子どもの新型コロナ感染症(COVID-19)の情報が錯綜・迷走しています。
もともと「子どもは軽く済むからワクチンはいらない」と言われてきましたが、
2022年に入ってからの子どもの死亡数は41名と無視できない数字ですし、
急性脳症やMIS-C(小児多系統炎症性症候群)という合併症も報告されています。
情報を整理してみました。
小児でも成人同様、オミクロン株とそれ以前(デルタ株まで)では症状が微妙に違ってきているようです。
オミクロン株(BA.1/2)とそれ以前の症状の比較すると・・・
オミクロン株(BA.1/2)の特徴は、
・発熱、咽頭痛、悪心/嘔吐、意識障害/けいれんが多い。
・味覚/嗅覚障害は少ない。
という報告がありましたので紹介します。
ここでの「意識障害/けいれん」は急性脳症ではなく、熱性けいれんであることが確認されています。
▢ 小児コロナ、オミクロン株流行期の臨床的特徴
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に罹患した患児では、2021年12月から2022年4月までのオミクロン株の流行期において非オミクロン株の流行期よりも、発熱、咽頭痛、悪心/嘔吐、意識障害/けいれんが有意に多かったことが報告された。東京都立豊島病院小児科の鳥海俊氏らが第54回日本小児感染症学会学術集会(2022年11月5~6日、開催地福岡)で発表した。
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対象は、オミクロン株流行前(2020年1月から2021年11月)の205例とオミクロン流行後(2021年12月から2022年4月)の266例の計471例。2群間で性別、平均年齢に有意差はなかったが、有症状者はオミクロン株流行後群において有意に多かった(p<0.001)。
症状別に比較検討したところ、オミクロン株の流行期においては、発熱、咽頭痛、悪心/嘔吐、意識障害/けいれんが、非オミクロン株の流行期よりも有意に多かった。一方で、味覚/嗅覚障害は、オミクロン株流行後で有意に少ないという結果だった。
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次に、オミクロン株(BA.5)流行で話題になった“急性脳症”の記事を紹介します。
子どものオミクロン株感染では、肺炎(呼吸器系の重症化)よりも、
急性脳症(痙攣や意識障害などの中枢神経症状)に要注意、
という事実が浮かび上がってきます。
▢ 小児コロナ患者に、急性脳炎のリスク浮上
※下線は私が引きました。
全国の新型コロナウイルス感染症の第7波は、収束傾向にある。だが、感染者数の動向ばかりに注目が集まり、小児コロナ患者の病像に変化が表れていることはあまり知られていない。国立感染症研究所が毎週公表している感染症発生動向調査によると、2022年に入ってから、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)を原因とする急性脳炎の報告が目立つようになった。その全てが10代以下の子どもの例なのだ。
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感染症法で5類感染症全数報告の対象となっている急性脳炎(脳症を含む)の報告例の推移を見ると、2022年に入ってから、SARS-CoV-2の症例が目立つようになり、第31週(8月1~7日)以降、2例、5例、3例、4例と報告例が多くなっている。過去はどうかというと、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミックが始まった2020年以降は、2021年第41週(10月11~17日)に1例(4歳)の報告があるのみだった。それが2022年は第34週(8月22~28日)までに26例に上り、急性脳炎総数226例の11%を超えている。
気になるのは、SARS-CoV-2を原因とする急性脳炎26例の年齢分布だ。・・・全てが10代以下の子どもの例となっている。
もう一つの調査結果も見ておきたい。日本集中治療医学会小児集中治療委員会が発表している「新型コロナウイルス関連小児重症・中等症例発生状況速報」(2022年9月6日現在)だ。これを見ると、小児コロナ重症・中等症例(152例)の入院理由で最も多いのが「急性脳症疑い」だった。全体の25%を占めており、COVID-19肺炎の19.7%を上回る。
◇ 小児コロナ、第6波から急性脳症疑いが増加
実は第6波から、専門家の間では小児コロナ重症・中等症例の入院理由として「急性脳症疑い」が注目されていた。
日本集中治療医学会小児集中治療委員会と日本小児集中治療連絡協議会の新興再興感染症ワーキンググループが2022年5月に、「新型コロナウイルス感染症第6波における、中枢神経系の異常発生状況速報骨子」を公表している。ポイントは、第6波の入院例(入院日2022年1月8日〜4月30日)において、入院理由が「中枢神経系の異常(けいれん・意識障害・急性脳症疑いなど)」とする報告件数が増加したこと。この間の入院191例のうち、「中枢神経系の異常」を入院理由とする症例が56件(29%)も確認された。内訳を見ると、けいれん48 件、意識障害5件、急性脳症疑い11 件、その他 1 件だった(重複あり、自由記載欄からも収集)。
なぜ、小児コロナで急性脳炎(脳症)が増えているのだろうか。前出の「骨子」では「けいれん・意識障害・急性脳症疑いなどの中枢神経症状とSARS-CoV-2との関係性については不明である」とされている。2022年に入ってから変わったことといえば、COVID-19流行の主流がSARS-CoV-2のオミクロン株に移行したこと。第7波では亜種のBA.5が主役となっている。こうしたウイルス側の変化が、小児コロナの病態に何らかの影響を与えているのではないだろうか。
