徒然日記

街の小児科医のつれづれ日記です。

秋の花粉症、始まる。

2011年08月26日 06時00分59秒 | 小児科診療
 8月下旬からくしゃみ、鼻汁/鼻閉、目の痒みを訴えて受診される患者さんがチラホラいらっしゃいます。
 実はこれ、秋の花粉症です。

<花粉症のカレンダー>
・春(2~4月)  ・・・ スギ・ヒノキ
・夏(5~8月)  ・・・ イネ科のカモガヤ・ハルガヤ
・秋(8~10月)  ・・・ 雑草のブタクサ・ヨモギ


 ブタクサ・ヨモギの花粉は遠くまでは飛ばないので、草むらに近づかなければそれほどひどくならないようです。ご注意ください。
 それから、スギ花粉が秋にも飛ぶことが近年判明しました。「春だけのはずなのに、なぜ秋にも同じような症状が・・・」という方は秋の花粉症とともにスギ花粉の飛散も疑った方がよいかもしれません。

 新聞記事が目に止まりましたので、提示しておきます;

秋の花粉症… ブタクサ、ヨモギでも発症(2011年8月25日 読売新聞)
 花粉症といえば春のスギがまず思い浮かぶが、別の植物の花粉も症状を引き起こす場合がある。これからは、ブタクサやヨモギといった草花の花粉症シーズン。だれもがいつ発症するかわからないだけに、秋の花粉症についても知っておこう。

 「小学4年生くらいから秋になると体調を崩し、風邪だと思っていました」

 千葉県船橋市の保健師、高橋友子さん(42)がブタクサの花粉症とわかったのは20歳の時。そういえば、自宅裏の空き地には雑草が茂っていた。同じころ、スギやヒノキの花粉が飛ぶ春にも症状が出始めた。高橋さんは「秋は春ほどひどい症状ではないが、マスクをして用心している」という。

 秋に花粉症の主な原因となるブタクサとヨモギはキク科の雑草で、ブタクサは特に関東地方に多いといわれる。例年8月下旬から花粉が飛び始め、9月中にピークを迎えて10月まで続く。

 千葉大耳鼻咽喉科・頭頸部腫瘍学教授の岡本美孝さんによると、地域差はあるものの日本人の1~2割程度がブタクサやヨモギの花粉に反応する抗体を持っており、そのうち一部の人が発症する。知らずに群生地に入って花粉を大量に吸い込み、顔が腫れ上がるなどのショック症状が出た例もあるので注意が必要だ。

 秋は、野山での紅葉狩りや河川敷でスポーツを楽しむ時など、花粉に触れる機会が増えがち。目のかゆみや鼻水など気になる症状があったら、医療機関で検査し、原因を知っておくことが大切だ。

 スギ花粉も、秋の飛散が最近注目されている。NPO花粉情報協会によると、10月半ばから12月上旬くらいまで観測され、日によってはブタクサやヨモギをしのぐほど。春ほど量は多くないが、連日飛ぶようなことがあると、症状が出る人もいる。

 同協会事務局長の佐橋紀男さん(東邦大理学部訪問教授)が、船橋市で毎年行っている調査によると、秋にスギ花粉の飛散が多かった翌年は、春の飛散数も多くなる傾向にある。佐橋さんは「地球温暖化の影響か、秋でも気温が高くなる日があり、いわゆる狂い咲きのような形で花を咲かせてしまうことが増えたのではないか」と話す。

 症状が重く生活に支障が出る場合は、薬を使った治療がある。春のスギ花粉症と同じで、抗ヒスタミン剤の服用が主となる。

 ブタクサやヨモギの花粉症患者の中には、特定の食べ物で口にかゆみを感じる口腔アレルギー症候群を発症する人もいる。メロン、スイカ、セロリ、ニンジンなどが原因で起きる。のみこむとショックを起こす場合もあるので、かゆみを感じたら無理に食べてはいけない。火を通して食べられるものは通せば、症状は出ないといわれている。

 岡本さんは「ブタクサやヨモギは花粉の飛散距離が数十メートルと短いので、一番の予防法は近づかないこと。それでも症状のひどい人は、早めに受診して治療を受けてほしい」としている。
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手足口病流行、対策は?

2011年08月25日 07時36分02秒 | 小児科診療
 前にも話題にしました(7月8日「西日本で手足口病が流行」)が、今年は手足口病の当たり年のようで、何回か新聞記事になっています。

 小児科医の間で話題になっているのは「非典型的な手足口病」。
 本来の手足口病の皮疹は手掌・足底に水疱を作る(水ぼうそうの水疱より小さめ)のですが、今年のそれは手首・肘・下腿・膝など、手足そのものに分布する傾向があり、体にも出ることがあり、皮疹の程度と広がりが目立つのが特徴です。また、手足末端の皮疹がひどいと治ってから数週間後に爪の変形が出ることも報告されています(3~6ヶ月で元に戻ります)。
 もうひとつ、手足口病にしては高熱が出やすいのも非典型的です。

 非典型的なのは原因となるウイルスの種類が異なるため、と推測されています。
 手足口病の原因ウイルスは1種類ではなく、複数存在します。主なものはコクサッキーウイルスA16、他にA4,5,9,10, B2,5、エンテロウイウルス71型等々(これらは「エンテロウイルス」というグループに属します)。
 今年の流行株はここに入っていない「コクサッキーA6」がメインらしい。このウイルスはヘルパンギーナという夏風邪の原因にもなり得ます。
 実際に患者さんを診ていると、初診では「ヘルパンギーナ」と診断した子どもが、3日後にきたときには「手足口病」と云わざるを得ない症状に変化することが何回かありました。同じウイルスならオーバーラップしても不思議ではなく、頷けるところです。

