徒然日記

街の小児科医のつれづれ日記です。

“モデルナアーム”について

2021年07月17日 06時59分32秒 | 小児科診療
巷ではモデルナ社の新型コロナワクチンを接種後に、腕が腫れる現象・副反応が少なからず発生し、ファイザー社では見られないことから“モデルナアーム”と呼ばれているようです。



<参考>
(2021年7月12日 NHK)
(倉原優 | 呼吸器内科医 2021/7/15)
(2021.7.15 日テレNEWS24)

これは、ワクチン接種後5-11日に一過性に出現する接種部位を中心とした皮膚の赤みで、日本のデータでは2-4%の出現率です。
普通の局所副反応である痛みや腫れなどより、遅れて出る傾向があります。



そのメカニズムは「遅延型過敏反応」を疑われていますが、どのワクチン成分に対しての反応なのかはまだわかっていないようです。
話題のPEG(ポリエチレングリコール)はファイザー社のワクチンにも含まれ、しかしモデルナアームは名前の通りモデルナ社のワクチンのみに現れるので、これも犯人ではありません。

アメリカのデータでは31-45歳の女性の多いと報告されています。

いずれにしても重症化せず、一過性の赤みで回復(平均6日間)しますので、心配には及びません。

対処法ですが、赤い部位がほてる場合は“冷やす”ことも選択枝です。
かゆみが強い場合は医療機関を受診するとステロイド外用薬を処方されることがあります。

1回目接種後に出ると、「2回目はもっとひどく出るのでは?」と心配になりますが、そうでもないようです。
2回目も「再発しやすい」という報告がある一方で、「ほとんど再発なし」という報告もあり、少なくとも1回目より重症になることは観察されていません(出現日は早まる傾向あり)。

従って、1回目にモデルナアームが出現しても、2回目も接種できます。
別の腕にすべきかどうかは、結論が出ていません。


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“やり過ぎ”感染対策(学校編)

2021年07月15日 17時14分16秒 | 小児科診療
新型コロナウイルスの感染対策、どこまでやればいいのか・・・。
医療者も抱える疑問です。
教育現場でも、教員の方々は悩まれていると思われます。
不足でも過剰でも保護者からのクレームが来ます。

例えば、マラソン中に突然死した小学生のニュースが流れました。
その時にマスクをしていた、いやしていなかったで、
学校側の対応責任を問う声が大きくなりました。

先日読んだこの本、
非常に丁寧に詳しく説明されている良本ですが、
「やりすぎ?」コーナーがあるのが特徴でもあります。
その辺を中心に是非紹介したいと思います。

■ 夏場のマスクは必要?
→ 屋内でソーシャルディスタンス(1-2m)が取れないときは必要、屋外では2mの距離が確保できるのなら外してもOK

■ 空間除菌は必要?
→ 必要なし、というより体に害を及ぼす危険を伴う。換気の徹底を優先。

■ 教室の窓は常に全開にしておく?
→ 十分な換気(※)を心がければ必要なし。
※ 1時間に1回、5分以上、対角線上のドアと窓を全開にする。

■ 三密空間(更衣室や放送室、狭い会議室など)は絶対に避けるべき?
→ 可能な限り避けるべきであるが、滞在時間が短ければ(15分を目安)感染リスクは低い。

■ 手洗いのしすぎで手が荒れて痛い、それでも手洗いが必要?
→ 保湿成分の入ったアルコール消毒で代用可能。

■ 学校にいる間、ずっとマスクをしていなくてはいけない?
→ マスクはソーシャルディスタンス(1-2m)が取れないときに必要な飛沫感染対策で、室内で密になるときは必要、屋外では外せる場面もある。

■ 運動するときもマスクをするの?
→ 運動中はマスクを外し、運動後の会話する時はマスクを着用。運動中のマスクは熱中症や脱水のリスク。マスクはあくまでも距離を取れない場合の代用感染対策。

■ 夏のプールはダメ?
→ プールの水でうつるリスクは以下の理由(⇩)で低く、プールを利用した事による感染例は報告されていない。基本的な感染対策(更衣室やプールサイドでおしゃべりしない)を守れば問題ない。

・新型コロナウイルスは水温20℃の水道水では1-2日間生存できるが、塩素で消毒されているプールでは30分以内に失活する。
・プールの水の量に対して人が排出するウイルス量は非常に少ない。
・新型コロナは肺に吸入することで感染が成立するウイルスで、飲み込むことで感染することはない。

■ 子どもに教室などの掃除をさせない方がいい?
→ 掃除中はマスクを着用し、掃除後に手洗いを励行すれば大丈夫。掃除中の接触感染に関する目立った報告例はない。

■ 給食時のパーテーションは必要?
→ マスク着用(食べるときは外す)、会話なしであれば必ずしも必要ではない。換気を優先すべし。

■ 文部科学省推薦の「6つの場面での手洗い(※)」をすべてやるのは大変、絶対にやらないとダメ?

