徒然日記

街の小児科医のつれづれ日記です。

ヒブ/肺炎球菌ワクチンの定期接種化が決定

2013年01月28日 19時02分54秒 | 小児科診療
 以前から噂されていた、ヒブ/肺炎球菌ワクチンの定期接種化が決定したというニュースが流れました;

子宮頸がん・ヒブ・肺炎球菌、4月から定期接種
(読売新聞:2013年1月27日)
 2013年度予算編成に伴う厚生労働、財務、総務の閣僚折衝が27日行われ、4月から予防接種法に基づく定期接種対象に、子宮頸(けい)がん、インフルエンザ菌b型(Hib=ヒブ)、小児用肺炎球菌の3ワクチンを追加することで合意した。
 また、14年度から医療費助成の対象を大幅に拡大する新たな難病患者支援制度をスタートさせるため、新法の制定など準備作業を進めることで一致した。
 厚労省は通常国会に予防接種法の改正案を提出し、3ワクチンを定期接種に追加。時限的な緊急事業から恒久制度に格上げする。接種費用はこれまで大半のワクチンで自治体が8割を負担しているのが一般的だが、財政負担を考慮して国が9割を負担する措置を取る。


 小児科医として、喜ばしい限りです。
 しかし、KNOW*VPDのHPを見ますと世界各国との比較(下表)ではまだB型肝炎おたふくかぜが任意接種のまま放置されているのが気になります。
 B型肝炎ワクチンは元祖抗がんワクチンおたふくかぜワクチンはムンプス難聴対策として世界で採用されている予防接種です。



追加>(2013.2.1)
7ワクチン定期接種化求め要望書提出-日医、厚労相へ
(提供元:医療介護CBニュース)
 日本医師会の小森貴常任理事は30日の記者会見で、厚生科学審議会の予防接種部会が提言した、7種類のワクチンの、定期接種化を求める要望書を28日、田村憲久厚生労働相に宛てて提出したことを明らかにした。
 7種類のワクチンは、今年度末までの予算事業として接種への公費助成が行われている子宮頸がん予防、ヒブ、小児用肺炎球菌の3種類のほか、水痘、おたふくかぜ、成人用肺炎球菌、B型肝炎。これらのワクチンについては、予防接種部会が昨年5月に取りまとめた第2次提言で、「広く接種を促進していくことが望ましい」と評価していた。
 要望書では、予防接種で防ぐことができる病気(VPD)の多くについて、海外では公費による予防接種が実施されていると指摘。その上で、「国民の健康は国の最大の財産。国民を守るために、7ワクチンの速やかな定期接種化の実現などを強く要望する」としている。
 この日の会見で、小森常任理事は、厚労相や総務相らが、ヒブなど3種類のワクチンを2013年度から定期接種とする予防接種法改正案を今通常国会に提出することで合意したことに触れ、「一定程度評価しているが、いまだに諸外国より遅れている現状から先進諸国と同等のレベルに達するまで、7ワクチンの定期接種化を国に引き続き働きかけていく」と述べた。
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「佐野せいじ」氏の木版画

2013年01月27日 09時25分43秒 | 日記
 最近、木版画家である佐野せいじさんの「心の故郷十二ヵ月」という作品を入手しました。

 12ヶ月のシリーズものですのでセットで購入すると高価ですが、ひと月だけ抜けているものを安価で譲っていただきました。
 版画の大きさは「16.5×24.5cm」と小ぶりです。
 その中に、いつかみた日本の原風景がぎゅっと凝縮されています。
 私は北関東の田舎で育ち、田んぼや小川、鎮守の森を遊び場にした最後の世代。
 これらの版画を見ていると、その時の空気や漂う草花の香りが幼き日々の思い出とともに甦ってくるのです。

 作者の佐野せいじさんを知ったのは、数年前に京都の井堂雅夫さんのギャラリー「雅堂」に立ち寄った時のこと。
 井堂さんは京都の風景を中心に、穏やかなタッチと鮮やかかつ精妙な色彩で表現する木版画家です。中でも緑色の深い表現は「IDO GREEN」として高く評価されているそうです。


 お店の中で版画作品を眺めていると、少し作風の違う作品群に気づきました。
 「あれ、この版画もどこかで見たことあるなあ」
 と思いつつ作者名を見ると「佐野せいじ」とありました。
 たしか、Amazonで井堂さんの画集を探している時に「この本を購入したヒトはこんな本も同時購入しています」コーナーの中で見かけた名前。
 井堂さんの作品と雰囲気は共通するものがありますが、あえて比較すると「よりイラストチックに日本の一般的な原風景を題材にした優しく郷愁感漂う作風」という印象です。
 特定の場所ではなく、日本人の誰もが心の奥に閉まっている「こころの原風景」を多く描いています。

 店員さんが「井堂さんの弟子のお一人ですよ」と教えてくれました。
 なるほど。
 私が惹かれるのも頷けます。
 待合室にそれとなく季節ごとの版画を展示する予定ですので、ぜひ目に留めてみてください。