 さて、この手足口病、感染対策はやっかいです。
 口内炎がある時期は飛沫感染がメインですが、実は原因となるエンテロウイルスはお腹の中(消化管)で増殖してから全身に症状を出すタイプ。発熱・皮疹などの症状が治まった後も数週間はお腹の中に居座るのです。つまり、ウンチの中に排出されると云うこと。ウンチをした後の処理・手洗いをしっかりしないと感染が広がってしまいます。
 このような特徴があるので、とくに保育園では感染対策に困難を極めます。保育士さんが一生懸命に感染対策に精を出しても、その傍らで当の子ども達はじゃれ合い、体をすり合わせて遊ぶので限界があります。
 お父さん・お母さん、「○○ちゃんにうつされた」「保育園の感染対策がなっていない」とクレームをつけるより、保育園に預けている限り「風邪はもらってもしょうがない」と開き直るくらいの覚悟が家族には必要ですよ。幸い、重篤な合併症の報告は今のところ耳に入ってきていません。
 もちろん、保育園における感染対策を十分に行った上での話ですが。

★ 当院HP「風邪」の「感染症と隔離について」「夏風邪」の項目も参考にしてください。

手足口病 注意呼びかけ…「手洗い、うがいを」(2011/08/24:読売新聞)
 「手足口病」が今夏、大流行している。都内では8月初旬、1医療機関あたりの患者数が過去10年で最多となり、多摩地区でも7月下旬から8月上旬に、全7保健所で警報発令基準を大幅に上回る患者数となった。都は注意を呼びかけているが、保育施設や教育現場などからは「感染拡大は防げない」と嘆く声も聞かれる。
 八王子市内にある保育園では、7月20日頃から感染者が出始め、約2週間で1、2歳児クラスに通う園児全12人が感染した。女性職員(48)は「今年は要注意の年」と話す。

 感染児が触ったオモチャ、友だち同士で触れ合ったりしたことによる接触感染とみられる。この保育園では送迎時に、子どもたちの手洗い・うがいを徹底するよう保護者に伝えた。

 都健康安全研究センター(新宿区)疫学情報室の杉下由行・研究員は「大流行の原因は不明」としつつも、「今年のウイルスの型は、1週間程度で発熱や発疹が治まるはず」と説明する。

 予防策について、都福祉保健局は「手洗いはもちろんだが、飛沫(ひまつ)感染を防ぐために、くしゃみやせきがある場合はマスクを着ける。感染者とのタオルの共用もやめた方がいい」と助言する。

◇ 出席停止規定なし 感染拡大の懸念

 幼稚園や小学校などに適用される学校保健安全法施行規則では、風疹なら「発疹が消失するまで」、水ぼうそうなら「すべての発疹がかさぶたになるまで」、出席停止とするなど、感染防止の規定がある。しかし、手足口病は、主に乳幼児がかかるため、出席停止などの明確な規定がない

 しかも、熱が下がった後も2~4週間は、ウイルスが体内に残るため、多摩地区のある保健所職員は「流行するのも当然のことだ」と話す。新学期からの感染拡大を懸念し、「解熱後少なくとも2、3日は自宅で静養し、登園・登校させる際は、感染拡大を防ぐ努力を」(府中市)と保護者に訴える自治体もあるが、保育園を利用する家庭では長期療養が難しいケースが多く、八王子市の保育園職員は「感染拡大を防ぐのは難しい」と頭を抱えている。
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画期的な抗ウイルス薬「DRACO」登場

2011年08月24日 06時22分10秒 | 小児科診療
 細菌(肺炎球菌やヒブなど)をやっつける抗生物質は多々ありますが、ウイルス(インフルエンザやノロなど)をやっつける抗ウイルス薬は数種類しか存在しません。
(例)抗インフルエンザ薬、抗ヘルペスウイルス薬

 しかし今回、画期的な抗ウイルス薬が開発されたというニュースが流れました。なんでも「二本鎖RNA」というウイルスしか作ることのできない蛋白を探し出してやっつけてくれるという優秀な警察のような薬らしい。
 今までの抗ウイルス薬は1種類のウイルスしか対応できませんでしたが、今回の薬は複数のウイルスに有効であることが大きな違い。実用できたなら、すごいことです。

※ ウイルスにはRNAを持たないDNAタイプというのも存在し、残念ながらこちらには無効でしょうね。

■ 複数のウイルスに効く新薬開発(2011.8.23:毎日新聞)

Image courtesy Frederick A. Murphy, CDC
 人間や動物の細胞に感染するさまざまなタイプのウイルスを探し出して殺してしまう新しい薬が発表された。11種の哺乳類の15種類のウイルスを殺せるという。冬の鼻風邪の原因ウイルスから命に関わる病気を引き起こすウイルスまで、1つの薬で幅広いウイルスに対する効果が示されたのは初めてのことだ。

 研究論文の共著者で、マサチューセッツ工科大学(MIT)リンカーン研究所および同大学比較医学部門に所属するシニアスタッフ科学者であるトッド・ライダー(Todd Rider)氏は次のように話す。「数十年前の抗生物質の発見と製造は、細菌感染の治療法に革命をもたらした。今回の発見が、同じように、ウイルス感染の治療法に革命をもたらすことを期待している。この治療薬は、風邪やインフルエンザのウイルスから、HIV、肝炎ウイルスなどのより深刻な病原体、さらにはエボラや天然痘などもっと致死率の高いウイルスまで、すべてをカバーする」。

