徒然日記

街の小児科医のつれづれ日記です。

“本気”が見えない日本の風疹対策

2018年09月25日 15時26分37秒 | 小児科診療
 5年前に日本で風疹が流行し、45人の赤ちゃんが先天性風疹症候群(以下CRS)を発症し、その16%が死亡したというブログを書きました。

■ (2015年08月13日)「風疹流行による先天性風疹症候群は45例、そのうち7例死亡」
<その他のCRS関連の過去ログ>
2014年02月19日)「2013年,風疹が最も流行した国ワースト3」に日本
2014年01月23日)40例目の先天性風疹症候群が発生
2013年12月31日)34例目の先天性風疹症候群が発生
2013年12月20日)33例目の先天性風疹症候群が発生
2013年12月07日)30例目の先天性風疹症候群が発生
2013年11月08日)26例目の先天性風疹症候群が発生
2013年10月31日)22例目の先天性風疹症候群が発生
2013年10月11日)20例目(19+2-1)の先天性風疹症候群が発生
2013年09月21日)19例目の先天性風疹症候群
2013年09月05日)18例目の先天性風疹症候群
2013年08月29日)17例目の先天性風疹症候群
2013年08月01日)14例目の先天性風疹症候群
2013年04月26日)風疹流行止まらず・・・10人目の先天性風疹症候群


 そして2018年現在、風疹が流行しています。
 CRSも発生していると耳にしました。

 5年前の流行から、日本人は何を学んだのでしょうか?
 日本政府・医療は風疹を征圧する能力が無いのでしょうか?

 アカデミズム(専門学会)系の発言を集めてみました。

「風疹流行対策に関する要望書」より抜粋(2013.7.29:日本小児科学会
 厚生労働省が 2013 年 1 月以降に発出した種々の注意喚起だけでは流行征圧には不十分です。 風疹流行の征圧と先天性風疹症候群の予防にはワクチン接種が極めて有効、かつ唯一の方法です。 成人層への風疹ワクチン(または麻疹風疹混合 MR ワクチン)の公費助成を行う自治体が増えつ つありますが、財政的な問題等からその数は非常に限られています。
日本小児科学会は、風疹流行の征圧と先天性風疹症候群の予防のために、厚生科学審議会予防 接種・ワクチン分科会において、成人のワクチン接種に直結する緊急施策と中期的な施策とを早 急に検討して厚生労働大臣に提言されるよう強く要望します。


■ 2020年度までの風しん排除のために、実効ある施策を要望しますより抜粋(2015.12.4:日本産婦人科学会他
 2020年度までの風疹排除を現実化するためには、「本邦成人男性感受性者約500万名中の400万名程度がワクチン接種を受けることが必要」と私どもは考えております。



 しかしこの後行われたことは「抗体検査の費用補助」のみで、あとはワクチンの“勧奨”です。
 肝心のワクチン接種のハードルを下げる施策はありませんでした。
 そして現在の流行につながっています。


「風疹流行の兆しあり!!!」より抜粋(2018.8.17:日本小児科学会
 速やかに風疹の抗体検査を受けて免疫の有無を確認してください。 妊娠中は風疹を含むワクチンの接種を受けることができません。風疹に対する抗体価が陰性あるいは低かった場合は、人混みを避け、ご家族や職場の同僚など、周りにいる人には罹患歴・予防接種歴を確認していただくようお願いします。もし風疹の罹患歴がなく、1 歳以上で 2 回の予防接種の記録がない人が周囲にいた場合は、急ぎ【麻疹風疹=MR】ワクチンの接種を受けてもらってください。
・・・・・
 成人女性、夫、パートナー等を対象とした風疹抗体検査の費用助成事業が行われています。お住まいの市区町村保健担当部署に問い合わせをして、積極的に利用してください。
・・・・・
 30~50 代の男性は、風疹への抵抗力が弱い人が多いので、ぜひ【麻疹風疹 =MR】ワクチンを接種してください。 詳細は、かかりつけ医、職場健康相談で尋ねてください。



 現在の日本小児科学会のHPでも、①抗体検査、②ワクチン接種、という順番を崩していません。
 そして費用助成は「成人女性、夫、パートナー等を対象とした風疹抗体検査」に限定され、流行の中心となっている30〜50代男性にはワクチン接種(費用助成なし)を呼びかけているだけです。
 進歩がありません。


(例)「風疹の抗体検査・予防接種(成人)」(栃木県医師会のHPより)
<風疹抗体検査の対象者>
・栃木県内に居住する次のいずれかに該当する方
(1) 妊娠を希望する女性
(2) (1)の配偶者(※1)などの同居者(※2)
(3) 風しんの抗体価が低い妊婦の配偶者(※1)などの同居者(※2)
※1 婚姻の届出をしていないが事実上婚姻関係と同様の事情にある方を含む。
※2 同居者とは、生活空間を同一にする頻度が高い方をいう。



・・・つまり、妊婦さんと縁の無い30〜50代男性は、ハイリスクにもかかわらず放置されているのです。
 予防接種に至っては、実施医療機関を紹介しているだけ。


「首都圏における風疹急増に関する緊急情報」より抜粋(2018.8.20:国立感染症研究所
 風疹はワクチンによって予防可能な疾患である。今回報告を受けている風疹患者の中心は、過去にワクチンを受けておらず、風疹ウイルスに感染したことがない抗体を保有していない集団である。予防接種法に基づいて、約5,000人規模で毎年調査が行われている感染症流行予測事業の2017年度の結果を見ると、成人男性は30代後半[抗体保有率(HI抗体価1:8以上):84%]、40代(同:77~82%)、50代(同:76~88%)で抗体保有率が低い。今回報告を受けている風疹患者の中心も成人男性であることから、この集団に対する対策が必要である。
・・・・・
 30~50代の男性で風疹に罹ったことがなく、風疹含有ワクチンを受けていないか、あるいは接種歴が不明の場合は、早めにMRワクチンを受けておくことが奨められる。風疹はワクチンで予防可能な感染症である。



 ここでも「風疹はワクチンで予防可能な感染症である」と繰り返し強調しています。
 しかし、やるべき事は「ワクチン接種」であることは明白なのに、そこにたどり着かないのはなぜなのでしょう?
 3つの要因があると私は思います。

1.国民の無関心(自分には関係ない)
2.ワクチン不足・予算不足
3.ワクチン反対派の存在


 1については、妊娠早期の妊婦さんが罹ると子どもに障害が発生する可能性がありますが、ハイリスクである「30〜50代の男性」が風疹にかかっても3日で回復します・・・だから“他人事”でしかないのですね。
 そのために会社を休んで抗体検査に行ってお金を払い、結果を聞きに行くためにまた会社を休んで、抗体値が低ければ自費でワクチンを接種する・・・これでは気が進まないでしょう。
 社内の健康診断のように、費用は会社持ちで医療者が会社に出張して抗体検査・ワクチン接種となってはじめてスムーズに事が運ぶと思われます。
 
 2については、現在定期接種となっている1歳と就学前の子ども分しかワクチンは生産されていません。ですから「30〜50代の男性」に一斉にワクチンを打ちましょうと言い出すと、途端にワクチン不足になり子どもが接種できなくなることは明らかです。
 また、「対象者4800万人全員に接種となると4800億円の予算が必要」だそうです。このお金をどこから捻出するかも問題です。

