徒然日記

街の小児科医のつれづれ日記です。

人災としての福島第一原発事故

2011年12月30日 07時07分12秒 | 日記
 2011年3月11日の東日本大震災とそれに続く福島第一原発事故。

 なぜこんなに大きな被害が出たのか?
 防ぐことはできなかったのか?

 ・・・誰もが抱く疑問です。

 私なりに特集番組を見たり、本を読んだりしてきました。
 たどり着いた結論は「人災であり防ぐことが可能であった」ということ。
 私の感じた問題点と人災と見なした理由を以下に列挙します;

問題点
1.地質学の調査から、過去の大地震で20m級の津波が押し寄せてきた歴史が証明されている。
2.そのクラスの津波が来れば、現在の福島第一原発の立地条件では津波にのまれてしまう可能性が大。
3.すると「全電源喪失」という事態が発生し、同時に複数の原発が冷却機能不全に陥る。
4.冷却機能不全により核物質を制御できなくなり、放射能をまき散らす。
5.被曝を避けるために現在も15万人の避難者がいる。


人災と考える理由
1.専門社会議では、「地層には20m級の津波の痕跡がある」という地質学者の意見を取り合わなかった
 残されている映像には「そんな1000年前のことを言われても・・・」と一笑に付した様子が見て取れました。すべての間違いは、ここから始まったのです。

2.福島第一原発はわざわざ地盤を何mも削って立地され、わざわざ危険度を増す皮肉な結果となった
 従来の予測では大きな津波は4m台とされてきたが、2008年には10m級もあり得ると報告されたにもかかわらず、東京電力はウダウダし続け、結局その危険性を国に伝えたのは2011年3月7日(震災4日前)。
 2008年の段階で対策を立てておけば、津波にのまれることはなかった!

3.原発事故マニュアルは細かいトラブルや、一基の原発機能不全に対応する範囲にとどまっていた
 全電源喪失、複数の原発機能不全という根源的な事故への想定がなかったという、致命的な欠陥の存在。
 「想定外」という言い訳がまかり通ったが、その「想定」が原発の危機管理としては甘すぎたというまぎれもない過ち。

4.電源喪失の際のマニュアルの準備不足・周知徹底不足が発覚。過去の外国の原発事故に学ぶことなく、「そうなるはずがない」という思い込みから訓練も形式なものにとどまっていた

(例1)「イソコン」・・・非常用復水器(I.C.=イソコン)
 電源が喪失した際に緊急的に原子炉を冷やす循環回路が用意されているが、電源が落ちると一旦回路が閉鎖されるシステムになっていることを現場職員が知らなかった(!?)。これはアメリカのスリーマイル原発事故で問題となり、その後アメリカでは事故想定訓練の際に手動で開くことを行うようになった事実があるにもかかわらず。

(例2)「原子炉内の水位計
 原子炉の温度が上がると正確に表示されなくなり、水が無くてもあるように表示されることがわかっていたにもかかわらず、現場にその知識が浸透していなかった(!?)。今回の事故の際、「まだ原子炉内に水がある」と勘違いして対応が遅れた。

 → この(例1)と(例2)が首尾よく行われていれば、メルトダウン・メルトスルーは避けられたと専門家は指摘している。

5.スピーディの情報開示の遅れとオフサイトセンターの機能不全
 放射能飛散のリアルタイム情報としてのスピーディは「パニックを発生させる危険がある」という理由で公表が遅れた。原発から5kmの地点にある作戦会議室「オフサイトセンター」は停電と放射能対策がなされていないために使い物にならなかった。

 以上、文章にできる範囲で記してみました。
 すべての事象の根底に流れる問題として、「原発の安全神話」があると思いました。危険性を有する原発を安全であると最初にウソをついてしまったので、その後もウソを上塗りするしかなかったのです。

 原発は安全だから、と啓蒙し、あるいは自らに言い聞かせてここまで普及させてきた政府。だから、大津波の危険性を知って壊滅状態に陥る危険が頭をよぎっても、それを国民に知られることはなんとしても避けなければならなかった・・・なぜかと言えば、それを想定して説明・訓練するのは「原発は、実は危険なもの」と正体を暴いてしまうことと同義であるから。すると、国民はそっぽを向いて反対運動を制御できなくなる・・・。

 この思考構造を「予防接種行政」と比較すると、まことに興味深い。
 予防接種は副反応が目に見えるので、被害者が訴訟を起こし、国が敗訴し、どんどん慎重になり萎縮し、その結果世界標準から20年も遅れたレベルになり下がっているのが現状です。
 かたや原子力発電行政は、密室の中で行われ、事故が起きても目に見えないので、隠蔽しようとすればとことん隠し通せます。この違いが、甘すぎる危機管理体制を招いたとも考えられます。
 もし、放射能汚染されると色がつく、など目に見えるものであったなら、原発行政は客観的に安全管理されたものになっていたことでしょう。

 今後、定期点検に入っている原発を再稼働させるなら、その地域の市町村のみでなく、県単位でもなく、日本全体でもなく、世界に向けて安全宣言できるレベルのシステムを構築する、という前提が必要になると考えます。
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ノロウイルスもついに「ワクチンで防げる病気」に?  (附)血液型で罹りやすさが異なる病気