◆打ち倒せないエイリアンのようなウイルス

 細菌感染に対しては数多くの治療薬があるが、ウイルスと戦える薬はほとんどない。これまで開発されてきた抗ウイルス薬は、1種類のウイルスだけを標的とする非常に限定的なものだ。しかしウイルスは簡単に変異し、その薬に対する耐性を獲得してしまう。そこでライダー氏らは別のアプローチを試みた。体内に自然に存在する防衛メカニズムを使って働く新薬を作り出したのだ。

 ウイルスは、「いわば映画『エイリアン』に出てくるエイリアンのように」生きていると、ライダー氏は言う。「細胞に入り込み、細胞内部で自己複製し、ついには細胞を食い破って」殺してしまう。

 ウイルスは細胞を乗っ取る際に、長い二本鎖RNAと呼ばれる複雑な核酸を作り出す。これがウイルスの化学的活動をコントロールする。人間の健康な細胞は、このような二本鎖RNAを作らない。

 人間の身体には、これを利用してウイルスに対抗する防衛システムが備わっている。ウイルスの二本鎖RNAに嵌り込むタンパク質を作り、ウイルス自体が自己複製できないようにしてしまうのだ。ところが、多くのウイルスは進化して、こうしたタンパク質を無効にしてしまう。

◆2つの武器を組み合わせた新薬

 ライダー氏の研究チームは、体に自然に備わった防衛タンパク質と、細胞の自殺スイッチを入れる別のタンパク質とを組み合わせた薬を開発した。人間のすべての細胞にはこのような自殺スイッチが付いている。このスイッチは普通、細胞がガン化し始めたときに入るとライダー氏は説明する。

 ペンシルバニア州にあるバックネル大学の分子ウイルス学者マリー・ピゾーノ(Marie Pizzorno)氏は、この薬を神話に出てくるケンタウロスにたとえる。「(ケンタウロスの下半身の)馬の部分にあたるのは、人間が通常作っているタンパク質の一部で、ウイルスが作る長い二本鎖RNAを認識する機能を持つ。(上半身の)人間の部分は、細胞死のプロセスを開始するものだ」。

 DRACOと名付けられた新薬は、体内で長い二本鎖RNAを含む細胞、つまり確実にウイルスに感染している細胞を探す。そして、感染した細胞を見つけたら、その細胞に自己破壊命令を出す。

 人間の体が自分からこの2種類のタンパク質を組み合わせることはないため、最も適応性の高いウイルスでも、薬として組み合わされたこのタンパク質の裏をかくことはできないだろうとピゾーノ氏は話す。ピゾーノ氏はこの研究には関与していない。

 研究チームを率いたライダー氏によると、この薬は、体内で二本鎖RNAを見つけなかったときは最終的に消えてしまい、副作用は残らないという。

◆風邪の治療薬ができるのは10年先

 これまでのところ、この薬は人間を含む11種の哺乳類の細胞で、15種類のウイルスを殺すことができ、しかも毒性を示さないことが確認されている。15種類の中には、デング出血熱やH1N1型の豚インフルエンザを引き起こすウイルスが含まれる。致死量のH1N1ウイルスを注射したマウスは、この薬で100%治癒した。

 現在ほかのウイルスを使ったマウスの実験が行われているが、さらに大型の動物で効果と安全性が確かめられたら、アメリカ食品医薬品局(FDA)が人間の臨床試験を承認するだろうとライダー氏は話す。それでも、「薬局でこの薬を買えるようになるまでには、少なくとも10年はかかる」という。

 このようにまだ先は長いとはいえ、この新薬は有望だとバックネル大学のピゾーノ氏は話している。
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「プロバイオティクス」の話題2つ

2011年08月23日 07時13分37秒 | 小児科診療
 「プロバイオティクス」とは腸内細菌を元気にすることにより健康増進を期待する医学分野です。わかりやすい例で云うと、ヨーグルトを食べると健康になるということ。
 最近2つの記事が目にとまりましたので紹介します;

R-1乳酸菌入りヨーグルトでインフルエンザ感染率に劇的変化(2011.8.12 産経新聞)

 特定の乳酸菌が入ったヨーグルトを長期間摂取したところ、インフルエンザの罹患率が大幅に下がったという調査結果が明らかとなった。専門家は「免疫力を高めるナチュラルキラー細胞が活性化された」とみており、簡単にできる病気の予防法として注目されそうだ。

 調査結果は今月9日に東京都内で行われたマスコミ向けセミナーで、有田共立病院の井上文夫院長(63)が発表した。井上院長らのグループは、昨年9月7日から今年3月18日まで、佐賀県有田町の小中学校で「1073R-1乳酸菌」(R-1乳酸菌)が入ったヨーグルト飲料(112ミリリットル)1本を児童・生徒(計1904人)に継続的に飲んでもらった。

 インフルエンザが流行する冬季(昨年10月~今年3月)の感染者数を集計したところ、感染率は小学生では0・64%、中学生は0・31%だった。佐賀県平均は小学生4・37%、中学生が2・57%で、隣接する自治体と比較すると、有田町の小学生は10分の1以下の感染率だった。

 井上院長は「R-1乳酸菌の摂取で、インフルエンザにかかりにくくなる可能性が示唆された。個別にアンケートを取ったが、便通や鼻炎が改善し、風邪にもかかりにくくなったという意見もあった。人口流動の少ない町ぐるみの調査結果は全国的にも珍しい」と話している。

