徒然日記

街の小児科医のつれづれ日記です。

新型コロナは感染を繰り返すと重症化しやすく、後遺症が残りやすい。

2022年11月29日 17時27分13秒 | 小児科診療
ふつう風邪のウイルスは繰り返し感染し、
だんだん軽く済むようになり、
だんだん罹りにくくなるのが一般的です。

新型コロナも当初、そう考えられてきました。

しかし最近、それを覆す論文が発表されました。
感染を繰り返すと、
重症化しやすくなり、
後遺症リスクも増えるというのです。

今までの常識が通用しない新型コロナウイルス・・・
これはただ事ではありません。

なお、ワクチン接種回数は重症化リスク・後遺症リスクと関連はなかったと報告されています。

オミクロン亜系統と「再感染」を警戒すべき本当の理由 重症化・後遺症リスクの捉え方
AERA:2022/11/29)より抜粋;
(下線は私が引きました)
・・・
■ 後遺症リスクも高まる 
 理論的には、感染によって獲得した免疫にも、重症化を防ぐ効果があると考えられるが、実際は異なることが米国の退役軍人ヘルスケア・システムの臨床疫学センターなどの研究チームが医学誌「ネイチャー・メディシン」に発表した論文でわかった。再感染すると、初感染の際に比べて重症化するリスクが高くなり、しかも後遺症のリスクも高まる恐れがあるという。 
 研究チームは米退役軍人省の退役軍人の健康データベースを使い、新型コロナウイルスに1回だけ感染した44万3588人と、再感染した4万947人を比較した。再感染した人のうち2回感染した人が92.8%、3回感染が6.3%、4回以上が0.9%だった。 
 感染から半年間の死亡リスクは、再感染した人は1回だけの感染の人の2.17倍高かった。また、入院が必要になるほど重症化するリスクは3.32倍高かった

 後遺症のリスクも再感染した人は高かった肺の機能に関連する後遺症は1回感染の人の3.54倍、心臓など循環器関係の後遺症は3.02倍、疲労感は2.33倍、胃腸など消化器関連の後遺症は2.48倍、腎臓関連の後遺症は3.55倍、メンタルヘルス面での後遺症は2.14倍、糖尿病は1.7倍リスクが高かった。 
 初回感染から2回目の感染までの期間は127~330日と幅があり、中央値は191日間だった。2回目から3回目の感染までの期間は115~228日で、中央値は158日だった。次の感染までの期間の長さは、重症化や後遺症の起こるリスクとは関係なかった。 

■ 感染回数が増えるほど 
 再感染した人のうちワクチンを2回以上打った人は36.2%、1回打った人は12.6%、打っていない人は51.3%だった。1回だけの感染の人ではワクチンを2回以上打った人は47.2%、1回打った人は11.7%、打っていない人は41.1%だった。一見、1回だけ感染の人の方が、ややワクチン接種率が高いように見えるが、死亡や重症化、後遺症の発生リスクは、ワクチン接種の有無とは関係なかった。 
 一方、感染の回数が増えるほど、リスクは高くなる。 
 同じデータベースの1度も感染していない533万4729人と比較すると、1回だけ感染した人は、少なくとも1種類の後遺症で悩むリスクは1.37倍高かった。それが2回の感染になるとリスクは2.07倍、3回以上の感染だと2.35倍に高まった。一方、2回感染の人は、1回感染の人よりも後遺症のリスクが1.51倍高かった。

<原著論文>

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併用薬禁忌薬が多いパキロビッドは、実用できるのか?

2022年11月29日 06時38分01秒 | 小児科診療
パキロビッド(一般名:ニルマトレルビル/リトナビル )は重症リスク因子のある患者さんの、
重症化予防として使用される薬剤として設定されています。

肝酵素「チトクロームP450 3A(CYP3A)」で代謝されるため、
同じ酵素で代謝されるほかの薬剤と競合し、
作用が変化します。
そのため、併用禁忌薬が39種類ととても多いのが特徴です。
さらに重度の腎機能障害もしくは肝機能障害を有する患者も、
本剤の禁忌とされています。

実際の臨床現場では、
この禁忌の多さがどのように影響しているのでしょうか。

入院患者のうち約15%が使えなかったとしています。
そして死亡例に限定すると、約50%に使用できなかった。
つまり重症であればあるほど禁忌事項に該当するので、
使いたくても使えないというジレンマが発生するのです。

今回緊急承認されたゾコーバも、
パキロビッド同様、使用禁忌薬が36種類と多いのが特徴です。
軽症例向けの薬であるため、
パキロビッドほどジレンマが発生する可能性は低いと思われますが、
実際の処方には医師・患者双方が注意する必要があります。


<参考>
■ COVID-19入院患者におけるパキロビッド禁忌の割合は?