※ 手洗い場面6つ;
・外から中に入るとき
・咳やくしゃみ、鼻をかんだとき
・食事前
・掃除後
・トイレ後
・休み時間後、共有物に触れた後

→ ウイルスは手についただけでは感染しない。ウイルスがついた手で口や鼻を触ると感染する。原則は以下の2点;
・明らかに手が汚れているとき
・手で顔に触るような行為(食事など)の前

■ 通学の満員電車は感染リスクが高いので利用しない方がよい?
→ 停車時のドアの開閉で換気され、人の入れ替わりも多いため、会話をしなければ感染リスクは低いので、利用可。

■ 集団で登下校する際、他の人と1-2m開けて歩く?
→ 会話をしないで静かに歩いている場合は間隔を大きく開ける必要はない(人との距離を開けすぎると交通事故のリスクが増す)。

■ 図書館の貸し出し用の本は、全ページ消毒しないとダメ?
→ 本についたウイルスは約24時間で感染力を失うので、使用前後の手指衛生を行えば利用可。

■ 家庭でも完璧な感染対策(※ 1)をすべき?
→ 家庭は“密な空間での集団生活”ですが、完璧な感染対策は無理です。可能な範囲で基本的な感染対策(※ 2)を。

※ 1)家庭での完璧な感染対策例;
・話をするときはマスクを着用
・一切おしゃべりをしない
・食器は別
・お風呂も一人ずつで毎回洗う
・洗濯も寝室も別

※ 2)可能な範囲の基本的な感染対策;
・三密空間を作らないために部屋の換気をよくする
・タオルなどの物品を共用しない
・帰宅時やご飯を食べる前は必ず手を洗う


その他に基礎的なことで目に留まったポイントを。
やや専門的になりますので、興味のある方だけどうぞ。

感染症流行の表現方法いろいろ
・エンデミック(endemic:地域流行):特定の地域で定期的に繰り返し感染者が出ること。
・エピデミック(eidemic:流行):特定の感染症が例年の感染者数や範囲を一時的に大きく超えて発生すること。
・アウトブレイク(outbreak:特定の場所での大きな流行):一定の期間に、特定の地域・集団の中で、突発的に多くの感染者が予想をはるかに超える規模で発生すること。
・パンデミック(pandemic:世界的大流行):国境や大陸を越えて世界的に感染が広がり、多数の感染者が出ること。
・・・これらの感染の終息の定義は「潜伏期間の2倍の期間、新たな感染者の報告がないこと」、今回の新型コロナで考えると、最長14日間の潜伏期と言われているので、28日間新規患者が発生しなければ「終息」宣言を出すことができる。

・・・2009年当時の新型インフルエンザの報道を思い出します。メキシコで発生し世界的に注目を集めたものの、致死率が思ったほど高くないことが徐々に判明し、大騒ぎする必要があるのかな、という声も聞こえ始めた頃に「パンデミック宣言」がなされたのです。確かに複数の国に渡って感染拡大したので、そのタイミングで発令されたのですが・・・。

過去のパンデミックの終わり方
・SARS:終息
・新型インフルエンザ(2009):定着
・MERS(2003):残存
・新型コロナ(2019):定着?

マスクとソーシャルディスタンスの関係
飛沫感染対策は2m以上距離を取ることが基本です。2m開けられないときにマスクが必要になる。つまり、マスクは距離が取れないときの飛沫感染対策のグッズ。逆に2m距離が取れればマスクは必要なくなり、これが屋外ではマスクが必要ない理由になる。

マイクロ飛沫感染(エアロゾル感染)を理解してますか?
 現在も「飛沫感染」に分類するか、「空気感染」に分類するかは専門家の間でも意見が分かれている混乱状態だが、おおむね「飛沫感染と空気感染のあいだ」と落ち着きつつある。
 マイクロ飛沫感染は、空気感染ほどの感染距離はないものの、ウイルスは2-3mでは落下せず、空気中にしばらく滞在することが判明している。空気が滞留する状態(つまり“三密”)では数時間空気中に浮いているともいわれている。三密の条件を満たす空間では、感染リスクが18倍になるという報告もある。
 しかし飛沫感染と比べると、マイクロ飛沫感染は密閉空間では飛散距離が長くなり得ることに注意が必要。
 マイクロ飛沫感染の対策は、ずばり「三密回避」。ソーシャルディスタンス〜マスクのみでなく、徹底した換気が最も有効。

■ 学校の教室の換気方法
 教室などの一般的な環境では、
・1時間に5-10分程度換気をする(休み時間に窓やドアを開放する)。
・持続的な換気をするのであれば、対角線上の窓やドアを10cmくらいずつ開けておく。
 ので十分。

新型コロナウイルスは「空気感染」するのか?
 「空気感染」を「病原体の付着した飛沫核が空気中をどこまでも浮遊し続けて感染する」と定義した場合、「新型コロナウイルスは空気感染しない」ということになる。これを満たすのは水痘、麻疹、結核の三疾患のみ。
 新型コロナではマイクロ飛沫(エアロゾル)感染が起こることはあっても空気感染は起こらず、結核や麻疹ほどの感染範囲はない。

消毒剤の空間噴霧(空間除菌)、首かけ消毒剤は有効? → 無効かつ危険です!
 次亜塩素酸の空間噴霧や紫外線照射、オゾンなどによる「空間除菌」と言われるものを見かけるが、科学的な根拠に乏しく、噴霧された次亜塩素酸を吸入することによる肺炎や紫外線照射による皮膚障害を起こした例や、首からぶら下げるタイプの商品で化学熱傷を起こして商品回収に至った例も報告されている。
 無効であるばかりか、かえって健康被害を引き起こすものもあるので、使用の際は十分な注意が必要(私はお勧めしていません)。それよりも、しっかり換気した方が有効で安価。