 さて、私はなぜか、絵画よりも木版画に惹かれます。
 それも世間一般に有名な作品ではなく、日本の風景画にほぼ限定されます。
 私の本棚を眺めますと・・・

葛飾北斎(1760~1849年)
歌川(安藤)広重(1797~1858年)
小林清親(1847~1915年)
井上安治(1864~1889年)
高橋松亭(1871~1945年)
吉田博(1876~1950年)
川瀬巴水(1883~1957年)
井堂雅夫(1945~)
佐野せいじ(1959~)
宮本秋風(1950~)

 等の版画家の画集が並んでいます。

 惹かれる理由を自問自答してみると、
・日本の原風景がその時代の雰囲気とともに描かれている
・細かすぎない、つまりある程度抽象化されている
・大作でなくても絵はがきやテレホンカードの大きさでも鑑賞可能

 あたりでしょうか。

 江戸時代に北斎や広重の浮世絵版画が人気を呼び空前の旅行ブームとなったそうですが、そのおかげで後世の我々も当時の日本の風景を知ることができるのですね。
 ありがたいことです。

 版画家以外の画家では、
向井潤吉(1901~1995年)
中島潔(1943~)
 さんも好きです。
 いずれ、ぼちぼち紹介していきたいと思います。
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インフルエンザで小児の死亡例発生

2013年01月26日 07時18分49秒 | 小児科診療
 A香港型インフルエンザが流行中です。
 1月に入り、小児の死亡例の報道が散見されはじめました。

インフルエンザで未就学児死亡…佐賀(2013年1月24日 読売新聞)
 佐賀県健康増進課は23日、佐賀中部保健福祉事務所(佐賀市)管内の未就学の男児が、インフルエンザに伴う急性脳炎で20日に死亡していたことを明らかにした。


乳児院、8か月男児死亡 インフル原因か(2013年1月20日 読売新聞)
 県は19日、県立鶴岡乳児院(鶴岡市道形町)に入所していた生後8か月の男児が死亡したと発表した。同乳児院では今月13日以降、0~1歳の乳幼児5人と職員2人がインフルエンザに感染し、死亡した男児も搬送先の病院で、インフルエンザA型に感染していたことが判明した。
 病院では、インフルエンザによる脳浮腫の可能性があるとみて、CTスキャンなどで調べたが、死因は分からなかった。鶴岡署は20日、司法解剖する予定。
 県や同乳児院によると、死亡した男児は18日深夜、38~39度の高熱を出した。保育士が19日朝、様子を見たところ呼吸が弱まっていたため119番したが、病院で死亡が確認されたという。すでに感染していた乳幼児5人は同室で寝ていたが、死亡した男児は、5人とは別の0歳児用の部屋だった。同乳児院の乳幼児は、昨年11~12月にインフルエンザの予防接種を受けている。


 小児のインフルエンザで重症化し命に関わる合併症では「脳症」が有名です。
 A香港型はインフルエンザ脳症のリスクが高い型として以前から有名であり、例年1月後半をピークに流行します。
 現在「インフルエンザ脳炎」という病態は確認されていませんので、上記記事の「脳炎」は誤りで正しくは「脳症」です。
 情報提供するマスコミ側がいまだに誤った認識をしていることは残念です。

 医学的に「脳炎」と「脳症」は異なる病態です。
 「脳炎」は病原体である細菌やウイルスが脳で増殖して炎症を起こしています。
 「脳症」では病原体が脳にいません。病理解剖して電子顕微鏡でくまなく調べても、脳組織にインフルエンザウイルスは見つからないのです。

 では何が起きているのか?
 専門用語になりますがその本態は「サイトカイン・ストーム」と説明されています。
 インフルエンザ感染がきっかけとなり多種類のサイトカインという物質が生成され、それが脳浮腫(脳のむくみ)をきたして機能不全に陥らせます。

 近年まれに見る大流行となっているアメリカでは既に18名の小児死亡例が報告されていますが、その詳しい死因までは伝わってきません;

米41州でインフルエンザ大流行、子ども18人死亡(2013年01月11日:AFP)
 米国で、例年より早く流行し始めたインフルエンザが猛威を振るっており、10日までに少なくとも18人の子どもが死亡した。
 米国立アレルギー感染症研究所(National Institute of Allergy and Infectious Diseases、NIAID)のアンソニー・フォーシ(Anthony Fauci)所長の話では、2003~04年以来の大流行。今シーズンのインフルエンザウイルスはH3N2型(A香港型)で、重症化する傾向が強いという。米保健当局によると昨年12月に流行が始まって以降、全米で約2200人が入院した。
 米疾病対策センター(Centers for Disease Control and Prevention、CDC)によれば、インフルエンザの流行は41州に広がっている。昨年9月30日~12月31日の感染者数は2万2048人に上り、前年同期の849人を大きく上回った。特に感染者数が多いのは北東部のボストン(Boston)で、市当局によるとこれまでに前年同期の感染者数の10倍近い約700人の感染が確認されたという。


 一方、高齢者で多い合併症が「肺炎」です。
 インフルエンザウイルスそのものによる肺炎もありますが、多くは細菌感染によるもの。
 インフルエンザ感染で体力が落ちているときに、ここぞとばかりに細菌が侵入してこじらせ重症化させるのです。

