
小さい頃から通っていた子どもが思春期になり、
ニキビができてきて相談を受けることがあります。

小児科や皮膚科に縁のない人は、
「ニキビは市販薬で治療するもの」
「どうしようもなくひどくなったら皮膚科へ行こう」
というイメージを持っていると思われます。

実は小児科の当院でも保険診療で治療可能です。
通う手間はありますが、
市販薬より効果が高く、費用は安く、満足度は高いと思います。

数年前に、最近のニキビ治療について一通り調べてみました。
すると近年、ニキビ治療が大きく変化していることがわかりました。

昔のニキビ治療は抗生物質とイオウ剤しかありませんでした。
効果は弱く一過性であり、
正直言ってあまり手応えを感じませんでした。
赤ニキビが少しよくなると治療を休み、
するとまた出てきてまた治療、の繰り返しです。

2008年に変革者が登場しました。
その名は「ディフェリン®ゲル」。

それまでの赤ニキビや黄ニキビの化膿・炎症を抑える治療で終わらず、
“ニキビ肌を治す”ことができるようになったのです。
つまり、
「できたニキビを治す」から「ニキビができない肌にする」
ことが可能になりました。

これを機に、欧米から遅れること10年、
日本皮膚科学会では「尋常性痤瘡治療ガイドライン2008」を作成しました。

その後、同様の塗り薬が次々と登場しました;
2008年:ディフェリン®ゲル(成分:アダパレン)
2015年:ベピオ®ゲル(成分:過酸化ベンゾイル)
2015年:デュアック配合ゲル(成分:過酸化ベンゾイル+クリンダマイシン)
2016年:エピデュオ®ゲル(成分:アダパレン+過酸化ベンゾイル)

ガイドラインは更新を重ね、

さて、当院でも新薬を使ってのニキビ治療を始めました。
ただし、使うのは4つのうち「ディフェリン®ゲル」のみです。

他の新薬に入っている「過酸化ベンゾイル」は効果が早く優れた治療薬なのですが、
約3%にひどいかぶれ(接触皮膚炎)が発生し、
顔が真っ赤に腫れ上がることが報告されています。
そのような例に小児科医では対応しきれませんので、
手を出さないことにしました。

ディフェリン®ゲルは成分がアダパレンという薬で、
こちらは初期(使用開始後1-2週間)はヒリヒリ感が出るのですが、
保湿ローションを併用すればなんとか乗り気れるレベルです。

そして私は漢方薬を多用する珍しい小児科医であり、
例に漏れず、塗り薬と一緒に処方しています。

というか、当院に通院する価値はそこにあります。
逆に漢方治療を希望されない場合は、皮膚科の方がベターでしょう。

ただ、ニキビに使用する漢方薬は、
おしなべて“とても苦い”です。
炎症の熱を冷ます生薬は、みんな苦いのです。

「夏にビールが美味しい理由だよ」
と説明するのですが、
保護者の方は大きくうなずくものの、
子どもにはわかりませんよね。

実際にニキビ治療を始めてから数年経過しますが、
7割くらいの患者さんは手応えがあり、通院してくれます。
残りの3割は苦い漢方を飲めずに脱落した患者さんが多いですね。

ニキビに有効な漢方薬は1種類ではありません。
ニキビの状態と患者さんの体質で複数の方剤を使い分けます。

当院の漢方治療の方針とニキビ治療の具体的なことは、こちらをご覧ください。

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ヒノキ花粉飛散もピークアウト(2023/4/17)

2023年04月17日 06時59分11秒 | 小児科診療
たくさんの日本人を苦しめた春のスギ/ヒノキ花粉症、
4月中旬を過ぎてようやく先が見えてきました。

花粉の本格的な飛散終了、東京など広範囲でヒノキのピーク過ぎる
・・・
これまでの花粉の飛散状況等から検討した結果、4月14日(金)頃までに東京や大阪など関東から西の太平洋側を中心に広範囲でヒノキ花粉のピークも過ぎ、今年の本格飛散は終了したとみられます。



