徒然日記

街の小児科医のつれづれ日記です。

百日咳は過去の病気ではありません。

2014年07月27日 07時19分29秒 | 小児科診療
 「百日咳は三種混合/四種混合ワクチンに入っているので、それをしっかりやれば罹らない解決済みの疾患
 と以前は思っていました。
 しかし、現在の日本で行われている定期接種だけでは制御できない実態がわかってきました。

 問題点は主に以下の3点;
1.三種混合/四種混合ワクチンの効果は長続きしないことが近年判明。
2.大人の百日咳が多くなってきた。
3.百日咳で重症化するのは生後3ヶ月未満の乳児であり、三種混合/四種混合は生後3ヶ月から許可されているので間に合わない。

 まずは、ワクチンの限界について。
 乳幼児期にワクチンを接種していても、中学生以降は百日咳に罹ってしまう可能性があるのです。

百日咳ワクチン効果は7年未満(2014年07月02日:m3.com)
文献:Wang K,et al.Whooping cough in school age children presenting with persistent cough in UK primary care after introduction of the preschool pertussis booster vaccination: prospective cohort study.BMJ. 2014 Jun 24;348:g3668.
 英国で、長引く咳によりプライマリケアを受診した学齢児童279人を対象に、百日咳有病率を前向きコホート研究で推算。最近の百日咳感染が確認された患者は56人(20%)で、39人(18%)は百日咳ワクチンの就学前ブースター接種完了者だった。ブースター接種から7年以上経過した患者は7年未満の患者に比べ百日咳リスクが3倍だった。


 実際に近年、内科領域では大人の百日咳が問題になっています。
 1ヶ月以上咳が続く慢性咳嗽の30%が百日咳であるという報告も耳にしました。
 その人達が、例えば孫が生まれてお祝いに行き赤ちゃんにうつして重症化する、という構図が見え隠れしてきます。

百日咳が大人にも流行中。症状、予防法、治療法は?
(2008年05月13日、日経トレンディ)
風邪と誤解し菌をまき散らす!! 百日咳の危険性とワクチン
(2013年09月11日:日経トレンディ)

 では、どうすればよいのか?

 ワクチンの追加接種が必要です。
 米国では大人用の三種混合ワクチン(Tdap)を開発して接種しています。

アメリカが直面している新たなる問題点 ―増加する百日咳―(神谷 元、齋藤 昭彦、Mark H . Sawyer、小児感染免疫 Vol.18 No.2)
 アメリカでは昨年より新たに成人用三種混合ワクチン(Tdap)が定期予防接種に組み込まれた。これは現行の三種混合ワクチン(DTaP)が高い接種率を維持しているにもかかわらず百日咳患者数が特に青年成人期で著増しており、さらにこのグループを介した乳幼児への2次感染が問題化しているからである。アメリカの百日咳の現状・対策を検討し、わが国の百日咳対策特にTdapワクチンの早期導入の必要性を強く訴えたい。


 とくに赤ちゃんを守る目的で出産前の妊婦さんに推奨しているのが画期的です。
 有効性も安全性もデータで保証されています。

妊娠中の女性へ百日咳ワクチンの接種を推奨【米国CDC】(2012年10月26日)
☆ 百日咳から新生児を守るため
 米国の疾病管理予防センター(CDC)の諮問委員会は、新生児の百日咳予防の為、妊娠中の女性は百日咳ワクチン(Tdap)の予防接種をするよう公に推奨した。
 百日咳は米国では2012年10月18日の時点で症例が32,000人以上報告されており、16人の死亡例が報告されている。また、死者の大半は生後3ヶ月未満の乳児の間で発生し続けているという。
 日本でも生後6カ月以下の乳児が百日咳ワクチンを含むDPTワクチンを接種していない場合、罹患した際は未だに死に至る危険性があるとされている。
 CDCはこの百日咳から新生児を守るため、医療従事者は妊娠中の患者へTdapを投与する必要があると推奨した。また、妊娠中に投与されなかった女性には産後直ちに投与すべきであるとした。
 妊娠中にTdapを接種することで母体の百日咳抗体は新生児へ転送し、新生児がDTaP(小児用の百日咳ワクチンを含む混合ワクチン)を接種開始する前に予防できるというのだ。同時に、Tdapは母親も保護するため彼女の幼児に移す可能性も低くするとした。