 さらに、2009年に発生した新型インフルエンザでは、また重症化のパターンが異なります。
 新型インフルエンザで重症化しやすいのは小児でも高齢者でもなく、意外なことに体力のある青年層。
 この場合、インフルエンザウイルスそのものによる肺炎が重症化要因と解析されています。
 肺炎を起こし、多臓器不全に陥り命を落とすのが典型的なパターンです。

 1919~20年に世界を席巻した「スペイン風邪」では、全世界の死亡者は3000~5000万人とも云われています。
 第一次世界大戦では兵士がインフルエンザでたくさん死亡し、戦うべき兵士がいなくなって終戦を迎えたという説もあるほど。
 朝、咳をし始めた兵士が、夕方には血を吐いて死亡するという劇症肺炎の経過をうかがわせる記録が残っています。

 インフルエンザでは、年齢により、ウイルスのタイプにより重症化するパターンが異なるのですね。
 季節性インフルエンザ ・・・小児期は脳症、高齢者は細菌性肺炎
 新型インフルエンザ  ・・・青年期のウイルス性肺炎

 となります。
 
<参考>
■ 「A/H1N1pdm感染症の病態と病理」(国立感染症研究所:長谷川秀樹先生)
■ 「インフルエンザ脳症ガイドライン」(厚生労働省)
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他人のウンチが重症腸炎患者に有効

2013年01月25日 06時08分53秒 | 小児科診療
 と書くとキワモノ的な響きがありますが、れっきとした医学情報です。
 抗生物質を使いすぎにより腸内細菌バランスが崩れて発症する偽膜性腸炎(C. difficle 菌が原因)、とくに抗菌薬に耐性化した C. difficle 菌の場合は難治です。
 そこに逆転の発想で、健康な人から採取した善玉菌が豊富な便を注入して腸内細菌バランスを正常化すれば回復するのではないかという方法が考案され、その有効性が科学的に実証されたのです。
 論文が掲載された医学雑誌も超一流です。

 そういえば、以前からTVコマーシャルで気になる表現がありました。
 「新ビオフェルミンS」のCMで「ヒトにはヒトの乳酸菌」というセリフがありますよね。
 良いイメージのセリフなんですが、あれってよくよく考えると「ヒトの腸内細菌(つまり便)から精製して培養した乳酸菌をくすりとして飲むと有効」ということ。
 つまり大元は他人のウンチなのです。

健康者の便を十二指腸に注入,C. difficile感染症治療の切り札に?
(2013.1.22:MTPro)
バンコマイシン標準療法を上回る効果,オランダ研究
 再発性のClostridium difficile(C. difficile)感染症の治療は容易ではなく,バンコマイシンの投与が奏効しないケースも多い。他の治療法として,健康者の便の消化管内への注入が有用との報告はあるが,ランダム化比較試験(RCT)に基づくエビデンスは得られていない。そこで,アムステルダム大学学術医療センター内科のEls van Nood氏らは ,再発性C. difficile感染症患者を対象に,ドナー新鮮便の十二指腸内注入の効果を検討。「バンコマイシンによる標準療法より有効である可能性が示された」とN Eng J Med 2013年1月16日オンライン版で報告した。
便は0.9%生理食塩水で希釈し注入,注入量は平均141g
 C. difficile感染症の初回再発でバンコマイシンが奏効する確率は約60%であるが,再発を繰り返すたびに奏効率は低下するとされている。再発の要因としてはClostridiumの毒素に対する抗体応答の減弱と並んで,腸内細菌叢(intestinal microbiota)の多様性低下などが考えられている。
 では,いったんC. difficile感染症患者の腸内を洗浄後,健康者の便を移すことにより腸内細菌叢の多様性を正常な状態にシフトできないだろうか。実は,これまでにも複数の試みがなされ(関連記事),その有効性が主張されてはいたが,ヒトでのRCTは実施されていなかった。
 そこでvan Nood氏らは,再発性C. difficile感染症患者43例を下記の3群にランダムに割り付け,各群の成績を検討した。
・ドナー便注入群(17例):バンコマイシン500mgの1日4回経口投与を4日間行い,引き続き,腸洗浄後にドナー便の溶液を経鼻十二指腸チューブにより注入する。
・バンコマイシン標準療法群(13例):バンコマイシン500mgの1日4回投与を14日間行う。
・バンコマイシン+腸洗浄群(13例):バンコマイシン標準療法に加えて腸洗浄を行う。
 採取されたドナー便は0.9%生理食塩水で希釈し,採取後6時間以内(平均3.1±1.9時間以内)に患者に注入。注入した便の量は平均141±71gであった。
16例中13例が初回ドナーで,2例は2回目のドナーで治癒
 1次評価項目はC. difficile感染関連の下痢が軽快し,10週後も再発がない無再発治癒の状態とした。
 その結果,ドナー便注入群のうち1例の除外例を除く16例中13例(81%)で,注入後にC. difficile感染症関連下痢が軽快。残り3例では,ドナーを変更して2回目の便注入を試みたところ,2例で下痢が軽快した。
 これに対し,バンコマイシン標準療法群で下痢が軽快したのは13例中4例(31%),バンコマイシン+腸洗浄群では13例中3例(23%)であり,ドナー便注入群は初回のみでも2回目の注入を含めた場合でも,ドナー便注入群以外の2群と比べて無再発治癒率が有意に高率であった(図)。
 ドナー便注入群以外の2群でC. difficile感染症の再発が認められた患者19例中,脱落した1例を除く18例にオフプロトコルでドナー便注入療法を試みたところ,11例が1ドナーの便で軽快,4例は2人目のドナーの便で軽快したという。
ドナー便注入により腸内細菌叢の多様性が改善
 有害事象については,ドナー便注入群で注入当日に軽度の下痢と腹部の痙攣痛(abdominal cramping)が認められたことを除けば,3群間で有意差はなかった。
 腸内細菌叢の多様性をSimpson's Reciprocal Indexを用いて検討したところ,治療前患者群ではドナー群より低かった多様性が,ドナー便注入後にはドナー群と同等のレベルにまで改善していた。便検体に対する系統発生マイクロアレイ分析からも,ドナー便注入後には細菌叢がドナーに近づく方向にシフトし,具体的にはBacteroidetes門,Clostridiumのクラスターとaに属する菌群が増加するとともにProteobacteria門が著しく減少したことが明らかになった。
 van Nood氏らは「ドナー便の注入は再発性C. difficile感染に対する有効な治療法であることがRCTによって示された」と指摘。「とりわけ再発を繰り返し,バンコマイシンが奏効しない患者には朗報かもしれない」と締めくくっている。
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専業主婦志向が増加しているらしい