 セミナーでは、日本の免疫学の第一人者で順天堂大医学部の奥村康特任教授(69)も講演した。奥村教授は「人体にはナチュラルキラー細胞(NK細胞)があり、ガンやウイルスを叩く、お巡りさんのような存在となっている。加齢やストレスで活性が弱まり、病気にかかりやすくなる」と説明。井上院長らの調査を「R-1乳酸菌でNK細胞が活性化された可能性がある。ヒトでの乳酸菌摂取とインフルエンザ感染抑制の関係が初めて分かり、われわれが行ってきた動物実験の結果にも合う内容」と評価し、「R-1乳酸菌を使用したヨーグルトは、社会の第一線で働く人やお年寄りへの活用も期待できるのでは」と話した。


★ より詳しい内容はこちら「ヨーグルトでインフルエンザ感染率が大幅に低下」(日経トレンディネット)

 インフルエンザワクチン接種率など、他の因子は解析に入っていないようですが、感染率が1/10へ減少した事実は驚きです。
 今年のインフルエンザ対策の一つとして話題になりそうですね。

ビフィズス菌「LKM512」摂取による寿命伸長効果を発見(2011/08/22:ケアネット)

 協同乳業株式会社は17日、同社の松本光晴主任研究員らが、(独)農業・食品産業技術総合研究機構・生物系特定産業技術研究支援センター「イノベーション創出基礎的研究推進事業」の平成21年度課題「健康寿命伸長のための腸内ポリアミン濃度コントロール食品の開発」(研究代表者:同氏)の研究において、プロバイオティクス ビフィズス菌「LKM512」の摂取により、マウスの寿命伸長効果が得られることを発見したと発表した。
 今回の研究は、プロバイオティクスビフィズス菌「LKM512」を摂取し、腸内細菌にポリアミンを生成させることで、老年病の原因である慢性炎症を抑えることが可能になるという仮説を検証するために実施した。実験は、10ヶ月齢のマウス(ヒト換算:30-35歳)を用い、LKM512投与、ポリアミンの経口投与、生理食塩水との比較試験の形式で行った。その結果、LKM512は、大腸内のポリアミン濃度を上昇させることで、大腸バリア機能が維持され、抗炎症効果が得られ、寿命を伸長させることが明らかになった。一方、ポリアミンの経口投与でも一定の寿命伸長効果はあったものの、LKM512と比較すると弱いものだった。今回の研究成果は、カロリー制限以外の方法で、マウスの寿命伸長効果が得られることを証明した数少ない成果となっている。
 なお、同研究結果は、米国オンライン科学誌「PLoS ONE(プロスワン)」で8月17日に公開された。


 昨今、抗生物質の乱用とそれに起因する耐性菌発生が社会問題になっていますが、腸内細菌の善玉菌までも殺してしまう抗生物質の影の部分を検証する必要がありそうです。
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「茶のしずく石鹸」事件の続報

2011年08月20日 06時37分25秒 | 小児科診療
 「茶のしずく石鹸」によるトラブルが拡大しています。

 業者の対応が後手に回り不十分だったことが問題視されていますが、私の視点から見たポイントは石鹸を使って肌が荒れるだけではなく、全身の小麦アレルギーを発症すること。この現象を専門用語では「経皮感作」と呼びます。小麦を食べたり、小麦を食べた後に運動をすると強いアレルギー症状であるアナフィラキシー・ショックを生じる例も出てきています。

 従来、乳幼児期の食物アレルギーの発症は「経母乳感作」や「経胎盤感作」が原因であると考えられ、妊娠中のお母さんの食事制限が有効であるかどうか検討されてきました。しかしなかなかよい結果が得られず、世界的にも「妊婦の食事制限は子どもの食物アレルギー発症を減らす効果はなく、必要ない」という論調に落ち着いています。

 そして最近注目されてきたのが乳児早期の湿疹。湿疹によりバリア機能が落ちているとそこから食べ物が皮膚を通して吸収され、食物アレルギーを発症する可能性が高いこと(つまり経皮感作)がわかってきたのです。

 例えば、ピーナッツをたくさん食べたお母さんから生まれた子どもより、お母さんは食べないけど兄弟達がたくさん食べて周りにピーナッツの粉がたくさんある環境で育った子どもの方がピーナッツアレルギーの発症リスクが高かったということ。

 食物アレルギーを心配される家庭では、食事に気を遣う前に、まず皮膚のケアが重要ということになります。


拡大する「茶のしずく石鹸」アレルギー被害 重症例も相次ぎ集団訴訟の動き(2011.8.14:産経新聞)

 「美肌効果がある」として通信販売で大ヒットした「茶のしずく石(せっ)鹸(けん)」をめぐり、昨年までの商品に含まれていた小麦由来成分によるアレルギー被害が拡大している。販売元の「悠香(ゆうか)」(福岡県大野城市)が5月に自主回収を始めてから、全国の消費生活センターに寄せられた被害相談は400件を超え、重症例も相次いだ。同社の注意喚起が不十分との指摘もあり、大阪などでは被害対策弁護団が発足、集団訴訟も視野に実態調査に乗り出した。

◇ 一時意識不明も

 厚生労働省によると、原因物質の可能性があるのは、茶のしずく石鹸に含まれていた保湿成分「グルパール19S」。小麦に酸を加えた「加水分解小麦」と呼ばれる原料の一種だ。
 グルパールは他の加水分解小麦と比べ分子サイズが大きいといわれる。サイズの大きい物質のほうが免疫反応を引き起こしやすいため、利用者の皮膚などから体内に吸収された際に小麦アレルギーを誘発。その後、パンやうどん、パスタなどの小麦製品を食べると、アレルギー症状が出るようになったとみられている。
 国民生活センターなどによると、茶のしずく石鹸によるアレルギー症状には顔や目の回りのかぶれといった皮膚障害のほか、全身のかゆみや呼吸困難など、重篤な症状となるケースも少なくない。兵庫県赤穂市の女性が重体になるなど、急性アレルギー反応(アナフィラキシー)を発症して一時意識不明になった人も複数いるという。