妊婦の百日咳接種、有効率9割超(2014年07月23日:m3.com)
文献:Amirthalingam G,et al.Effectiveness of maternal pertussis vaccination in England: an observational study.Lancet. 2014 Jul 15. pii: S0140-6736(14)60686-3. doi: 10.1016/S0140-6736(14)60686-3.
 英国で2012年10月に導入された妊婦への百日咳ワクチン投与プログラムの有効性を観察研究で検証。感染確定乳児数は2012年10月をピークに低下した。2012年と2013年の比較で感染者/入院者数低下率が最も高かったのは3歳児未満群だった。プログラム導入後に出生し、3カ月未満で感染した乳児数に基づく有効率は91%だった。


 それに比べると日本では、小学校高学年の二種混合(DT)で終了して以降のfollowはありません。
 ここにもワクチン行政の遅れを実感する次第です。
 近い将来にTdap導入が期待できないなら現行のDPT(アメリカではDTaPと表記)を利用して同レベルの効果を期待できないか、と検討され、今後「成人への追加免疫にはDPTを0.2ml接種」へ移行するという話が出てきています。

KNOW★ VPD!「百日咳」

成人におけるジフテリア・百日咳・破傷風(DPT) 3 種混合ワクチン 0.2mL 接種の百日咳抗体への効果
(柳澤 如樹ほか、感染症学雑誌 第83巻 第 1 号)

 よい方法だとは思いますが、日本独自の方法であり世界的には認知されていないことが気がかりです。
 例えば、留学や帯同・海外赴任の際に接種証明書の提出を求められます。現実問題として「Tdapの代わりとしてDTaPを認めてもらえない、接種したことにならない」というトラブルが発生する可能性があると云うことです。

 さて、米国ではTdapを行っているにもかかわらず、百日咳の罹患数が期待通りには減っていないことも報告されています。

百日咳のTdap追加、予防効果は中度(2013年07月22日:m3.com)
文献:Roger B et al.Effectiveness of pertussis vaccines for adolescents and adults: case-control study.BMJ 2013;347:f4249.
 11歳以上の3万2365人(PCR陽性668人、陰性1万98人、対照2万1599人)を対象に、百日咳予防のための三種混合ワクチン(Tdap)追加接種の有効性を症例対照研究で検討。有効性の調整後推定値は、陰性群との比較で53.0%、対照群との比較で64.0%だった。Tdap追加接種の有効性は中等度と結論された。


 学会レベルではワクチンの性質の関与も指摘されているようです。
 日本が昔使用し副反応の強さで破棄した“全細胞ワクチン”の方が効果が高く、その後日本が開発して普及した“無細胞ワクチン”の効果が劣るのではないか?、と。

百日咳を“世界共通の問題”として考える(週刊医学界新聞 第3084号:2014年07月14日)
齋藤 昭彦(新潟大学大学院医歯学総合研究科小児科学分野・教授)


 「効果の高いワクチンは副反応も強い、副反応の弱いワクチンは効果も低い」というジレンマ。
 その昔、日本で副反応が問題となり破棄されたワクチンも“全細胞ワクチン”(あるいは全菌体ワクチン)であり、それを解決するために開発されたのが“無細胞ワクチン”(あるいは無菌体ワクチン)なのでした。

■ IDWR感染症の話「百日咳」より抜粋
 ・・・1970年代から、DPT ワクチン、ことに百日咳ワクチン(全菌体ワクチン)によるとされる脳症などの重篤な副反応発生が問題となり、1975年2月に百日咳ワクチンを含む予防接種は一時中止となった。
 その後、わが国において百日咳ワクチンの改良研究が急いで進められ、それまでの全菌体ワクチン(whole cell vaccine)から無細胞ワクチン(acellular vaccine)が開発された。1981年秋からこの無細胞(精製、とも表現する)百日咳ワクチン(aP)を含むDPT 三種混合ワクチン(DTaP)が導入された。


 日本人の心情として、今さら副反応の強いワクチンに戻れません。
 効果を優先するか、安全性を優先するか、悩ましい。
 この点、ポリオ生ワクチンと不活化ワクチンの関係にも似ていますね。

 百日咳対策には、まだゴールが見えてきません。
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血液型と性格は関係ない!?

2014年07月22日 18時27分10秒 | 小児科診療
 血液型占い好きの方にはショッキングな報告が発表されました。
 いや、占いのレベルを超えて、最近は就職にも影響し「ブラッドタイプハラスメント」なる言葉も発生しているのですね。
 かくいう私はマイペースを自認するB型ですが・・・ジコチュー(自己中心)は就職に不利なのでしょうか?