二酸化炭素濃度
 会話が多く、換気の悪い空間では二酸化炭素濃度が高くなるため、その空間の空気のよどみを評価できる。厚労省の基準は「1000ppm以下」。

アルコールが新型コロナウイルスを死滅されるメカニズム
 新型コロナウイルスは外側に「エンベロープ」という脂質の膜を持ち守られている。アルコール消毒はこのエンベロープを壊してウイルスを失活してくれる。アルコールを手に付けるとすぐに揮発するが、この揮発するときにエンベロープが破られる。
 アルコールは「洗い流す」のではなく、手指にこすりつけて「揮発させる」ことが重要で、流水による手洗いの100倍の効果を期待できる。
 ただし、物理的な汚れは落とせない、(開封後1年以上経過して)アルコール濃度が60%未満になると効果が落ちる、などの弱点がある。
 インフルエンザウイルスもエンベロープがあるのでアルコール消毒が効く。一方、ノロウイルスにはエンベロープがないので、アルコール消毒が効きにくい。

■ 「通気性がよいマスク」=「感染防止効果なし」
 通気性がよいマスク=ウイルスが出入りしやすいマスク、である。

マスクの性能表示:BFE、VFE、PFE
(BFE)細菌飛沫捕集効率
(VFE)ウイルス飛沫捕集効率
(PFE)微小粒子濾過効率
・・・これらが95%以上であることが、医療用マスクの一般的な条件。
これらの指標が記載されていないマスクは、いくら効果があると書いてあっても眉唾物。
 医療関係者は、不織布でできた「サージカルマスク」以外は効果がないと考えている。

運動・スポーツの際の感染は、運動中ではなく控え室・更衣室で起きている
 スポーツにおけるクラスター事例のほとんどは、同一空間である程度の時間会話を伴う行動をしたり、あるいは移植をともにしていたというケースが多い。

■ 共用する道具の消毒
(調理実習)
・調理器具は各自1つずつ使用
・調理台の使用は1台2名まで
・食器や調理器具は使用前後に洗い消毒
(掃除)
・通常の接触感染対策(マスク、使用後の手洗い)
(トイレ)
・蓋のあるトイレの場合は、便に付着しているウイルスが飛散しないよう“念のため”トイレの蓋を閉めて流すことが推奨される。
(運動会)
・大玉送り、玉入れなどの共用物を使う競技においては、競技後の手洗いや手指のアルコール消毒に加え、使用後の道具の消毒を徹底する
(音楽祭)
・ピアノなどの楽器を共用する際は、手指衛生や楽器の消毒を徹底する

・・・ココで矛盾が発覚!
調理実習の調理器具、運動会、音楽祭での共用物は消毒が必要、
一方、掃除道具、トイレでは使用後の手指消毒、としか書いてありません。
混乱するので、統一していただきたいものです。

■ トイレでの感染リスク
 「糞便からもウイルスが検出されるから、感染源となり得る」という報告があるが、「ウイルスが検出されただけであって、実際にこれを介して感染した」証明にはならない。

合唱の感染リスク
「声を出す=飛沫が飛ぶ」ので感染リスクが高い行為だから、「歌をうたう」ことも当然ハイリスク。合唱などの発生で飛沫がどの程度飛散するかという検証では、言語にもよるが約1-2mとされている。
全日本合唱連盟のガイドラインによると、

・体調管理がしっかりできていること
・感染を疑われる人が参加していないこと
・合唱当日、会場が密でないこと
・換気がしっかりできていること
・マスク着用、手洗いなどの基本的な感染対策を行っていること
・マスクをせずに歌う場合は、発生する前方向に1.5m程度、左右は三津が発生しない程度に離れること

と明言されている。実際には練習中も本番時も、

・マスクなしの場合は向かい合う配置は避け、前後に1-2m、左右は密が発生しないよう(1m程度)距離を置いて歌う

ことになる。

■ 交通機関(電車/新幹線、バス、飛行機)での感染リスクは低い
・定期的に停車しドアを開閉するため、その都度換気される。
・会話をしないため、飛沫が飛ばない。
・満員電車であっても人の入れ替わりは多く、長時間同じ人と顔を近づけていることが少ない。
・飛行機内では数分間に一回空気が入れ替わるため、感染リスクは2700万分の一。
※ ただし、移動中の会話、複数人で大騒ぎする、観光バス内でのカラオケなどは感染リスクが高まる。

■ 図書館での感染リスク
・貸し出し用の本は「不特定多数の人が触れるもの」であるが、紙や段ボールの表面では24時間程度(プラスチックでは72時間)でウイルスは失活するため、本に付着したウイルスは1日程度で消失すると考えてよい。
・日本図書協会は、図書館の本の消毒について「アルコールによる消毒」や「紫外線照射」は本を傷めるだけで感染リスクを下げる明確な根拠がないとして推奨していない。
・図書館および本の利用前後でしっかり手洗いすることが感染リスクをさらに減らすことができる。
・設置してあるパソコンは、使用後にキーボード等直接触れる場所をアルコール消毒することでウイルスを除去できる。

■ 映画館・劇場での感染リスクは低い
・天井が高く換気もしっかりされているため、滞在期間が長くても三密空間になりにくい。
※ ライブハウスや舞台のある居酒屋では、大きな声+三密空間になるため感染リスクが高い。

■ 衣服の感染リスクと洗濯
・新型コロナは衣服に付着した状態で1-2日間生存する可能性があるが、実際に衣服からの感染が疑われた事例はなく、布などの無生物に付着したウイルスが空気中に舞うこと通常はない。
・よって、清潔を保てる洗濯サイクルのままでよい(毎日?)。


さて、以前から疑問に思っていることがあります。
それは、
「ウイルスで汚染された食べ物・飲料を食べたり飲んだりすると、感染するのか?」
です。この本の中では、

・汚染された手で口に触ると感染する
・飛沫の付着した食べ物を口にすると感染成立(p78)
→ 汚染された食べ物でも感染する

・汚染された水を飲んでも感染しない(p75)
→ 飲料は安全?

