引き続きスギ花粉舌下免疫療法の話題を。
これは新しい治療法なので、調べているといろんな疑問が湧いてきます。
まずは製薬会社の用意したQ&Aを;
□ トリーさんのアレルゲン免疫療法ナビ(鳥居薬品)
□ 教えてドクター!花粉症のための「舌下免疫療法」(KYOWA KYORIN)
追加分として、私が感じた疑問点を発売元の鳥居薬品に質問して回答いただいた内容を提示します(灰色部分はわたしの“つぶやき”です);
Q. 長期間休薬した場合、再開時の方法として
①最初からやり直す
②中止時の量で続行
の2つに分かれるが、その期間の線引きは具体的に何日に設定すべきか?
A. 長期間の休薬期間に関しては、現在具体的な日数の規定・目安はない。
参考までにシダトレンの治験時において休薬した症例の事例を提示する。
<有害事象(副作用を除く)若しくはそれ以外の理由で2週間以上休薬した症例>
有害事象(副作用を除く)若しくはそれ以外の理由で2週間以上休薬した症例は9例(休薬期間:14~35日間)であった。この9例のいずれにおいても、維持期投与量(維持用量:2,000JAU/mL、1mL、1日1回)から医師の監督のもと再開したが、再投与による副作用は発現しなかった。
しかし長期間にわたる休薬後の再投与に係るデータは得られておらず、再投与時にアナフィラキシーが発現する可能性は否定できない。休薬後の再投与は、患者毎の休薬期間の長さや休薬の原因となった症状の種類や程度等も考慮の上で、医師の判断で再開することとなる。
従って、原則再開時は安全性を考慮し、初回投与時と同様に、増量期の用法・用量から医師の監督のもと再開することが推奨される。
また、上記については「維持期」で休薬した場合であり、増量期に関しては例示できる症例が存在しない。
自信を持って患者さんに指導できるデータがない・・・これって困りますねえ。
Q. 口腔内の副作用(舌下腫脹など)が発生した場合のシダトレン継続/中止の目安
A. 口腔内に副作用が発生した場合にシダトレンの服用を継続するか中止するかの目安はない。
患者さんの症状に合わせて、適宜継続・中止の判断すべし。
参考までにシダトレン第相臨床試験では、口腔内の症状は27件発現し、全て軽度~中等度だった。
その内訳は、24件は服用継続しその後回復、残り3件は休薬後再開している。口腔内27件の副作用発現から回復までの期間は、以下の通り。
2週間以内が12件(44.4%)
4週間以内では18件(66.6%)
なお、口内腫脹からアナフィラキシーを含めた他の副作用につながった例はない。
これも現場では困ります。でも、口内/舌下が腫れた例に治療を継続していても、一過性で消えてしまう確率が大、と理解しました。
Q. 旅行の際の注意点
A. 冷所保管(冷凍庫でも凍らない)が可能か確認、移動中は冷所保存を推奨するが異常高温でなければ失活しない。
25℃での安定性は、2,000JAU/mLボトル・パックは7日、200JAU/mLボトルは3ヶ月変化がない(規格内である)ことを確認済み。
増量期のボトル(10mL)はキャップがきちんと閉まっていることを確認し、できるだけ立てた状態で、外気の影響を受けないよう出来れば保冷バッグ等(可能であれば保冷剤も)に入れて持ち運ぶべし。