 3については「ワクチンはすべて悪」と考える人たちがいるので、これはもう説得できません。10万回接種して1人の副反応がでてもダメ出しされてしまいます。
 ワクチンは医薬品です。サプリメントではありません。
 医薬品には効果と副作用があり、副作用を考慮しても効果が十分勝ると判断されれば認可されます。ワクチンもこのような審査を受けて認可され製品化されています。ワクチンに副反応はつきものですから、それを理解して接種を考えることが基本になります。しかし日本は「お任せ文化」があり、病気の知識・ワクチンの知識を学ばずに医者任せになる風潮があります。すると「信じて受けたのに・・・」ということになりがちです。
 私は予防接種に関わって30年になる小児科医ですが、この「お任せ文化」に嫌気がさすことがあります。
① 病気の怖さを知る
② ワクチンの効果を知る
③ ワクチンの副反応を知る
 ①②③をクリアして初めてワクチン接種に望むのが理想です。
 しかし日本では①が教育されておらず、③だけが強調される傾向があります。病気の怖さを知らずに、副反応を強調されれば、誰だって怖くなりワクチン接種に尻込みするのは当然です。


<参考>
■ 「間違いだらけの予防接種

 

 これらをクリアするアイディアはあるのでしょうか?
 現在、年齢を区切ってワクチンを臨時接種するという案があちこちから出てきました。
 過去には「高齢者男性に対する肺炎球菌ワクチン」「2008年から5年間行われた中学1年生・高校1年生相当年齢への3期、4期の追加接種措置」が行われました。
 一斉にするのは予算・ワクチン準備に無理があるので、例えば「今年は30歳・35歳・40歳・45歳・50歳男性対象」とし、毎年1歳ずつずらすとか・・・あ、これでは5年罹ってしまうので「東京オリンピック(2020年)までに風疹撲滅」に間に合わないか・・・ま、他に名案があればいいのですが。

 昨今、一部の自治体でワクチン接種費用助成が始まりつつあります。
 望ましい方向ですが、これが全国一斉に行われると、やはり「ワクチン不足」が問題になりますね。
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インフルエンザ経鼻生ワクチン、効くの? 効かないの?

2018年09月17日 08時51分21秒 | 小児科診療
 それまで不活化タイプしかなかったインフルエンザワクチンに、鳴り物入りで2003年に登場したのが「経鼻生ワクチン」。
 たしか「有効率90%」が謳い文句にあったと記憶しています。
 アメリカで登場してから15年が経ちますが、まだ日本では認可されていません(噂ではもうすぐらしい)。

 生ワクチンは症状が出ない程度に弱毒化したウイルスを注射して人に感染させて免疫を獲得させるというメカニズム。
 一般的に不活化ワクチンより有効率が高い傾向があります。

 差が出るのは乳幼児です。
 現行の不活化ワクチン(スプリットワクチン)では、インフルエンザ感染歴のない乳幼児への効果は期待できません。
 なぜなら、不活化ワクチンは既に獲得した免疫を再活性化する能力(ブースター効果)はありますが、獲得免疫のない状態では感染・発症を阻止できないのです(重症化予防は期待できます)。
 一方の生ワクチンは軽く感染させるというメカニズムなので、初期免疫を獲得可能です。

 と大きな期待が集まる中、蓋を開けてみると現実には一筋縄ではいかず、なんと2016/17シーズンには「効果が期待できないので推奨しない」とCDCが答申し、関係者を驚かせました。
 私の率直な感想は「生ワクチンが効かないって、どういうこと?」でした。

 しかし疑問が解ける前に、今シーズン(2018/19)は、経鼻生ワクチンが推奨ラインナップに戻りました。
 いったい何が起きているんだろう?

インフル経鼻ワクチン、米国で再度接種推奨へ
2018/3/3 古川 湧=日経メディカル
 米国疾病管理予防センター(CDC)の予防接種諮問委員会(ACIP)は2月21日、インフルエンザの2018/19シーズンにインフルエンザ経鼻ワクチン「フルミスト(FluMist Quadrivalent)」を米国で再度接種推奨することを決定した。
 フルミストは鼻腔に噴霧するタイプの4価の弱毒生ワクチンで、A(H1N1)pdm2009(AH1pdm09)、A(H3N2)、B(山形系統)、B(ビクトリア系統)を対象としている。2003年の登場以来、米国や欧州で一般的に使用されており、日本では承認されていないものの医師が個人輸入して使用するケースがある。
 フルミストは2013/14シーズンからワクチン効果の低下を指摘されており、CDCは2016/17シーズン以降、同ワクチンを接種推奨リストから取り下げていた。
 ACIPの推奨再開は、販売元の英AstraZeneca社が米国で行った臨床試験の結果を受けたもの。2~4歳未満の小児200例を対象に、2015/16シーズン用フルミストと2017/18シーズン用フルミストの、AH1pdm09に対する抗体価の上昇率を評価した。その結果、1回の接種で抗体価が4倍に上昇した子どもの割合は2015/16シーズン用が5%だったのに対し、2017/18シーズン用では23%だった。接種回数を2回にすると、抗体価が4倍に上昇した割合は12%と45%となった。
 米国において2015/16、2017/18シーズンの流行の主流はAH1pdm09だった。2015/16シーズン用フルミストのワクチン効果は一般的な皮下接種不活化ワクチンと比べて有意に低かったと報告されており、特にAH1pdm09に対してはほとんど効果がなかったとされている(関連記事:インフル用経鼻ワクチンが効かなくなった理由)。
 AstraZeneca社は臨床試験の結果について「2017/18シーズン用ワクチンのAH1pdm09株は、2015/16シーズン用ワクチンよりも有意に良好に作用することが示された」としている(AstraZeneca社プレスリリース)。国内では、AstraZeneca社と契約した第一三共がフルミストの開発を2015年から進めており、現在製造販売申請中となっている。



 有効性が確認できたから復活、といっても当初の「有効率90%」とはほど遠い数字です。
 もう一度、文中に引用されている過去の記事「インフル用経鼻ワクチンが効かなくなった理由」を読み返してみました。
 要約しますと、

・2〜17歳での効果(全型のインフルエンザを対象)は、①経鼻生ワクチン、②皮下不活化ワクチンで表示すると、
(2013-2014)・・・ ①マイナス1%、②約60%
(2014-2015)・・・ ①3%、    ②(記載なし)
(2015-2016)・・・ ①3%、    ②約60%

・2012年までの過去3シーズンはフルミストの効果が50%から70%(一般的な皮下接種の不活化ワクチンとほぼ同程度)

・一般論として、不活化ワクチンと異なり、生ワクチンの場合はすでに感染歴があるとワクチンウイルスが体内で排除されてしまうために効果が弱い。直近の数年、同じH1N1型が流行しており、気づかないうちに多くの子どもがH1N1ウイルスに曝露されたことで効果が発揮されなかったのではないか。

・異なる型の生きたインフルエンザウイルスは互いに干渉し合うことが知られており、体内で増えなかった型のワクチン効果は下がることになる。それでも、なぜH1N1型に対する抗体価が上がらなかったのかなど、謎が多い。



 ・・・と結局、闇の中。
 ただ、注目すべきは「免疫のあるヒトにワクチンを接種しても、感染しないという点では変わらない(つまり効果がないようにみえてしまう)」という基本的事実。
 これがインフルエンザワクチンの評価を複雑にしている主因と考えられます。
 インフルエンザは毎年変異しているので大人でも繰り返しかかります。
 でも毎年というヒトは珍しいでしょう。まあ数年毎、「忘れた頃、油断しているとかかってしまう」というイメージではないでしょうか。

 そうなんです。
 毎年少しずつ変異しているので、一度罹って獲得した免疫は、数年間は有効なのです。
 でも3年も経つと、変異の積み重ねでかなり違ったウイルスとなり、過去の免疫が役立たなくなってしまう。

 ちなみに、一度獲得したインフルエンザの免疫は、型の変異がなければ数十年有効であることが証明されています。

 話を経鼻生ワクチンに戻します。
 「一定の比率で免疫を持っている集団にワクチンを接種しても、差が出にくい=無効と判断されてしまう」のですね。

 でもこの辺の事情をあまねく国民に周知するのは難しそう。
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インフルエンザワクチン接種は1回だけでいい? 