と矛盾した記述があり、残念ながら私の疑問は解決しませんでした。

★ 追記;
世界各国での子どものマスク着用に対する考え方を紹介します。結構バラバラですね。

米国CDC:2歳未満は不要
WHO:5歳以下は必ずしも必要なし
欧州CDC:13歳未満は必要なし
厚労省:未就学児には一律にマスク着用を求めず、特に2歳未満は不要
日本小児科学会:2歳未満は不要
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大人は居酒屋でおしゃべりしながら飲み食いしているのに、なぜ子どもはマスクをして無言で給食を食べなくちゃいけないの?

2021年07月15日 14時44分59秒 | 小児科診療
と質問されたら、あなたはどう答えますか。

子どもたちがどんな風に給食を食べているのか、実態を知り考えてみましょう。

<参考>
□ 「新型コロナウイルスに対する学校の感染対策」
(武藤義和著、丸善、2021年4月発行)

■ 子どもたちはこうして給食を食べている

(食前)
・机を向かい合わせにせず、全員同じ方向を向いて食事
・座席を1-1.5m離す
・食事前に手洗い(あるいはアルコールによる手指消毒)
・配膳する生徒は風邪症状(発熱、倦怠感、咳、咽頭痛、下痢、嘔吐など)がないことを確認
・食事前に机の上をアルコール消毒

(食中)
・会話をする必要がある場合は、マスクを着用する(ハンカチで代用可)
・窓やドアを開け、空気の流れがよい環境にする

■ パーテーションの効果は限定的で推奨せず
・机ごとのパーテーションは、大きな飛沫を直接浴びることは防げても、浮遊する小さな飛沫は回避できないため、効果は限定的 

■ 「会食はハイリスク行為」を分析すると・・・
・「ご飯を食べること」そのものが感染源となることはない。
・食事をしながら談笑する「会食」は飛沫を飛ばし合い、吸い込み合い、飛沫が付着した食べ物を口にすることにより感染が成立する。
・つまり、「食べる」ことではなく「しゃべる」ことが感染源。

また、各自治体で学校給食の際の感染対策マニュアルを作成しています。
一例として福井県あわら市の「学校給食における新型コロナウイルス感染症対策マニュアル」から「食事中」を抜き出してみます;

1.食べる時に外したマスクは児童生徒が持参した袋に入れたり、フックに掛けたりして、衛生 的に保管する。
2.給食中は机を合わせたりせず、前を向いて給食を食べる。
3.極力話をしないようにする。
4.立ち上がって動き回ることのないようにする。
5.配膳後の量の調節やお代わりは静かに行う。

学校給食の場で感染が広がりクラスターが発生したという報告は聞こえてきません(給食センターはあるようですが)。
つまり、上記を守れば会食時も感染リスクは低く抑えられるはず。

大人の方々、居酒屋での会食時は是非とも、

・換気のよい店内であることを確認
・向き合わず、一方向を向いて坐る
・食べるときはマスクを外し、しゃべるときはマスクをする
・極力話をしない
・立ち上がり席の間を移動しない

を守ってくださいませ。
そうすれば子どもたちに顔向けできるというもの。
といっても、これでは「会食」ではなく同じ店にいながらの「個食」ですね。

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医療従事者に「新型コロナワクチン義務化」の是非

2021年07月15日 06時47分45秒 | 小児科診療
まず、医療従事者における、新型コロナ以外の「ワクチン義務化」の現状を報告します。

現在、看護師や医師を養成する大学・短期大学・専門学校では、
入学前に「麻疹・風疹・水痘・おたふくかぜ」に関して、
「感染・ワクチンの既往」の確認を求められます。
その内容は日本環境感染学会による「医療者のためのワクチンガイドライン第3版」に準じて行われます。
不十分と判断された場合、抗体検査や必要に応じてワクチン接種が指示され、
それに従わない場合は入学を認められません。

つまり、事実上「ワクチン接種が義務」です。
また、医療施設に実習に行く職種を目指す学生も、
実習前に同様のことを求められます。

これは、自身を守ることと免疫弱者である患者さんを守ることが目的です。
医療従事者が感受性者(その感染症の免疫を持っていない)場合、当然感染する可能性があります。
そして感染した場合、その時点では被害者かもしれませんが、
同時に加害者に否が応でもなり得ます。
そして免疫弱者である患者さんにうつると、患者さんは重症化する可能性が大です。
例えば、健康な人が水痘に罹っても1週間程度で治りますが、
白血病患者が罹ると命に関わります。

続いて一般人に対する「ワクチン義務化」の現状を。

アメリカでは、小学校に入学する際に麻疹・風疹などのワクチン接種が済んでいることを
証明する必要のある州があります。
宗教上の理由とかで例外が認められていますが、
基本的に義務化と等価ですね。