直射日光は避け、旅行先で出来るだけ早く冷蔵庫に保管する。維持期のパック(1mL)も同様。また、車内や屋外等の気温条件が過酷な場所に放置することは避ける。
冷凍庫に入れても凍らないそうです。でも、旅行の際は医療機関が近くにあるかどうかの確認も必要ですね。
Q. 将来錠剤が発売された場合、無条件に移行可能か
A. 未定(データがない)。
皮下免疫療法→ 舌下免疫療法への切り替えが安全かどうかのデータもないそうです。
Q. 1年目/2年目/3年目の有効率と、1年目/2年目に無効だった場合、それぞれ2年目/3年目以降に有効になる確率は?
A. 経年的な有効率は以下の通り;
寛解(無治療で無症状)1年目:2.3%、2年目:17%
有効(症状軽減)1年目:30%、60%
1年目無効→ 2年目は有効:40%(有効)
1年目無効→ 2年目も無効:50%(無効)
判定不能(統計学的有意差なし):10%
※ 3年目以降のデータはない。
Q. アナフィラキシーは添付文書によると「頻度不明」とあるが、実際の確率(海外報告でも可)は?
A. 日本での治験ではゼロ。世界的(経験は10年以上)には4例(死亡例ゼロ)。
この数字を見てちょっと安心(あくまでも「可能性はゼロではない」という説明が必要ですが)。
Q. シダトレン使用前後2時間は「激しい運動は控える」とあるが、自転車通学や学校の体育はどう判断すべきか。
A. 自転車通学/部活/朝練/体育は避けて時間設定すべし。
すると昼しかない? でも4時間目や5時間目に体育があるとダメ?・・・中高生は毎日続けるのが難しそう。
Q. シダトレン開始後に妊娠が判明した場合の措置と妊産婦へのシダトレン投与について
A. 妊娠中/授乳中の投与に関する安全性は確立していない。
(1) 妊娠中の投与に関する安全性は確立していない。
なお、アレルギー反応に伴って遊離されるヒスタミンが子宮筋収縮作用を有することが知られており、妊婦または妊娠している可能性のある婦人には、治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与する。
(2) 授乳中の投与に関する安全性は確立していない。
授乳中の婦人には投与しないことが望ましいが、やむを得ず投与する場合には授乳を避けさせる。
<参考>
本剤の臨床試験において2 例の被験者は妊娠のため本剤の投与を中止(投与244 日目及び372日目)したが、その後問題なく出産している。
Q. 開始後に妊娠が判明した場合の措置:中止か続行か
A. 中止を推奨。
一般的に減感作療法(アレルゲン免疫療法)は妊娠中には開始すべきではないとされる。しかし減感作療法(アレルゲン免疫療法)を実施中に妊娠しすでに維持療法期に達している場合などは、医師の判断により継続することもある1)。
文献 1)WHO見解書 アレルギー 47(8) 749-794 1998
添付文書上は「妊婦、産婦、授乳婦は禁忌ではなく慎重投与」という設定になっていますが、当院では無用の混乱を避けるため扱わないことにさせていただきました。
<追記>
Q. なぜ毎日やらなくてはいけないのか?
A. 治験前の臨床研究で、週1回では有効性が低く、連日投与に変更したら効果が増したため。
2005年、厚生労働省の指示により千葉大学耳鼻咽喉科で舌下免疫療法の臨床研究を開始し、その一つは2006~2008年にかけてランダム化プラセボ対照二重盲検比較試験として実施した。スギ花粉症患者103名を対象に、週1回、口の中にアレルゲンエキスを含み、2分間保持後吐き出す方法で、投与スケジュールは20JAU/mL、0.2mLから3週間かけて漸増し、4週目以降は週1回、2000JAU/mL、1mL投与とした。その結果、1シーズン目(2007年)は症状・薬物スコアに差は認められなかったが、第二シーズン目(2008年)はプラセボ群と比較して実薬群の方が症状・薬物スコアが有意に低下し、一定の効果があると考えられた。
そこで、より早期からの治療効果発現を期待し、週1回投与から連日投与に変更し、同様の試験を6ヶ月間実施した。第一シーズン目(2009年)の結果は、症状・薬物スコアに優位さは認められなかったものの、プラセボ群と比較して実薬群の方が改善傾向が見られた。
これらの結果を受け、製薬企業が現在認可されている治療デザインを採用し第III相臨床試験を開始することになった。
皮下注射法では安定期は週1回に減りますが、舌下免疫法では吸収量が少ないため連日投与が必要になるのでしょう。
これは新しい治療法なので、調べているといろんな疑問が湧いてきます。
まずは製薬会社の用意したQ&Aを;
□ トリーさんのアレルゲン免疫療法ナビ(鳥居薬品)
□ 教えてドクター!花粉症のための「舌下免疫療法」(KYOWA KYORIN)
追加分として、私が感じた疑問点を発売元の鳥居薬品に質問して回答いただいた内容を提示します(灰色部分はわたしの“つぶやき”です);
Q. 長期間休薬した場合、再開時の方法として
①最初からやり直す
②中止時の量で続行
の2つに分かれるが、その期間の線引きは具体的に何日に設定すべきか?