2018年09月16日 15時01分26秒 | 小児科診療
 子どもに対するインフルエンザワクチンの接種回数について。
 当院ではずっと2回接種を推奨してきましたが、接種量と価格変更に伴い再検討した結果、数年前に「3歳以上は1回接種でもOK」としてきました(下表)。


 さて、ここでその根拠を再確認しておきたいと思います。

 厚労省は昨シーズン(2017/18)から「13歳以降は1回接種を推奨」と方針を変更しています。
 これは医学的というよりワクチン不足という社会的事情によるものですね。
 今シーズン(2018/19)も一時ワクチンが足らなくなることが予想されるため、「13歳以上は1回接種推奨」と発表されました。
 ま、こういう“大人の事情”はさておき・・・。

 WHOの「Summary of WHO Position Papers - Recommended Routine Immunizations for Children」のインフルエンザワクチンの箇所から小児関係の記述を抜粋します;

・ For countries considering the initiation or expansion of programmes for seasonal influenza vaccination, WHO recommends that pregnant women should have the highest priority. Children aged < 6 months are not eligible to receive currently licensed influenza vaccines and should be protected against influenza through vaccination of their mothers during pregnancy and through ensuring vaccination of close contacts.

・Additional risk groups to be considered are children aged 6-59 months, elderly persons ≥ 65 years of age, individuals with specific chronic medical conditions, and health-care workers. Countries with existing influenza vaccination programmes targeting any of these additional groups should continue to do so and should incorporate immunization of pregnant women into such programmes.

・<u>A single dose is appropriate for those ≥ 9 years of age, including pregnant women. Inactivated influenza vaccine is safe to give throughout pregnancy.
Children aged 6-59 months should receive 2 doses at least 4 weeks apart. Children aged 6-35 months should receive a pediatric dosage.
・Annual vaccination (or re-vaccination, if the vaccine strains are identical) is recommended. Previously vaccinated children 6-59 months require only one-dose.


 接種回数だけ抜き出すと(下線部)、

・9歳以上は1回接種
・生後6-59ヶ月(6ヶ月〜5歳未満)は少なくとも4週間空けて2回接種
・生後6-59ヶ月(6ヶ月〜5歳未満)で過去にワクチン接種歴のある者は1回だけ接種


 となります。
 あれ、5歳〜8歳の記述が抜けてる? どーしたWHO!

 次にアメリカのCDCのHP「Influenza vaccines — United States, 2018–19 influenza season」をみると、うわ〜インフルエンザワクチンの種類がたくさんある。ビックリです。
 さて、年齢による接種回数を探してみると・・・「Prevention and Control of Seasonal Influenza with Vaccines, 2018-19」から「FIGURE. Influenza vaccine dosing algorithm for children aged 6 months through 8 years」に入り、その中の「FIGURE. Influenza vaccine dosing algorithm for children aged 6 months through 8 years — Advisory Committee on Immunization Practices, United States, 2018–19 influenza season」にフローチャート「FIGURE. Influenza vaccine dosing algorithm for children aged 6 months through 8 years — Advisory Committee on Immunization Practices, United States, 2018–19 influenza season」を見つけました。



 翻訳すると、
 生後6ヶ月〜8歳の小児において、
・2018年1月までに3価あるいは4価のインフルエンザワクチンを2回以上(2回の内訳は同シーズンでなくてもよい)接種しているか? 
 (2回以上接種している)  → 1回接種
 (接種していない、あるいは不明) → 2回接種

となりますね。

 そして当院の方針を再掲します。
 昨年と同じく、アメリカと日本の方針の中間を行くことにしました。
 表にWHOの方針を入れなかったのは、上述の通り5〜8歳の記述が見当たらなかったから。



 そのこころは・・・実際にインフルエンザに罹っていない子どもでは「重症化予防」、罹った子どもたちへは「発症予防」が根底にあります。

(6ヶ月〜2歳)ぶっちゃけて言うと、インフルエンザに罹っていなければ現行ワクチンを接種しても発症予防効果は期待できません。重症化予防が目的になります。
(3歳〜8歳)インフルエンザに罹ったことのある子どもが多くなる年代ですので、ブースター効果による発症予防効果が期待できます。ただし、すべての型に罹っているかどうかは不明ですから、接種歴確認も大切です。
  なぜアメリカのように9歳ではなく3歳で区切ったかというと、接種量が変わる歳だからです。
(9歳以上)ほとんどがインフルエンザ罹患歴がある年代ですから、ブースター効果が期待できるので、ワクチン本来の「発症予防効果」が発揮されます。
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(2018.9.14)日本全国からインフルエンザによる学級閉鎖の報告が相次ぐ。

2018年09月14日 09時28分20秒 | 小児科診療
 つい先日、北関東でインフルエンザ流行による学級閉鎖が報告されたこと(2018.9.6)を記しました。
 あれから10日経たないうちに、日本全国から学級閉鎖が報告されはじめました。
 当地でも近隣の保育園で集団発生しているとの患者さんからの情報がありました。

<東北地方>
□ 山形県でインフルエンザの集団発生2018年9月11日:産経新聞
 山形県は11日、上山市内の保育園でインフルエンザの集団発生があり、全園児130人のうち、10人がインフルエンザに罹患したと発表した。
 38度~40度の発熱があり、せき、関節痛などの症状が出ているという。
 県内のインフルエンザの集団発生は昨年は11月28日で、今年は約2カ月以上も早い発生のため、今後感染の拡大が予想されることから、県は、手洗いの励行やマスクの着用など感染予防を呼びかけている。

<関東地方>
□ インフル発症で小学校が学級閉鎖 江戸川区、都内初2018年9月11日:朝日新聞
 東京都教育委員会は10日、江戸川区立船堀第二小学校の2年生の1学級(在籍児童32人)で児童14人がインフルエンザを発症、もしくは似た症状で欠席したため、11日から14日までの4日間、学級閉鎖になると発表した。今秋に、都内の公立学校でインフルエンザの疑いで学級閉鎖となるのは初めて。


<四国地方>
□ 佐川町の乳幼児施設でインフルエンザ集団感染 高知県で今季初2018.09.13:高知新聞
 高知県は12日、高知県高岡郡佐川町内の乳幼児施設で2~5歳の11人がインフルエンザ(A型)に感染したと発表した。県内で集団感染が確認されたのは今季初。記録の残る1995年以降で最も早いという。


<九州地方>
□ 気温低下が影響か、インフルエンザで学級閉鎖2018年09月12日:読売新聞
 福岡市は11日、インフルエンザで城南区の市立梅林中学校の1クラス(34人)が学級閉鎖したと発表した。市によると、市内の学校でインフルエンザによる学級閉鎖は今季初めてで、昨シーズンより約1か月早い。
 市保健予防課によると、1年生の1クラスで10日、発熱などを訴えて8人が欠席し、同日午後から学級閉鎖とした。8人はインフルエンザA型と診断されたという。学級閉鎖は11日まで。
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2018/19シーズンのインフルエンザワクチンは足りるらしい。

2018年09月14日 08時04分24秒 | 小児科診療
 2017/18シーズンはインフルエンザワクチンが足りなくなり、政府が「13歳以上は1回接種」を推奨するという事態に陥りました。
 足りなくなった理由は、ワクチン製造株を途中で切り替えたから。
 当初、WHO推奨株に近い株を選択して生産を開始したものの、有精卵中の増殖が悪く、目標とするワクチン数にとても足りないと判断し、増殖の良好な株へ急遽切り替えたのです。
 でも結局、出来上がったのが12月だったので解決にはならなかった、という経緯です。

2017年09月27日)インフルエンザワクチン不足(2017/18)

 まあ、当院は数年前から「3歳以上は1回接種でもOK」と勧めてきたので混乱はありませんでしたが。

2015年08月31日)インフルエンザワクチン情報-3:1回接種、それとも2回接種?
2017年10月03日)インフルエンザワクチン2017/18予約受付中

 昨シーズンのトラブルに懲りて、今シーズンはWHO推奨株近似株の中で有精卵中の増殖良好なものをあらかじめ選択したそうです。
 毎年インフルエンザワクチンには振り回されるので、トラブルには慣れっこになっているのですが、今シーズンはスムーズに行くでしょうか?