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ゾコーバ®の使い方

2022年11月28日 06時17分46秒 | 小児科診療
日本感染症学会がゾコーバの使い方を含めたガイドライン「COVID-19に対する薬物治療の考え方 第15版」を11/22に発表していました。
前項目の私のコメントを、より具体化したような内容なので、
引用させていただきます。

一言でいうと、

重症化リスク因子のない患者で、
症状(高熱・咳・咽頭痛)がきつい場合に、
発症後72時間以内に投与を考慮する、

ということになりそうです。

・COVID-19の5つの症状(鼻水または鼻づまり、喉の痛み、咳の呼吸器症状、熱っぽさまたは発熱、倦怠感[疲労感])への効果が検討された臨床試験における成績等を踏まえ、高熱・強い咳症状・強い咽頭痛などの臨床症状がある者に処方を検討する。

・重症化リスク因子のない軽症例では薬物治療は慎重に判断すべきということに留意して使用する。

・重症化リスク因子のある軽症例に対して、重症化抑制効果を裏付けるデータは得られていない。

・SARS-CoV-2による感染症の症状が発現してから遅くとも72時間以内に初回投与する。

・(相互作用の観点から)服用中のすべての薬剤を確認する(添付文書には併用できない薬剤として、降圧薬や脂質異常症治療薬、抗凝固薬など36種類の薬剤を記載)。

・妊婦又は妊娠する可能性のある女性には投与しない。

・注意を要する主な副作用は、HDL減少、TG増加、頭痛、下痢、悪心など。


今回は新たに設けられた「緊急承認」の制度(※)で承認を行ったため、シオノギ製薬は有効性や安全性についての追加のデータの提出などを行った上で、今後1年以内に通常の薬事承認の申請を行うことが義務づけられています。
そしてシオノギ製薬は、通常の薬事承認を目指すことを発表しています。

※ 緊急承認制度とは、今年(2022年)5月に新設され、安全性は従来通りですが、有効性は「推定」によって承認できる制度です。

今回の承認にはどうも“大人の事情”が見え隠れすると感じるのは、
私だけでしょうか・・・。


<参考>
■ ゾコーバ緊急承認を反映、コロナ薬物治療の考え方第15版/日本感染症学会
■ 新型コロナ 国産の飲み薬「ゾコーバ」が承認 効果は
■ 「高価なかぜ薬」緊急承認の不可解〜経口COVID-19治療薬ゾコーバをめぐって
東京脳神経センター整形外科・脊椎外科部長 川口浩

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ゾコーバ® はタミフル® になり得るのか?

2022年11月27日 14時26分38秒 | 小児科診療
2022/11/22にゾコーバ®(一般名:エンシトレルビル )が緊急承認されました。
対象は「12歳以上のリスク因子のない新型コロナ患者」です。

今までも新型コロナ用内服薬は
・ラゲブリオ
・パキロビッド
の2種類がありましたが、
これらは「重症化リスク因子のある新型コロナ患者」が対象でしたので、
持病がなく健康体の人が新型コロナ陽性になっても使えませんでした。
こちらのサイトにわかりやすい一覧表がありましたので引用させていただきます;



ですから重症化リスク因子のない患者に使える“画期的”な薬が登場したわけです。

では季節性インフルエンザに対するタミフルのように使えるか、
手に入るかというと、
そういうわけではなさそうです。

発売後2週間は、登録された医療機関と薬局経由でないと処方・入手できません。
同サイトよりフロー図を引用します;



当院は小児科であり、
パキロビッド処方医療機関に登録してきませんでしたので、
今回の措置から外れてしまい、
今のところ処方できません。

また、併用禁忌薬がたくさんたくさんあり(後述)、
それをチェックリストで確認し、
かつ同意書を作成する必要があり、
なんだかハードルが高いのです。

つまり、まだまだタミフルのように普及するレベルではないということ。

このゾコーバという薬、
記憶されている方もいると思われます。

そして内容を書き換えて再申請した結果、
今回は承認されたのです。

その中身は、
有効性を評価する症状を12項目から5項目へ減らしたもの。
つまり、
「12項目では内服群と非内服群で症状改善に差がなかった」
けど、
「5項目に減らしたら差が出た」
とのこと。
かつ評価するのは「症状改善」ではなく「症状消失までの時間」に変更。