2013年01月24日 20時52分26秒 | 日記
 一時はゴミ扱いされた「専業主婦」。
 こんな本がありましたね:

■ 「くたばれ!専業主婦」(石原 里紗 著)

 歴史を紐解くと、日本の庶民生活の中で、農業が中心だった江戸時代までは「専業主婦」はいませんでした。
 女性も働き手で、子どもも両親が協力して育ててきました。

 それが激変したのが明治時代以降の文明開化。
 とくに会社勤めの「サラリーマン」という職業が登場してから「女性は家を守るもの」という概念が発達して「専業主婦」が誕生しました。

 しかし、先進国では能力のある女性はどんどん社会進出し、日本でも1986年に男女雇用機会均等法が制定され、女性も社会で働くべきであり「専業主婦」は時代遅れの遺物として扱われる空気も生まれ、上記のような本も話題になりました。

 このような雰囲気の中で、私は育ち、教育を受けてきました。
 そして小児科医になり、子どもが育つ過程でたくさんの愛情が必要であることを学びました。
 母親に愛され大切にされると「原信頼感」が育ち、自分に自信が持てるようになり、すると他人を信頼できる人間になっていきます。
 それがうまくいかないと、自分に自信が持てず、他人を信頼することができず、コミュニケーションが不得手になりがちです。
 その程度により、不登校、摂食障害、非行、果ては少年犯罪の土壌となり得ることが児童精神医学の分野で分析されています。

 さて、動物学的な知識を少々。
 哺乳類とは「乳児期に母乳中心の栄養で育つ動物」を指します。
 その中で母子の距離にはバリエーションがあり、それは母乳の濃さにより分析可能だそうです。
 子どもが自分で動くことができて水分補給が可能な牛やウマなどは濃い母乳。
 一方、自分で動くことができず、すべて母乳に頼るタイプは水分の多い薄い母乳。
 ヒトの母乳はどうでしょうか?
 人乳は薄く、母子はいつも一緒にいるべき動物に分類されるのです。

 ヒトに一番近いチンパンジーの平均哺乳期間は約4年だそうです。
 ヒトでも、全世界の平均授乳期間は約4年間。
 先進国では1年程度で、女性の社会進出が進んでいるフランスでは6ヶ月未満らしい。

 経済が右肩上がりだった時代の日本では、女性にとって子育てよりも社会進出し社会的地位を得ることの方が魅力的に映りました。
 仕事を男性並みにするには、乳児期から子どもを他人に預けて育ててもらわなくてななりません。
 
 「女性の社会進出が究極まで進むだろう。すると子どもたちがまともに育っていないことに気づいて反省し、子育てを外注するのではなく母親が育てることが一番効率的であることに気づくだろう」と以前から私は考えてきました。
 このような事態になるのはまだまだ先のことで、50年後か、100年後か・・・。
 
 しかし、思ったより早く振り子の揺り戻しがはじまりました。
 昨今の女子大学生の調査で、専業主婦志向が増えつつあるという新聞記事を先日読みました。
 その主な理由の中に「自分が子どもの頃、両親が共働きで寂しい思いをした。お母さんには側にいて欲しかった。自分の子どもには同じ思いをさせたくない。」というものがありました。
 危機を感じた本能が働き始めた様子。
 さらに不景気で雇用が不安定になり、共働きしないと子どもが育てられないという背に腹は替えられない事情も発生してきました。
 