□ インフルワクチン製造量、17年度上回る
2018/9/13 日本経済新聞
 厚生労働省は13日までに、今年度のインフルエンザワクチンの製造量は約2650万本で、ワクチンの供給が遅れた2017年度の使用量2491万本を上回る見通しだと明らかにした。一方、安定したワクチン供給を続けるために、17年度から引き続き13歳以上の任意接種について原則として1回接種とするように周知する方針。
 17年度はワクチンの製造過程でウイルス株を変更したため供給が遅れ、ワクチンを予定通り入荷できない医療機関が続出した。今年度は例年のワクチン使用量と照らし合わせて不足は生じない見通し。


 あれ、こちらの記事では「13歳以上は1回を推奨」を続けるとありますね。

□ インフルワクチン1回に 不足懸念、厚労省呼び掛け
2018.9.13:共同通信社
 厚生労働省は12日、インフルエンザワクチンの安定供給のため、13歳以上は原則1回接種とすることを呼び掛ける通知を出すことを決めた。
13歳未満や、医師が必要と判断した場合は2回接種で問題ない。
 昨季はインフルエンザが記録的な大流行となった上、シーズンの序盤にワクチン製造が遅れて一時的に不足した。
今季は例年の使用実績からの予測で、十分な量を確保できる見通しだが、2回接種の人が多いと12月の第1週目ごろに一時的に足りなくなる恐れがあるという。
 そこで厚労省は、ワクチンを効率的に使い、安定供給を確保するため、1回接種にすることと、必要以上のワクチンを購入しないよう医療機関に呼び掛けることにした。


 昨シーズンを経験して問題がなかったから「13歳以上は1回」をスタンダードにする方針にしたのかな。
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実は何種類もあるインフルエンザワクチン

2018年09月13日 14時09分55秒 | 小児科診療
 一口にインフルエンザワクチンと言っても、何種類もあることをご存知ですか。
 現在日本で用いられているものは「スプリットワクチン」というタイプです。
 が、世界を見渡すと、たくさんの種類があることに驚かされます。
 その辺を、ちょっと紹介します。

 まず、インフルエンザワクチンを大きく分類すると、以下の3種類に分けられます。

① 弱毒化生ワクチン
② 不活化全粒子ワクチン
③ 不活化スプリットワクチン


 有効性の順位も(基本的には)数字通り。
 日本で使われている③は一番効果が低いのですね。
 日本ではその昔1970年代頃までは②が使用されていました。しかし発熱などの副反応が多いと指摘され、改良してできたのが③です。
 ①は米国で使用されていますが、日本ではまだ正式に認可されていません。

 なお、2009年に新型インフルエンザが登場した際は、②が開発され、さらに作用を強くするためアジュバントという免疫強化物質が添加されました。

 ①②③の間で、何が違うのか?
 これは大阪大学の石井健先生のグループが解明しています。

インフルエンザワクチンの作用メカニズムを解明 2010.04.04:大阪大学

 各種ワクチンが免疫細胞のレセプターを刺激する場所が異なるため、それによる免疫応答にも違いが出てくるそうです。
 上記記事の文中に衝撃的な文言がありました。

「日本で季節性、新型インフルエンザのワクチンとして使用されているスプリットワクチンでは自然免疫の活性化がほとんど見られず、ワクチン効果も低い。ほとんどの人がインフルエンザに感染歴があるためスプリットワクチンではすでにある免疫を再活性して効果を発揮していることが実験で判明」

 つまり、インフルエンザ感染歴のない乳幼児に現在のインフルエンザワクチンを接種しても効果が期待できないことが、科学的に証明されたのです。
 これからインフルエンザワクチンの予約をはじめる時期ですが、なんだか力が入りません。
 まあ、過去に感染歴のある幼児以上には効果があることは確かですが。

 ただし、適切なアジュバントを添加すれば、現行スプリットワクチンも乳児から効果が期待できるはず。
 開発を切望します。

 さて、テーマに戻ります。
 5年前の記事ですが、米国では6種類(!?)のインフルエンザワクチンを使い分けるという内容。

インフルエンザ予防接種初出荷、今年は6種類も!2013/9/5:日経メディカル)より抜粋;
 フロリダは連日猛暑が続いていますが、8月に入って、薬局に2013年から14年用のインフルエンザワクチンが入荷してきました。去年までは通常量ワクチンと、65歳以上用の高用量ワクチンを合わせて3種類だったのに、今年は6種類ものワクチンが入荷しました。
 6種類の内訳は
(1)従来の3種類(A型2種とB型1種)のマルチドースバイアル
(2)従来の3種類で保存剤を含まないプレフィルシリンジ
(3)高用量のプレフィルシリンジ
(4)4種類(従来の3種類にもう1種のB型を加えた)のプレフィルシリンジ
(5)4種類の点鼻スプレー
(6)動物のセル(cell)で培養したセルベースのプレフィルシリンジ
──となります。
 値段はバイアルのものが一番安く31.99ドル(約3000円)/1人で、一番高価なものは高用量のプレフィルシリンジで、54.99ドル(約5000円)/1人です。
 米国疫病対策センター(CDC)は、生後6カ月以上の人は全員毎年接種すべきという方針を示しているだけなので、具体的にどのワクチンを患者さまにお勧めするかは薬剤師がカウンセリングで決めます。
 基本的には、65歳以上の高齢者には高用量のインフルエンザワクチン、妊娠中の方には保存剤の入っていない不活化ワクチン、卵アレルギーのある方にはセルベースのワクチンをお勧めします。特に注射針が苦手、という方には点鼻インフルエンザもあり、7歳から49歳の方を対象にしています。
 点鼻スプレーは、6種類の中で唯一の生ワクチンなので、「インフルエンザにかかるのではないか?」と思う人が多く、ほとんどの人が従来のワクチンを望みます。私は一昨年前、点鼻ワクチンを受けました。痛くも痒くもなく、鼻が一瞬だけモソモソしただけでした。針の苦手な方にはお勧めです。


 この6種類と①〜③の関係は?
 え〜と、え〜っと、
①に属するもの:(5)
②に属するもの:なし
③に属するもの:(1)(2)(3)(4)(6)
 ということになると思います。

 では現在の日本の状況はどうか?
 スプリットワクチンのみで粘ってきた日本も状況が変わってきそうな気配があります。
 下記記事から“承認待ちのワクチン”を抜粋すると、