血液型と性格「関連なし」…日米1万人超を調査
(読売新聞 2014年7月19日)
 血液型と性格の関連性に科学的根拠はないとする統計学的な解析結果を、九州大の縄田健悟講師(社会心理学)が発表した。
 日米の1万人以上を対象にした意識調査のデータを分析した。「A型の人は真面目」「B型は自己中心的」といった血液型による性格診断は、国内で広く信じられているが、就職や人事などで差別される「ブラッドタイプ(血液型)・ハラスメント」の問題も指摘されており、一石を投じそうだ。
 縄田講師によると、血液型と性格を結びつける考え方は国内では流布しているが、海外ではほとんど知られていない。1970年代に出版された関連本がきっかけで、その後もテレビ番組などで紹介されたことで広がったという。
 縄田講師は、経済学分野の研究チームが、2004-05年に日米の1万人以上を対象に、生活上の様々な好き嫌いなどを尋ねた意識調査に、回答者の血液型が記載されていることに注目。血液型によって回答に違いがあるかどうかを解析した。
 その結果、「楽しみは後に取っておきたい」「ギャンブルはすべきではない」など、計68項目の質問に対する回答のうち、血液型によって差があったのは「子供の将来が気にかかる」などの3項目だけで、その差もごくわずかだった。このため「無関連であることを強く示した」と結論づけた。
 血液型を巡っては、特定の血液型の人格が否定的にとらえられる例があり、問題視されている。厚生労働省によると、採用面接などで血液型を尋ねられるケースは後を絶たず、同省は「血液型は職務能力や適性とは全く関係ない」として、血液型を質問しないよう企業に求めている。大阪労働局によると、採用試験の応募用紙に血液型などの記入欄を設けていた企業に対し、是正するよう行政指導した例があるという。




 これも「日本の常識、世界の非常識」の一例のようです。
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2013年度の予防接種時の事故は「3万回に1回」

2014年07月20日 06時00分32秒 | 小児科診療
 件名のニュースを目にしました。
 トラブル全体は接種1万回に1回、うち70%が「接種間隔の間違い」なので、それを差し引くと「医学的接種事故」は3万回に1回になる、とのこと。
 確かに、「接種間隔の間違い」と「医学的接種事故」では健康被害のリスクが大きく異なるので、別に扱う方が適切かもしれません。
 「接種間隔の間違い」は数が増え複雑化したワクチンスケジュールの影響でしょうね。
 秋には水痘ワクチンが定期化され、今後BCGもも個別化される予定なので、当院でも気を引き締めて望む所存です。

昨年度の予防接種時の事故「3万回に1回」~第10回予防接種基本方針部会~
(2014.7.17:MTPro)
 7月16日開催の第10回厚生科学審議会予防接種基本方針部会(部会長=岡部信彦氏,川崎市健康安全研究所長)では厚生労働省事務局から昨年報告された定期予防接種時の事故報告が行われた。昨年(2013年)4月1日~今年3月31日に報告された予防接種時の事故の全報告数は4,596件で,一昨年の定期接種延べ回数3,930万4,213回を母数とした場合の頻度は1万回に1回。最も多かった「接種間隔の間違い(3,170件,約70%)」を除いた場合の頻度は3万回に1回と推計された。委員からは予防接種時の事故の分類に関して,意見が出された。

「接種間隔間違い」は実施要領改正により減少の見込み
 報告によると,昨年度発生した予防接種事故の最多は「接種間隔の間違い」で3,170件(69%)。今年(2014年)からは一部の定期接種ワクチンの同一ワクチンの接種間隔上限が緩和されたため,今後はこうした報告は減少するだろうとの分析が事務局から示された。
 このうち,血液感染を起こしうる事例の概要(表)も提示。「複数名分の注射器をトレーに準備したが,使用済みの注射器を同じトレーに戻し,異なる被接種者に当該注射器を刺してしまった」「異なる種類の予防接種を受ける兄弟に続けて接種を行う際に,弟に使用した空の注射器を兄に誤って刺した」といった事例が紹介された。事務局は先頃策定した事故防止マニュアル「予防接種における間違いを防ぐために」などを通じて事故防止を呼びかけていきたいと述べた。


接種ルール逸脱の「事故」と医学的「事故」は区別すべきとの指摘も
 自治体側の委員からはこうした事故報告は件数が少なくても,継続的に情報共有を行って欲しいとの要望が出された。
 岡部氏からは資料で示された予防接種時の事故の分類について「接種間隔の間違いのように,法律上のルールを守らなかったという事故と医学的な事故が混在している。医学的な事故は実施主体の自治体や医療者側の問題であり,原因解明や再発防止に努める必要があり混同すべきでない」との指摘があった。



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再掲・熱中症に御用心!