なんだかなあ・・・これって“ずる”じゃないんですか?
まあ、有効性は微妙なんですね。

その5項目とは・・・
1.鼻水または鼻づまり
2.喉の痛み
3.咳の呼吸器症状
4.熱っぽさまたは発熱
5.けん怠感 (疲労感)
※ 「快復」の定義は、5 症状のすべてが軽減か、もしくはそれ以上悪くならなかった状態。

開発側の言い分は、
・従来の抗ウイルス薬はデルタ株流行期に治験された。
・今回の治験はオミクロン株流行期に行われたため、症状が変化したためアレンジが必要だった。
とのことです。

あれ?
「入院」とか「死亡」とかは入ってない・・・、
つまり「重症化予防」のデータがありません。

開発側の言い分は、
・重症化リスク因子のある患者が対象ではない
・重症化リスク因子のない患者用に開発した薬
とのこと。

タミフルも発熱期間を1日短くする薬効ですが、
ゾコーバは症状が消える期間が8日 → 7日に短くなる薬効。
この臨床試験は日本・韓国・ベトナムで行われました。
さらに日本人に限定すると症状短縮が1日ではなく6時間のみ、というデータだそうです。

突っ込み処がいくつもあり、
タミフルが登場したときよりインパクトがないですねえ。

また、こちらのサイトによると併用禁忌薬(36種類)は以下の通り;

▼ ピモジド、キニジン硫酸塩水和物(統合失調症等治療薬のオーラップ錠)
▼ ベプリジル塩酸塩水和物(狭心症等治療薬のベプリコール錠)
▼ チカグレロル、エプレレノン(心筋梗塞等治療薬のブリリンタ錠)
▼ エルゴタミン酒石酸塩・無水カフェイン・イソプロピルアンチピリン(頭痛治療薬のクリアミン配合錠)
▼ エルゴメトリンマレイン酸塩(子宮収縮止血剤のメテルギン錠ほか)
▼ メチルエルゴメトリンマレイン酸塩(子宮収縮止血剤のパルタンM錠ほか)
▼ ジヒドロエルゴタミンメシル酸塩(頭痛等治療薬のヒポラール錠)
▼ シンバスタチン(高脂血症治療薬のリポバス錠ほか)
▼ トリアゾラム(睡眠導入剤のハルシオン錠ほか)
▼ アナモレリン塩酸塩(抗がん剤のエドルミズ錠)
▼ イバブラジン塩酸塩(心不全治療薬のコララン錠)
▼ ベネトクラクス〔再発又は難治性の慢性リンパ性白血病(小リンパ球性リンパ腫を含む)の用量漸増期〕(抗がん剤のベネクレクスタ錠)
▼ イブルチニブ(白血病等治療薬のイムブルビカカプセル)
▼ ブロナンセリン(統合失調症治療薬のロナセン錠ほか)
▼ ルラシドン塩酸塩(統合失調症等治療薬のラツーダ錠ほか)
▼ アゼルニジピン(高血圧症治療薬のカルブロック錠)
▼ アゼルニジピン・オルメサルタンメドキソミル(高血圧症治療薬のレザルタス配合錠)
▼ スボレキサント(不眠症治療薬のベルソムラ錠)
▼ タダラフィル(肺動脈性肺高血圧症治療薬のアドシルカ錠)
▼ バルデナフィル塩酸塩水和物(勃起不全症治療薬のレビトラ錠ほか)
▼ ロミタピドメシル酸塩(高コレステロール血症治療薬のジャクスタピッドカプセル)
▼ リファブチン(抗菌剤のミコブティンカプセル)
▼ フィネレノン(腎臓病治療薬のケレンディア錠)
▼ リバーロキサバン(血栓塞栓症治療薬のイグザレルト錠)
▼ リオシグアト(血栓塞栓症治療薬のアデムパス錠)
▼ アパルタミド(前立腺がん治療薬のアーリーダ錠)
▼ カルバマゼピン(統合失調症等治療薬のテグレトール錠)
▼ エンザルタミド(前立腺癌治療薬のイクスタンジ錠)
▼ ミトタン(副腎がん治療薬のオペプリム)
▼ フェニトイン(抗てんかん薬のアレビアチン錠ほか)
▼ ホスフェニトインナトリウム水和物(抗けいれん剤のホストイン静注)
▼ リファンピシン(抗菌剤のリファジンカプセル)
▼ セイヨウオトギリソウ(St.John’sWort、セント・ジョーンズ・ワート)含有食品(各種ハーブなど)