A. 長期間の休薬期間に関しては、現在具体的な日数の規定・目安はない。
参考までにシダトレンの治験時において休薬した症例の事例を提示する。
<有害事象(副作用を除く)若しくはそれ以外の理由で2週間以上休薬した症例>
有害事象(副作用を除く)若しくはそれ以外の理由で2週間以上休薬した症例は9例(休薬期間:14~35日間)であった。この9例のいずれにおいても、維持期投与量(維持用量:2,000JAU/mL、1mL、1日1回)から医師の監督のもと再開したが、再投与による副作用は発現しなかった。
しかし長期間にわたる休薬後の再投与に係るデータは得られておらず、再投与時にアナフィラキシーが発現する可能性は否定できない。休薬後の再投与は、患者毎の休薬期間の長さや休薬の原因となった症状の種類や程度等も考慮の上で、医師の判断で再開することとなる。
従って、原則再開時は安全性を考慮し、初回投与時と同様に、増量期の用法・用量から医師の監督のもと再開することが推奨される。
また、上記については「維持期」で休薬した場合であり、増量期に関しては例示できる症例が存在しない。
自信を持って患者さんに指導できるデータがない・・・これって困りますねえ。
Q. 口腔内の副作用(舌下腫脹など)が発生した場合のシダトレン継続/中止の目安
A. 口腔内に副作用が発生した場合にシダトレンの服用を継続するか中止するかの目安はない。
患者さんの症状に合わせて、適宜継続・中止の判断すべし。
参考までにシダトレン第相臨床試験では、口腔内の症状は27件発現し、全て軽度~中等度だった。
その内訳は、24件は服用継続しその後回復、残り3件は休薬後再開している。口腔内27件の副作用発現から回復までの期間は、以下の通り。
2週間以内が12件(44.4%)
4週間以内では18件(66.6%)
なお、口内腫脹からアナフィラキシーを含めた他の副作用につながった例はない。
これも現場では困ります。でも、口内/舌下が腫れた例に治療を継続していても、一過性で消えてしまう確率が大、と理解しました。
Q. 旅行の際の注意点
A. 冷所保管(冷凍庫でも凍らない)が可能か確認、移動中は冷所保存を推奨するが異常高温でなければ失活しない。
25℃での安定性は、2,000JAU/mLボトル・パックは7日、200JAU/mLボトルは3ヶ月変化がない(規格内である)ことを確認済み。
増量期のボトル(10mL)はキャップがきちんと閉まっていることを確認し、できるだけ立てた状態で、外気の影響を受けないよう出来れば保冷バッグ等(可能であれば保冷剤も)に入れて持ち運ぶべし。