2011年12月28日 06時27分07秒 | 小児科診療
 12月に入ってから、当地では嘔吐下痢が大流行中です。
 嘔吐が目立つけど一晩で治まり、下痢は軽く済むタイプはノロウイルスによる感染性胃腸炎が怪しいですね。一家全滅する傾向があるのも特徴のひとつです。

 さて、11月に発売されたロタウイルスワクチンに続けとばかりに、ノロウイルスに対するワクチンの開発も進んでいる様子。
 下記の記事を読んでと意外な記述に目が点になりました。なんと、ノロウイルスへの感受性(感染しやすさ)は血液型に左右されるらしい。O型の人は罹りやすくB型は逆に罹りにくいとのこと。しっ、知りませんでした。


ノロウイルスもついに「ワクチンで防げる病気」に?
ただし「血液型B型とAB型の人は除外」の理由とは

(2011.12.12:メディカル・トリビューン)
 ノロウイルスを原因とする感染性胃腸炎は、子供だけでなく大人も苦しむ“おなかの風邪”として、特に冬に流行する。しかし、このウイルス感染症もついに“ワクチンで防げる病気”の仲間入りを果たす日が近付いているようだ。12月8日付の米医学誌「New England Journal of Medicine」(2011; 365: 2178-2187)に、世界初となるノロウイルス(ノーウォークウイルス株)ワクチンの臨床試験の良好な成績が報告された。ただし、この臨床試験では除外基準に「血液型B型とAB型の人」が含まれている。その理由とは…。

◇ 2回の接種で胃腸炎の発症・重症化が減少
 ノロウイルスワクチンは、“子宮頸(けい)がんワクチン”として知られるヒトパピローマウイルス(HPV)ワクチンなどと同じ「ウイルス様粒子」の技術を用いて作製された単価の経鼻ワクチン。ウイルス様粒子は、ウイルスの外殻(カプシド)を構成するタンパク質だけを再現した“空の粒子”で、ウイルスの遺伝情報を含まないため感染性はないが、ウイルス粒子と同等の抗原性を生じさせることができるため、安全性の高いワクチンの開発などに応用されている。
 今回の試験対象とされたのは18~50歳の健康な成人。50人がワクチン接種群、48例が偽薬群(マンニトール・ショ糖)に割り付けられた。接種間隔を21日間空け、2回のワクチン接種を実施。この間に、ノーウォークウイルス株への曝露(ばくろ)も行われた。2回の接種を完了したのはワクチン群47人、偽薬群43人だった。
 ワクチン群の70%でノロウイルスの抗体が確認された。試験を完遂した77人における感染性胃腸炎の発症率は、プラセボ群の69%に対してワクチン群で37%と、統計学的に有意な減少が認められた。このほか、ノーウォークウイルス株感染率と感染性胃腸炎の重症化スコアも、ワクチン群で有意に低かった。
 最も多く報告された接種後の症状は鼻詰まり、鼻水、くしゃみで、有害事象(副作用)の報告率は両群で同等だった。

◇ 感染率はO型で高くB型で低い
 なお、今回の臨床試験で定められた23もの除外基準の1つに「血液型B型またはAB型」がある。また、これに関連する導入基準の1つとして「唾液中にH1抗原が確認された人」が定められている。H1抗原は、O型の人でしか残らないH抗原の亜型の1つ。
 実は、2000年ごろから、ノーウォークウイルス株が特定の血液型の抗原をレセプター(ウイルスの結合部分)として感染することが分かってきているようだ。これまでO型の人のノーウォークウイルス株感染率が高い一方、B型の人では低いことが報告されており、血液型のようなかなり個体差のある宿主のレセプターを用いる感染様式は珍しいとの意見もある(参考:広島市衛生研究所「ストップ・ザ食中毒:カキにあたる人、あたらない人」 )。
 なお、ノーウォークウイルス株はO型の人が持つH抗原に吸着すること、H抗原が赤血球表面だけでなく、ウイルスの標的臓器である腸管のほか唾液中にも分泌される遺伝子多型があること、血液型抗原への結合力が強い株は感染力が強い可能性などが明らかにされているようだ(参考:国立感染症研究所ウイルス第二部 白土東子氏ら「ノロウイルスと血液型抗原」


 血液型により発生率が左右される病気はマラリアが有名です。ただし、一般的なABO式ではなく、ダフィー型血液型というややマイナーなタイプ分類によります。

 と思ったら、最近の研究でこんな報告も;

ABO血液型に新たな意義? 疾患との関連示す報告相次ぐ
(2011.11.30:MT Pro)
 この記事の中で、二つの疾患が紹介されています。

1.超低出生体重児の壊死性腸炎
 AB型の児では他の血液型の児に比べ死亡のリスクがハザード比(HR)で2.87倍に上っていた(95%CI 1.40~5.89,P=0.003)。さらに多変量解析においてもAB型はNECによる死亡の独立した危険因子(HR 2.93,1.43~6.04,P=0.004)で,手術に次いで強い関連が示された(手術のHR 4.65,2.61~8.33,P<0.0001)

2.脳卒中
 AB型の人は脳卒中リスクが約30%高い。


 ここで取り上げた血液型に相当する方は、心中穏やかではありません。
 私はB型なので、ホッと胸をなで下ろしていますが・・・。

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“セシウム花粉”飛散に「問題なし」,NPO花粉情報協会

2011年12月27日 22時51分48秒 | 小児科診療
 しばらく前に、飛散するスギ花粉によりセシウムが運ばれて被曝の原因になるのではないか、との記事を紹介しました。
 以下はその回答に当たる記事です;

