新たなワクチンが登場する度に炎上する“副反応”問題。
ワクチン接種後に出現した症状はすべからくワクチンのせいにされがちです。
しかし“真の副反応”はその内の一部と考えられています。
ただ、因果関係あり(ワクチンが原因で症状発生)も、因果関係なし(ワクチンと症状は関係ない)も、証明が難しい。
例えば、
① 予防接種翌日に発熱
② 予防接種翌日に咳と鼻水
③ 予防接種翌日に交通事故(もらい事故)
④ 予防接種翌日に購入した宝くじで1億円が当たった
という事例を考えますと、
①は副反応の可能性がありますね。しかし、集団生活の場で発熱する風邪が流行していると風邪による発熱の可能性も出てきて判断が難しいです。
②はワクチンの種類(生あるいは不活化)にかかわらず、翌日風邪症状が出ることは理論的にあり得ないので、否定的です。
③関係ないでしょう。
④関係ないでしょう。ゲン担ぎのキッカケにはなるかも。
以上のように考察できますが、確定はできません。
つまり、時間関係(ワクチン接種後に〇 〇 が起きた)だけでは、
肯定も否定もできないのです。
①をワクチンのせいだと決めつけることは、
③のもらい事故をワクチンのせいだ、
④の宝くじ当選もワクチンのおかげ、
と決めつけることと同じレベルということ。
しかし、①のパターンだけ“副反応”として取りあげられることが多いのが現状です。
さて、ワクチン接種後の症状が副反応かどうかを判定する目安として、
古くは「白木四原則」なるものがありました。
その内容は以下の通り;
① ワクチン接種と予防接種事故とが、時間的、空間的に密接していること、
② 他に原因となるべきものが考えられないこと、
③ 副反応とその後遺症が原則として質量的に強烈であること、
④ 事故発生のメカニズムが、実験・病理・臨床などの観点からみて、科学的・学問的に実証性や妥当性があること
一見、もっともな判定基準に思えますが、④の証明が難しいのが現実です。
こちらの記事によると、最近、新たな基準を提唱する人が出てきました。
Myersらは、ワクチン接種と副反応について以下の有用な質問を投げかけている;
〔書籍『Do Vaccines Cause That?!: A Guide for Evaluating Vaccine Safety Concerns』(Immunizations for Public Health, 2008)〕
① 生ワクチンを使用した場合、ワクチンウイルスは分離されたか
② 病気や状態はワクチンを接種した人にのみ発生し他の人には発生していないか
③ ワクチンがどのように有害事象を引き起こす可能性があるかを説明できる既知の生物学的機序はあるか
④ ワクチン以外に有害事象について考えられる説明はあるか
⑤ 予防接種後に最初の症状が現れたか
② 病気や状態はワクチンを接種した人にのみ発生し他の人には発生していないか
③ ワクチンがどのように有害事象を引き起こす可能性があるかを説明できる既知の生物学的機序はあるか
④ ワクチン以外に有害事象について考えられる説明はあるか
⑤ 予防接種後に最初の症状が現れたか
①は「白木四原則」の④の一つの答えですが、不活化ワクチンには適用できません。
ポイントとなるのは、
②の「ワクチンを接種した人にのみ発生し他の人には発生していないか?」
だと思います。
これは“統計学”という学問の考え方を取り入れた基準であり、
因果関係が不明な事象に対して用いられる手法です。
「白木四原則」には残念ながらこの“統計学”的視点がないのが致命的欠陥です。
例えば、ワクチンを接種した1万人と接種していない1万人を比較して、
ある症状の出現率に差があるかどうか、を統計学的に検討します。
ワクチン接種群の方が非接種群より多い
→ ワクチンと因果関係有り
ワクチン接種群と非接種群で差がない
→ ワクチンと因果関係なし
と判断されます。
ワクチンをしてもしなくても症状出現率が同じ場合、
ワクチンのせいにできませんよね。
これは客観的であり、誰もが納得できる手法です。
記事の中ではこの基準に基づき、HPVワクチンの副反応問題を検討しています;
① 生ワクチンではない
② 多様な症状はワクチン非接種者にも発生する
③ 説明できる機序はない
④ 症状と発症時期からCRPSやPOTSの紛れ込みの可能性がある
⑤ 今回問題となった多様な症状は科学的に説明できなければ紛れ込みの可能性があり、それだけでは予防接種と因果関係があるとはいえない
② 多様な症状はワクチン非接種者にも発生する
③ 説明できる機序はない
④ 症状と発症時期からCRPSやPOTSの紛れ込みの可能性がある
⑤ 今回問題となった多様な症状は科学的に説明できなければ紛れ込みの可能性があり、それだけでは予防接種と因果関係があるとはいえない
以上より
「副反応疑い例の多くはHPVワクチンとの因果関係が認められず、
多種多様な症状が偶然にHPVワクチン接種後に見られた紛れ込みの可能性が高い」
と結論づけています。
これがサイエンスです。
自分が経験したこと、目の前で起きたことは確かにインパクトがありますが、
そのような先入観や感情を排除し、常に科学的に検証する姿勢を持ちたいものです。