◇ すでに昨夏には指摘

 被害の多発を受け、悠香は昨年12月以降、一切の小麦成分を茶のしずく石鹸から排除。今年5月20日には、旧製品を自主回収すると発表した。すでに約80万個を引き取り、8月末を目標に未使用分の回収を終えたい考えだ。
 一方で、「もっと早く対応できたのでは」と同社の姿勢を疑問視する声も。回収が発表されるまでアレルギーの原因に気付かず、症状を悪化させた人も相当数に上るとみられるからだ。
 同社がグルパールの問題を把握したのは、いつだったのか。医療関係者の間では以前から茶のしずく石鹸に起因するアレルギーが疑われ、昨年7月時点で「グルパールでアレルギー反応が出た」と、同社に指摘した専門医もいたという。
 だが同社がグルパールの使用をとりやめ、別の加水分解小麦に切り替えたのは約2カ月が過ぎた9月になってから。その間、利用者への注意喚起はなされず、販売自粛も行っていない。
 同社の担当者は「当時は原因が断定されたわけではなかった」と説明。昨年10月以降はダイレクトメールなどを通じ、「アレルギーへの注意を呼びかけていた」と話す。

◇ 集団訴訟を検討

 被害の実態を解明するため、大阪弁護士会は今月1日、緊急の電話相談会を開催。100件を超える申告が寄せられ、全身症状を訴えた人が約3分の1に上った。
 大阪、東京などではすでに被害対策弁護団が発足。大阪弁護団の日高清司弁護士は「悠香による注意喚起の仕方に問題がある」と指摘する。返品・交換を受け付ける悠香の窓口に、なかなか電話がつながらないという不満もあったという。
 弁護団は、いったん小麦アレルギーになると、茶のしずく石鹸の使用をやめても、パンやうどんを食べられなくなる被害が続くことも重視。集団訴訟に向け、利用者の詳しい症例や購入経緯を分析していく方針だ。

 【用語解説】茶のしずく石鹸 悠香が奈良県内の業者に製造を委託し、販売している石鹸。茶葉から抽出したカテキン成分などを配合し、シミや美白に効果があるとされる。60グラムで1個1980円と高価だが、累計で約5千万個を販売する大ヒットを記録した。女優の真矢みきさんを起用したCMでも話題となったが、現在は放映を自粛しているという。
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「アウトレット渋滞」の軽井沢

2011年08月17日 05時50分30秒 | 旅行
 お盆の夏休みを利用して1泊2日の家族旅行へ行ってきました。
 場所は3年連続の軽井沢。
 軽井沢プリンスのコテージは開放感があって、食事もおいしくて、女性もアウトレットでの買い物三昧ができ、満足度高し。

 ただし、このアウトレットがくせ者です。
 お盆週間は夏物在庫一掃セールを行うので、買い物客がふだんにも増して関東圏から押し寄せてくるのです。
 そのため、午前中は軽井沢に入る道が渋滞し、午後~夕方には出る道が渋滞することをタクシーの運転手さんが教えてくれました。
 案の定、8/15に軽井沢へ入るときは上信越自動車道の碓氷・軽井沢インターチェンジ付近まで渋滞が及んでいました。

 さて、今回は南軽井沢のプチ美術館巡りを楽しみました。
 「絵本の森美術館」「エルツおもちゃ博物館」「ペイネ美術館」等々。
 ペイネ美術館では、かわいいカップルの複製画を購入してきましたので、いずれ待合室に飾りたいと思います。



 この辺りの風景は何となく見覚えあるなあ、と思ったら、四半世紀前の学生時代に毎年テニスの大会で通った場所の近くでした。懐かしさがこみ上げてきて、青春を完全燃焼させた(?)テニスコートと宿泊先の旅館を訪れて写真をパチリ。



 コテージの夜は半袖では涼しくて、長袖長ズボンという出で立ちで眠りました。

 翌日はアウトレットでの買い物。
 10時開店なのに勘違いして9時過ぎにたどり着いてしまい、しかし開店前なのに既に人がたくさんいて驚きました。
 スターバックスコーヒーにはなんと行列が!
 サッサと買い物を済ませて、お昼前に軽井沢を後にしたところ、渋滞知らずでちょっと拍子抜け。
 車の車外温度表示は軽井沢では27℃でしたが、帰路の途中からグングン上がって35℃。
 また酷暑の北関東生活が始まります(涙)。
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子どもの夜尿症

2011年08月15日 07時31分57秒 | 小児科診療
 夏休みや春先に相談の多い夜尿症。共同通信に記事をみつけましたのでご紹介します。

 まずは私の診療経験から;
 治療開始の目安は小学校入学前後でしょうか。
 軽症例は生活指導のみでよくなることがありますが、中等症~重症例では実は薬物による治療をしても改善・消失させるのは難しい。
 従来日本で行われてきた薬物療法(三環系抗うつ薬、抗コリン薬)の効果は今ひとつで、有効とされるホルモン療法は適応患者さんが限定されます。
 というわけで、治療する医師側が無力感に悩まされる病気でした。

 そんな折、近年「アラーム療法」が注目されてきました。欧米では以前から行われていた治療法ですが、日本では「夜起こさない方が治りがよい」という考え方が主流であり、あえて起こすアラーム療法とは考え方が逆なので導入が遅れた経緯があります。アラーム療法は夜尿症タイプに関係なく60~70%の有効率を示し、これは私の経験からすると驚きの数字です。
 当院HP内「夜尿症」もご参照ください。
 下記記事はアラーム療法について触れていない点がちょっと残念;