東京では2月中旬にスギ花粉のシーズンに入り、特に2月下旬から3月中旬にかけて気温の上昇や強風によって大量飛散する日がありました。
3月中旬になるとヒノキ花粉が徐々に増加し、4月上旬にかけてはヒノキ花粉が主役となって飛散量が増加。ただ、ヒノキ花粉のピークはスギほど長くは続かず、4月中旬頃からは大量飛散が見られなくなり、晴れた日でもやや多く飛ぶ程度となっています。
・・・
これらの状況を踏まえて、東京などヒノキ花粉の飛散は少なくなっており、花粉の本格飛散は終了したと見て良い状況です。
・・・
2022年と2023年の東京都の花粉飛散量の累計ウェザーニューズ独自の花粉観測機「ポールンロボ」による観測では、3月末までの全国の花粉飛散量は、昨年の約2.6倍でした。


西日本の一部は飛散量が昨年の7倍前後に増えているエリアがありました。東京都では飛散量が昨年の約2倍となっています。
・・・
花粉飛散ピーク表本州の内陸や山間部ではもう少し、花粉の多くなることがある予想です。
また、東京や大阪などでもやや多い程度の飛散はある見込みで、症状の重い方は引き続き注意が必要です。

では、スギ/ヒノキ花粉以降はどうなるか?
GWを終えても症状が残る人、症状が再度悪化する人は、
北海道ならシラカバ花粉症、
それ以外ならイネ科花粉症(カモガヤ、ハルガヤなど)の可能性があります。

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2023年5月から新型コロナの「隔離期間は5日間」へ、では濃厚接触者は?

2023年04月16日 19時12分57秒 | 小児科診療
2023年5月8日に、
新型コロナ感染症(COVID19)の隔離期間が7日から5日に短縮されます。
と聞くと、
「短くして大丈夫?」
と心配になりますね。

確か、当初10日間だった隔離期間が7日なった時も、
「短くして大丈夫?」
と話題になりました。

これは、武漢株→ アルファ株→ デルタ株→ オミクロン株という変異に伴い、
ウイルス排泄期間も変わってきたことが根拠となっています。

でも、7日間でも感染力はゼロではありません。
確か、まだ16%くらいの人が感染力を保持していたと記憶しています。

それでも短くできたのは、
ワクチン接種と感染対策が浸透したからです。

ワクチン未接種、かつマスク手洗いなしの状況では、
こうはできなかったと思われます。

今回、5日間で隔離解除になりますが、
「10日間は感染対策を続けましょう」
と呼びかけています。

それから、症状が続く場合はこの限りではありません。
「5日目に症状が続いている場合は、熱が下がり、痰や喉の痛みなどの症状が軽快して24時間程度が経過するまで 外出を控える」という条件もクリアする必要があります。
この場合の「症状」はインフルエンザの時の「発熱」だけではなく、
痰やのどの痛みなども含むことが特徴です。
熱が下がっても、咳が続いていれば当然、
隔離期間は延長されるのです。




・とくに発症後5日間が他人に感染させるリスクが高いことから、発症日を0日目(無症状の場合は検体採取日を0日目とする)として5日間は外出を控えること。
※この期間にやむを得ず外出する場合でも、症状がないことを確認し、マスク着用等を徹底する。
・5日目に症状が続いている場合は、熱が下がり、痰や喉の痛みなどの症状が軽快して24時間程度が経過するまでは、外出を控え様子を見ること。

・10日間が経過するまでは、ウイルス排出の可能性があることから、不織布マスクの着用や、高齢者等ハイリスク者と接触は控える等、周りの方へうつさないよう配慮する。発症後10日を過ぎても咳やくしゃみ等の症状が続いている場合には、マスクの着用など咳エチケットを心掛ける。  