確かなことは、オミクロン株流行下で、小児コロナ例の病像に変化が出ているという事実だ。前出の骨子では、「けいれんや意識障害を主訴に受診した症例では、軽症ではない病態の可能性を念頭においた診療計画(検査内容、入院適応、治療開始しきい値、外来経過観察計画など)を心掛けるべきだ」などと結論している。第7波はピークアウトを迎えてはいるが、まだまだ患者がいなくなったわけではない。小児コロナでは、新たに急性脳炎のリスクを考慮した診療が求められている。
新型コロナ感染の合併症に「MIS-C」(小児多系統炎症性症候群)という病態が報告されています。
これは、成人では見られない小児だけの疾患で、
従来の「川崎病」に症状が似ていて、
心臓に後遺症が残ることも似ています。
また、急性期ではなく、感染後約1か月(2~6週間後)に発症することも特徴です。
日本ではまだ死亡例は報告されていませんが、
アメリカでは74名の子どもが命を奪われたと報告されています。
NHKで取り上げられた時のニュース記事を紹介します;
▢ コロナ感染数週間後の子どもに心臓など働き悪くなる「MIS-C」
新型コロナウイルスに感染した子どものうち全国で少なくとも64人が、感染から数週間後に心臓の働きなどが悪くなる「MIS-C=小児多系統炎症性症候群」と診断されていたことが、自治医科大学附属病院などの調査で分かりました。
「MIS-C=小児多系統炎症性症候群」は、新型コロナに感染した子どもにまれに見られ、感染の2週間から6週間後に心臓など複数の臓器の働きが悪くなるなどして、欧米では死亡するケースも報告されています。
これについて自治医科大学附属病院の小児科医のグループなどが、全国のおよそ2000の医療機関を対象に、ことしの夏から行った調査の結果がまとまりました。
それによりますと、国内ではこれまでに子どもが死亡したケースはないものの、「MIS-C」と診断された子どもは全国で少なくとも64人に上ることが分かったということです。
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◇「MIS-C」米では9073人診断 うち74人死亡
アメリカのCDC=疾病対策センターによりますと、「MIS-C=小児多系統炎症性症候群」は、新型コロナウイルスに感染した子どもなどに見られ、心臓や肺、消化器系統など複数の臓器に炎症が起きることが知られています。
症状は、
▽発熱
▽腹痛
▽目の充血
▽下痢
▽おう吐など
重症化すると、心臓の働きが低下し死亡するケースもあるとしています。
アメリカでは、おととしから先月末までに9073人が「MIS-C」と診断され、このうち74人が死亡しているということです。
日本小児科学会などによりますと、これまでに国内での死亡例はありませんが、ことしに入り、子どもの感染が増えてからは、各地の医療機関で「MIS-C」と診断される症例が目立つようになったということです。
このため、新型コロナに感染した子どもの体調に異変が起きた際は、「MIS-C」かどうか早期に診断したうえで、専門的な治療を始められるかが重要になります。
<参考>
▢ 小児 COVID-19 関連多系統炎症性症候群(MIS-C/PIMS)診療コンセンサスステートメント
最後に、日本における症に死亡例の報告を提示します。
2022年に入ってから8/31までに41名の子どもが新型コロナで命を奪われています。
この数字は、季節性インフルエンザと同等以上の死亡数です。
この報告の中でも、
「小児の重症化は肺炎(呼吸器症状)ではなく急性脳症(神経症状)」
と注意喚起されています。
さらに注目すべきは、
「小児死亡例はすべてワクチン未接種だった」
という事実です。
▢ 新型コロナウイルス感染後の20歳未満の死亡例に関する積極的疫学調査
(第一報):2022年8月31日現在
※下線は私が引きました。
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【考察】
2022年8月31日時点における、2022年1月1日から2022年8月31日までに報告された小児等の死亡例、41例について暫定的な報告を行った。症例数は、7月中旬から増加していた。
今回の実地調査で内因性死亡が明らかとされた小児等の死亡例において、基礎疾患のなかった症例も死亡していることから、SARS-CoV-2感染後は、基礎疾患のある者はもちろん、基礎疾患のない者においても、症状の経過を注意深く観察することが必要であると考えられた。新型コロナワクチンは、接種対象でも多くの小児の死亡例では未接種であった。また、症状は、日本小児科学会による国内小児におけるCOVID-19レジストリ調査と比較して、呼吸器症状以外の症状のうち、悪心嘔吐(52%)、意識障害(45%)、経口摂取不良(31%)、痙攣(28%)の割合が高かった。新型コロナウイルス感染症における重症度分類は、主に呼吸器症状等により分類されているが、小児においては、痙攣、意識障害などの神経症状や、嘔吐、経口摂取不良等の呼吸器症状以外の全身症状の出現にも注意を払う必要があると考えられた。発症から死亡までの日数は、1週間未満が73%を占めており、特に発症後1週間の症状の経過観察が重要であると考えられた。
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ここまで読み終えた方、ご苦労様でした。
いかがでしたしょうか。
「子どもは軽く済むからワクチンはいらない、と言えない」
と私は感じています。