徒然日記

街の小児科医のつれづれ日記です。

インフルエンザ流行 ~隔離期間と学級閉鎖~

2011年02月06日 07時35分01秒 | 小児科診療
 当地域は今がインフルエンザ流行のピークと思われます。
 先週は市内で学校閉鎖(!)が2件発生し、例年よりも勢いを感じますね。

 今シーズンのインフルエンザは”A香港型”と2009年に登場した”新型”の2種類が流行しています。しかし、迅速検査では両方とも「A型陽性」と出るので、ひとシーズンに2回A型インフルエンザに罹る運の悪い人も出てきています。

 さて、毎年話題になる「隔離期間」「出席停止期間」について;

 新型インフルエンザは「症状が出てから1週間は人にうつす感染力が残る」とされており、厚生労働省は出席停止期間を従来の「解熱後2日間」から「発症翌日から7日間は外出を控えるように」と変更するよう指示を出しています。
 混乱を避けるため、当地域医師会ではこの方針を基本とするよう決定し、各医療機関に通知し、公的教育期間(小学校・幼稚園・保育園)にも通知しています。

 もし、これより短い期間しか休まない学童・園児がいると、ウイルスを再度ばらまいてしまう可能性があり、流行が収まらず一気に拡大します。
 すると学級閉鎖のレベルで収まらずに、学校閉鎖まで追い込まれることになりかねません。

 しかし、個々の感染者が1週間しっかり休んでも、それで解決といかない悩ましい事情があります。

1.軽症者の存在:症状が軽いので医療機関を受診することなくふだん通りの生活を続けている方もいると思われます。当然、ウイルスをまき散らしています。

2.不顕性感染の存在:これは「ウイルスに感染しているけど症状が出ない状態」という意味です。これもウイルスをまき散らしています。

 新型インフルエンザが2009年5月に関西の高校で初めて検出されたとき、高校生達の血液検査の結果判明したことは、インフルエンザらしき症状がなくても血液中の抗体価が上がっていた(つまり感染していた)生徒が2割ほど存在したという事実。

 昨シーズンまでに新型インフルエンザに罹った日本人は、大人で10%、学童で70%、乳幼児で30%程度と報告されています。
 極端なことを云えば、症状が重い・軽いにかかわらず、全員一度は感染しないと流行が収まることはない、とも考えられます。

 これらを全て考えに入れると
「感染者が自宅療養する意味はあるのか? 」
「学級閉鎖は意味があるのか?」
との疑問がフツフツと沸いてきます。

 その答えは、「意味はある」です。
 少なくとも「流行の勢いを分散させて患者が一斉に発生するのを避け医療機関が麻痺しないようにする」という点では。

 もし、流行を断ち切って地域に封じ込めることまで求めるなら「県内一斉休校・会社休業」レベルまでやらないと無理です(年末年始の冬休みがこれですね)。すると、社会機能・経済活動も麻痺しますから、簡単には指示できない・・・メリットとデメリットを秤にかけて検討しなければなりません。


 というわけで、医学的な事実が正解とは限らず、社会的・経済的な視点でアレンジする必要がでてくるので判断が難しいのです。
 やはり悩ましい・・・。
コメント
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