・・・とても覚えきれません。

現在は新型コロナ関連の医療費は公費負担ですが、
来年4月には2類から5類へ変更されて保険診療になると噂され、
つまり3割負担になると思われます。
ゾコーバの薬価は、他の新型コロナ薬と同等であれば1クール10万円位でしょうから、3割負担でも3万円・・・。
「症状が消える期間が8日 → 7日に短くなる」
薬に3万円払うかというと、希望者は少ないと思われます。

以上、新薬ゾコーバについて、概観してみました。
「軽症者でリスク因子がない患者に使える!」
と鳴り物入りで承認されましたが、その内容は、

・症状がほんのちょっと短くなるだけ
・重症化は防げない?
・72時間以内に開始しないと無効
・飲み合わせが悪い薬がたくさん(31種類)
・まだ手に入りにくい
・高い

等々、問題点が山積み状態であることが判明しました。
皆さんはどう感じましたか?


<参考>
■ 誤解しないで 新型コロナ新承認薬「ゾコーバ」は簡単に処方できない
倉原優(呼吸器内科医)
■ 国産初の抗ウイルス薬の飲み薬「ゾコーバ」審議会で承認を了承 診療現場での意義や承認プロセスに疑問も
■ コロナ感染症の新たな経口治療薬「ゾコーバ錠」を緊急承認、多数薬剤と併用禁忌・注意ある点に留意を―厚労省
■ 塩野義の“コロナ飲み薬”、承認の可否判断が先送りされたわけ
■ 塩野義コロナ薬「承認見送り」の審議に残る違和感目立った「緊急承認」の制度趣旨との隔たり

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子どもへの新型コロナワクチン、効果と副反応(2022年11月現在)

2022年11月24日 05時55分38秒 | 小児科診療
ワクチンを接種していない世代である子どもが、
新型コロナ流行の主役になりつつあります。

新型コロナワクチンは、
当初医療関係者へ、
その後高齢者に承認され、
徐々に年齢が下げられてきました。

・16歳以上:2020年12月
・12歳以上:2021年5月
・5~11歳:2022年1月
・6か月~4歳:2022年10月

しかし、接種率がなかなか上がらないようで、
2022年11月現在のリアルデータは以下の通り;
(12~19歳)
 2回接種完了者:74.3%
 3回接種完了者:42.7%
(5~11歳)
 2回接種完了者:19.1%
 3回接種完了者:4.7%

日本小児科学会は、乳幼児への接種を“推奨”しています。

テレビで報道される街の声を聞くと、
具体的に知りたいこと、つまり、
・有効性
・安全性
についての情報が今一つ伝わってこない、
と不安を感じてる人が多いように感じます。

2022年11月23日に開催された「東日本小児科学会」で、
新潟大学の斎藤明彦先生により、
保護者の悩みに答える形式で最新のデータが提示されましたので、
ここに提示します。

結論から申し上げると、

小児におけるオミクロン株に対する新型コロナワクチンは、
・発症予防約70%(ただし数か月間のデータ)
・入院予防効果40%(ただし重篤例予防は80%)
・副反応はほかの年齢層と同等か軽度

ということになります。

繰り返し単純なことを言いますが、
新型コロナパンデミックを乗り切るには、
国民の大部分が免疫を獲得する必要があります。

それを自然感染で獲得するか、ワクチンで獲得するか・・・

ワクチンはウイルスの一部を体に入れて、
ヒトの免疫システムをだまして免疫獲得させる技術、
自然感染はウイルス全部が体に入って暴れまくるので、
体へのダメージの強さは自然感染>ワクチンであることは明白です。

そして大きな違いは、
自然感染は周囲に広がる、
ワクチンは周囲に広げない、
こと。
この点が社会的インパクトに大きく影響します。

自然感染した場合は、
家族が濃厚接触者となり、
社会生活が制限されます。
高齢者が同居している場合は、
隔離・感染対策に最大限の注意を払う必要があります。

ワクチン接種では、
接種部位の腫れや痛み、
一過性の発熱はありますが、
接種した本人だけの問題にとどまります。

ワクチン接種のメリットとデメリットを比較して考えましょう。
私の印象は「季節性インフルエンザワクチンより有効」です。


1.有効性は?

(アメリカからの報告)
・デルタ株流行期では小児における入院予防効果は90%以上
・オミクロン株流行期では入院予防効果は約40%(ただし重症例は約80%予防、軽症例は約20%予防)

(ファイザー社のデータ)
・オミクロン株流行期の発症予防効果
(ただし観察機関中央値は3回接種後約2か月)
 6~23か月:75.8%
 2~4歳:71.8%

2.安全性は?