夜尿症、目指せ早期治癒 薄い「病気」との認識 心の発達妨げる恐れ(2011.8.9:共同通信)

 幼いころに誰もが経験するおねしょ。しかし、5歳を過ぎても週に3回以上繰り返す場合は「夜尿症」という病気だ。大半の子どもは成長とともに自然に治るが、治癒が遅れれば、健全な心の発達を妨げる恐れもある。病気という認識が薄く放置されがちだが、専門医は「適切な生活指導や投薬などで治癒を早められる。ぜひ、受診してほしい」と呼び掛けている。

▽アンバランス
 「夜尿症は5歳児の15%、10歳児の5%にみられる。15歳では1%に減るが、成人まで持ち越してしまう人も0・5%ぐらいいる」。日本夜尿症学会理事長の金子一成・関西医大 小児科教授はこう解説する。
 金子教授によると、夜尿症のベースには、眠りが深すぎて、尿意を感じても目覚めない覚醒障害がある。そこに、夜眠っている間に作られる尿の量と、尿をためるぼうこうの容量とのアンバランスが加わると夜尿症が引き起こされる。
 「育て方が悪かったと自分を責めるお母さんがいるが、科学的には関係ない。逆に言えば、育て方や子ども本人の自覚をいくら改めても、夜尿症は治らない」と金子教授は指摘する。
 正常な人の場合、夜間は抗利尿ホルモンがたくさん分泌され、尿量は昼間の50~60%に減る。一方、昼はぼうこうを収縮させている副交感神経の働きが夜には弱まり、ぼうこう容量は1・5~2倍に増える。排尿で安眠が妨げられないよう体が備えた絶妙な仕組みだ。
 
▽生活指導
 こうした調節機能が働かないのが夜尿症で、大きく3タイプに分けられる。まず、抗利尿ホルモンの分泌が夜になっても増えず、多量の尿が作られてしまう「多尿型」。二つ目は、尿量は少ないのに、夜間もぼうこうが小さいままで尿があふれ出てしまう「ぼうこう型」。最後が、多尿とぼうこうの容量不足が同時に起きる「混合型」で、最も重症のタイプだ。
 治療は三つのうちのどのタイプかを見極め、それぞれに適した生活指導を行うことが第一歩になる。多尿型の場合、夕食時以降の水分を制限し、尿の排出を遅らせる塩分やタンパク質は昼間に摂取するよう心掛ける。ぼうこう型では、排尿をできるだけがまんして、ぼうこうの容量を増やす訓練をする。
 「症状が軽ければ、生活指導だけで治るケースもある。効果が十分でなければ、薬物治療など次のステップに進む」と金子教授は説明する。

▽薬でピタリ
 2年前に金子教授が診た女児(11)は、毎日おねしょが続いていた。水分を制限したり、夕食時の塩分摂取を控えたりしたが改善せず、修学旅行を前に悩みは深まっていた。検査の結果、多尿型と判明し、金子教授は抗利尿ホルモンの点鼻薬を処方した。おねしょはピタリと止まった。
 4年前に来院した男児(6)も、おねしょが連日続いていた。年齢の割にぼうこうの容量が小さかったため、ぼうこう機能を安定させる抗コリン薬を処方すると、全くおねしょをしなくなった。
 薬剤ではこのほか、抗うつ薬も効果があるとされるが、副作用の懸念などから専門医による使用は減っているという。
 今年2月、協和発酵キリン などが、夜尿症の子どもを持つ母親727人を対象にアンケートを実施した。医療機関を受診したことがない子どもが75%に上る一方、81%の母親は子どもの夜尿症をストレスと感じ、53%は「早く治るなら受診させたい」と答えた。
 金子教授は「夜尿症は子どもの自尊心を低下させ、不登校やいじめ被害にもつながる。治療すれば、自然に治るのを待つよりずっと早い治癒が望める。まずは専門医に相談してほしい」と助言する。

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熱中症対策の水分補給は水、それともスポーツドリンク?

2011年08月13日 06時24分39秒 | 小児科診療
 関東地方の猛暑が復活し、特に館林市は3日連続最高気温日本一(涙)。
 気象庁の「最高気温ランキング」を自虐的にウォッチしています。館林市は朝はランク外なのですが、お昼近くなるとベストテン入りし、昼過ぎにはトップに躍り出るパターンです。

 さて、熱中症対策が新聞やTVニュースで毎日のように取り上げられていますね。
 基本は水分補給と体を冷やすことですが、この「水分補給」方法に相変わらず誤解・混乱が感じられます。
 暑い日中に外で活動するとか、スポーツで大量の汗を流したときはスポーツドリンクをお勧めします。
 一方、屋内で静かに過ごしている人には塩分は必要ありませんので、水かお茶・麦茶がよいのです(子どもの水分補給は「水」が最適 2011年06月28日)。
 水がわりにスポーツドリンクを飲む習慣をつけると「ペットボトル症候群」という病気になる可能性がありますので、ご注意を!

