徒然日記

街の小児科医のつれづれ日記です。

新型コロナに有効な消毒液と方法を再確認

2020年11月22日 06時45分25秒 | 小児科診療
一時、消毒用アルコールが医療機関でも手に入らず、困る時期がありました。
現在は「医療機関に優先的に流通させる」という政府の方針で、在庫情報がメールで届くようになりました。
が、「配布」ではなく「流通」なので、流通価格のまま紹介されます。
これが結構高いんです。
新型コロナ騒ぎ以前の数倍のこともあり、患者数・収入激減の小児科医院では、ちょっと手が出しにくい。

一方、市販されている手指消毒剤は余っている様子。
ホームセンターなどでは、在庫品が並び、客は見向きもしません。

それらの品を手に取って成分表示を見ると、
「アルコール配合」
とかしか書いてありません。
医療機関で使用する消毒用アルコールは一般に濃度80%以上です。
ウイルスを除去するには少なくともアルコール70%以上が必要とされています。
たぶん、「アルコール配合」はそれより低いのではっきりと表示できないのでしょう。

医療機関で用いる消毒薬は主に次の三つです;
・消毒用アルコール(濃度80%以上)
・クロルヘキシジングルコン酸塩液
・次亜塩素酸ナトリウム

しばらく前、医療機関で用いる「次亜塩素酸ナトリウム」と類似した名前である「次亜塩素水」ももてはやされましたが、その後の検証で「高濃度でなければ有効ではない」と判断されました。

それから、消毒剤の「空気噴霧」。
ドアや窓の開け閉めがある開放空間では、噴霧しても限りなく低濃度となってしまい、無効です。
実験室のような密閉・閉鎖空間ではある程度有効かもしれませんが、その場合はヒトが吸入しても安全かどうかの検証が必要になります。

ずいぶん前から、首からぶら下げる消毒薬が「空間除菌」というキャッチフレーズで販売されていますが、このブログでの再三取り上げた通り、効果と安全性が確認できず消費者庁から何度も指導を受けています。

なんだか、混乱しますよね。
それらをまとめる記事が目にとまりましたので紹介します;

■ 新型コロナ、代替消毒方法として有効な製品は?
※ 下線は私が引きました


・・・次亜塩素酸水は、次亜塩素酸ナトリウムと名称は似ているが、全くの別物。食品衛生法では、塩酸または塩化ナトリウム水溶液を電気分解することにより得られる水溶液で、10~80ppmの有効塩素濃度を持ち、食品添加物(殺菌料)に指定されている(図2左)。
 実はこうした電解型の製法ではなく、次亜塩素酸ナトリウムを原料とし、酸を加えたりイオン交換などを行うことで酸性に調整した非電解型のものも、次亜塩素酸水として販売されている。これは、雑品であるため規制がなく、製法や原料、酸性度(pH)、有効塩素濃度などの表示がないものもあるのが実態だ。
 NITE(製品評価技術基盤機構)は電解型、非電解型の次亜塩素酸水で有効性を検証し、一定の条件下では有効と判断した(図2右)。だが、使用に慎重な意見もある。物理化学が専門の京都女子大学名誉教授の小波秀雄氏は「次亜塩素酸水はその組成からpHや濃度が不安定で、実際の使用時に期待した効果が発揮されない場合がある。いつ製造されたのか分からない商品を使用し、消毒した気になれば本末転倒だ」と指摘する。
 NITEも検証結果を踏まえ、次亜塩素酸水の使用方法、有効成分(有効塩素濃度)、pH、使用期限の表示があることを確認するよう求めている。

空間噴霧にエビデンスなし
 今回、NITEが有効性や安全性を示したのは、次亜塩素酸水を物品に使用した場合だ。しかし、インターネットで検索してみると、超音波加湿器などに入れて噴霧させ空間除菌をうたう商品が数多く存在している。さらにこうした加湿器を導入する保育施設や飲食店などが散見されている。
 小波氏は「そもそも消毒に使用する成分は吸い込んで身体に入ることは想定されていない。安易に化学物質の噴霧を行うと、吸い込んで粘膜などを痛める恐れがあり、かえって有害となる可能性がある」と話す。次亜塩素酸水に限らず、世界保健機関(WHO)は、「COVID-19について、噴霧や燻蒸による環境表面への消毒薬の日常的な使用は推奨されない」「消毒薬を人体に対して空間噴霧することはいかなる状況でも推奨されない」としている。
 小波氏は、「次亜塩素酸水について、確かに蛋白質や有機物を分解するためウイルスに対して有効性が示されたものもある。ただ有効であることと安全であることは別であり、正しい使い方をしなければならない」と強調する。