(ファイザー社のデータ)
・生後6か月~5歳未満における3回接種1か月後の中和抗体平均抗体価;
 6か月~2歳未満:1406.5
 2~4歳:1535.2
→ 16~25歳のワクチン2回接種後の抗体価と同等

(アメリカからの報告)
・5~11歳のワクチン副反応を解析(N=48795)
・ファイザー社製ワクチンの1回目と2回目の解析
→ 有害事象はまれ、心筋炎の頻度は低い

(アメリカからの報告)
・生後6か月~4歳に対するファイザー社製ワクチンの安全性を
 V‐safe システムで解析(N=接種890378、副反応報告8541)
(6か月~2歳)
 局所反応:①19.0%、②18.3%
 全身反応:①55.8%、②47.1%
 発熱:①18.7%、②13.8%
(3~5歳未満)
 局所反応:①28.4%、②26.5%
 全身反応:①32.2%、②29.2%
 発熱:①12.1%、②10.9%
・VAERS(予防接種安全性監視システム)によると、
 496件の報告中486件(98%)は非重篤
・重篤な10件中、4件が痙攣(心筋炎はゼロ)
→ 他の年齢層と比較して副反応頻度は同等か低く、
 重篤な副反応の報告なし

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子どもの新型コロナ感染症~軽い?重い?ワクチンは必要?

2022年11月20日 07時24分40秒 | 新型コロナ
子どもの新型コロナ感染症(COVID-19)の情報が錯綜・迷走しています。
もともと「子どもは軽く済むからワクチンはいらない」と言われてきましたが、
2022年に入ってからの子どもの死亡数は41名と無視できない数字ですし、
急性脳症MIS-C(小児多系統炎症性症候群)という合併症も報告されています。

情報を整理してみました。
小児でも成人同様、オミクロン株とそれ以前(デルタ株まで)では症状が微妙に違ってきているようです。

オミクロン株(BA.1/2)とそれ以前の症状の比較すると・・・
オミクロン株(BA.1/2)の特徴は、
・発熱、咽頭痛、悪心/嘔吐、意識障害/けいれんが多い。
・味覚/嗅覚障害は少ない。
という報告がありましたので紹介します。
ここでの「意識障害/けいれん」は急性脳症ではなく、熱性けいれんであることが確認されています。

小児コロナ、オミクロン株流行期の臨床的特徴
 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に罹患した患児では、2021年12月から2022年4月までのオミクロン株の流行期において非オミクロン株の流行期よりも、発熱、咽頭痛、悪心/嘔吐、意識障害/けいれんが有意に多かったことが報告された。東京都立豊島病院小児科の鳥海俊氏らが第54回日本小児感染症学会学術集会(2022年11月5~6日、開催地福岡)で発表した。
・・・
 対象は、オミクロン株流行前(2020年1月から2021年11月)の205例とオミクロン流行後(2021年12月から2022年4月)の266例の計471例。2群間で性別、平均年齢に有意差はなかったが、有症状者はオミクロン株流行後群において有意に多かった(p<0.001)。
 症状別に比較検討したところ、オミクロン株の流行期においては、発熱、咽頭痛、悪心/嘔吐、意識障害/けいれんが、非オミクロン株の流行期よりも有意に多かった。一方で、味覚/嗅覚障害は、オミクロン株流行後で有意に少ないという結果だった。
・・・

次に、オミクロン株(BA.5)流行で話題になった“急性脳症”の記事を紹介します。
子どものオミクロン株感染では、肺炎(呼吸器系の重症化)よりも、
急性脳症(痙攣や意識障害などの中枢神経症状)に要注意
という事実が浮かび上がってきます。