・「FluMist」(アストラゼネカ社) → ①弱毒化生ワクチン
・「Fluzone High-Dose」(サノフィ社) → ③不活化HAスプリットワクチン
・(開発番号:VN-100)皮内投与型ワクチン(第一三共ほか) → ③?
・経鼻ワクチン(阪大微研+国立感染症研究所) → ②不活化全粒子ワクチン
・(開発番号:NSV0001)舌下投与型HAワクチン(阪大微研ほか) → ③+アジュバント

ーーーとなりますか。
 注目すべきは「経鼻不活化全粒子ワクチン」です。
 「不活化全粒子ワクチン」は日本がかつて使用していて、発熱の副反応が目立つために現在のスプリットワクチンへ変更したという“過去に捨てたワクチン”です。副反応は減りましたが、効果も減りました。それを皮下注射ではなく経鼻という投与経路を変更することにより復活させたのですね。
 ちなみに「不活化全粒子ワクチン」はインフルエンザの型の変異に関係なく効くと言われています。
 たぶん、現在のスプリットワクチンとは一線を画すくらいの効果が期待できるのではないでしょうか。
 これは期待できそう・・・ただ、実際に使えるようになるのはいつのことか。


□ 季節性インフルエンザワクチン市場に黒船来航2018/4/2:日経メディカル
 これまで、内資系の企業4社だけが製造、販売してきた国内の季節性インフルエンザワクチンの市場に、最近、外資系の製薬企業が相次いで参入している。
 英アストラゼネカ社傘下のMedImmune社が製造し、海外で「FluMist」として販売されている経鼻噴霧ワクチン(VN-0107/MEDI3250)は、国内で第一三共が承認申請中。同ワクチンは、野生型のウイルス株と製造用のウイルス株から作られる遺伝子再集合体をワクチン製造株にして、鶏卵培養した弱毒化生ワクチン。鼻腔粘膜など低温で増殖しやすいように作られている。海外で実施された小児を対象とする臨床試験では、鶏卵培養した従来のワクチン(不活化HAスプリットワクチン)に比べて有意な発症予防効果が認められた。
 フランス・サノフィ社が製造し、海外で「Fluzone High-Dose」として販売されている高齢者向けの高用量ワクチンも、同社の日本法人が、2017/18シーズンに国内で第1相/2相試験をスタートさせた。同ワクチンは、現行の鶏卵培養したワクチン(不活化HAスプリットワクチン)の抗原(HA)蛋白量を、15μg/株/0.5mLから60μg/株/0.5mLに増やしたもの。米国で、65歳以上の高齢者を対象に実施された臨床試験では、不活化HAスプリットワクチンに比べて有意に赤血球凝集阻害(HAI)抗体価が高まることなどが分かっている。
 実はこれまで、日本の季節性インフルエンザワクチン市場は、“鎖国状態”だった。背景には日本に、海外とは異なる株選定のプロセスや薬事規制が存在していたことが挙げられる。要は、海外で開発・承認を取得したワクチンのデータを基に、外資系企業が日本で承認を取得するのが現実的に難しかったのだ。
 しかし最近、外資系企業が季節性インフルエンザワクチンを日本で開発する動きを活発化させたことや、国内のワクチン産業を海外に出して行こうという機運が高まっていることなどにより、株選定のプロセスを見直したり、薬事規制を海外と調和させたりしようという動きが出ている。まさに、黒船が来航したのである。

◇ 年齢や好みに合ったワクチンを選択する時代へ
 こうした状況に、内資系の企業も続々と新たな季節性インフルエンザワクチンの開発に取り組んでいる。
 第一三共、テルモ、ジャパンワクチン、北里第一三共ワクチンが共同で開発したプレフィルドシリンジ型の皮内投与型季節性インフルエンザワクチン(VN-100)の第3相試験が進んでいる。また、一般財団法人阪大微生物病研究会と国立感染症研究所が開発した経鼻インフルエンザワクチンについて、第2相試験を実施中。さらに、包装材料などを扱う日東電工は、阪大微生物病研究会と共同で、2016年秋から、舌下投与型の季節性インフルエンザHAワクチン(開発番号:NSV0001)の第1相試験を始めた。
 もちろん、これら全てのワクチンが承認を取得するかどうかは分からない。ただ、順調にいけば数年後には、接種に際して、製造株もワクチンの特徴も投与経路も様々な複数の季節性インフルエンザワクチンの中から、年齢や好みに合わせて接種するワクチンを選択する時代がやってくることになる。それぞれの受診者に適したワクチンを選んで接種できるとなれば聞こえはいいが、複数のワクチンをそろえたり、最新情報を収集して受診者に伝えたりする必要が生じるなど、医療従事者の煩雑さは増すことになりそう。果たして、黒船来航は、日本の医療現場にどのようなインパクトをもたらすのだろうか。
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ワクチン効果は「個人」と「社会」の2つのレベルで評価する必要がある。

2018年09月10日 06時52分58秒 | 小児科診療
 ちょっとわかりづらい表現ですね。

 「個人」(直接保護作用) → ワクチンの有効率
 「社会」(間接保護作用) → 集団免疫

 と言い換えることができます。
 ではその説明を・・・

 そのワクチンの効果を評価する際、ふつう「有効率」が用いられます。
 個人がワクチンを接種した場合に、何%の確率で感染・発症を防げるかという数字です。

 例えば、麻疹ワクチンでは95%、水痘ワクチンでは65%、インフルエンザワクチンでは年齢により異なり、健康成人では50〜70%程度。

 しかし、ワクチンの効果を評価する数字は有効率だけではありません。
 そのキーワードの一つに「集団免疫」があります。
 これは、ワクチン接種率を何%まで上げればその社会集団における流行を阻止できるか、という数字です。
 これまでも何回か取りあげてきました。

<このブログ内で「集団免疫」を扱った書き込み>
2015年10月20日)しつこく「集団免疫」効果について
2015年03月21日)「われわれは自分たちだけのためにワクチンを接種しているわけではない」
2014年12月08日)ワクチン賛成派・反対派どちらにも伝えたい「集団免疫」という考え方
2014年02月17日)インフルエンザワクチンを毎年受けている日本人は、22.2%
2013年06月20日)風疹流行を阻止できるワクチン接種率は85%
2012年05月20日)百日咳対策を見直す~米国の「Cocoon Strategy」
2012年05月20日)ワクチン「接種率」の重要性


 「集団免疫」はワクチンの接種により自分を守るのみならず、所属する社会をも守ること。
 そのためには、社会に属するみんながワクチンを接種して「集団免疫率」(Ho)を維持することが必要です。
 「集団免疫率」はワクチンが対象とする感染症(おもにウイルス)の感染力の指標である「基本再生産数(Ro)」から数式で算出可能です。

★ 集団免疫率=(1−1/Ro)×100。

 そして主な感染症のRoとHoは以下の通り(ビケンワクチンニュースVol.12, 2011 より)



 インフルエンザに関して言うと、基本再生算数(Ro)は2-3なので、集団免疫率は50〜67%と計算されますね。
 つまり、最低でも50%以上のヒトがワクチンを接種していないと、集団免疫は期待できないので流行が止められないことになります。

 さて、ここでもう一つ問題があります。
 それは、巡り巡ってワクチンの有効率。
 上記のRoとHoの議論はワクチン有効率が100%という前提での計算です。
 しかしそんなワクチンは存在しません。
 話題にしているインフルエンザワクチンの有効率を、仮に50%と設定すると・・・
 Hoは100%になり、つまり全員ワクチンを接種しないと集団免疫率に達しません。
 もし、ワクチンの有効率が50%を下回れば、理論上、全員が接種しても流行が止められないことになりますね。