「どの製品が良いのか」と聞かれたら?
・・・NITEは、SARS-CoV-2に有効と判断した界面活性剤(表1)を含む洗剤のリストをウェブサイトで随時公開している(新型コロナウイルスに有効な界面活性剤が含まれている製品リスト)。例えば、住宅家具用洗剤のかんたんマイペットやスクラビングバブル、台所用合成洗剤のチャーミーマイルドなど具体的な商品名が挙げられており、役に立つ。



 こちらの記事には「アルコール消毒」の濃度について明記されていますね。
エタノール70〜95%で有効であることが知られているが、60%台でも一定の有効性があると考えられるとの報告もあり、70〜95%のエタノールが入手困難な場合には使用して差し支えない
 濃度非表示の製品は、公表するとまずいので、おそらく60%未満なのでしょう。
 ちなみに、飲料用のアルコールはエタノールですが、実験用のアルコールはメタノールであり、消毒には転用できません(危険です)のでご注意ください。

予防効果の表示には要注意
 消毒関連の製品に関して消費者が持つ疑問で多いのは、「除菌」や「抗菌」「消毒」などの表示についてだ。
 消毒は、菌やウイルスを無毒化することを示すが、他の用語の定義(表2)や違いも説明できるようにしておきたい。


 消毒、殺菌、滅菌は医薬品や医薬部外品でないと表示できない。医薬部外品は医薬品医療機器等法(薬機法)に基づく厚生労働省または都道府県知事の承認が必要で、規格および試験方法は厚生労働省令により定められる。安全性の審査は必須ではない。
 一方、除菌、抗菌は医薬品や医薬部外品でなくとも表示できるため、雑品の表示で使用されることが多い。雑品は薬機法による承認はなく、規格と試験方法はメーカーの独自基準により、安全性の審査は必要ない。
 雑品の中には、「新型コロナウイルスや菌を徹底除菌」「新型コロナウイルスにも効果」などSARS-CoV-2に対する予防効果を標榜するような商品もあり、問題となっている(図3)。消費者庁は景品表示法および健康増進法の規定に違反する恐れが高いとし、当該表示を行っている事業者などに対し、20年3月から改善要請等を行っている





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「こどもの血液型を調べたいのですが・・・」

2020年11月17日 15時37分11秒 | 小児科診療
という相談を時々受けます。
だいたい、集団生活を始めるときとか、そういう節目の時が多いですね。

以前は生まれた産科・産院で血液型を調べるのが一般的でしたが、
判定を間違う例が希にあり、離婚問題に発展したという事例もウワサで聞いたことがあります。

血液型を確定するには表試験と裏試験が必要なのですが、
生後1歳までは、お母さんからもらった抗体の影響で裏試験ができないため、
判定がグレーゾーンになることがあるのです。

そんな背景もあり、近年は産科・産院で血液型を調べなくなってきました。
それが上記の質問につながっています。

さて、質問に対する私の答えは、
「日本に住んでいる限り、血液型をあらかじめ知っておく必要性は少ないです」
「病院で輸血をする場合は、必ずそこで血液型を確認しますから」
「さらに輸血用血液と輸血をされる方の血液を混ぜて固まらないかどうか調べます」
「日本以外の医療事情が怪しい外国生活の予定があれば話が別ですけけど」
等々。
「国民皆保険が行き渡る日本に住んでいる限り、
あらかじめ血液型を知っておいて役に立つのは占いくらいです」
と。

同じ質問が朝日新聞の記事になっていたので、一部抜粋・引用しておきます;

■ 血液型 知らないと困る?

  Q  息子の血液型、知らないの。けがや病気で手術する時、困らない?
  ヨミドック  心配ないですよ。ケガや手術などで輸血する際は、同じ血液型の血液が使われます。医療機関が患者の血液型を検査します。名札にある血液型表記や、患者や家族の申告は参考程度です。
 違う型の血液を輸血してしまうと、赤血球が破壊されるなど、命に関わる副作用が起こりかねません。医療機関は、慎重を期して血液型は2回、時間を空けて調べます。輸血直前にも、輸血する血液と患者の血液を混ぜ合わせる試験を行い、血液型が合っているかを最終確認します。
  Q  何重にも調べるのね。
  ヨ  血液型は細かくみると、約300種類あるといわれています。輸血前に必ず調べるのは、よく知られているABO型とRh型の区別です。
 ABOは、血液中の赤血球の表面にある免疫に関わる物質「抗原」を表しています。A抗原がある人はA型、B抗原はB型、A、B両方の抗原があればAB型、いずれもない人がO型です。
 Rh型も、赤血球上の「D抗原」の有無を調べます。緊急時、検査をする余裕がない時は、国内では副作用が起こりにくいO型の血液が輸血されます。
   ふーん。ところで血液型は変わるって聞いたことがあるんだけど?
   白血病患者などが、血液細胞の元になる造血幹細胞の移植を受けた場合、提供者の血液型に変わります。記憶違いや、新生児期の血液型検査の結果が間違っていることもあります。
   間違っているって?
  ヨ  赤ちゃんの血液型を正確に判定するのは難しいのです。抗原やそれに対応する抗体が未熟なためです。血液型はおおむね1歳以降で確実に検査できます。
 血液型がわかっていても、医学的には特にメリットはありません。最近は、出生時に血液型を調べない産院が増えました。
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群馬県に多発した家畜盗難、はベトナム人犯罪グループの仕業だった。

