徒然日記

街の小児科医のつれづれ日記です。

2014/15シーズンのインフルエンザワクチンの効果は・・・

2015年05月28日 06時29分04秒 | 小児科診療
 2014-15シーズンのインフルエンザワクチンは効果が今ひとつ、という印象がありました(2回接種した私も罹りました・・・)が、それを裏付けるデータが公表されました。
 正直言って、これじゃあ「当たるも八卦当たらぬも八卦」のレベルのような・・・より有効性の高い「経鼻生ワクチン」「経鼻不活化ワクチン」などの認可が待たれます。

■ 流行株の78%はワクチン株との反応性が8倍以上も低下 来シーズンはA(H3N2)亜型のワクチン株を変更へ
(2015/5/15:日経メディカル)
 国立感染症研究所と厚生労働省は5月14日、今冬のインフルエンザ流行を総括する報告書を発表した。それによると、2014/15シーズン流行の主役だったA(H3N2)亜型では、ワクチン株との反応性が8倍以上低下している抗原変異株が多数を占めていたことが分かった。このため、来シーズンはA(H3N2)亜型のワクチン株を変更することが決まった。
 それによると流行株の主流だったA(H3N2)亜型ウイルスについて、分離された207株を2015年3月末時点で抗原解析したところ、ほぼすべてが昨年3月以降に新たに認識され始めた「サブクレード3C.2a」および「3C.3a」に属し、特に3C.2aに分類された株が全体の7割以上だった。これらのサブクレードは、遺伝学的に今シーズンのワクチン株に選定されていたA/ニューヨーク/39/2012が属するクレードからは系統樹上で明確に区別されるものだった。
 また、A/ニューヨーク/39/2012細胞分離株に対する抗血清を用いて反応性を見たところ、流行株はホモ価に比べて8倍以上も反応性が低下している抗原変異株が多数を占めていたことが分かった。抗原変異株は、解析した株の約78%に達していた。
 このため報告書では「今シーズンの流行株は前シーズンの代表株だったA/ニューヨーク/39/2012から抗原性が大きく変化していることが示された」と結論付けている。また、これらの結果を踏まえ、次シーズンのワクチン株は、現行のたA/ニューヨーク/39/2012から変更することになったと述べている。
 なお報告書は、インフルエンザ定点サーベイランス、インフルエンザ病原体サーベイランス、インフルエンザ入院サーベイランス、インフルエンザ脳症サーベイランス、血清疫学調査などの項目ごとに、2014/15シーズンを振り返っている。


<当ブログ内の関連記事>
2014/15年シーズンのインフルエンザワクチン、有効率は23% 米CDC
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水痘ワクチン定期接種化の効果

2015年05月27日 09時16分16秒 | 小児科診療
 2014年秋に水痘ワクチンが定期接種化されました。
 とともに、受診する水痘患者さんがみるみる減っていることを実感しています。
 それを裏付けるデータが発表されました。
 将来、水痘という感染症を「見たことがない」小児科医が出てくるかもしれません。

■ 水痘定期接種化から約半年で小児の入院水痘が大幅減
2015.5.26:MTPro
 国内で昨年10月から小児への水痘ワクチン2回接種が定期化された。同ワクチンの定期接種直前の9~12月の0~3歳の入院水痘例は42例だったが,定期接種開始からわずか3カ月後の翌年1月~同4月までは12例にとどまっていた。国立感染症研究所感染症疫学センターの森野紗衣子氏らが2015年5月26日の国立感染症研究所病原微生物検出情報(IASR)で報告した。

◇今年は過去10年で最小規模の報告数を更新中
 日本の水痘流行期は冬から春で,秋にかけては患者数が減少すると考えられている。水痘ワクチンが定期接種化される以前は毎年9歳以下の小児を中心に年間100万人の患者が発生し,4,000人が入院,20人が死亡と推定され,ワクチンで防ぎうる4つの主な疾患(麻疹,風疹,ムンプス,水痘)のうち水痘による死亡数は最多を記録していた(関連記事)。しかし,昨年10月からの水痘定期接種化に伴い,11月ごろから小児科定点報告数が例年に比べ減少し始め,過去10年で最低を記録している(図)。