 前置きが長くなりましたが、一般のメディアでもようやく「集団免疫」という単語が使われるようになってきました。
 2018年1月の記事を紹介します(下線は私が引きました)。
 日本が過去に行っていたインフルエンザワクチンを小中学生対象に行った集団接種は、「集団免疫」の効果を実証するお手本だったという内容です。ポイントを抜粋しますと・・・

・学童集団がインフルエンザに対する免疫を保持することにより、乳幼児や高齢者間での流行も抑制されていた。
・ワクチンの副反応が話題になり社会問題化する過程の中で、集団接種が中止されるに至り、それまで話題にならなかった乳幼児のインフルエンザ性脳症や福祉施設での流行&死亡がクローズアップされるようになった。
・これらは統計学的解析で証明され論文にもなっている。
・インフルエンザワクチン接種の経緯;
 (1962年)子どもへの接種推奨
 (1977年)予防接種法により小中学生の接種が義務化
 (1987年)集団接種中止
 (1987年)保護者の同意を得た希望者に接種する方式に変更
 (1994年)打っても打たなくてもいい任意接種に変更
 ・・・かつて100%近かった小中学生の接種率は、90年代、数%にまで落ちた。


インフルエンザ大流行。日本から失われた「集団免疫」とは?
 〜30年前、小中学生の集団ワクチン接種で日本の社会にインフルへの免疫ができていた。

錦光山 雅子 Masako Kinkozan(2018年01月27日:HUFFPOST
 厚生労働省が1月26日にまとめたインフルエンザの発生状況によると、全国の推計の患者数は約283万人で、調査を始めた1999年以来最多となった。学級閉鎖や学年・学校閉鎖になった保育園、幼稚園、学校の数は、21日までの1週間で7536カ所にのぼっている。
 大流行のたびに言われるのが、「集団免疫」の必要性だ。いったい、どういうことだろうか?

■小中学生の集団ワクチン接種、覚えてますか?
 今から31年前に当たる1987年までの11年間だけだったが、小中学校でインフルエンザワクチンの集団接種が義務づけられていて、大半の子どもが学校で接種を受けていた時代があった。
 学校に校医が来て、クラスごとに並び、順番で注射を打たれるのだ。筆者もこの時期に小、中学生だったので毎年受けていた。注射は大嫌いだったが、友達の手前、我慢して受けたものだ。
 この集団接種が始まるきっかけは、1957年の新型インフルエンザ(アジアかぜ)の大流行にさかのぼる。約300万人が感染し、約8000人(推計)が亡くなった。このときの教訓から、1962年から子どもへの接種が推奨されるようになり、1977年には予防接種法で小中学生の接種が義務化された。
 だが、ワクチンを接種した後に高熱を出して後遺症が残ったと、国に損害賠償を求める訴訟が相次ぎ、国が敗訴するケースも少なくなかった。こうした社会情勢を背景に政府は法律を改正し、1987年に保護者の同意を得た希望者に接種する方式に変更、 1994年には、打っても打たなくてもいい任意接種に変わった。
 同時にワクチンそのものの効果を疑問視する声も広がり、かつて100%近かった小中学生の接種率は、90年代、数%にまで落ちた。

■子どもの集団接種がなくなった後に起きたこと
 小中学生のほぼ全員が毎年インフルエンザワクチンを打っていた社会がそうでなくなった場合、前後でどんな違いが見えてくるのだろうか。この時期に焦点を当てた研究がいくつかある。
 その一つで、東京都内のある小学校を24年もの間、インフルワクチンの接種状況と学級閉鎖との関連を観察してきた慶応大の研究がある。
 ワクチンが集団で接種されていた時期、希望者だけに接種した時期、そして任意接種になった時期、再び増えてきた時期など5期に分け、その間の接種率と学級閉鎖の数の推移を比べた(表参照)。その結果は、明らかだった。



 大半の子どもが打っていた4年間の学級閉鎖の日数は1.3日。それが緩和されると接種率の低下と反比例する形で8.3日、20.5日と増えていく。1996年には、この学校の児童の接種率は0.1%まで下がった。
 だが同時に、高齢者施設でインフルエンザが流行し、入所者が相次いで亡くなったり、インフルエンザから脳症になって亡くなる子どもが増えたことなどがマスコミで相次いで報じられるようになった。そうした状況から、この学校でも1999年からインフルエンザワクチンを打つ人が増え始めた。それとともに学級閉鎖の日数も減っていった。
 つまり、集団接種をやめて接種率が下がると、その分インフルエンザになる子どもが増えるし、逆に上がると減るのだ。
 だが、子どもの集団接種をやめた影響は、学級閉鎖の増加だけにとどまらなかった。

■小中学生の接種が幼児やお年寄りにも影響を及ぼす
 小中学生の集団接種の停止は、子どもだけではなく、幼児やお年寄りにも影響を及ぼしていたのだった。
 2001年、米医学誌に、日本で子どものインフルエンザワクチンの集団接種が続いていた間と、やめた後のお年寄りの死亡率を日本とアメリカで比べた研究が載った。
 子どもへの集団接種が始まると、インフルエンザで亡くなるお年寄りの数(超過死亡)は減った。お年寄りの数自体は増えていたのに、だ。だが、集団接種がなくなったあたりから再び増えた。
 下のグラフを見ると、それが一目瞭然だ。日本では、ワクチンの集団接種率(棒グラフ)が高かった時期、肺炎やインフルエンザで亡くなる人の割合(折れ線グラフ)は下がっていた。88年に希望者のみの集団接種、そののち94年からの任意接種で接種率が極めて低くなったあたりから増え始めた。アメリカは、それと比べて、対照的だ。



 この研究からは、子どもにワクチンを打つことが、子どもたち自身の発症や重症化を抑えていただけでなく、インフルエンザで亡くなることの多い高齢者の発症をも抑える役割を果たしていたことが分かる。
 研究によると、日本での小中学生にインフルエンザワクチンの集団接種が、年間約3万7000~4万9000人の死亡を防いでいたという。言い換えると子ども420人への接種で、1人の死亡を防いでいたことを意味する。
 研究で裏付けられた、子どもへの集団接種が、社会のほかの集団にも与える影響は「間接予防効果」(集団免疫)と呼ばれ、各国のその後のインフルエンザ対策に大きな影響を与えた。
 一定割合の集団にワクチンを打つ取り組みを続ければ、それは接種を受けた本人や集団に免疫をつけるだけでなく、やがてその社会全体に免疫をつけることになるのだ。
 そのことを説明しているのが、下の図だ。


NATIONAL INSTITUTE OF ALLERGY AND INFECTIOUS DISEASES (NIAID)

 誰もワクチンを打っていない集団だと、インフルエンザのような感染症は集団にあっという間に広がる。ワクチンを打って免疫がついた人たちも多少いれば、その広がりは鈍るかもしれないが効果は一部にとどまる。
 さらにほとんどの人がワクチンを打って免疫を付けている集団ならその間で感染する人はぐっと低くなる。その分、免疫のない人たちと感染した人たちが接触する機会がぐっと減るからだ。
 いま、日本のインフルエンザワクチンは、定期接種の対象になっている高齢者らを除き、任意接種なので、医療機関で打つと1本3500円前後する。接種率が90年代のように数%という事態は脱したが、小中学生で6割前後にとどまるのは、こうしたお金の事情もからむ。
 皮肉なことだが、日本では集団接種をやめた後に、初めて集団接種でもたらされる「社会の免疫」が実感されるようになり、一方で海外で集団接種が進むきっかけになったのだ。
 ワクチンを打った人は確実にインフルエンザにかからないという訳ではないし、一人一人がうがいや手洗い、人混みを避けるなどの予防策を講じることはもちろん大事だが、集団接種という取り組みが、社会全体に「免疫」を与え、インフルエンザの大流行を抑えていたという点も、覚えておきたい。
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1回内服で効く抗インフルエンザ薬「ゾフルーザ®」登場。