“セシウム花粉”飛散に「問題なし」,NPO花粉情報協会(2011.12.26:MT Pro)
 東日本大震災に伴う福島第一原子力発電所の事故は,放射能に対する恐怖を引き起こしている。その中で,来春飛散のスギ花粉に放射性物質のセシウムなどが含まれている可能性があることが,一部メディアで報道されている。気象業務支援センター専任主任技師の村山貢司氏は12月15日,東京都で開かれたメディア向けのセミナー(主催=NPO花粉情報協会)で,放射性物質を含む花粉について解説。シーズン中に曝露される放射線量を最大でも1μSvに達することはないと予測し,「健康に全く問題ないと言える」と述べた。また,それでも安心できない人に向けて,放射性物質を含む花粉を吸い込まないための対策も紹介した。

実効被ばく量は0.0005~0.26μSvか
 放射線の危険性は,熱傷や出血,痙攣,脱毛,白血球減少などの急性障害と,白血病,がん,遺伝障害などの晩発性障害の2つに分けられる。前者の致死量は5~7Svだが,後者が発生する放射線量は評価が難しい。村山氏は「放射線を浴びる量が多ければ多いほど当たる確率も高い。しかし,その確率は大量の人の一生を追跡しないと分からない。また,がんの原因は被ばくだけではないのでさらに難しい」と説明した。
 また,日本人は日常的に自然放射線を平均で年間2.4mSv浴びている。これに,一般人の限界線量(年間1mSv)を足した3.4mSvが上限値となる。同氏は「1mSvを超えたから危険だと騒ぐが,そのうちの何割かは自然放射線も含まれている」と指摘。さらに,年間1mSvを一生浴び続けたとしても,がんリスクは5%増えるだけで「この程度のリスクならば喫煙や生活習慣,ストレスの方が危険になる」とした。
 その上で,スギ花粉に付着した放射性物質について,(1)呼吸量を4L/分とすると,1シーズン当たりの呼吸量は518.4m3,(2)東京のスギ花粉飛散量を1シーズン4,000個とすると,1日当たりの平均濃度は44個/m3―から算出し,100%が体内に入った場合の実効被ばく量を0.0038Bq,およそ0.0005μSvと説明。さらに,東京のスギ花粉がすべて福島原発付近から来たとしても実効被ばく量は約0.26μSvで,いずれにしても放射線の影響はほとんどないと述べた。

不安な人は花粉と同じ予防策を
 ただ,リスクがゼロになるわけではない。そこで村山氏は,不安な人に向けて(1)放射性物質から距離を取る(高濃度地域に接近しない),(2)遮へいする(外に出ない,肌を露出させない,窓を閉めて喚起しない,できるだけ口に入れない,雨にぬれない,マスクが効果的),(3)時間がたつのを待つ(半減期の何倍も)―などの予防策を紹介。さらに「マスクをする,空気清浄機を使う,眼鏡をかける,手洗い・洗髪を励行する,花粉の多い時間帯の外出を避けるなど,花粉を防ぐことと放射線の予防は共通している」とした。
 なお,同氏は,不織布マスクの内側に当てガーゼ(化粧用のコットンで可)を入れる“インナーマスク”を推奨し,形状については「マスクは顔にフィットしたものがよい。どんなに高いマスクでも,顔にフィットしていなければ花粉が侵入してしまい,意味をなさない」としている。


 とりあえず、例年通りの花粉対策をしっかりしておけば問題ないということでしょうか・・・。
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「小児の誤飲事故,たばこが32年連続1位」

2011年12月27日 22時27分12秒 | 小児科診療
 厚生労働省による「家庭用品による健康被害」調査で、件名の結果が報告されました。
 勤務医時代、夜間当直をしていると子どもを抱えて飛び込んでくる若い両親に時々遭遇したことを思い出しました。

■ 「小児の誤飲事故,たばこが32年連続1位」(2011.12.27:MT Pro)
厚生労働省は12月27日発表した「平成22年(2010年)度家庭用品等に係る健康被害病院モニター報告」で,昨年1年間で最も多く報告された小児の誤飲事故の原因がたばこだったことを明らかにした。今回で32年間連続の首位となった。小児の誤飲事故全377件中たばこは130件(34.5%)を占め,32年連続のトップとなった。同報告書では具体的な事例の内容にも触れられており,中には同一の小児によるたばこの誤飲が1年間で2回起きていた例も報告されている。


(表をクリックすると拡大します)

 また,吸入事故は皮膚障害,小児の誤飲事故を含む3つのカテゴリーにおいて最多の報告件数(970件)を記録。具体的な報告例として,現在流行期に入りつつあるノロウイルスなどによる感染性胃腸炎の患者の嘔吐物を処理するために,直接布団にかけた塩素系漂白剤で室内にいた人の具合が悪くなった事例や,インターネット上で投稿された画像の行為をまねて,浴室でドライアイスを用いた遊びをしているうちに意識を失った事例なども報告されている。