酷暑 増える「ペットボトル症候群」 がぶ飲み注意(2011.8.11:北國新聞)

 8月に入り、30度を超える厳しい暑さが続く石川県内。節電対策で室内の冷房も弱い となれば、ついつい手が伸びるのは冷たい清涼飲料水だ。ただ、しょっちゅう口にすると 、急激に血糖値が上がる「ペットボトル症候群」に陥る危険性がある。県内でも若年層を 中心に発症が増えており、内科医は「暑いからといって、がぶ飲みは危険」と注意を呼び 掛けている。
 金沢有松病院の前川正知院長によると、ペットボトル症候群は医学的には「清涼飲料水 ケトーシス」と呼ばれる。糖分の多い清涼飲料水を継続して大量に飲み続けていると、血糖値が上昇し、糖分の代謝を促すインスリンの働きが一時的に低下してしまう。

 インスリンが欠乏すると、糖分をエネルギーとして使えなくなり、体は糖分の代わりに 脂肪を分解する。その際に「ケトン体」と呼ばれる酸性物質が体内に蓄積し、吐き気や意識障害などを引き起こす仕組みだ。

 患者の多くは10~30代の男性。県内でも発症が増えており、同病院では以前、ペッ トボトル入りのジュースを毎日3リットル近く飲み続けた男子学生(18)が、意識もう ろうとなって運ばれたケースがあったという。

 前川院長によると、一般的な清涼飲料水には糖分が容量の10%含まれ、1リットルの 清涼飲料水をがぶ飲みすると、5グラムの角砂糖を20個かじっているのと同じ計算になる。しかし、ジュースなどを飲んで血糖値が上がると、それを薄めようとさらに水分を欲 してのどが渇き、甘い飲み物をまた飲むという悪循環が起こりやすい。前川院長は「ジュ ースやスポーツドリンクが悪いわけではない。大切なのは飲む量」と指摘し、誤った水分 補給を警告している。



節電の夏、ペットボトル症候群に注意 「絶えず糖分意識して」(2011.7.12 産経新聞)

 節電のためエアコンの使用を控えていると、冷たい飲み物をたくさん飲みたくなる。ただ、糖分の多い清涼飲料水を大量に飲み続けていると、急激に血糖値が上がる「ペットボトル症候群」に陥る危険性がある。近年、若年層を中心に患者が年々増えているが、まだ認知度は低いまま。専門家は「今年は特に夏場の水分の取り方に気をつけてほしい」と注意を呼びかけている。(田野陽子)

◆ 昏睡状態にも
 ペットボトル症候群の正式名称は、「ソフトドリンク(清涼飲料水)・ケトーシス」。継続して大量にジュースなどの清涼飲料水を摂取することで、血糖値が上昇。血糖値を一定に保つホルモンのインスリンの働きが一時的に低下してしまう。

 インスリンが欠乏するとブドウ糖をエネルギーとして使えなくなり、脂肪などを分解する。その際に「ケトン体」と呼ばれる代謝成分が増え、血液が酸性に傾く。「意識がもうろうとしたり、倦怠(けんたい)感があったり。昏睡(こんすい)状態に陥ることがあります」と、大阪府内科医会会長で、ふくだ内科クリニック(大阪市淀川区)の福田正博医師は説明する。

 糖分の過剰摂取で血糖値が上がると、それを薄めようとしてさらに水分を欲して喉が渇く▽尿の回数も増える▽喉の渇きに任せてさらに甘い飲み物を飲む-という悪循環に陥る。福田医師は「危険なのは夏場に中高生が部活動で水代わりに大量に清涼飲料水を飲んだり、毎日2、3リットル飲んでいたりするような場合。突然倒れる場合もある」と警告する。

◆1リットル角砂糖20個?
 福田医師によると、インスリンの投与などの治療によって、症状は比較的早期に治まるケースが多い。しかし、注意が必要なのは肥満体型の人。糖尿病予備軍と呼ばれる人たちはインスリンの働きが悪く、よりリスクが高まるという。

 患者の多くは10~30代の男性。「人前であまりがぶ飲みしない女性より男性の方が圧倒的に多い」と福田医師。検査で血糖値が高く出た人に事情を聞くと、連日何本もペットボトル飲料を飲むケースが目立つという。

 ただ、ペットボトル症候群への理解はあまり高くない。6月、海洋深層水の加工飲料水などを製造・販売する「赤穂化成」(兵庫県赤穂市)が中学生以下の子供を持つ母親533人を対象に実施した調査では、94.6%が、熱中症対策として「水分補給の必要性」を感じていたが、71.1%が「ペットボトル症候群を知らなかった」と答えていた。

 福田医師によると、一般的な清涼飲料水は1リットル当たり100グラム前後の糖分が含まれていると考えられる。角砂糖1個が5グラムとすると、「1リットルの清涼飲料水をがぶ飲みすると、角砂糖20個をかじっているのと同じだと思ってほしい」。

 また、スポーツ飲料やフルーツ果汁の入った野菜ジュースなどにも糖分は入っており、「絶えず糖分を意識して、商品の裏に付いている成分表示を確認する習慣を持ってほしい」と福田医師。お茶など糖分の入っていない飲み物や、ミネラルウオーターにレモンを搾るといった工夫を呼びかける。

◇ 増える糖尿病予備軍
 厚生労働省の国民健康・栄養調査(平成21年)によると、BMI(体重を身長の2乗で割った値)が25以上の肥満者の割合は、男性30.5%、女性20.8%。20~60歳の男性に限れば、緩やかに増加。また、「糖尿病が強く疑われる」「糖尿病の可能性を否定できない」とされる予備軍も急増しており、20歳以上でみると、約1370万人(9年)から約2210万人(19年)と10年間で激増している。
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「腸重積」という病気

2011年08月08日 06時06分12秒 | 小児科診療
 小児科系学会が「腸重積」という病気の診断指針を作るという新聞記事を見つけました;

小児の腸の病気 早期発見へ診療指針(2011年8月6日:朝日新聞)