2018年09月09日 15時09分43秒 | 小児科診療
 2018年春、新顔の抗インフルエンザ薬が承認されました。
 その名はゾフルーザ®。
 この薬の斬新なところは、今までの抗インフルエンザ薬と作用メカニズムが違うことと、1回だけの内服で終わりと手軽なこと。
 約1年前にもこのブログで取りあげましたが、それがとうとう発売され使用できるようになったのです。

 おなじみのタミフル®、リレンザ®、イナビル®、ラピアクタ®は「ノイラミニダーゼ阻害薬」(ヒトの細胞内で増えたウイルスが細胞から出ていくときに邪魔をする)といって、すべて同じ作用機序なので、併用や変更は意味がありません。

 しかしゾフルーザ®は「キャップ依存性エンドヌクレアーゼ阻害薬」といって、ヒトの細胞に侵入したウイルスが増殖するレベルで邪魔をするメカニズムです(下の記事のイラスト参照)。

 効果はタミフルと同等、副作用はむしろ少なく、なんと言っても「1回飲んで終わり」が最大のメリット(飲み忘れがありません)。
 それから製薬会社の説明では「他の抗インフルエンザ薬より早くウイルスがいなくなるので、二次感染が減ることが予想される」とのこと。


□ 単回投与でインフルエンザ罹患期間を短縮する経口薬 新規抗インフル薬「ゾフルーザ」をどう使う?
2018/3/1 本吉葵=日経メディカル
 2月23日、抗インフルエンザウイルス薬バロキサビル マルボキシル(商品名ゾフルーザ錠)の製造販売が承認された。ゾフルーザは2015年10月、従来より審査期間を短くして早期の実用化を目指す「先駆け審査指定制度」の対象品目に指定されており、申請から4カ月でのスピード承認となった。
 ゾフルーザはオセルタミビルリン酸塩(タミフル)と比較し、抗ウイルス効果が有意に高いことが確認されている。単回投与で済むため、患者の服薬コンプライアンスを心配する必要がない。また、既存薬とは作用機序が異なるので、タミフルをはじめとしたノイラミニダーゼ阻害剤に耐性を獲得したウイルスにも効果が期待できる。適応は、A型またはB型インフルエンザウイルス感染症で、薬価収載後、塩野義製薬から発売される。
 A型またはB型インフルエンザウイルス感染症患者を対象とした第III相臨床試験では、インフルエンザ罹患期間の短縮効果についてはゾフルーザ群(単回投与)とタミフル群(1日2回 5日間投与)で同程度であり、副作用発現率はゾフルーザ群で有意に低かった。またタミフル群と比較し治療開始1、2および4日後のインフルエンザ陽性患者の割合を有意に減少、ウイルス排出期間の短縮においてもゾフルーザ群が優越性を示した。(Open Forum Infect Dis.2017; 4(Suppl 1): S734.)

 
図 主な抗インフルエンザ薬の作用機序(塩野義製薬プレスリリースより)

 ゾフルーザは、mRNA合成の開始に関わるキャップ依存性エンドヌクレアーゼの活性を選択的に阻害し、ウイルスのmRNA合成を阻害することで、インフルエンザウイルスの増殖を抑制する。東北大学加齢医学研究所抗感染症薬開発研究部門教授の渡辺彰氏は「ゾフルーザはウイルス増殖過程のかなり早い段階で作用する。既存薬とは作用機序が異なるので、重症例やタミフル耐性例では他剤と併用することも考えられる」と話す。
 また、タミフルをはじめとするノイラミニターゼ阻害剤はインフルエンザ発症後から48時間以内の投与が必要であり、ゾフルーザも添付文書で発症後速やかに投与することが推奨されているが、「作用機序から考えると、ノイラミニターゼ阻害剤に比べてゾフルーザは、多少投与が遅れても有効な可能性がある」と渡辺氏は話している。



★ 2018.9.19追加情報 ★
 ゾフルーザの臨床試験データが追加されました。

抗インフル薬バロキサビルの第II相・第III相試験の結果/NEJM2018.9.13:ケアネット

 まあ、前述した内容と同じなのですが、一つ気になった記述がありました;

「バロキサビルへの感受性低下につながるI38T/M/F置換を伴うポリメラーゼ酸性蛋白領域の変異は、第II相試験とCAPSTONE-1試験で、それぞれバロキサビル投与例の2.2%と9.7%で認められた。」

 これは「耐性化獲得」ということなのでしょう。
 1回内服で終了ですが、効果が発揮される途中でインフルエンザウイルスの薬剤耐性化が誘導され、効きが悪くなる例が発生するということ。
 10%未満の数字ではある者の、タミフル/リレンザ/イナビル/ラピアクタではあまり聞いたことがありません。

 また、この論文を受けた吉田敦氏の解説がありました。

成人のインフルエンザに対するバロキサビル マルボキシルの効果―合併症のない例での二重盲検ランダム化比較試験2018.9.17:ケアネット

 まとめの部分で、やはり耐性化について言及しています(下線部)。

「バロキサビルは合併症のないインフルエンザにおいて1回投与でも有意に有症期間を短縮し、さらに速やかにウイルス量を減少させることができ、有望な抗インフルエンザ薬であることが裏付けられた。
 なお本検討にはいくつかの興味ある点が見受けられる:
(1)投与開始が早いほうが成績がよい、
(2)オセルタミビルよりも早くウイルス量は減少するが、有症期間は同等である、
(3)ウイルス量の早い減少は感染伝播を減らす面ではやや有利かもしれない。しかしバロキサビル投与によって低感受性関連変異を来すと、ウイルス排泄は長引き、有症期間も長くなってしまう(30%ではプラセボよりも延長する)
 合併症を有する例、小児・高齢者、免疫不全者における成績や、低感受性ウイルスに関する具体的な解釈もこれからではあるが、本剤の使用にあたっては、オセルタミビルに比べ優れている点と上記のような特徴を理解したうえで、考慮すべきであろう。」


 おそらく2018/19シーズンはゾフルーザ®が大量に使用されるでしょう。
 シーズン終了後、この「ウイルス耐性化」をぜひ検証していただきたい。

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2018年冬から、タミフルが10歳代にも使用できるようになりました。

2018年09月09日 14時42分39秒 | 小児科診療
 抗インフルエンザ薬服用後の異常行動が社会問題化し、タミフルが10歳代への投与禁忌とされたのが2007年。
 その後の調査で、タミフル以外の抗インフルエンザ薬使用患者にも見られ、さらには抗インフルエンザ薬未使用患者にも起こりえることが判明し、「果たして薬の副作用なんだろうか?」と議論されてきました。

 そして今回、検討の結果「処方の有無、種類にかかわらず、インフルエンザ罹患時には異常行動を発現する可能性があることが示唆された」として「リスクはゼロではないが、禁忌とするほど危険ではない」と判断し、添付文書上「警告」から「重要な基本的注意」レベルに変更されることになりました。