 タバコ誤飲の治療について。
 私が小児科医になった四半世紀前は「とりあえず胃洗浄」という時代でした。
 それが1998年に日本小児科学会が「2cm以下であれば胃洗浄不要」との見解を出し、胃洗浄の回数が減りました。
 その後、欧米では「トコン(吐根)シロップ」なる家庭常備薬をまず飲ませ、それでも具合が悪いようなら病院を受診するのが慣習であること、アメリカではタバコ2本以上誤飲しないと胃洗浄しないこと等を知るに至りました。ここでも日本の常識、世界の非常識?
 そのトコン(吐根)シロップは日本では市販されず、病院でのみ使用できる薬として認可されたため、普及に至っていません(2011年11月に販売中止との記事有り)。
 
 現在の標準的な対応・治療方針をわかりやすくまとめた三重病院作成のポスターをネット上で見つけたので、参考にしてください。

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不妊治療の”影”の部分

2011年12月26日 07時02分49秒 | 小児科診療
 妊娠・出産に関係する記事をいくつか拾い読み。

 不育症の補助が厚くなるというニュースが流れました;

不育症:自己注射薬の保険適用を中医協が承認(2011.12.21:毎日新聞)
 血栓症の治療や予防に使われる抗血液凝固薬「へパリンカルシウム製剤」について、厚生労働省中央社会保険医療協議会は21日、在宅自己注射の保険適用を承認した。へパリンは流産や死産を繰り返す不育症の患者に広く使われている。自己注射は負担が大きいとして患者団体と学会が保険適用を求めており、朗報となりそうだ。
 不育症の発症者は年約3万人と推定される。胎盤や子宮に血栓ができると胎児に栄養が届きにくくなり、同省研究班の報告によると、血栓ができやすい体質が原因とみられる不育症患者は全体の約25%を占める。
 不育症予防のヘパリンは1日2回の注射が必要。毎日の通院は困難で、自宅で打つのが一般的だ。自己注射は保険適用外で月5万円程度かかり、妊娠中投与を続ける人も多い。
 ヘパリンは出血などの恐れがあるが、同省は研究班の患者調査などから「大きな副作用はみられない」と判断、治療の有益性が危険を上回ると判断した場合のみ、投与を認めた。


 一方で、人工受精・妊娠・出産の”影”の部分も。

体外受精児を追跡調査へ 人工操作加えるほど体重増(2011.12.24:朝日新聞)


<生殖医療で加えた操作と体重>

 体外受精で生まれた赤ちゃんの体重は、凍結保存など人工的な操作を加えるほど重くなることが、厚生労働省研究班の調査でわかった。遺伝子の働きを調整する仕組みに異常が出ている可能性もあり、将来、がんなどのリスクが高くならないか、15年間、数千人を対象に健康影響を調べていくことにしている。
 研究班(主任研究者=吉村泰典・慶応大教授)は2007~08年度に、体外受精により正常な週数で生まれた赤ちゃん約2万7千人の出生時の体重を調べた。
 その結果、受精卵をそのまま子宮に戻した場合は平均3003グラムだったが、受精卵を胚盤胞(はいばんほう)という段階まで体外で培養すると3025グラム、凍結保存すると3070グラム、体外で培養し、凍結保存した後に戻した場合は3108グラムと、受精卵に操作を加えるほど重くなっていた。凍結保存した場合は、正常な週数で生まれた平均体重3060グラムよりも重く、いずれも統計的に有意な差があった。これらの操作は、妊娠率を高めるために行われるようになった。


 いのちを扱う『神』の領域を操作し始めた人類・・・やはりすべてが思い通りには行かないようです。

三つ子の比率、40年前の6倍に 体外受精の普及などで(2011年3月3日:朝日新聞)


<多胎児の出生割合>

 三つ子の国内での出生比率は約40年前の約6倍、双子は約2倍とそれぞれ大幅に高まっていることが、南山大学の尾崎俊治教授(信頼性工学)らの研究でわかった。体外受精や排卵誘発剤など生殖補助医療による妊娠が増えたためと考えられるという。
 尾崎教授によると、1968年では出生数全体に対する双子の割合は1.09%、三つ子は0.0106%。ところが2005年になると、双子が2.21%と約2倍、三つ子は0.061%で約6倍に増えていた。
 双子などの出生比率については、19世紀の欧州の統計を元に計算した「ヘリンの法則」があり、それによると、双子の割合は89分の1(1.12%)、三つ子の割合はそのさらに89分の1(0.0126%)。1968年はほぼこの通りだった。
 体外受精では複数の受精卵を子宮に移植することがある。排卵誘発剤を使うと複数の排卵が起きやすく、いずれも双子や三つ子などの多胎児になりやすい。
 国内では83年に初めて体外受精に成功。それ以降、体外受精による出生数は1998年に9224人(129人に1人)、06年には1万9578人(55人に1人)と増えている。多胎妊娠は早産などのリスクが増すため、日本産科婦人科学会は2008年、子宮に戻す受精卵を原則一つとする指針を決めた。
 尾崎教授は「多胎児出生率はここ数年わずかに減少しているが、今後も不妊治療を受ける患者が増え続けることから、多胎児の出生率の高さはしばらく続くだろう」とみている。


 新生児医療に関わっていた当時、多胎分娩の多さに驚く日々でした。必ずしもみんなが幸せになれないことも実感していました。

男女産み分け目指しタイへ 日本人急増、年に約30組(2011.9.25:朝日新聞)