2014年07月11日 07時33分41秒 | 小児科診療
 台風一過、今日の天気は高温&高湿度で熱中症多発が予想されます。
 今一度以下のHPをご確認ください;

子どもの熱中症と対策
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子宮頸がんワクチン副作用、治療で7割改善

2014年07月09日 09時56分03秒 | 小児科診療
 日本経済新聞の記事(2014/7/5)より;

子宮頸がんワクチン副作用、治療で7割改善
 子宮頸(けい)がんワクチンの接種後、慢性的な痛みが生じる副作用が報告された問題で、厚生労働省の専門家会議が4日、開かれた。同省の研究班が今年6月までの約10カ月間の患者の治療経過をまとめ、心理面に配慮した治療により約7割の人の痛みが改善したとの結果が報告された。
 厚労省は昨年6月以降、接種の積極的な呼びかけを中止しているが、同日の会議では呼びかけ再開については結論を見送り、継続審議とした。
 厚労省研究班の牛田享宏・愛知医大教授によると、ワクチン接種後、痛みがあるなどとして昨年9月以降、研究班に参加する11病院で162人が受診。このうちワクチンとの関係が否定できないのは112人だった。
 患者から痛みなどの悩みを聞いてあげたり、生活に運動を取り入れたりするなどの治療を施した結果、治療経過を追跡できた70人の67%に当たる47人で痛みが改善したという。牛田教授は「不安が取り除かれれば、痛みの改善に向かっていける」と話している。


 薬ではなく「心理面に配慮した治療」により改善した事実が、この副反応の性質を如実に表していると思います。
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ジョコビッチ、フェデラーの8回目の優勝を阻む!

2014年07月07日 06時22分47秒 | テニス


ウィンブルドン・テニスの話題です。
2014年の男子決勝は第1シードのノバク・ジョコビッチと第4シードのロジャー・フェデラーの対戦となりました。
イギリスと日本は時差がありますので、ライブ放送は日本では真夜中となり録画予約済み。
ところが虫の知らせなのか、2時過ぎにふと目覚めて眠れなくなり、仕方なくテレビのスイッチをつけると・・・その激闘の真っ最中。
それもセットカウント2-2、ゲームカウント4-3とこれ以上ないくらい盛り上がっていました。
4セット目にジョコビッチがマッチポイント握ったものの、その後フェデラーが奇跡的に5ゲーム連取し逆転しての第4セットらしい。
解説の話しぶりから、近年まれに見る激闘で、1980年のビョルン・ボルグとジョン・マッケンローの伝説の死闘に優るとも劣らない様子。

(あ、私は根っからのフェデラーファンですのでコメントはフェデラー応援視線です)

私にとって、なによりフェデラー(当年32歳)が躍動していることにうれしく見入りました。
ショットの切れは良く、不利になってもネットに出る積極性。
そこにいるのは、紛れもなく全盛期のフェデラーだ!
・・・インタビューによるとフェデラー自身も驚いている様子でした。
残念ながらウィンブルドン8回制覇という新記録は生まれませんでしたが、彼のエレガントなプレーを堪能できただけでも私は大満足です。



コーチ達の顔ぶれも話題になりました。

優勝したジョコビッチには17歳でウィンブルドンを制したボリス・ベッカーがサポート。
ラケットをブンブン振り回すサーブは250km/hrあったとか。
横っ飛びのジャンピングボレーで席巻したのははや30年前になるのですねえ。
でも、ネットプレー主体のベッカーとグランドストローク中心のジョコビッチに共通項が見いだせない私・・・。

フェデラーのコーチは、ベッカーと同時代に活躍したステファン・エドバーグ(エドベリとも)。
華麗なネットプレーと“世界一美しいバックハンド”の持ち主でした。
うん、彼のエレガントさはフェデラーに通じるものがあるなあ。
二人とも世界ランキング一位経験者というビッグネームであり“コーチ達の代理戦争”と揶揄されるほどでした。
しかし、二人の風貌をみると、過ぎ去った年月を感じざるを得ません。
引き締まったナイスミドルのエドバーグと、おにぎりのように膨らんだベッカーの対比が興味深い。