 乳幼児に多く、腸がふさがり重症化すると死亡することもある腸の病気の診療指針を、日本小児救急医学会がまとめた。国内では毎年3千~4千人の患者が出ている可能性があるが、早く見つければ手術が不要なケースが多い。指針では、家庭でも気づくような病気の兆候などをまとめた。
 この病気は、腸の口側の部分がお尻側の部分の中に入り込むことで起こる小児腸重積症。多くは原因不明だが、乳幼児での代表的なおなかの急性疾患の一つ。病理解剖統計の分析によると、過去20年間で少なくとも50人が死亡している。早く発見すれば、空気を使って腸の内側から、はまり込んだ部分を押し戻すなどして治せる。しかし、発見が遅れて病気が進むと、腸が壊死(えし)し、腹膜炎やショックで、死ぬこともある。
 病気は広く知られていたが、病院により治療法にばらつきがあり、小児救急医学会の委員会が2004年から指針作りを検討。診断基準や重症度の評価方法、症状に応じた指針を作った。


 一般の方には馴染みのない病名と思われますが、小児科医にとってはそう珍しい病気ではありません。勤務医時代はどこの病院でも年間5~10名は診療していました。
 乳幼児が間欠的にぐずり、顔色が悪くなっていき、便に血が混じるようになるのが典型的な経過です。しかし初めから症状が揃うことは希で、疑わしいときは浣腸をして便の性状を確認するなどが必要になります。

 ふつう発症後24時間以内であれば「高圧浣腸」(肛門から液体を入れて圧をかけ、大腸に潜り込んだ小腸を押し戻す手技)で整復可能ですが、それ以上時間が経っていると腸管のダメージが強くて圧をかけると破れて腹膜炎を起こすリスクが増加するため、外科医に依頼して手術を睨みながらの処置となります。
 約20年間の勤務医生活の中で、幸い死亡例はゼロ、外科手術に至ったのは2例と記憶しています。

 さて、今回診断指針が作成され発表されたタイミングは、ロタウイルスワクチンとも関係している印象があります。
 ロタウイルスワクチンは冬に流行する嘔吐下痢症であるロタウイルス胃腸炎(別名「白色便性下痢症」)を予防するワクチンです。
 1990年末にアメリカでロタウイルスワクチン「ロタシールド®」が開発されましたが、副反応としてこの腸重積の発症頻度が増加したために1年で中止となった経緯があるのです。
 その後2005年前後に新たに開発されたロタテック®、ロタリックス®はこの腸重積問題をクリアしたため日本でも認可されました。

 でもやはり腸重積が気になります。ロタウイルスワクチンを導入して腸重積が増えるのかどうか・・・ここで問題発生。もともと日本は病気の発生頻度の統計データが乏しく、ワクチン接種後にその病気の頻度が増えたかどうか判断できない弱みがあるのです。
 というわけで、今回指針を作るとともに、正確な発生頻度も調査する動きがあるようです。

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子どものインフルエンザワクチン接種量変更(増量)

2011年08月01日 21時45分22秒 | 小児科診療
 来るシーズンのインフルエンザワクチン接種量が変更になりました。
 乳幼児に対する従来の接種量はWHO標準量より少なく、以前から効果が疑問視されてきました。それがようやく解決することになり、喉につかえていた魚の骨が取れた感があります。

 さて、今までの接種量は、

1歳未満       ・・・ 0.1ml×2回
1歳以上~6歳未満  ・・・ 0.2ml×2回
6歳以上~13歳未満  ・・・ 0.3ml×2回
(13歳以上      ・・・ 0.5ml×1回)


 と細かく区別されていて気を遣いました。乳幼児に対しては、0.5mlを接種すると局所副反応が強いという思い込みから、2回に分けて接種するという考え方・方法をとってきたのです。
 そして今回、以下のようにシンプル化されます;

生後6ヶ月~3歳未満 ・・・ 0.25ml×2回
3歳以上~13歳未満  ・・・ 0.5ml ×2回
(13歳以上      ・・・ 0.5ml ×1回)


■ 13歳未満のワクチン増量へ インフルエンザで厚労省(2011.8.1:共同通信)

 国内のメーカー4社のインフルエンザワクチンを13歳未満の子に接種する際、用量を増やしても差し支えないとする意見を厚生労働省の部会が1日、まとめた。近く同省が正式に承認し、今冬の流行シーズンから適用される見通し。
 現行の接種用量は、世界保健機関(WHO)が推奨する用量よりも少なく、効果が低いとの指摘もあった。このためメーカー側が薬事法に基づき、WHOの水準への変更を申請していた。
 13歳未満の2回接種に変更はないが、新しい用量は1回につき、生後6カ月以上(北里第一三共ワクチン製は1歳以上)3歳未満は0・25ミリリットル、3歳以上が0・5ミリリットル。


 う~ん、3~13歳は0.5ml接種なら1回でもいいんじゃないか、という意見が出てきそうです。
 私だったら3~13歳に関しては、
・全くはじめて接種するなら2回
・昨シーズンにインフルエンザワクチンを接種した子どもは1回でも可

 としたいですね。たしかアメリカではこのように行われていると記憶しているのですが・・・要確認。

<追記>
 上記の疑問の答えを確認できました。手元の本(「小児の感染症診療の落とし穴」南江堂:2011年発行)に以下のように記載されていました;

■ アメリカ;
生後6-35M  ・・・0.25ml
生後36M以降 ・・・0.5mlを2回接種(前年に接種した場合は1回)

■ イギリス;
生後6-35M ・・・0.25または0.5ml(製品により異なる)を1回接種(初めての場合は2回)
3-12Y   ・・・0.5mlを1回接種(初めての場合は2回)


 先日「今期のインフルエンザワクチン供給量は十分」と報道されましたが、この接種量増量は試算に入っていないそうです。数割必要量が増えると思われますが、ホントに大丈夫なのかなあ。
コメント (8)
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