また、アメリカへ留学する際、一般的にワクチン接種証明書の提出を求められます。

これらは、集団生活で上記感染症のアウトブレイクが繰り返し問題になった経緯を反映した施策です。

世界旅行をした経験のある方は「黄熱ワクチンに対するイエローカード」をご存知だと思います。
黄熱流行国では、あらかじめ黄熱ワクチンを接種しておかないと入国できません。
それを証明するのがイエローカードです。

以上、日本では定期接種といえども法律上は
・ワクチンは推奨で義務ではない
・国民はワクチン接種の努力義務がある
という中途半端な扱いですが、
現実にはリスクの高い環境では一部義務化されているのです。


さて、ここからは新型コロナおよびそのワクチンの話です。

パンデミック発生から1年半以上経過しましたが、
新型コロナウイルスの勢いは止まる気配がありません。

人間にとって、新型コロナウイルスの困った特徴は、
「無症状の感染者からもうつる」
ことでしょう。

このため、感染対策を尽くしてもすり抜ける例がゼロにできず、流行を抑えきれません。
感染対策を尽くした結果、毎年流行する季節性インフルエンザは影を潜めたのに、
新型コロナはどこ吹く風。
つまり、新型コロナはインフルエンザより手強いことは間違いありません。

ウイルス感染症に対抗する人類の手段は、
感染を予防するワクチンと、感染した場合に使用する治療薬があります。
残念ながら、現在手に入るのはワクチンのみ。
ここがタミフルなど治療薬が充実しているインフルエンザと違うところです。

そして、今回開発された新顔の mRNA ワクチンは有効率95%と驚異的な数字を示しています。
開発スピードの速さと有効率の高さは、ワクチン専門家の間では「奇跡」と捉えられています。

すると、
「国民全員にワクチンを打てば解決するのでは?」
という考えが生まれます。

しかし副反応も一定の比率で発生することがわかっており、
それを不安視して接種を拒否する人たちもいます。

ただ、流行拡大〜医療崩壊が止まらない国もあり、
世界各国で新型コロナワクチンを義務化する動きがあります。

アメリカでは医療施設が職員に義務化を提示し、
職員が反発して訴訟になり、
職員側が敗訴したというニュースが聞こえてきました。

フランスでも義務化の議論が始まっています。
マクロン大統領は「ワクチンを打たない医療従事者には給料を払わない」と言い出しました。

EUで導入されたワクチンパスポートも、
接種者のみ利用可能な施設、権利を設定するため、
間接的に非接種者に行動制限がかかります。

「このまま放置すると国が危ない」
「ワクチンを接種するのは自由選択などと言っている場合ではない」
という危機感が日本と比較にならないほど強いのだと思われます。

一方で、新型コロナワクチン接種を医療従事者の中でも一定の比率で拒否する人たちがいます。
看護師では3割に上るというデータもあります。
各個人で事情はあり、もちろん強制ではありませんが、
その方々はどのような勤務を望まれるのでしょう?
私は医療従事者に以下のようなアンケートをとってみたいです。

①ワクチンを接種し、新型コロナ感染リスクのある病棟・外来で働く
②ワクチンを接種せず、新型コロナ感染リスクのある病棟・外来で働く
③ワクチンを接種せず、新型コロナ感染リスクが低い部署で働く

医療施設においては「患者さんを守る」という視点から、
②のパターンは倫理的に許されない状況です。
つまり、医療従事者でワクチン拒否する方々は、
③を選択したことになります。

しかし、これらの選択を迫ることに息苦しさを覚えることも確かです。
一部の看護師スタッフが退職していくのも理解できます。

もし医療従事者に対して新型コロナワクチン接種義務化を考えるなら、
それに見合うリスク手当て等、考えるべきだと思います。

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新型コロナウイルス感染症流行に「一斉休校」は必要か?

2021年07月11日 08時49分31秒 | 小児科診療
季節性インフルエンザ流行期にはおなじみの学級閉鎖。
今後、新型コロナ流行(クラスター発生)が増えてくると予想されますが、
インフルエンザ同様、学級閉鎖や休校が行われるのでしょうか?
そしてその有効性は?

この疑問に見事に答えてくれている動画を見つけました。

「子供たちの感染状況と学校の感染症対策」

インフルエンザと新型コロナの流行はその特徴が異なるので、同じように一斉休校は行うべきではない。

(インフルエンザの感染拡大の流れ)
・学校での流行が家庭に持ち込まれ社会全体へと広がっていく。
・毎年何十人もの子どもの命を奪う。
・クラスの20%以上欠席者が出た場合に学級閉鎖を考慮。
・学級閉鎖が複数以上発生した場合に学校閉鎖を考慮。

(新型コロナの感染拡大の流れ)
・社会の中での流行が家庭に持ち込まれ学校へ広がっていく。
・一人の患者が発生した際に、学級閉鎖・学校閉鎖・地域一斉休校という措置が必要かどうか疑問が残る。

(子どもにとっての学校閉鎖)
・子どもにとっての学校閉鎖は大人では「ロックダウン」と同レベルの厳しい措置。
・大人の感染対策が不徹底な場合、そのつけを子どもに回してはいけないのではないか?
・社会がロックダウンが必要なレベルまで流行状況が逼迫してはじめて、一斉休校は議論されるべき。
・大人にとってのロックダウンは、経済的事情や精神的に持たないなどの理由で行われにくいが、子どもにとっても同じ、あるいはそれ以上のダメージがある。失われた学校生活や友達と過ごす時間は二度と取り戻せない。