専業主婦志向復活の背景(毎日新聞:2012年12月28日)
◇劣悪な労働環境で「あこがれ」に
 内閣府が15日発表した男女共同参画社会に関する世論調査で、「男性は外、女性は家庭」という性別役割分業意識に賛成する人の割合が大きく増えたことが、注目を浴びた。特に20代の賛成割合が急上昇して50%となり、30、40、50代よりも高くなっていた。
 2000年以降、若い女性に専業主婦志向が強まっているという傾向は、さまざまな調査で指摘されてきた。大学でも、専業主婦になりたいという女子学生が相当増えている印象だ。
 この背景に、若者の劣悪な労働環境があることは間違いない。就職活動に疲れ果てた男子学生の一人が「専業主夫になれるものならなりたい」とこぼしていた。苦労して正社員として就職しても、世界最高レベルの長時間労働が待っている。家で専業主婦が待っていることを前提とした働き方が日本企業の標準である。たとえ仕事は面白くても、残業や休日出勤を断りにくい状況では、専業主婦がいなければやっていけないと考える男性と、結婚し子どもが生まれたら働き続けるのは無理と思う女性が増えるのは仕方がない。かといって、低収入の非正規雇用では仕事のやりがいもなく、やらないで済むならと考える女性も増える。
 この専業主婦志向には大きな落とし穴がある。現在、若年男性の雇用も不安定になっている。特に未婚男性の3分の1は年収200万円以下。年収400万円以上の未婚男性はわずか25%にすぎない(20~39歳、明治安田生活福祉研究所2009年調査)。
 そもそも、ゆとりのある生活が送れる収入を得ている未婚男性は1割程度だろう。結婚後も同様である。今は正社員男性でも収入の増加が見込めない。私の分析では、昔は専業主婦が当たり前だった夫の年収800万円クラスでも、妻がパートで働く割合が大きくなっている。子どもの教育費を出すために、共働きせざるを得ないのだ。


 社会における男女平等が完成する前に、こういう方向になるとは想定外でした。
 
 もうひとつ、気になってきた点があります。
 それは「家族機能の外注」傾向です。
 「子育ての外注」は将来の「介護の外注」につながります。
 親がそばにいなくて寂しい思いをして育った子どもが、将来親が弱った時に側にいて面倒をみることができるでしょうか?
 たぶん、親と同居せず施設に預ける(=外注)のが自然の成り行きですよね。
 ヒトは自分がされたようにしか人にできませんから、仕方のないことです。

 現在のヨーロッパでは、福祉国家と呼ばれる国々でも親は歳を取ると施設に入り晩年を過ごすのが一般的で、子どもと同居することは少ないようです。
 以前、某番組で3世代同居している日本の家族をみたドイツの老夫婦が「年老いても子どもたちと一緒に生活できるなんてうらやましい」と感想を漏らしていたのが記憶に残っていますので。

 いろいろ意見があると思います。
 ただ、よい社会の基準は「次世代が健やかに育つ環境」であることには異論がないでしょう。
 子どもを取り巻く環境は時代により、国により様々と思われますが、この基本だけは忘れないようにしなくては。
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アメリカのインフルエンザワクチン接種率は高い?

2013年01月22日 21時30分05秒 | 小児科診療
 日本におけるインフルエンザワクチンの立場は微妙です。
 他のワクチンより効果が低く「罹らないためではなく、罹っても軽く済ませるために接種する」程度の認識。
 当然、ワクチン反対派も存在します。

 現実として、小児科医の私は接種を勧める立場です。
 ほかに有効な予防対策がありませんので。
 心の中では、欧米で採用されている「経鼻生ワクチン」の導入を心待ちにしています。
 その発症予防効果はなんと90%(現行の日本の不活化ワクチンは50%程度)。

 さて、そのアメリカにおけるインフルエンザワクチン接種率はどれくらいなのでしょう。
 ワクチン先進国であり、日本よりさぞかし高率に違いないと思い込んできましたが、実はそうでもなさそうなんです。
 こんなニュースが流れてきました;

インフルワクチンの回避に使われる「5つの言い訳」と「その反論」
 JAMAのエッセイ“viewpoint”(2013年1月18日オンライン版)より。
<成人のインフルワクチン接種率は約30%>
 米国では,現在,一部の例外を除き生後6カ月以上の全ての人に年1回のインフルエンザワクチン接種が推奨されている他,米疾病対策センター(CDC)が公式サイト上でワクチンを接種可能な医療機関や薬局を見つけられる検索サイトの提供を行うなど,積極的に接種を働きかけている。しかし,同国の2008/09年の18~64歳の全成人におけるインフルエンザワクチン接種率は28.2%にとどまる。Talbot氏らは「中でも合併症を有する高リスク者や,高リスク者へのウイルス伝播のリスクが大きい医療関係者のインフルエンザワクチン接種率は容認し難い低さだ」と述べている。
 同氏らは人々がインフルエンザワクチン接種を拒否する理由には共通性があるが,いずれも誤った認識が含まれていると指摘する。5つの言い訳と同氏らが示す反論の概要は次の通り。 

インフルワクチンを接種しない5つの言い訳とその反論
□ インフルエンザワクチンは効かない
 「他の一般的なワクチンほど有効ではない」は「有効ではない」とは違う。ワクチン株と流行株が合致すれば,ワクチンによる重症化予防効果が期待できる。ワクチン株と流行株の不一致による問題を解決するため,ユニバーサルワクチンの登場が望まれるが,これは現在のワクチンを接種しない理由にはならない。