小児コロナ患者に、急性脳炎のリスク浮上
※下線は私が引きました。
 全国の新型コロナウイルス感染症の第7波は、収束傾向にある。だが、感染者数の動向ばかりに注目が集まり、小児コロナ患者の病像に変化が表れていることはあまり知られていない。国立感染症研究所が毎週公表している感染症発生動向調査によると、2022年に入ってから、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)を原因とする急性脳炎の報告が目立つようになったその全てが10代以下の子どもの例なのだ。
・・・
 感染症法で5類感染症全数報告の対象となっている急性脳炎(脳症を含む)の報告例の推移を見ると、2022年に入ってから、SARS-CoV-2の症例が目立つようになり、第31週(8月1~7日)以降、2例、5例、3例、4例と報告例が多くなっている。過去はどうかというと、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミックが始まった2020年以降は、2021年第41週(10月11~17日)に1例(4歳)の報告があるのみだった。それが2022年は第34週(8月22~28日)までに26例に上り、急性脳炎総数226例の11%を超えている。
 気になるのは、SARS-CoV-2を原因とする急性脳炎26例の年齢分布だ。・・・全てが10代以下の子どもの例となっている。
 もう一つの調査結果も見ておきたい。日本集中治療医学会小児集中治療委員会が発表している「新型コロナウイルス関連小児重症・中等症例発生状況速報」(2022年9月6日現在)だ。これを見ると、小児コロナ重症・中等症例(152例)の入院理由で最も多いのが「急性脳症疑い」だった。全体の25%を占めており、COVID-19肺炎の19.7%を上回る。

◇ 小児コロナ、第6波から急性脳症疑いが増加
 実は第6波から、専門家の間では小児コロナ重症・中等症例の入院理由として「急性脳症疑い」が注目されていた。
 日本集中治療医学会小児集中治療委員会と日本小児集中治療連絡協議会の新興再興感染症ワーキンググループが2022年5月に、「新型コロナウイルス感染症第6波における、中枢神経系の異常発生状況速報骨子」を公表している。ポイントは、第6波の入院例(入院日2022年1月8日〜4月30日)において、入院理由が「中枢神経系の異常(けいれん・意識障害・急性脳症疑いなど)」とする報告件数が増加したこと。この間の入院191例のうち、「中枢神経系の異常」を入院理由とする症例が56件(29%)も確認された。内訳を見ると、けいれん48 件、意識障害5件、急性脳症疑い11 件、その他 1 件だった(重複あり、自由記載欄からも収集)。
 なぜ、小児コロナで急性脳炎(脳症)が増えているのだろうか。前出の「骨子」では「けいれん・意識障害・急性脳症疑いなどの中枢神経症状とSARS-CoV-2との関係性については不明である」とされている。2022年に入ってから変わったことといえば、COVID-19流行の主流がSARS-CoV-2のオミクロン株に移行したこと。第7波では亜種のBA.5が主役となっている。こうしたウイルス側の変化が、小児コロナの病態に何らかの影響を与えているのではないだろうか。
 確かなことは、オミクロン株流行下で、小児コロナ例の病像に変化が出ているという事実だ。前出の骨子では、「けいれんや意識障害を主訴に受診した症例では、軽症ではない病態の可能性を念頭においた診療計画(検査内容、入院適応、治療開始しきい値、外来経過観察計画など)を心掛けるべきだ」などと結論している。第7波はピークアウトを迎えてはいるが、まだまだ患者がいなくなったわけではない。小児コロナでは、新たに急性脳炎のリスクを考慮した診療が求められている。

新型コロナ感染の合併症に「MIS-C」(小児多系統炎症性症候群)という病態が報告されています。
これは、成人では見られない小児だけの疾患で、
従来の「川崎病」に症状が似ていて、
心臓に後遺症が残ることも似ています。
また、急性期ではなく、感染後約1か月(2~6週間後)に発症することも特徴です。
日本ではまだ死亡例は報告されていませんが、
アメリカでは74名の子どもが命を奪われたと報告されています。

NHKで取り上げられた時のニュース記事を紹介します;

 コロナ感染数週間後の子どもに心臓など働き悪くなる「MIS-C」
2022年11月16日)より抜粋;
 新型コロナウイルスに感染した子どものうち全国で少なくとも64人が、感染から数週間後に心臓の働きなどが悪くなる「MIS-C=小児多系統炎症性症候群」と診断されていたことが、自治医科大学附属病院などの調査で分かりました。
 「MIS-C=小児多系統炎症性症候群」は、新型コロナに感染した子どもにまれに見られ、感染の2週間から6週間後に心臓など複数の臓器の働きが悪くなるなどして、欧米では死亡するケースも報告されています。
 これについて自治医科大学附属病院の小児科医のグループなどが、全国のおよそ2000の医療機関を対象に、ことしの夏から行った調査の結果がまとまりました。
 それによりますと、国内ではこれまでに子どもが死亡したケースはないものの、「MIS-C」と診断された子どもは全国で少なくとも64人に上ることが分かったということです。
・・・
◇「MIS-C」米では9073人診断 うち74人死亡
 アメリカのCDC=疾病対策センターによりますと、「MIS-C=小児多系統炎症性症候群」は、新型コロナウイルスに感染した子どもなどに見られ、心臓や肺、消化器系統など複数の臓器に炎症が起きることが知られています。
症状は、
 ▽発熱
 ▽腹痛
 ▽目の充血
 ▽下痢
 ▽おう吐など
重症化すると、心臓の働きが低下し死亡するケースもあるとしています。