相変わらず“熱い”先生で、語りに引き込まれてしまいます。

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「加害者にならないために」受ける新型コロナワクチン

2021年07月06日 06時31分03秒 | 小児科診療
このブログの前項目で「新型コロナウイルスに感染した時点では被害者かもしれないが、同時に加害者になるリスクも背負う」と書きました。

実際にそれが起きが事例を紹介します。


 ワクチン非接種の看護師12人が感染 沖縄の県立病院
2021.7.2 産経新聞)より一部抜粋

西村康稔経済再生担当相は2日の記者会見で、沖縄県うるま市の県立中部病院で発生した新型コロナウイルスのクラスター(感染者集団)に関し、ワクチン接種を希望していなかった看護師十数人のうち、12人が感染していたと明らかにした。
・・・「ある棟の看護師らがワクチン接種を希望していなかった。十何名だ。看護師では珍しいが、十何名のうち、12名が感染したと聞いている」と語った。 
・・・5月下旬から職員や患者の計51人のクラスターが発生し、うち入院患者17人が死亡した。


 現時点での日本のワクチン接種は「義務」ではありません。
しかし、前述のように「新型コロナウイルス感染=被害者→加害者」という構図があります。
とくに看護師は仕事として免疫弱者と対峙します。免疫弱者は新型コロナウイルスに感染すると重症化しやすいことは、もはや一般常識です。

フランスでは「医療従事者のワクチン接種義務化」の動きもあるようです。


 フランスで、医療従事者のワクチン義務化を準備中。医師の署名活動が始まる

フランス政府は、医療従事者にコロナウイルスの予防接種を義務付ける法案を、現在準備中である。
・・・
政府は数日前から、特に「今から9月までに」接種率80%の目標を達成できない場合に、要介護高齢者居住施設(EHPAD)や病院のスタッフに、ワクチンを義務化することを検討してきた。
・・・
フランス病院連盟(La Fédération hospitalière de France)は6月30日に、「医療従事者および患者と接触するすべての人へのワクチン接種の義務化」に、もしそれが「法制化を検討する」ことを意味する場合でも、賛成すると述べた。
◇医師の署名活動
このような状況のなかで、7月4日、日曜発行の週間紙『ジャーナル・ドゥ・ディマンシュ』は、96人の医療従事者が、同紙に医療従事者へのワクチン接種義務化を求める寄稿記事(Tribune)を掲載、署名活動を始めたことを報じた。
・・・
以下が、掲載された請願書の内容である。

「パンデミックをできるだけ早く終息させ、人的、社会的、経済的に影響を及ぼす第4波を避けるために、禁忌のないすべての国民が、コヴィド19のワクチンを接種する必要があります。
なぜなら脆弱な人々を保護するための倫理的義務だからです。医療従事者は、自分たちが責任をもつ人々のために、ワクチン接種を受けなければなりません。
だからこそ、私たち署名者である医療関係者は、「公的または民間で、予防または治療や介護で、あるいは高齢者を収容する施設で、自分、または自分のケアを受ける人々が汚染のリスクにさらされる職業活動を行う者」全員に、ワクチン接種を義務化することを、政府が今すぐ決断することを求めます。
この決定の適用が9月初旬までに有効となるよう、必要な措置を講じていただくよう求めます。
医療関係者の署名のために、日曜日にこの請願書をオンラインで公開します。」

だいたい1日経った7月5日午前11時15分ごろ(日本時間)において、egora.frというサイトで行われている署名活動では、711人のプロの医療従事者が署名している。


ここでも赤字で示した「脆弱な人々を保護するための倫理的義務」が強調されています。
実は、日本で医療従事者となるためには必須とされるワクチンがすでに存在します。
それは麻疹・風疹・水痘・おたふくかぜ・インフルエンザの各ワクチンです。
院内感染で問題になるこれらの疾患、医療従事者が加害者とならないよう、現在は医療系の大学・短大・専門学校入学前あるいは実習前に義務付けられています。それを拒否すると、入学・実習ができない、つまり医療職に就くことができません。

小児科医である私は、教育関係者にも義務付けた方が感染対策として効果的ではないかと感じています。
なぜって、園児・学童の感染症流行には教員が一役を担っていることが多いからです。
今回の新型コロナウイルスも、教員が起点となって感染拡大・クラスター発生している事例が多く報告されています。子ども同士は体をすり合わせて遊んでいるのに、思ったほど感染は広がっていません。

と書いてくると、「ワクチンに反対する医師もいるじゃないか!」という声が聞こえてきそうです。

確かに医師の中にも「反ワクチン」を掲げている方がいます。
ただ、メディアが取り上げるので声は大きく感じるのですが、ほんの一部の医師ですよ。

彼らの発言内容を知ると、自分の経験や思い込みで判断し、科学データを客観的に分析する姿勢が乏しい傾向が見て取れます。
そのような発言を放置していると「医療界の常識?」と誤って一般人は判断してしまうこともあり、これも問題です。
単に、「客観的な判断力のない彼らと議論しても疲れるだけで時間の無駄」なだけなのですが・・・。