□ ワクチンでインフルエンザになる
 現在,米国で使用されている経鼻生ワクチン(LAIV),不活化ワクチンのいずれもインフルエンザウイルスの感染は起こさない。LAIV接種者からの二次感染も現時点で報告されていない。プラセボ対照のランダム化比較試験でも,ワクチン接種群で全身反応の発生が高いとの結果は示されていない。確かに接種後にインフルエンザ様症状が起きる,あるいは,インフルエンザと確定診断されることもあるが,他のウイルス感染やワクチンによる抗体上昇が起こる前にインフルエンザに罹患することによるものと考えられる。

□ 卵アレルギーがある
 アナフィラキシーのような重篤なアレルギー反応を持つ場合は接種を避けるべきだが,最近のエビデンスに基づくガイダンスでは,そうした重度のアレルギーの場合を除いて,全ての卵アレルギー患者は十分な注意の上で,ワクチンを接種しなかった場合のリスクと接種によるリスクの妥当性を判断すべきとの見解が示されている。ただし,卵成分の曝露により血管浮腫や呼吸窮迫,エピネフリン使用や救急受診の既往がある場合にはアレルギー専門医に相談すべき。

□ 妊娠,医学的問題,または免疫不全の人との同居を理由に接種しない
 妊娠や臓器移植歴などの状態にあることがまさにインフルエンザによる合併症のリスクが最も高いといえる。長年,こうした人々へのワクチン接種は安全かつ,重症化や死亡を予防できるとして推奨されている。

□ 「今までインフルエンザにかかったことがない」「健康に問題ない」
 これはワクチン接種の最も大きな理由の1つを見落としている。健康な人の中には今まで典型的なインフルエンザ症状を呈したことがない人もいるかもしれないが,そうした状態でも他の人にウイルスを伝播させる可能性がある。自分のリスクが低いという理由でワクチン接種を拒否するのは,ワクチン接種ができない人やワクチンによる十分な抗体上昇が得られない人など他の人のリスクを無視することに他ならない。


 な~んだ、実は日本と似たり寄ったり、なんですねえ(苦笑)。
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喘息の薬の考え方

2013年01月22日 21時04分22秒 | 小児科診療
 喘息の薬は、大きく2種類に分けることができます。

① 発作止め(reliever:リーリバー) ・・・文字通り発作を止める薬
(例)交感神経刺激薬(メプチン、ベネトリン、スピロペント、ホクナリン等)、テオフィリン薬(テオドール、テオロング、ユニフィル等)

② 予防薬(controller: コントローラー) ・・・発作を起こさないようにする薬
(例)吸入ステロイド(フルタイド、パルミコート、キュバール等)、インタール

 実際の喘息治療は、この二つのタイプを組み合わせて行います。
 ごく簡単に言うと、
・たまに軽い発作が起きる程度なら①のみで治療
・①が止められない場合や、ひと月に何回も苦しい発作が出るなら②を導入

 ということになります。

 ②は「予防」ですから、調子がよい時でも止めないのが基本です。
 一度開始したら3ヶ月単位で評価し、調子が良い状態が続けば減量を考えるというスタンスなのです。

 このように説明しても、患者さんはなかなか守ってくれません。
 ちょっと調子がよくなると止めてしまい、しばらくしてまた苦しい発作を起こして来院します。
 何とかならないものかなあ・・・と日々感じていましたが、悩んでいるのは私だけではないことが下記ニュースでわかりました。

ぜんそくの吸入ステロイド、使用やめた人「自己判断で」7割
(朝日新聞 2013年1月22日)
 ぜんそくの標準治療薬「吸入ステロイド」の使用をやめた患者のうち、医師の指示によらず自己判断していた例が7割に上ることが、専門医団体の調査でわかった。継続して使うことが必要な薬のため、勝手な中止は症状悪化につながる恐れがあり、注意を呼びかけている。
 専門医約500人でつくる「日本喘息(ぜんそく)・COPDフォーラム(JASCOM)」が製薬会社グラクソ・スミスクラインと、成人患者400人と小児患者の保護者400人に尋ねた。吸入ステロイドの使用を「中止した」と答えた人はそれぞれ2割強いたが、「医師の指示なく自己判断した」のは成人で75%、小児で67%。理由は「症状がなくなった」が最も多かった。
 日本アレルギー学会の治療指針は、ごく軽症の場合を除いて吸入ステロイドを「長期管理薬」として継続的に使うよう推奨。しかし、ぜんそく発作時に使う気管支拡張薬のような即効性があるものではないため、中断してしまう人がいるようだ。


 さて、「発作を止める薬」と「発作を起こさない薬」の二つの考え方は、実は漢方医学が古くから概念化していました。
 今ある症状を抑える治療   → 標治
 症状が出ないように体質改善 → 本治

 漢方薬の薬効は「体質改善」のみで、即効性がないと誤解している方が多いのですが、そんなことはありません。
 切れのある対症療法薬と体質改善薬・・・この2つをうまく組み合わせて病気と対峙できれば、一人前の漢方医と云えます(私はまだまだ修行の身)。
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インフルエンザ流行期にパンデミック対策を考える。

2013年01月21日 18時18分55秒 | 小児科診療
 先週1/14に休日当番医を担当し、54名のA型インフルエンザ患者さんを診療しました。
 週末の1/19と週明けの本日1/21は、それらの患者さん達が治癒確認目的でまとめて来院し、外来があふれました。