では、濃厚接触者、具体的には感染者の家族はどういう扱いになるのでしょう。
なんと「隔離なし」です。

インフルエンザの時も本人は発症後5日間隔離ですが、
接触する家族全員隔離にはなりませんよね。
それと同じルールになります。
ただし、接触後7日間は感染対策(具体的にはマスク着用)が推奨されます。

5月8日を境に、ほかにどんなことが変わるのでしょう。
一覧表を見つけました。




この表を見て医療関係者の私は「?」と思うところがあります。
それは「対応する医療機関」が根拠なしに増えていることです。
新型コロナ関連の保険診療加算が消えていくため、
赤字覚悟でベッドを確保したり、
感染対策に注力する医療機関はむしろ減るのではないか、
特に入院を扱う病院レベルでは…と懸念しています。

それから群馬県では、
が公表されました。

小児科開業医の当院では従来から、
症状の長引く患者さんには漢方薬を中心に治療してきました。
なのでアンケートが来た時に「診療してます」とチェックしたところ、
当地域では当院一軒だけ、ということが判明して驚きました。
そうです、一般論として「手のかかることから人は手を引く」のです。


<参考>
■ 新型コロナの療養期間が短縮 なぜ「5日間」なのか? 現在の療養期間のまとめ
倉原優:呼吸器内科医
■ 新型コロナ、5類感染症変更後の療養期間を発表/厚労省
■ 感染症法上の位置づけ変更後の療養について
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春の花粉飛散はスギ → ヒノキへ

2023年04月08日 07時45分46秒 | 小児科診療
2023年春、スギ花粉がたくさんたくさん飛んだシーズン。
今年は例年の10倍以上飛散したそうです。
3月上旬は特に多く、
情報によると、3月8日の1日で、昨年の全シーズンと同じだけ飛散したそうです。
つまり、100倍ですね。

そのため、症状がひどい患者さんが多数受診されました。
「例年使っている薬を飲んでも効かない」
「いつもは市販薬でしのいできたが、今年はムリ」
という訴えが聞こえてきました。

医療側にも、今年は異変が起きました。
私は一般的な抗アレルギー薬に漢方薬を併用することで、
眠気の副作用を中和し効果倍増、
という戦略をとってきたのですが、
新型コロナのあおりで漢方薬が品薄になり、入手困難になったのです。
う〜ん、隠し技が使えず、じれったい(^^;)。
漢方治療を希望して来院された患者さんもガッカリして帰ります。

もう一つ、体質改善の治療法である舌下免疫療法薬「シダキュア®」も品薄になり、
新たに治療を始められなくなりました。
前代未聞!
こちらは、だんだん有名になってきた舌下免疫療法を希望される患者さんが増えて来たため、
需要が供給に追いつかなくなったのです。

さて4月に入り、飛散花粉はスギ → ヒノキへ移行しつつあります。

あなたのお住まいの地域の状況はいかがでしょうか。

ではヒノキ花粉はいつまで飛ぶのか?
こちらもウェザーニュースのサイトから;


北関東に住む私はスギ・ヒノキ花粉症の患者さんに、
「4月いっぱいはヒノキ花粉が飛ぶので、GWくらいには治まるでしょう」
と説明しています。

さて、ここでスギとヒノキの関係について書いておきます。

二つの花粉は似ているので、
スギに反応する花粉症患者さんはヒノキにも反応すると思ってください。
どちらの花粉に強く反応するかはケースバイケースです。
中にはヒノキ花粉飛散時期の方がつらいという方もいます。
症状はあまり変わらず、
「くしゃみ・鼻水・鼻づまり・目のかゆみ」
です。

東北地方ではヒノキ花粉は飛びません(上図)。
なぜか?
単純に「ヒノキがないから」です。

スギは本州ではどこでも植林されていますが、
ヒノキの植林は東北地方以北ではされてこなかったので。


あと1ヶ月弱、ガマンすれば新緑の爽やかな季節になります。
もう少しの辛抱です(と自分に言い聞かせてます)。


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