□ 厚労省 抗インフルエンザ薬タミフルの10代への投与認める 他の薬剤でも異常行動注意を
ミクスOnline2018年8月23日
 厚労省医薬・生活衛生局は8月21日、抗インフルエンザ薬タミフルについて、異常行動が現れることがあるため10代の患者への使用を差し控えるとする添付文書の記述を警告欄から削除するなどの添付文書の改訂を、日本製薬団体連合会に通知で指示した。この中ではタミフルほか他の抗インフルエンザ剤について、発熱から2日間は異常行動が起きうるため転落等の事故に対する防止対策を講じるよう家族らに説明することも盛り込む。タミフルの10代への原則投与禁止は2007年から続けられてきたが、今回、投与を認めることになった。
 同省はタミフルだけで異常行動が起こるとはいえないと判断した。しかし、これまでの研究報告や集計から他の抗インフルエンザウイルス薬を含め「処方の有無、種類にかかわらず、インフルエンザ罹患時には異常行動を発現する可能性があることが示唆された」として、他の抗インフルエンザ薬も異常行動を「重大な副作用」と位置付けるとともに、「重要な基本的注意」の項で、薬剤の服用の有無にかかわらず異常行動が現れることがあり、特に就学以降の小児・未成年者の男性で報告が多く、発熱から2日間以内の発現が多いことを明記し、患者・保護者に対策を講ずることを含めて説明することを求めた。
 薬食審・医薬品等安全対策部会安全対策調査会の報告書によると、ナショナルデータベース(NDB)を用いた2009年~16年までの処方患者100万人あたりの報告例数は、10代においては服用なしで8.0に対し、薬剤服用ありで4.4。その中でタミフルは6.5、リレンザ4.8、ラピアクタ36.5、イナビル3.7と、タミフルだけで異常行動が起こっているとはいえず、服用していない患者でも起きていた。

 改訂指示のあった製品は次のとおり(カッコ内は成分名、先発製造販売企業名)

・タミフルカプセル、ドライシロップ(オセルタミビルリン酸塩、中外製薬)他
・シンメトレル錠、細粒(アマンタジン塩酸塩、サンファーマ)他
・リレンザ(吸入薬)(ザナミビル水和物、グラクソ・スミスクライン)
・イナビル吸入粉末剤(ラニナミビルオクタン酸エステル水和物、第一三共)
・ゾフルーザ錠(バロキサビルマルボキシル、塩野義製薬)
・アビガン錠(ファビピラビル、富山化学)
・ラビアクタ点滴静注液(ペラミビル水和物、塩野義製薬)



 まあ、もともとインフルエンザは「高熱でうなされせん妄状態になる感染症」と認識されてきましたから、“抗インフルエンザ薬の副作用による異常行動”とマスコミが騒ぎはじめた当初、私を含めて医療者は薬のせいなのかどうか、決めつけるのはいかがなものか、と感じていました。
 しかし一旦“薬害”として有名になるとその勢いは止まらないのが日本の世論。
 そのほとぼりが冷めて、冷静に対処できるようになるまで10年以上かかりました。
 
 記事内の薬剤一覧を見て、ちょっと違和感を覚えました。
 「抗インフルエンザ薬」と一口に言っても、作用機序が異なるものが複数含まれています。

<ノイラミニダーゼ阻害薬>
 タミフル®、リレンザ®、イナビル®、ラピアクタ®
<M2蛋白阻害薬>
 シンメトレル®
<RNAポリメラーゼ阻害薬>
 アビガン®(まだ季節性インフルエンザには使えません)
<キャップ依存性エンドヌクレアーゼ阻害薬>
 ゾフルーザ®

 これってヘンですよね。
 まだ臨床使用されていない・されて間もないゾフルーザ®とアビガン®はいい迷惑。

 まるで、2種類のHPVワクチンが内容も添加物も違うのに、一律危険と非難されているのと同じ空気を感じます。

<追記:2018.10.24>
朝日新聞にも同内容の記事が掲載されました。

■ インフル薬のタミフル、10代にも使ってOK なぜ?
2018年10月17日:朝日新聞デジタル

 アウルさん インフルエンザ治療薬(ちりょうやく)のタミフルって問題になっていたよね?

 A タミフルをのんだ中学生が建物から転落死するなどの異常行動が相次いだため、2007年から厚生労働省は10代への使用を原則、禁止してきたんだ。でも、その後、タミフルと異常行動との因果関係は明確ではないと判断した。今年8月、タミフルに添付(てんぷ)される文書の警告欄(らん)から「10歳(さい)以上の未成年の患者(かんじゃ)に、原則として使用を差し控(ひか)えること」が削除(さくじょ)されたよ。

 ア 異常行動はタミフルが原因じゃないんだね。

 A 厚労省研究班の分析(ぶんせき)では、09~16年の100万処方当たりの10代の異常行動の報告数は、タミフルを使った患者が6・5件だった。別のインフル治療薬でも同様に起きている。薬を使わない患者でも8・0件あったんだ。

 ア 薬と関係ないの?

 A 研究班の岡部信彦(おかべのぶひこ)代表は「インフルそのものでも異常行動は起こる可能性がある。特に小学生から中学生の男児に異常行動が出やすい」というよ。厚労省の専門家会議も「インフル治療薬の服用の有無や種類に関わらず、異常行動は発生する」としている。



 ア 薬は使ったほうがいいのかな?

 A インフル治療薬はウイルスの増殖(ぞうしょく)を防ぐけど、使わなくても自然に治ることが多いんだ。ただし、高熱が出る期間の短縮や重症(じゅうしょう)化の予防になるとして、幼児らに使うことが推奨(すいしょう)されている。今年3月からは1回のむだけでよい薬「ゾフルーザ」が販売(はんばい)され、注目されているけど、注意が必要なのは同じだよ。

 ア どう注意するの?

 A 特に小学1年から19歳までがかかった時、少なくとも2日間は家の外に飛び出さないよう玄関(げんかん)や窓のかぎをかけたり、ベランダに面していない部屋で寝(ね)かせたりするよう厚労省は呼びかけている。

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2018年9月初旬、早くも栃木・茨城でインフルエンザによる学級閉鎖

2018年09月06日 08時39分55秒 | 小児科診療
 ワクチンの予約もまだ始まっていない9月初旬、インフルエンザによる学級閉鎖のニュースが飛び込んできました。
 北関東(栃木県、茨城県)からの報告で、両方ともA型です。
 
□ インフルエンザ 栃木県内で今季初1学年を休業 矢板・乙畑小
2018.9.4、下野新聞
 栃木県教委は4日、インフルエンザとみられる症状が相次いだとして、矢板市乙畑小3年を4~6日の3日間、学年休業にしたと発表した。インフルエンザとみられる休業は、県内で今季初めて。
 県教委によると、4日現在、児童22人のうち欠席者は9人。いずれも発熱の症状があり、9人全員がインフルエンザA型の診断が出たという。

□ インフルエンザによる学年閉鎖について(茨城県水戸市上中妻小学校)
2018年9月4日、茨城県
● インフルエンザの集団発生により学年閉鎖の措置を行う旨,下記のとおり報告があり ましたので,お知らせします。
● 今季(平成30年9月~)初めての臨時休業措置(学年閉鎖)になりますので,県民に 広く周知していただくとともに,身近にできるインフルエンザの予防対策についても呼 びかけをお願いします。
1 措置状況
学校名 水戸市立上中妻小学校
所在地 茨城県水戸市大塚町1086−2
校長名 石塚 昌義
在籍者数 222名(児童数 205名,教職員数 17名) 発生状況および措置状況
※本県教育委員会が定めているインフルエンザ様疾患発生時の学級閉鎖等の基準は,学級等の 欠席率が20%に達した場合は,学校医と相談し学校の設置者(市町村教育委員会)が措置 を講ずるとしている。
2 小学校での発生状況(平成30年9月4日12時現在)
※入院者・重症者はおりません。 ※患者18名は医療機関を受診し,迅速検査でインフルエンザAと診断されています。
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