◇小児の減少に伴い成人の割合が相対的に増加
 今回,森野氏らは水痘定期接種化の直前に全数報告が開始された入院水痘症例の届け出状況の推移を調査。調査対象期間の9月19日~12月末の入院水痘142例のうち0~3歳は29.6%に上っていた。これに対し,定期接種を開始してすぐの今年1月から乳幼児の入院水痘が減少。今年3月以降の入院水痘に占める0~3歳の割合は8.6%に減少していた。逆に同じ期間において20~40歳代の入院水痘は30.3%から40%に増加していた。
 入院水痘の合併症のうち,最多は肺炎・気管支炎(15例,6.5%),次いで膿痂疹(12例,5.2%),肝炎(8例,3.5%),脳炎・髄膜脳炎(5例,2.2%),DIC3例(1.3%)などであった。また,他疾患で入院中の水痘発症例は26例(11.2%)を占めた他,妊婦の水痘も3例(1.3%)報告された(ともに重複あり)。

◇50歳代の入院が25%「抗体保有率90%以上のはず…」
 同氏らは小児への水痘定期接種によりこの年代の感受性者が減少したことが,小児入院例の減少ならびに成人例の相対的な増加につながったと考察。ただし,今回の調査で初めて実態が明らかになった成人の入院水痘について,50歳以上が25%を占めたことは予想外と指摘した。これまでの感染症流行予測調査事業では50歳以上の水痘抗体保有率が90%以上との結果だったことから,水痘-帯状疱疹ウイルス(VZV)感染既往の有無を含む詳細な分析が必要と述べている。
 また,他疾患で入院中の水痘患者が多い点も問題で,院内での水痘患者発生による他の患者への影響は大きく,その把握と対策が極めて重要と提言している。


<参考>
<速報>水痘入院例全数報告の開始と水痘ワクチン定期接種化による効果~感染症発生動向調査より~(2015.6.26:IASR)
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「デング熱:過去最多ペース …海外感染で発症80人」

2015年05月26日 04時50分29秒 | 小児科診療
 今年も蚊が発生する季節になりました。
 つまり昨年話題になった「デング熱」の季節が到来したことになります。
 「鎮守の森巡り」が趣味の私にとって、切実な問題です。

■ デング熱:過去最多ペース …海外感染で発症80人に
(毎日新聞:2015年05月25日)
 蚊が媒介する感染症・デング熱に海外で感染して日本で発症した患者報告数が10日現在で今年80人に上り、1999年の調査開始以降、過去最多のペースになっている。昨年は国内感染例が約70年ぶりに確認され、国内患者数は計162人に上った。東南アジアではデング熱の流行が続いており、海外からウイルスが持ち込まれるケースが増えるほど国内感染の危険は高まる。専門家は「蚊の発生時期を迎え、警戒が必要だ」と呼びかけている。
◇「どこでも流行の可能性」
 昨年、感染源となった代々木公園を所管する東京都は4月、代々木公園のほか上野公園、日比谷公園など人の集まる9公園で蚊の採取を始めた。デングウイルスの保有の有無を調べ、陽性の蚊が見つかればホームページなどで公表する。側溝などの水をすくって幼虫の発生状況も調べ、成虫になるのを防ぐ薬剤も散布する。
 7月には医療機関向けの研修も行う予定で、今年度のデング熱対策費はワクチン開発と併せて2億1000万円に上る。
 ただ、デング熱の感染源が昨年と同じ都内になるとは限らない。ウイルスが卵を介して親から子に受け継がれ、翌年の流行につながった例はなく、今年も国内感染があるとするなら、海外から新たに持ち込まれるウイルスが感染源になるからだ
 国立感染症研究所昆虫医科学部の小林睦生・名誉所員は「ウイルスを媒介するヒトスジシマカは、年平均気温が11度以上の秋田・岩手両県以南に高い密度で生息しており、どこで流行してもおかしくない」と指摘する。
 「実は見落としてきただけで、これまでも小規模の国内流行は起きていた」とみる専門家もいる。
 国立国際医療研究センターの忽那(くつな)賢志・国際感染症センター医師によると、昨年国内で感染した患者の1人から、代々木公園にいた蚊とは異なる遺伝子型のウイルスが見つかっていたという。2013年にも、日本を旅行したドイツ人女性が帰国後にデング熱を発症している。忽那医師は「直近2年間だけで3回もデングウイルスの国内感染が起きていたことになる。早く感染者を見つけ、流行を広げないことが重要だ」と話す。
 ヒトスジシマカは、カリブ海諸国や中南米で大流行しているチクングニア熱や、昨年もタイなどから国内に持ち込まれたジカ熱も媒介する。海外を行き来する日本人のほかに、訪日外国人数が急増する中、これらの国内感染のリスクも高まっている。