2020年11月05日 06時10分52秒 | 小児科診療
しばらく前から、たびたびニュースで流れた群馬県の家畜盗難。
ようやく犯人がつかまりました。

一時期は「家畜の遺伝子を盗んで海外へ転売」と推測されていましたが、
蓋を開けると犯罪グループがSNSで食用に闇販売していたとのこと。

ああ、これでまた群馬県在住ベトナム人へ向けられる視線が厳しくなってしまいそう。
犯罪者は一部の人なのに。

家畜千頭を盗難…「群馬のボス」率いるベトナム武装集団の闇手口

 ベトナム人の窃盗集団による家畜盗難が相次いでいる。 10月26日、群馬県警は在留期限を超えたとして入国管理法違反で、自称カラオケ店店主レ・ティ・トゥアン容疑者(39)ら男女13人を逮捕した。彼らが住んでいた太田市内の貸家2棟から、約30羽分の冷凍鶏肉を押収。トゥアン容疑者は「群馬のボス」というアカウントを持ち、SNS上でベトナム人の仲間を募集していた。 
 さらに同県警は、10月28日にカオ・スアン・トゥン容疑者(27)らベトナム人技能実習生の男4人を屠畜場法違反で逮捕したと発表。4人は太田市内のアパートで、豚を食肉にする目的で解体していたという。 「2つのグループは協力しながら、家畜を盗んでいたようです。『群馬のボス』のSNSには、実習生4人が暮らすアパートや豚肉を焼く画像が載っていましたから。
 彼らは、夜になると北関東を中心に徘徊。家畜や果物を盗んでいたとみられます。監視カメラの映像を分析すると、家畜を運ぶ者、見張り役、運転手と役割が明確に分かれていたようです。 
 家畜の盗難は今年1月から目立つようになりましたが、被害が届けられたのは5月以降になります。中には、半年間で400頭の豚が盗まれた養豚場もある。警察は170人体制で、捜査に当たっていました」

(全国紙社会部記者)家畜の盗難被害は、今年に入り群馬、埼玉、栃木、茨城の4県で22件にのぼる。被害総額は3000万円以上。群馬県だけで豚719頭、鶏144羽、ナシやブドウなどの果物約9000個が盗まれた。

 容疑者の部屋から漂う異臭 「近隣住民は、逮捕されたベトナム人の住む住宅から異臭がしていたと話しています。注意しても日本語が通じないようだったとか。家の外で肉を焼き、バーベキューをすることもたびたび。普段は夏でも窓を閉め切り、室内が見えないようにしていたようです。 

 盗難の目的は、同胞への闇販売がひとつ。在留ベトナム人の数は、中国人、韓国人に次いで約33万人になります。とても強固なコミュニティを築いている。SNSなどによる連絡も密で、販売のマーケットが形成されているんです。今回もコミュニティを利用して、盗んだ家畜を解体し宅配便で日本に住むベトナム人に送っていたとみられています」(同前) 

 コロナ禍で働き口がなくなり、食うに困っている外国人労働者が増えている。外国人技能実習生のあまりにひどい待遇なども近年問題になっている。盗難事件には、こうした背景があることにも目を向けなければならない。 
 ただ、どうも本件は様子が違うようだ。警察が押収した中に、肉や果物の他にも危険物が混じっていたのである。 

「牛刀の他、モデルガンや金属バット、模造刀も押収されたんです。この容疑者たちは窃盗を繰り返すグループだっただけでない。トラブルになれば、モデルガンや金属バットで、養豚場のスタッフなど一般人に危害を加える恐れもあったでしょう。SNSを駆使し、見張り役など役割万端をするなど手口も巧妙。北関東の広い範囲に土地勘もあるため、バックに日本人がいる疑いも強くなっています」(北関東の地元紙記者)

  続発する家畜の盗難。今回逮捕されたグループは、氷山の一角なのかもしれない。

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