直射日光は避け、旅行先で出来るだけ早く冷蔵庫に保管する。維持期のパック(1mL)も同様。また、車内や屋外等の気温条件が過酷な場所に放置することは避ける。
冷凍庫に入れても凍らないそうです。でも、旅行の際は医療機関が近くにあるかどうかの確認も必要ですね。
Q. 将来錠剤が発売された場合、無条件に移行可能か
A. 未定(データがない)。
皮下免疫療法→ 舌下免疫療法への切り替えが安全かどうかのデータもないそうです。
Q. 1年目/2年目/3年目の有効率と、1年目/2年目に無効だった場合、それぞれ2年目/3年目以降に有効になる確率は?
A. 経年的な有効率は以下の通り;
寛解(無治療で無症状)1年目:2.3%、2年目:17%
有効(症状軽減)1年目:30%、60%
1年目無効→ 2年目は有効:40%(有効)
1年目無効→ 2年目も無効:50%(無効)
判定不能(統計学的有意差なし):10%
※ 3年目以降のデータはない。
Q. アナフィラキシーは添付文書によると「頻度不明」とあるが、実際の確率(海外報告でも可)は?
A. 日本での治験ではゼロ。世界的(経験は10年以上)には4例(死亡例ゼロ)。
この数字を見てちょっと安心(あくまでも「可能性はゼロではない」という説明が必要ですが)。
Q. シダトレン使用前後2時間は「激しい運動は控える」とあるが、自転車通学や学校の体育はどう判断すべきか。
A. 自転車通学/部活/朝練/体育は避けて時間設定すべし。
すると昼しかない? でも4時間目や5時間目に体育があるとダメ?・・・中高生は毎日続けるのが難しそう。
Q. シダトレン開始後に妊娠が判明した場合の措置と妊産婦へのシダトレン投与について
A. 妊娠中/授乳中の投与に関する安全性は確立していない。
(1) 妊娠中の投与に関する安全性は確立していない。
なお、アレルギー反応に伴って遊離されるヒスタミンが子宮筋収縮作用を有することが知られており、妊婦または妊娠している可能性のある婦人には、治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与する。
(2) 授乳中の投与に関する安全性は確立していない。
授乳中の婦人には投与しないことが望ましいが、やむを得ず投与する場合には授乳を避けさせる。
<参考>
本剤の臨床試験において2 例の被験者は妊娠のため本剤の投与を中止(投与244 日目及び372日目)したが、その後問題なく出産している。
Q. 開始後に妊娠が判明した場合の措置:中止か続行か
A. 中止を推奨。
一般的に減感作療法(アレルゲン免疫療法)は妊娠中には開始すべきではないとされる。しかし減感作療法(アレルゲン免疫療法)を実施中に妊娠しすでに維持療法期に達している場合などは、医師の判断により継続することもある1)。
文献 1)WHO見解書 アレルギー 47(8) 749-794 1998
添付文書上は「妊婦、産婦、授乳婦は禁忌ではなく慎重投与」という設定になっていますが、当院では無用の混乱を避けるため扱わないことにさせていただきました。
<追記>
Q. なぜ毎日やらなくてはいけないのか?
A. 治験前の臨床研究で、週1回では有効性が低く、連日投与に変更したら効果が増したため。
2005年、厚生労働省の指示により千葉大学耳鼻咽喉科で舌下免疫療法の臨床研究を開始し、その一つは2006~2008年にかけてランダム化プラセボ対照二重盲検比較試験として実施した。スギ花粉症患者103名を対象に、週1回、口の中にアレルゲンエキスを含み、2分間保持後吐き出す方法で、投与スケジュールは20JAU/mL、0.2mLから3週間かけて漸増し、4週目以降は週1回、2000JAU/mL、1mL投与とした。その結果、1シーズン目(2007年)は症状・薬物スコアに差は認められなかったが、第二シーズン目(2008年)はプラセボ群と比較して実薬群の方が症状・薬物スコアが有意に低下し、一定の効果があると考えられた。
そこで、より早期からの治療効果発現を期待し、週1回投与から連日投与に変更し、同様の試験を6ヶ月間実施した。第一シーズン目(2009年)の結果は、症状・薬物スコアに優位さは認められなかったものの、プラセボ群と比較して実薬群の方が改善傾向が見られた。
これらの結果を受け、製薬企業が現在認可されている治療デザインを採用し第III相臨床試験を開始することになった。
皮下注射法では安定期は週1回に減りますが、舌下免疫法では吸収量が少ないため連日投与が必要になるのでしょう。