<男女の産み分け方法>

 子どもを望む日本人夫婦がタイに渡り、受精卵の染色体を調べて、男女産み分けをするケースが増えている。朝日新聞の取材で、この1年間で少なくとも30組の夫婦が利用していたことが分かった。受精卵の診断は「命の選別につながる」として、日本では重い遺伝病などに限られており、倫理的な課題が多い。
 受精卵診断はもともと遺伝病の有無を調べるために行う。体外受精卵が4~8個の細胞に分裂した段階で、1~2個の細胞を取って、遺伝子や染色体の異常がないか調べて、子宮に戻す。遺伝病だけでなく、性別も判定できるため、男女の産み分けにも使える。
 タイでは近年、医療技術が向上し、海外の患者にも人気の医療先進国になりつつある。受精卵診断も約15の医療機関が実施している。朝日新聞が、日本人が多く行く2施設に取材したところ、2~3年前から日本人が増え、この1年で計約30組が男女産み分けで受精卵診断を受けたと回答した。診断には体外受精が必要なため、不妊でない夫婦でも体外受精をしている。不妊夫婦が卵子提供を受け、男女の産み分けをする例もあるという。


 日本人以外では圧倒的に男の子を希望、日本人には女の子希望者がいることが特徴との報道を記憶しています。
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「インフルエンザ流行期の学級閉鎖」考

2011年12月23日 10時06分09秒 | 小児科診療
 インフルエンザ流行期になるとあちこちで学級閉鎖のニュースが飛び交います。
 この学級閉鎖の目的・効果を再考してみました。

 学級閉鎖の権限は学校長にあります(学校保健法、学校教育法)。
 学校長および学校設置者(市町村長)が学校医の意見を参考にして決定する流れが基本です。

 新型インフルエンザが発生する前までは、その期間は1~4日間とバラバラでした。新型発生後は短期(1~2日間)は減って、週末を絡めながら長期(3~4日間)休む例が増えてきている印象があります。

 なぜ閉鎖期間が一律ではないのでしょうか?
 「流行の阻止」を目的とするならば、病気の潜伏期間は最低休ませ、皆が発症しきってから再開する必要があるはず。

■ 「集団かぜによる学級閉鎖の基準」(CLINICIAN, 1986年)

 すると、季節性インフルエンザの場合は潜伏期が2~3日間ですから、4日間以上の学級閉鎖が望まれ、実際に疫学シミュレーションでもそのような結果が出ています。

■ 「学級閉鎖は欠席者が10%を超える前に4日間必要」(出席停止期間で登場した廣津先生の報告)

 でも、学級閉鎖期間中に塾や習い事で生徒同士の接触があると潜伏期間者が増加・潜在し目的が達成されません。さらに兄弟がいても移し合ってしまいますね。

 一方、学級閉鎖の負の面として「経済的損失」があります。
 学級閉鎖期間中、親は仕事を休む必要が出てきます。閉鎖が長期間になるほど、回数が多くなるほどマイナス面が大きくなります。

 このようなバランスの中で、従来は感染対策としてはやや中途半端な短い学級閉鎖が繰り返し行われてきました。
 しかし、新型インフルエンザ登場後、科学的なメスが入り、データに基づく学級閉鎖が提唱されるようになりました;

■ 「新型インフルエンザの学級閉鎖の基本的考え方」(厚生労働省、2009年9月)

 この中で、学級閉鎖を「消極的学級閉鎖」と「積極的学級閉鎖」に分け、従来の手法を「消極的」、新型インフルエンザ発生初期に大阪で取られた広範囲な学級閉鎖・行動制限を「積極的」と位置付けています。

 当初強毒性と考えられた新型インフルエンザを封印するには、「1週間の地域全体の学校閉鎖」かつ「生徒の自宅待機・行動制限」を厳密に行う必要があり、期待される効果が得られました。予想通り、経済的損失もありましたが。

 上記報告を読むと、季節性インフルエンザ対策に学級閉鎖措置を取る日本は世界の中では例外的位置付けのようです。

 実は1週間以上の学校閉鎖を日本は昔から毎年行ってきました。
 「冬休み」という名の下に。
 12月に流行り始めたインフルエンザが年末年始に一旦途切れることを皆さん実感されてますよね。
 しかし「初詣で」という大規模な人の移動・接触があるために再度流行が始まり、1月中旬以降にピークを迎えることは、医師にとっては年中行事のようなモノです。

 思い起こせば、新型インフルエンザが流行し始めたのは「夏休み」という名の学校閉鎖期間中。しかしながら「部活動などスポーツ大会」の接触で広がりました。やはり人の動きも制限しなければ、流行阻止は困難なようです。

 その後、日本全国の学校は繰り返される学級閉鎖に悩まされました。これはその地区で一旦沈静化しても、人の移動により他の地域から持ち込まれるからです。
 流行の第二波・第三波がやってきて、結局みんなが罹るまでエンドレスだったような気もします。授業数が足りなくなり、学校の先生は困り果てたことでしょう。