◇デング熱◇
 デングウイルスの感染者の血を吸った蚊がウイルスを持つようになり、その蚊に刺されることで人に感染する。3~7日の潜伏期間の後、突然の発熱、激しい頭痛、関節や筋肉の痛み、発疹などの症状が出る。2~7日で解熱するが、まれに重症化して死亡することもある。ウイルスには四つの遺伝子型があり、一度感染した型には免疫ができるが、別の型に感染すると1回目の感染よりも重症化の危険が高くなる。ワクチンや治療薬はない。

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HPVワクチン副反応問題、その後

2015年05月14日 20時51分44秒 | 小児科診療
 幾度となく取りあげてきたHPVワクチン。
 「10代女性の身体症状(頭痛や肩凝り,関節の痛み,月経不順・月経痛など)はHPVワクチン導入前と導入後で比較して増加しておらず、ワクチン導入自体が身体症状の訴えを増やしているわけではないことが判明した」という記事が目に止まりました; 

■ 子宮頸がん予防のためにHPVワクチン副反応問題の早期解決を 自治医大・今野氏が包括的な患者支援を訴え
2015年5月11日:MTPro
 ヒトパピローマウイルス(HPV)ワクチンの副反応問題に関しては,子宮頸がん発症予防のため積極的勧奨の再開が求められる一方,因果関係を明らかにし,問題を解決するまで対応は慎重にすべきとの意見もあり,賛否両論の中混乱が生じている。ただし,副反応問題に振り回され,最適な医療から遠ざけられてしまう少女たちの現状を忘れてはならない。こうした状況を憂えている自治医科大学さいたま医療センター産婦人科教授の今野良氏に,日本の子宮頸がん予防の現状とHPVワクチン被接種者への包括的な支援的診療について解説してもらった。同氏は,HPVワクチン接種後の身体症状について,因果関係の検証が行われず,科学的根拠がないままワクチン接種による副反応とされていることが問題だとしている。
 今野氏はワクチン導入前(2007年)と導入後(2013年)における国民生活基礎調査から,10~19歳の女子の身体症状の訴えを検討した結果を提示。10~14歳に関しては,頭痛や肩凝り,関節の痛み,月経不順・月経痛などの訴えは,導入前と比べて導入後で増加しておらず(図),ワクチン導入自体が身体症状の訴えを増やしているわけではないことが分かった。また,導入前で加齢による変化を見てみると15~19歳では10~14歳に比べて訴えが増加しており,中学生から高校生へ成長するとともに不調の訴えが多くなることも分かった。



 世界保健機関(WHO)はHPVワクチンについて安全声明を出しているが,いまだに厚生労働省はHPVワクチンの定期接種を勧めていない。今野氏は「副反応という言葉が誤用されており,正しくはワクチン接種後の有害事象というべきである。有害事象は因果関係ではなく前後関係となるが,副反応という言葉だと因果関係があるか,それが疑われることが前提。今後は有害事象調査と明示し,その中で,副反応を選別すべきだ」と主張した。
 2013年12月25日の厚労省副反応検討会でも,ワクチン接種後の有害事象は,10万接種当たり約1.5件だということが確認されている。痛みなどの身体症状については,HPVワクチン接種後の発生率よりも自然発生率の方が高い。
 同氏は「本来,有害事象のデータはワクチンを導入してから集めるものではなく,国の制度として継続してやっておくべきものである。HPVワクチン接種後の有害事象のうち,失神とアナフィラキシー以外の神経学的疾患,免疫疾患,中毒,慢性疼痛などはワクチンとの因果関係はなく,有害事象ではあるが真の副反応ではない紛れ込みの可能性が高い」と述べ,「日本には疫学的サーベイランスを行う部署がないことが問題だ」と指摘している。
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熱中症が気になる季節になりました。