 インフルエンザ流行期の煩雑さを経験すると、パンデミック対策のヒントが垣間見えてきます。
 毎年年中行事のように発生するインフルエンザの流行ですが、短期間に集中して患者が発生する特徴があり、平時とは異なる対策の必要性が増すからです。

 現在、日本のインフルエンザ診療は、
① 予防対策としてのワクチン
② 罹患患者の診療
③ 治癒確認

 のすべてを医療機関が一手に引き受けています。
 とくに②と③のため、流行期は医療機関がパンクしがちです。

 もし鳥インフルエンザのパンデミックが発生した場合、現状の体制では医療機関が機能しなくなりパニックになることは明らかです。
 平時から対策を練っておいた方が、混乱が少なくて済むはずです。

 さて、アメリカではワクチン接種を医師だけでなく看護師や薬剤師が担当し、場所も医療機関だけでなく、ドラッグ・ストアやスーパーにバスで出張して行っていることを伝え聞きます。

 今シーズン、アメリカではインフルエンザが近年まれに見る大流行となっていますが、その際に「今からでも遅くはないからワクチンを接種しましょう」と指示が出ているのを不思議な気持ちで聞きました。
 日本ではあり得ない方針です。
 これは、医療機関だけがワクチン接種を担当しているわけではないので実行可能なのですね。

 また、治癒確認という作業が流行期の診療を圧迫しています。
 熱がつらくて受診希望している患者さんが、治癒して元気な患者さんのために受診できない現象が発生するのです。

 繰り返しますが、現在の出席停止期間は以下の通り設定されています;

「発熱した翌日から数えて5日間経過、あるいは解熱した翌日から数えて2日間(乳幼児は3日間)経過」

 この基準を用いると、体温の経過を記録しておけば、医師でなくても治癒確認が可能です。
 学校であれば養護教諭、保育園/幼稚園であれば感染対策係が治癒確認を行い、受診が必要であれば医療機関に誘導する、という方式をとれないものでしょうか。
 すると、医療機関は症状のある患者さんの診療に集中できるようになり効率的です。

 パンデミック対策および危機管理対策として、上記①~③を分離し医療機関以外にも役割分担すべきです。
 その必要性を強く感じる、今日この頃です。

 個人的には、以下のように考えています;

① 予防対策としてのワクチン → 学校/園での集団接種(接種は看護師や養護教諭が担当)
② 罹患患者の診療 → 医師が担当
③ 治癒確認 → 学校では養護教諭、園では感染対策係が担当


 前回も書きましたが、日本は医師に責任を押しつけすぎていて、かえってそれがマイナスに働いている感があります。
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アメリカでインフルエンザが大流行(続々報)

2013年01月17日 06時21分50秒 | 小児科診療
 アメリカでインフルエンザ流行の勢いが止まらないようです;

インフルトレンド(アメリカ版) by Google

 今シーズンの勢いは2009年の新型インフルエンザ(H1N1)流行時を大きく上回り、アメリカ全土が赤く炎上しています。
 先日のボストンに引き続いてニューヨークでも緊急事態宣言が発令されました;

米当局が全国民にインフル・ワクチン接種を呼び掛け NY州は非常事態宣言
(共同通信社 1月16日)
 【ワシントンDPA=共同】米疾病対策センター(CDC)当局者は13日、米国各地でインフルエンザ・ウイルスが急速に拡大していると指摘、感染リスクの高い人だけでなく国民全員がワクチンの接種を受けるよう呼び掛けた。
 CDCのウェブサイトによると、インフルエンザの広範な流行がみられるのは全米50州のうち47州と、前週の41州から拡大。生後6カ月以上の国民は例外なくワクチンを接種すべきだとし、幼児、妊婦のほか、ぜんそくや糖尿病などの既往症を抱えている人、65歳以上の高齢者は特にワクチンが重要だと警告している。
 一方、ニューヨーク州はインフルエンザの流行が過去最悪といわれる状態まで広がっており、クオモ同州知事は12日、公衆衛生非常事態宣言を発令した。同州ではこれまでにインフルエンザで幼児2人と高齢者10人が死亡している。今シーズンの感染者も1万9000人以上と、前シーズンの4400人から急増し、現在も2884人が入院中という。
 クオモ知事はこうした事態に対処するため、薬剤師が18歳以下の子どもにワクチンを接種することを認可した。同州の薬剤師は従来、18歳以上の人にだけに接種することが許可されていたが、今後30日間はその範囲が生後6カ月以上に拡大される
 マサチューセッツ州ボストン保健当局も9日、インフルエンザの急拡大を受けて公衆衛生非常事態を宣言しており、他の州当局も事態を注視するとともに、住民にワクチン接種を呼び掛けている。


 この記事で気になったのが、青字にした部分。
 「薬剤師が予防接種を担当」しているとのこと。
 特別資格のある看護師が接種を担当していることは以前から知っていましたが、薬剤師も動員されているのですね。