10年ほど前、ワクチンのレクチャーの準備で「ワクチン反対派」の書籍を何冊か読む機会がありましたが、上記の感想で「時間の無駄」と感じた次第です。
彼らは「ワクチン反対」と唱えることで、(書籍・講演会などで)収入を得ている方々なのです。


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新型コロナ後遺症

2021年07月04日 06時32分52秒 | 小児科診療
現在の自粛生活と経済不況を抜け出すためには新型コロナを克服しなければならない、そしてその最短距離はワクチン接種・・・頭の中ではわかっていても、若年者の中に一定数、ワクチン忌避者がいます。

ワクチンデマや陰謀論に踊らされる人がいる一方で、
やはり若者に強く出るというワクチンの副反応が心配、
そして罹っても軽症で済む、という事実があります。

しかし、実際に罹った場合と比較すれば、
ワクチンを接種した方がいろんなリスクが低くなることはデータ上明らか。

今回は新型コロナ感染症の後遺症について書いてみます。
あ、ワクチンの副反応の後遺症じゃありませんよ。
あくまでも感染した場合の後遺症です。

<参考>
□ 「若い世代は重症化しないからワクチンを接種しなくて良い」は本当か

この記事の中で、ワクチン忌避者(ワクチンしたくない!)の年齢別比率が紹介されています。

(年齢層)  (男性) (女性)
15-39歳   14.2%  15.6%
40-64歳   10.6%  13.2%
65-79歳   4.8%   7.7%

思った通りの結果です。
そしてその理由としてぶっちぎりの第一位が「副反応が心配だから」(73.9%)です。
確かに20歳代の発熱率は50%と必発と思った方がよい数字。
最近「心筋炎」の副反応がクローズアップされていますが、こちらは10万回接種に1回の頻度と稀であり、軽症であることから過度に心配するものではないと説明されています。

新型コロナに感染した際も心筋炎の合併症が報告されており、
こちらの頻度のほうが圧倒的に多いです。

さて、本題に入りましょう。
新型コロナの後遺症は「long covid」などと呼ばれていました。
当初は重症度の高い感染者での報告が多かったのですが、
最近は軽症で済んだ人の後遺症も報告され問題視されるようになりました。

ノルウェーからの報告では、
・発症から6か月経過しても61%で何らかの症状(後遺症)が持続。
・後遺症の頻度は感染時の重症度と関係ない。
・若年層(16-30歳)の52%が6か月後も後遺症が残っている。その内訳は…
 味覚/嗅覚喪失(28%)
 疲労感(21%)
 呼吸困難(13%)
 集中力低下(13%)
 記憶障害(11%)など

いかがでしょう。
もし、この後遺症の内容そのものがワクチンの副反応だったら、と仮定してみてください。
そのワクチン接種を希望する人がいるでしょうか?
・・・いませんよね。

もし、ワクチンのラインナップに比較対象として「自然感染」を入れると、
それは「最悪のワクチン」と評価されることでしょう。


もう一つ紹介したい本があります。
TVでよくみかけるようになった「新型コロナ後遺症外来」のヒラハタクリニック院長、平畑光一医師による書籍。
現在、ヒラハタクリニックは「コロナ後遺症」患者さんの駆け込み寺的存在ですね。

□ 「新型コロナ後遺症完全対策マニュアル」

(後遺症の頻度)
・WHOの報告:10人に1人が12週間以上続くコロナ後遺症になる。
・アメリカ:新型コロナ感染と診断後2-3週後も約35%が「普段の健康状態に戻っていない」
・フランス:約30%に記憶障害、睡眠障害、集中力低下などの症状が残った。
・イタリア:約87%に後遺症が残り、倦怠感、呼吸困難が多数。
・日本:(60日後、120日後)
 嗅覚障害(19.4%、9.7%)
 呼吸困難(17.5%、11.1%)
 倦怠感(15.9%、9.5%)
 咳(7.9%、6.3%)
 味覚障害(4.8%、1.7%)

・新型コロナ感染症の深刻度と、コロナ後遺症の有無や症状の深刻度には関連がみられない。無症状あるいは軽症だから後遺症も軽い、とは限らない。

・コロナ後遺症の男女比(ヒラハタクリニック受診者):
 男性:41%
 女性:59%

・コロナ後遺症の年代別割合(ヒラハタクリニック受診者):
 10歳未満:1.1%
 10代:5.5%
 20代:16.6%
 30代:26.0%
 40代:33.1%
 50代:13.3%
 60代:4.4%
 70代:0.0%

コロナ後遺症を訴えてヒラハタクリニックを受診する患者さんの年齢層は、
高齢者中心ではなく20-40代の若い世代に多いことがわかります。意外です。

・コロナ後遺症の内訳:(感染者全体の頻度ではなく、ヒラハタクリニックを受診した患者さんの訴えの頻度です)
 1.倦怠感(93.6%)
 2.気分の落ち込み(87.1%)
 3.思考力の低下(83.2%)
 4.頭痛(80.9%)
 5.息苦しさ(77.3%)
 6.体の痛み(75.6%)
 7.不眠(73.2%)
 8.動悸(72.0%)
 9.食欲不振(64.4%)
 10.発熱(54.4%)
 11.嗅覚障害(51.0%)
 12.脱毛(50.1%)
 13.味覚障害(44.5%)
 14.咳(42.3%)