 人の流れが制限できない条件下の学級閉鎖の意義は、流行のピークを分散させて医療機関を麻痺させないという程度にとどまるとの指摘もあります。
 確かに頷けます。

 日本のインフルエンザ対策を医師の目から見ると、予防措置であるワクチンは任意接種で中途半端、一方医療は突出(タミフル使用量世界一)というアンバランスな印象が拭えません。経済的損失も計上したコストはワクチンの方に軍配が上がることは明らかなのに、不思議な国です。
 まあ、社会的にはインフルエンザ流行のダメージと経済的ダメージを絶妙なバランスでしのいでいる、と見ることもできるのかもしれませんが。
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「インフルエンザの出席停止期間」考

2011年12月23日 09時57分11秒 | 小児科診療
 もともと学校保健法ではインフルエンザ罹患児の隔離期間は「解熱後2日間」と定められ、幼稚園・保育園児にも慣習として適用されてきました。

 ところが2009年に新型インフルエンザが登場した際、喧々諤々となり最長「発症翌日から7日間」と厚生労働省から指示が出され、現場は右往左往。

 小学生・中学生は「解熱後2日間」でよいのですが、実は幼稚園・保育園児は「解熱後3日間」が適切であるとされている事実を、ここにご紹介させていただきます。

 もう5年以上前になりますか、「乳幼児はウイルス排泄が遷延し、解熱後3日時でも感染力が残る。園での流行が止まらないのは感染力の残った回復児が登園してウイルスを振りまくためである。」というニュースが話題になりました。
 他の感染症と同じく、乳幼児は免疫力が弱いので排除に時間がかかるのですね。

 それから小児科医の間では「園児は解熱後3日間隔離」を採用する医療機関が多くなりました。
 近年、公的文書にも「園児は解熱後3日間隔離」が指示されており(下記を参照)、スタンダード化しつつあります。

■ 「保育所における感染症対策ガイドライン」(厚生労働省、2009年)
「症状が始まった日から7日目まで又は解熱した後、3日を経過するまでは、登園を避ける」

■ 「学校、幼稚園、保育所において予防すべき感染症の解説」(日本小児科学会、2011年)

「学校保健安全法では、解熱した後 2 日を経過するまで、厚生労働省の『保育所における感染症対策ガイドライン』では、症状が始まった日から7日まで、または解熱した後3日を経過するまで、出席停止」


 インフルエンザ罹患者の隔離期間、出席停止期間はその昔、ウイルス排泄期間(つまり他人に感染させる能力のある期間)を根拠に設定されたものと思われます。

 しかし2000年に抗インフルエンザ薬が登場してから自然経過より約1日早く解熱するという治療効果が得られるようになりました。
 この治療によりウイルス排泄期間も短くなるのかどうか、大いに興味のあるところです。

 短くなるなら解熱後の隔離期間も従来通りでよいけれど、短くならないなら隔離期間を長く設定しなければいけないのではないか?
 しかし、得られる情報では「ウイルス排泄期間は短くならない」と「短くなるかもしれない」という両方の意見があるようです。

 ネット上で検索すると、廣津先生(小児科開業医)が精力的に蓄積しているデータを見つけました;

■ 「インフルエンザの家庭内感染と学校感染」(みちのくウイルス塾、2009年)

 この中のスライドを拝見しますと、
・「発症後のウイルス残存率」
 無治療では発症6日目に約50%、治療群では5~10%。治療により約2日間ウイルスが早く消失する。
・「解熱からの経時的ウイルス残存率」
 解熱後2日目でも約40%、3日目約15%、4日目約5%。
・「年齢の違いによる治療後のウイルス残存率」
 治療後5日目では6歳以下が約50%、7歳以上は約10%。学童と比較すると乳幼児のウイルス残存率は約1日遅れで減少していく。

 などのことが読み取れます。
 つまり、
・抗インフルエンザ薬治療により自然経過より早く解熱し、それと平行してウイルス排泄も減少する
・乳幼児ではウイルス排泄も減少が年長児より1日程度遅れ、長引く傾向がある
 ということ。

 すると出席停止期間は、
学童は解熱後2日間、園児は解熱後3日間
 でよいと考えられます。

 さらに近年、1回で治療終了のイナビル(吸入薬)とラピアクタ(点滴静注)が登場しました。
 製薬会社の説明では、治療により解熱しても、発症7日目のウイルス排泄量はゼロにはならないとのことでした。
 イナビルの効果発現時間はリレンザとそう変わりませんが、ラピアクタはより即効性です(点滴した晩には解熱傾向になることが多い)。

 ラピアクタはウイルス排泄量も早期に減らすことができるのでしょうか?
 ラピアクタの「インタビューフォーム」(薬の詳細情報)のP21-22には「インフルエンザウイルス力価の単位時間あたりの変化量は、投与前から投与 3 日目までの 600 mg 群でのみプラセボ群より有意に大きかった」と記載されています。わかりにくい表現ですが、ウイルス排泄は無治療とあまり変わらないということ。
 ラピアクタ治療後、楽になったと早期に社会復帰するとウイルスをばらまく可能性が大と思われ、ラピアクタ使用者に限り「解熱後○日間」の○部分に変更が必要になるかもしれません。
 
※ イナビルは2010年秋の発売時から小児適応があり、ラピアクタは2010年秋に小児適応が認められました。
 
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ヒブ・肺炎球菌ワクチンの助成延長が決まる

2011年12月22日 07時00分33秒 | 小児科診療
 2012年度もヒブワクチン、肺炎球菌ワクチンの助成が延長することが閣議決定したとのニュースが入ってきました;