 アメリカでは、おととしから先月末までに9073人が「MIS-C」と診断され、このうち74人が死亡しているということです。
 日本小児科学会などによりますと、これまでに国内での死亡例はありませんが、ことしに入り、子どもの感染が増えてからは、各地の医療機関で「MIS-C」と診断される症例が目立つようになったということです。
 このため、新型コロナに感染した子どもの体調に異変が起きた際は、「MIS-C」かどうか早期に診断したうえで、専門的な治療を始められるかが重要になります。

<参考>
小児 COVID-19 関連多系統炎症性症候群(MIS-C/PIMS)診療コンセンサスステートメント 

最後に、日本における症に死亡例の報告を提示します。
2022年に入ってから8/31までに41名の子どもが新型コロナで命を奪われています。
この数字は、季節性インフルエンザと同等以上の死亡数です。
この報告の中でも、
小児の重症化は肺炎(呼吸器症状)ではなく急性脳症(神経症状)
と注意喚起されています。
さらに注目すべきは、
小児死亡例はすべてワクチン未接種だった
という事実です。

新型コロナウイルス感染後の20歳未満の死亡例に関する積極的疫学調査
(第一報):2022年8月31日現在
※下線は私が引きました。
・・・
【考察】
 2022年8月31日時点における、2022年1月1日から2022年8月31日までに報告された小児等の死亡例、41例について暫定的な報告を行った。症例数は、7月中旬から増加していた。
 今回の実地調査で内因性死亡が明らかとされた小児等の死亡例において、基礎疾患のなかった症例も死亡していることから、SARS-CoV-2感染後は、基礎疾患のある者はもちろん、基礎疾患のない者においても、症状の経過を注意深く観察することが必要であると考えられた。新型コロナワクチンは、接種対象でも多くの小児の死亡例では未接種であった。また、症状は、日本小児科学会による国内小児におけるCOVID-19レジストリ調査と比較して、呼吸器症状以外の症状のうち、悪心嘔吐(52%)、意識障害(45%)、経口摂取不良(31%)、痙攣(28%)の割合が高かった新型コロナウイルス感染症における重症度分類は、主に呼吸器症状等により分類されているが、小児においては、痙攣、意識障害などの神経症状や、嘔吐、経口摂取不良等の呼吸器症状以外の全身症状の出現にも注意を払う必要があると考えられた。発症から死亡までの日数は、1週間未満が73%を占めており、特に発症後1週間の症状の経過観察が重要であると考えられた。
・・・

ここまで読み終えた方、ご苦労様でした。
いかがでしたしょうか。
「子どもは軽く済むからワクチンはいらない、と言えない」
と私は感じています。

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秋の花粉症~原因植物ベスト3

2022年11月20日 07時08分09秒 | 小児科診療
前項目のごとく、
秋の花粉症の主役は、
ブタクサ、ヨモギ、アキノキリンソウ(セイタカアワダチソウ)です。
それと、スギも少し。

しつこいようですが、
もう一つ特集記事を見つけましたので紹介します。
ここでは「ブタクサ」「ヨモギ」「カナムグラ」をベスト3にあげていますね。
中でも「オオブタクサ」は“ラスボス的”と表現されています。