2015年05月05日 07時09分41秒 | 小児科診療
 今年のGWは暖かい(暑い?)日が続いています。
 早くも「熱中症で救急搬送される」というニュースが目に付くようになりました。

■ 熱中症疑いで男女6人搬送 米沢、西川、鮭川
(2015年05月04日:山形新聞)
 山形県内各消防本部によると、3日午後6時現在、米沢、西川、鮭川の3市町村で、男女6人が熱中症の疑いで救急搬送された。
 西川町では午前10時半ごろ、空き地で倒れていた80代女性に意識障害がみられ、救急搬送。加療・入院が必要な中等症以上の疑い。米沢市では「米沢上杉まつり」を観覧していた10~20代の男女4人が気分不良で運ばれた。鮭川村では50代男性が山菜採りの帰りに不調を訴えた。いずれも軽症とみられる。


 当院HPの「子どもの熱中症と対策」も閲覧数が増えてきています。
 そんな折、学会のガイドラインが発行されました;

■ 熱中症、重症度を3分類 救急医学会が診療指針
(2015年5月2日:朝日新聞)



 日本救急医学会は、熱中症の診療指針を初めてまとめた。重症度を三つに分け、頭痛や嘔吐(おうと)などがあれば、医療機関の受診が必要としている。学校や職場、介護の現場、一般の人にも役に立つとしている。
【災害大国】熱中症 暑さ、甘く見るな
 重症度の分類は、周囲にいる人が早く異常に気付いて治療につなげる目的でつくられた。体温などにかかわらず、めまいや立ちくらみがある状態を「1度」、頭痛や嘔吐があれば「2度」、意識障害などがあれば「3度」とした。
 1度は体の表面を冷やすことや水分・塩分の補給など現場で応急手当てをし、2度以上は医療機関へ連れて行く。医療機関では経口か点滴による水分・塩分の補給や、体を冷やす処置などを受ける。3度は入院が必要となる。
 指針づくりにあたった三宅康史・昭和大教授は「1度の人でも、誰かがそばで必ず見守り、回復しなければ医療機関を受診してほしい」と注意を促す。
 また指針では、高齢者は重症例が多いと指摘。室内で熱中症になるのは、高齢の女性やひとり暮らしの人に多く、高血圧、糖尿病、認知症などの持病があると重症化しやすいとしている。
 予防や治療では、0・1~0・2%の食塩水を飲むことを推奨。水だけでは、体内の塩分が薄まってけいれんを起こしやすくなる。予防には一般的なスポーツドリンクでも問題ないが、塩分量が少なく糖分が多いとしている。梅昆布茶やみそ汁なども有効という。
 指針は、全国の救命救急センターなどを対象にした隔年の調査や、国内外の最新の論文をふまえた。学会のウェブサイト「熱中症診療ガイドライン2015」に掲載されている。(武田耕太)


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休日当番医のつぶやき

2015年05月05日 06時54分47秒 | 小児科診療
 5月4日は休日当番医(小児科のみ)を担当しました。

 受診された患者さんは100名弱。
 ただ、相談の内容が従来の当番医と違うなあ、という印象を持ちました。

 ふつう、休日当番医とは、子どもが急に具合が悪くなって翌日まで待てないので駆け込むところ。
 医師のスタンスも「とりあえず明日まで繋ぐ診療」で、長期的な展望に立ったかかりつけ医的なものではありません。

 しかし昨日は、「他の医院へ通院しているけどよくならないから来ました」という患者さんの比率が非常に多い一日でした。
 数日ではなく数週間の経過が多く、それを当番医で一気に解決しようとされても困ってしまいます。
 本来は総合病院の小児科が担当すべき役割なので、よくならなくて困っている際はかかりつけ医から病院宛に紹介状を書いてもらうのが医師間のルールであることをご理解ください。

 それから怪我の相談もあり、「外科系当番医へ行ってください」と誘導しようとすると、「電話で市役所に問い合わせたら、ここに行くように言われました」とのこと。
 小児科は内科であり、外科系の処置は一般に行いません。
 行政からして誤解しているんじゃあ、小児科のストレスは減りませんねえ。

 兎にも角にも、どっと疲れた一日でした。
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