厚労省、3ワクチン補助を1年間延長へ 子宮頸がんなど
(2011/12/20 日本経済新聞)
 厚生労働省は20日までに、子宮頸(けい)がんワクチン、小児用肺炎球菌ワクチン、ヒブ(インフルエンザ菌b型)ワクチンについて、公費補助の対象を2012年3月末から1年間延長する方針を決めた。同日に閣議決定された11年度第4次補正予算案に基金を積み増しする形で526億円が盛り込まれた。
 厚労省によると、3ワクチンはいずれも10年11月から12年3月まで公費補助の対象だった。来年度以降もこれまでと同様に国の補助を半額とする。
 補助は、性感染症の子宮頸がんのワクチン接種が原則中学1年から高校1年の女子、細菌性髄膜炎などを防ぐ肺炎球菌ワクチンとヒブワクチンはいずれも0~4歳の乳幼児が対象となっている。


 小児科医の視点からすると「手放しでは喜べない」結果です。
 その理由は、「定期接種に採用されなかった」こと。現行の任意接種のままでは「何かあっても国は責任は取らず、地域自治体の責任でやってくれ」という含みが残されているのです。まだ2011年春の「同時接種による死亡トラブル」が尾を引いているようですね。これについては、専門家による検討の結果「ワクチン・同時接種と死亡との間に関係はない」という判断が下っているにもかかわらず、社会現象に仕立て上げたマスコミの責任もあります。

 結局、割を食うのは弱者の子ども達。
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水ぼうそうの流行を考える~「任意接種」という踏み絵

2011年12月16日 07時09分30秒 | 小児科診療
 当地域ではおたふくかぜと水ぼうそうが流行中です。
 水ぼうそうの流行は全国的で、その規模も大きいようです(添付記事参照)。

 日本は水ぼうそうのワクチンを開発した輝かしい歴史があるにもかかわらず、その位置づけが「任意接種」であるゆえ、接種率が20~30%と低いままであり、流行が制圧できずにいます。
 アメリカでは「2回定期接種」であり、水ぼうそうの流行は制圧されています。

 なぜこんなことが起こるのか?

 日本は医療が発達し「国民皆保険」によりフリーアクセス(いつでもどこでも安価で医療を受けられる)が保証されています。しかしワクチンの多くは任意接種=有料なので、お金に余裕のない子育て世代に重くのしかかり、まるで「子どもの健康にどれだけお金をかけられますか?」と試されているようなストレスさえ感じます。
 このような状況が「罹った方がまし」という誤った感覚が生んだものと思われます。
 一方、アメリカでは医療費はべらぼうに高く、一方予防接種は無料なので「受けた方がまし」という感覚が生まれているそうです。
 つまり、医療行政により疾患に対するスタンスが左右されているということ。

 しかし、ここにきてポリオワクチンが社会問題化しています。
 効果は高いが副反応の心配な生ワクチンか、効果はやや劣るが副反応の心配が少ない不活化ワクチンか。
 ようやく「子どもの命を守るワクチン」という基本スタンスに立ち戻った印象があります。

 これを機に、子どもの命を守るワクチンは定期接種にして「希望者は無料、受けるかどうかは家族で考えてください」というスタンスに切り替わっていくことを希望する次第です。

水ぼうそうが流行、過去10年間で第3位を記録
(国立感染症研究所)

 国立感染症研究所は12月9日掲載の感染症週報第47週(11月21~27日)で、水痘(すいとう=水ぼうそう)の定点当たり報告数が10月から増加し続けており、47週には1.77と、2001年以降の報告数としては03年、10年に次ぐ多さを記録したとして、注意を呼び掛けている。水痘ワクチンは日本で開発されたにもかかわらず、いまだに接種率は20~30%と低く、毎年約20万人の患者が発生している。

国内のまん延状況をコントロールするには程遠い
 感染研によると、水痘の定点当たり報告数の増加は第42週(10月17~23日)から続いており、47週には1.77を記録。これは03年、10年に次ぐ多さで、38都道府県で前週よりも増加が見られているという。
 また、11年第1週からこれまでに報告された累積報告数は20万620人で、男性が10万4,659人(52.2%)、女性が9万5,961人(47.8%)と男性がやや多い。この調査は小児科の報告に基づいて行われており、年齢群別の報告数では、5歳以下が全体の85%以上を占めている。
 同週報では、水痘を「通常は小児期に好発する予後良好な疾患」としながらも、合併症には敗血症を含む最近の二次感染、髄膜脳炎、小脳失調、肺炎、肝炎などがあり、成人では重症化することも多いと警告している。また、免疫抑制状態にある人にとっては致死的な影響があるほか、自然感染で治癒した場合、約20%の人が年齢を経て帯状疱疹(ほうしん)を発症する可能性があることも示されている。
 さらに、水痘ワクチンが世界に先駆けて日本で開発されたにもかかわらず、予防接種法で「任意接種」に位置付けられているため、接種率が低いことも指摘。実際の接種率は20~30%との報告もあり、そうした状況を打開するための多価ワクチンの開発も進められている。同週報では、「国内におけるまん延状況をコントロールするには程遠いと言わざるを得ない」とのコメントも記されている。