 インフルエンザワクチンは短期間にたくさんの人に対して集中接種が必要なため、いくら工夫しても小児科医院だけではさばき切れないのが日本の現状です。
 当院では毎年9月に予約を開始すると1週間以内に接種枠が埋まってしまい、かかりつけ患者さんの希望に添うことさえできずに悩みの種となっています。
 日本の厚生労働省も接種対象者だけに目を奪われず、接種担当者のマンパワーもきちんと把握して足りなければ職種を拡大することも検討していただきたいものです。

 もう一つ違和感を覚えたのが「抗インフルエンザ薬よりワクチン重視」というスタンス。
 日本では流行が始まったら「症状が出たら早めに医療機関を受診しましょう」とアナウンスされるだけで「ワクチンを受けましょう」という声は聞こえてきませんね。


 さて、職種拡大に関連して日頃から気になっていることを追加します。
 何回か取りあげましたが、2012年4月に特定の感染症の出席停止期間(=隔離期間)の定義が一部変わりました。

 例えば、
インフルエンザ:発熱翌日から数えて5日間、あるいは解熱した翌日から数えて2日間(就学前の乳幼児は3日間)の長い方
おたふくかぜ:耳下腺腫脹した日から5日間
 等々。

 この二つの感染症に関しては、症状の有無ではなく日数で決まっているのが特徴です。
 言葉を換えると、医師の判断の介入の余地が乏しく、誰でも判断可能なことになります。

 昨日もおたふくかぜの治癒確認の患者さんが来院しましたが、まだ腫れと痛みが残っているものの、腫れてから5日間以上経過しているため隔離解除となりました。
 これだったら、学校の保健室の先生(養護教諭)が治癒確認を担当してもいいんじゃないかな、母親が子どもを医院へ連れてくる手間もなくなるし・・・と感じた次第です。

 イギリスでは「スクール・ナース」と呼ばれる、日本では養護教諭に当たる職種の人が予防接種を担当しているそうです。
 日本は「すべては医師の責任で」という意識が強すぎるような気がします。
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1月14日(月)の休日当番医報告

2013年01月15日 06時21分58秒 | 小児科診療
 昨日1月14日は世間一般では成人式で盛り上がっていましたが、私は休日当番医(小児科担当)として労働にいそしんでおりました。
 そして、文字通り「インフルエンザ一色の一日」を経験することになりました。

 雪の降る中、受診された患者さんは107名。
 当日熱発を除く発熱患者さんのほとんどにインフルエンザの迅速診断を行なったところ、60名中54名がA型インフルエンザ陽性でした。
 驚くべき陽性率。

 症状は高熱がメインですが、今年の特徴として初期には嘔気など消化器症状を訴える方が多い傾向があり、中には感染性胃腸炎との区別が難しい例を散見します。
 兄弟例も何件か来院しましたがみんな同じ症状ということはなく、高熱でぐったりから元気で動き回っている子までいて様々。
 診察所見も喉の赤さが目立ったり、結膜充血が目立ったり・・・溶連菌やアデノウイルスも一緒に調べましたが、すべて陰性。
 インフルエンザの症状・所見のバリエーションの広さを改めて知ることになりました。

 幸いなことに、重症で病院へ紹介した患者さんはゼロ、熱性けいれんを起こした患者さんもゼロでした。
 もっとも、けいれんを起こすと総合病院救急外来へ搬送されることになるので、実態を開業医レベルで捉えることができかねますが。

 ワクチン接種歴は未確認です(正直言って忙しくてそれどころではありませんでした)が、少なくとも「ワクチンを接種したのに罹ってしまった」と悔しがる方はいませんでした。

 発熱当日に受診された方には「インフルエンザ迅速診断は発熱当日に行っても感度が悪く陽性になりにくい。何回もやるのは子どもがかわいそうだし医療費の無駄にもなるので、発熱翌日の検査をお勧めします。」と説明して基本的に検査しませんでした(ただし母親・父親が抱きかかえてくるような重症者には行いますので誤解なきよう)。
 かかりつけの患者さんはふだんから私の方針を聞いて慣れているのですんなり受け入れてくれますが、初めて受診した方の中には不信感をあらわにして帰る方もいて、少し残念に思いました。

 抗インフルエンザ薬に関しては、当院では種類・効果・副作用について説明したプリントを用意し、検査結果を待つ間に読んでいただき、陽性になったときにどうするか(抗インフルエンザ薬を希望するかどうか、どの薬を選択するか)を考えておいてもらうようにしています。
 こちらから強制したり・誘導することは控えていますが、なかなか決められないご両親から私の方針を聞かれたときには、以下のように説明しています;

抗インフルエンザ薬について
・まだ登場して十数年の薬であり、それ以前はなかったわけだから、使わないと治らないわけではありません。
・使用すると本来の経過より約1日早く熱が下がることが期待できます。
・みているのがかわいそうなほどつらそうなら使用、そこそこ元気であれば未使用で様子を見てもよいのでは。
・使い始めたら規定期間使い切りましょう。すぐ解熱したからといってやめてしまうと、熱がまた上がることがあります(二峰性発熱)。


 昨日の抗インフルエンザ薬処方率は8割程度でしょうか。
 
 当地域は完全にインフルエンザ流行期に入りました。
 これから2週間程度は学級閉鎖があちこちで発生することになります。

 以上、休日当番医報告でした。
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