あ、マレーのコーチを務めるイワン・レンドルも二人と同時代の超大物です。

他の選手達はというと・・・
全仏を制したラファエル・ナダルは4回戦で消え、昨年優勝したアンディ・マレーも準々決勝で消えました。
錦織君は4回戦まで進みました。
彼に勝ったラオニッチは準決勝でフェデラーに負けました。
伊達さんも無駄な力が入らないいいテニスをしていましたが、ここぞと言うときに体力負けしてしまったのは仕方ないかな。
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米国小児科学会が「親子での本の音読」などを推奨

2014年07月03日 06時38分01秒 | 小児科診療
 お父さん、お母さん、「絵本の読み聞かせ」してますか?
 米国では学会レベルで「親子での本の音読」推奨、という時代になりました。
 裏を返せば、行われていないということ。

 メディアの発達により、いろんな視覚・聴覚刺激は増えました。
 古くはビデオ(今はDVD)、TV、ゲーム、最近はSNSも。
 しかし、一方通行の情報は精神的発達・コミュニケーションの発達によい影響を及ぼさないことが指摘されています。
 これも含めて、米国小児科学会は「5つのR」を推奨しています;

■ 小児科医に「親子での本の音読」など,推進すべき“5つのR”などを提示
 米国小児科学会(AAP)は,小児の診療に当たるプライマリケアでの学力推進に関する声明(policy statement)を発表。貧困や電子メディアの普及に関連して,幼少期の親子での本の音読を通じた健全な成長や読み書き能力の獲得のための準備が不十分な例が増えていると同学会。小児科医に対し,日常診療の場で子供の読み書き能力の早期推進に関わることを求めた。声明では「5つのR」を含む勧告が示されている(Pediatrics2014年 6月23日オンライン版)。


 なお就学前の準備に必要な「5つのR」とは以下の項目;

1.日常生活において本を読む(Reading)
2.韻を踏む(Rhyming)
3.規則正しい生活(Routines)
4.日々できたことをほめる(Rewards)
5.健全な発達の基礎となる親子関係(Relationships)


 1・3・4・5は頷けますが、2の「韻を踏む」というのは?です。
 以前から絵本の読み聞かせを勧めている小児科医の記事もどうぞ;

小児科医が説く「絵本の読み聞かせ」の効用

 この中で、「子どものペースで絵本を読む」という指摘に目から鱗が落ちました。
 私自身、子どもが小さい頃「マンガ日本むかしばなし」の絵本を夜子どもに読んでいました。
 長男はじっと聞いていたのですが、長女は絵に夢中になってしまい聞く耳を持ちませんでした(笑)。
 一緒に楽しむことが大切であり、「読み聞かせなければならない」という私の思い込みは間違っていたのですねえ。
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「医療機関から握手をなくそう」

2014年07月03日 06時25分19秒 | 小児科診療
 欧米での挨拶は握手が基本です。
 病院での診療でも、開始前と終了後に医師と患者が握手するのが慣例だそうです。

 しかし、この握手が感染症を伝播することが以前から指摘されてきました。
 そしてとうとう、「握手禁止令」という意見まで出てきました。
 まあ、感染症対策の基本は「手洗い」ですから、まっとうな意見ではあります:

■ 「医療機関から握手をなくそう」
 米David Geffen School of Medicine at UCLAのMark Sklansky氏らは「医療機関での握手禁止を検討すべき」との提言をJAMA(2014; 311: 2477-2478)に発表した。ヒトの手指が感染症伝播の原因となることはよく知られている。また,医療機関での手指衛生の徹底による院内感染の予防が勧告されているにもかかわらず,コンプライアンスのばらつきや有効性の限界が指摘されていると同氏ら。手指を介した病原体の伝播を防ぐ上で有効性,費用効果に優れるかもしれないと主張している。


 では握手に代わる挨拶の方法でお勧めなのは?
 この論文の中では、日本式の「おじぎ」も紹介されているそうです。

 さて、日本では診察前後に握手する習慣はありません。
 でも近年、ハイタッチを求める子どもが増えてきました。
 これも感染対策としては好ましくありませんね(以前取りあげました)。
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