米国では四種混合+肺炎球菌ワクチンの臨床試験も
 一方、米国では日本で開発された水痘ワクチンの接種を1995年からは1回、06年からは2回、小児の定期接種プログラムに組み入れており、現在では90%以上の接種率を維持している。それに伴い、全年齢で水痘関連死を制圧したことや、定期接種対象外の乳児における水痘合併症発生率が低下するなどの効果も報告された(「Pediatrics」2011; 128: 1071-1077)。
 また同時期に、1歳から1歳半の子供を対象とした、現在米国で用いられているムンプス(おたふく風邪)・麻疹(ましん=はしか)・風疹(ふうしん=三日ばしか)・水痘の四種混合(MMRV)ワクチンに肺炎球菌7価ワクチンを加えた五種混合ワクチンの臨床試験に関する成績も報告されている(「Pediatrics」2011; 128: e1387-1394)。

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「花粉症避粉地体験セラピーツアー」

2011年12月13日 06時47分09秒 | 小児科診療
 ちょっと気が早いけど、花粉症の話題をいくつか。

 近年、この類のツアーの宣伝をよく見かけるようになりました。
 スギの植生がない北海道と思いきや、南の島なのですね。
 確かに避けて行ってみたいけど、仕事は・・・やはり有閑階級の人向けなのでしょうか。

花粉症:影響少ない離島でリフレッシュを セラピーツアーを募集
(2011年12月7日:毎日新聞)
 長崎県平戸市大島村で2012年2月24~26日に実施する、「花粉症避粉地体験セラピーツアー」の参加者を同市が募集している。花粉症患者を離島の大島に招いて、花粉症が自然に改善するかどうかを確かめるためのモニターツアーで、医師が同行し改善の度合いを見る「寛解度」のチェックも実施する。
 大島は平戸の北に位置する離島のため、本土からのスギ花粉の飛来の影響を受けず、島内の杉林が全体の約1%と少ないことを利用し、「花粉症避粉地」として島の活性化を図る事業を進めている。長崎大の調査では、島内住民の花粉症有病率が2.65%で、全国平均26.5%、沖縄の6%より低いことが判明し、2010年に学会で報告された。
 体験セラピーツアーは、2泊3日の期間中に棚田の景観や玄界灘の眺望、島の食べ物をゆっくりと楽しみ、日常の花粉症のわずらわしさからリフレッシュしてもらおうという内容。募集人員は東京方面から10人(同行者1人、合計5人まで可)、福岡方面から5人の合計20人。


 同行医師の募集はしていませんね(苦笑)。

 さて、花粉症の話題をもう一つ。
 シーズンが始まると、私は「ウェザーニュース」の花粉飛散情報をよく閲覧しています。こんなに細かい地域をよくカバーできるものだと感心していましたが・・・実はフツーの人たちの協力の下に成り立っていたのですねえ。

求む花粉情報! ウェザーニューズ、"花粉観測ロボ"設置者1000人を全国で募集
[2011/12/12:マイナビニュース]
 ウェザーニューズはこのほど、花粉症に取り組む「花粉プロジェクト2012」の開始に先立ち、花粉観測機「ポールンロボ」の設置者1,000名の募集を開始した。対象は全国の一般家庭、医療機関、企業、学校などで、募集期間は18日24時まで。
 同企画は、花粉観測機「ポールンロボ」を自宅や会社などの身近な場所に設置し、自動観測された花粉飛散数や気温、湿度、気圧の情報を同社に提供し、同時に日々の症状などをリポートで報告するというもの。
 「ポールンロボ」とは、同社が開発した花粉観測機。人の顔に見立てた"目・鼻・口"がデザインされており、口の部分から人の呼吸と同量の空気を吸引して、実際に人が空気中で吸い込む花粉量を計測することができる。また、目の部分は観測した花粉量により、色が5段階に変化して花粉量の状態を知らせる事が可能。さらに、花粉飛散量のほかに気温、湿度、気圧も観測し、花粉が飛散しやすい日の判断などに使用されるという。


 花粉観測機「ポールンロボ」(イメージ)。目の部分は花粉が少ない状態の白から青、黄、赤、紫へと5段階で変化する(出典:ウェザーニューズWebサイト)

 収集したデータは、インターネット回線を通じて同社に自動送信され、スマートフォンアプリ「ウェザーニュースタッチ」やインターネットサイトなどで、リアルタイムで公開。また、花粉予報や花粉症対策などのコンテンツにも反映され、活用される。
 設置条件として、ブロードバンドインターネット環境、ブロードバンドルーターおよびハブを所有していること、観測機を吊るして固定できる場所があること、屋外から屋内に接続ケーブルを通す穴(通気口など)があることなどが求められる。
 設置希望者は、応募サイトから必要情報を入力して応募する。なお、応募の際はウェザーニュース会員登録(月額315円)が必要。設置者の発表は12月23日を予定している。


 うん、こちらは募集してみようかな・・・。

 最後に花粉飛散予測を。

■ 「2012年花粉症特集」(武田薬品のHP)


 この予測によると、当地域は2月中旬から本格的に飛散が始まり、量は例年並みかやや多い、ということになります。
 あれ、ちょっと待てよ・・・昨シーズンが当たり年だったので、来るシーズンは少ないはずだったのでは?!
コメント (2)
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