▢「見るだけでカユい!」秋の花粉症を呼ぶ「ヤッカイ植物」3選
2022/11/18:BRAVO MOUNTAIN)より抜粋;
・・・

■ 秋の花粉症を引き起こす「厄介な植物」3選

 秋に花粉症を引き起こすヤッカイ植物は主に3種類。それらはヨモギ、カナムグラ、ブタクサだ。これらは繁殖力も強く、我々のすぐ近くに生育していることも多いので一度は目にしたことがあると思うが、果たしてどれだけ知っているだろうか。 
ヨモギ
 菊科の多年草であるヨモギは繁殖力が大変強く、雑草の生い茂る空き地や河原など至るところに群生している。ヨモギは初秋に地味な花をつけ、風で大量の花粉を飛散させる風媒花(ふうばいか)だ。 
 図鑑等によると花粉飛散シーズンは8~10月とされているが、温暖化が続いている昨今、11月に入っても道端の至るところで見かけるので、近くを通る時はくれぐれも注意が必要。主な症状は鼻水、鼻詰まりや目のかゆみだが、人によってはヨモギの葉を含んだ食品を口にするだけでアレルギー症状が出る人もいるので注意したい。
カナムグラ
 ジャパニーズホップと言われるカナムグラはアサ科のつる草で、棘が痛いうえに繁殖力が強く、辺り一面を覆い尽くす。花粉の飛散シーズンは、初秋から初冬にかけてと比較的長い。花粉の量は他と比べて少なく飛散距離は数メートル程度だが、どこにでも生育してるため接触するリスクが高い。主な症状はヨモギと同じだが、アレルギー性結膜炎の症状が出る人もいる。
ブタクサ キク科ブタクサ属の一年草であるブタクサは、風で花粉を飛ばす風媒花の代表格。日本でスギとヒノキに続く花粉症の原因として3番目に多いのがブタクサだ。しかし、それより更に厄介なのがオオブタクサだ。ブタクサが体調1m以下なのに対し、オオブタクサは2~3mになり、繁殖力も強い。花もより密に咲くので花粉も多く、花粉症の人にとって大変厄介な植物だ。  ブタクサ、オオブタクサのどちらも他の植物同様に、温暖化の影響で飛散シーズンが長くなっている。日本だけでなく、世界的にも花粉症問題が深刻化しているため、国際的な対策が望まれている。
・・・
■ 花粉症予防と対策
 今回紹介した植物の花粉は、スギやヒノキなどの針葉樹とは異なり遠くに飛散することはない。しかし我々の身近で生育しており、知らないうちに近づいて花粉を浴びてしまうことがあるのがとても厄介だ。 
 これらの草の花粉は粒子が小さく、一度吸い込んでしまうと気管支にまで入り喘息のような症状を起こすこともあるのでくれぐれも注意したい。
・・・
■ ブタクサとセイタカアワダチソウ
 今回、秋の厄介な植物について調査していくうえで、セイタカアワダチソウとブタクサを混同している人が非常に多かった。最も高く伸びているのがオオブタクサで、秋の花粉症で最も警戒する必要があるラスボス的なヤッカイ植物だ。また、黄色い花がセイタカアワダチソウだ。こちらは虫が花粉を運ぶ虫媒花なので、花粉が飛散することは少ないところが群生地帯だと、ブタクサと同じ様に飛散することが確認されているので、アレルギー体質の人は河川敷などで植物が群生しているところには近づかないことがベストだ。 
・・・

<参考>
▢ 秋の花粉症の基本〜ブタクサ・ヨモギなど雑草が花粉を飛ばす? 春の花粉との違いとは?〜
2021年9月7日 :エステー化学
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11月中旬にはどんな花粉が飛んでいる?

2022年11月11日 22時15分46秒 | 小児科診療
11月も中旬になると、
道端のブタクサは枯れて目に入らなくなり、
咲き誇っていたセイタカアワダチソウ(≒ アキノキリンソウ)が、
ピークアウトするタイミング。

さて現在、どんな花粉が飛んでいるのでしょう?
花粉症クエスト」というサイトの情報によると、

・ブタクサ/ヨモギの季節は去り、セイタカアワダチソウ花粉が飛んでいる。ブタクサと同じキク科なので、ブタクサ花粉症の人がセイタカアワダチソウに反応することもある。
・イネ科花粉は初夏〜夏のカモガヤ/チモシーから、秋のススキに取って代わっている。
スギ花粉が少し飛んでいる。この時期、晴れて暖かいと、冬の休眠前にこぼれ落ちたスギ花粉が飛ぶことがあるので注意。

とのこと。

セイタカアワダチソウが花粉症の原因になるかどうかは、
以前から議論があります。
その理由は、この花粉が風で飛ばされる“風媒花”ではなく、
虫が運ぶ“虫媒花”であるため。
でもなんとなく、花粉症の原因植物に居座っていますね。

イネ科花粉は初夏から秋まで長い期間飛ぶとされていますが、
同じ植物ではなく、異なる植物がリレーのようにつないでいます。
ただ“ひとつの雑草のイネ科花粉症になると、
他の種類のイネ科雑草にもアレルギー反応しやすくなりますので、
イネ科花粉症の人も用心してください”
とのこと。

スギ花粉が秋に少し飛ぶ現象は以前から耳にしていましたが、
その理由は知りませんでした。
“冬の休眠前にこぼれ落ちたスギ花粉が飛ぶ”のですね。

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