この「コロナ後遺症」の症状を見ると、意外にも特徴的な「嗅覚・味覚障害」「脱毛」などより、倦怠感、気分の落ち込みなど捉えどころのない体調不良感がメインであることがわかります。
たぶん、これらの症状が軽い場合は「まだ本調子にならない」くらいに考えて日常生活を続けている方もたくさんいらっしゃると思われます。

・コロナ後遺症の治療は「自宅でボーっとする」のが一番。
 共通する治療法は「だるくなることはしない」こと。体力をつけなければ、と無理に運動するとかえって悪化することがある。頭を使うことも脳疲労の原因になるので、スマホやテレビもできるだけ避ける。
 仕事への復帰も焦ってはいけない。自分の身の回りのことや家事がしっかりできるようになるまでは仕事は無理と考え、安静を最優先すべし。

コロナ後遺症への対応は「無理をしないこと」、言い換えれば「体の声を聴いて従うこと」となります。
動くことを体が嫌がれば、動かない。
体が家事をするのを嫌がれば、しない。
体が働くことを嫌がれば、働かない。
それを守っていれば、いずれ「動きたくなる」「働きたくなる」時期が来るということのようです。


さて、平畑医師の記述で気になったこと。
それは「診断根拠がなくても断定診断している例が含まれる」点です。

新型コロナ感染は無症状のこともある、抗体ができても早期に消失してしまう例がある、などを考慮してコロナ感染の証拠がなくても症状だけから「コロナ後遺症」と断定している例がかなり含まれるようです(データが示されていない)。
これは医学論文レベルでは排除されるべきデータなので、この本の中の「ヒラハタクリニック内のデータ」は平畑医師の私見の範囲、とみなさざるを得ません。


最後に、自然感染とワクチン接種を比較する場合に忘れてはならないこととして、
自然感染した場合、その瞬間あなたは「被害者」ですが、
同時に「加害者」として周囲に感染を広める存在に否が応でもなります。
ワクチン接種ではこのようなリスクはゼロです。

ワクチンは「自分を守る」のが第一の目的ですが、
この視点に立てば、同時に「周りの人たちを守る」効果もあるのです。
これが積み重なれば「家族を守る」「町を守る」「地域を守る」・・・とどんどん輪が広がっていき、最終的に「日本を守る」ことになります。


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新型コロナワクチンと妊娠・授乳

2021年07月01日 17時09分38秒 | 小児科診療
私が今までに得た情報では、妊婦・授乳婦に新型コロナワクチンを接種しても問題ない(非妊婦と効果・副反応はおなじ、非接種者と妊娠経過はおなじ)とされています。
ただ、日本国内の法律的には、お約束の以下の脅し文句が添付文書にあります;
「妊婦又は妊娠している可能性のある女性には予防接種上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ接種すること」
「予防接種上の有益性及び母乳栄養の有益性を考慮し、授乳の継続又は中止を検討すること」
・・・まあ、「何かあったら自己責任でお願いします」というスタンスですね。

<参考>
□ 妊娠・授乳中の新型コロナウイルス感染症ワクチンの接種について
□ COVID-19ワクチンアップデート(2021.5版)黒田浩一Dr.

少し細かく見ていきましょう。

<妊娠と新型コロナワクチン>
・動物実験では、母動物が接種することで動物の赤ちゃんに悪影響は見られなかった。

(アメリカでの調査)
・副反応の頻度は妊娠していない女性と同程度。
・流産や死産、早産などの頻度は一般的な妊婦さんと比べて上昇しない。

<授乳と新型コロナワクチン>

・母乳移行量は非常に少なく、さらに多少のワクチン成分を含んだ母乳を赤ちゃんが飲んだとしても、赤ちゃんに悪影響が及ぶとは考えにくい。
 → 授乳中のワクチン接種は問題ない。

というわけで、現時点のデータでは医学的・科学的には心配するような副反応や影響はなく、問題なく接種できると考えてよさそうです。

妊婦さんが新型コロナウイルスに感染すると、重症化や早産の増加が報告されており、この点からも接種が勧奨されます。

<妊婦・授乳婦に新型コロナワクチンを接種した場合の胎児・新生児・乳児への影響>

・出産時の臍帯血でSARS-CoV-2に対するIgG抗体が検出された。
 → 新生児に対してある程度の感染予防効果が期待できる可能性あり。

・授乳婦にワクチンを接種すると母乳中のIgAとIgGが上昇する。


日本における妊婦・授乳婦へのワクチン接種は、政府見解としては最初に紹介したように煮え切らない表現で添付文書に記載されています。

日本産婦人科学会の“最新版”の推奨文(2021.6.17)を引用します;

・ このワクチンを接種することのメリットが、デメリットを上回ると考えられており、希望する妊婦さんはワクチンを接種することができます。
・産婦人科施設以外で接種を受ける場合は、事前にかかりつけ医にワクチン接種の適否に関して相談してください。
・副反応に関し、妊婦さんと一般の人に差はありません。

日本政府の見解より一歩踏み込んで提言していますね。
でも、一つ前の2021.5.12付けの提言では高いハードルを設定していた印象があります。

さて、アメリカの状況はどうでしょうか。CDCのHPによると・・・

・妊婦はワクチン接種(mRNAワクチン)を受けることができる。
・授乳中の女性はワクチン接種(mRNAワクチン)を受けることができる。
・妊娠を考えている女性はワクチン接種(mRNAワクチン)を受けることができる。
・ワクチン接種後の避妊は不要。

とシンプルに言い切っています。


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