徒然日記

街の小児科医のつれづれ日記です。

スギ花粉の屋内持ち込みのポイントは「静電気」

2024年03月28日 06時53分46秒 | 小児科診療
花粉症の時期は、家の中に花粉を持ち込まないように、
花粉の付きにくい表面がサラサラの衣服を心がけ、
玄関で花粉を払ってから家の中に入る、
など気をつけている方も多いと思われます。

私は静電気体質というのか、
空気が乾燥する冬季はビリビリ・バチバチと縁が切れません。
その私が以前から気になっていましたのが、
「静電気で花粉がくっつくのでは?」です。

それを扱った記事が目に留まりました。

▢ 静電気が花粉を引き寄せる? 衣類への「花粉の付着」を防ぐ3つのポイント
2024.3.27:ウぇザー・ニュース)より一部抜粋;

・衣類にもたくさんの花粉が付着することがあります。『衣類にくっついて家の中に持ち込まれる花粉』は、『1時間の換気で窓から入る花粉』の6倍以上になることもあります。衣類を工夫することで、室内への花粉の侵入を減らすことが期待できます」

・衣類に付着する花粉の量は、素材によって異なります。花粉が飛散する時期に1時間の外出で付着する花粉を数えたところ、ウールのセーターについた花粉は約8万個もありました。

・同じ条件の綿シャツと比べても多かったのです。ウールのセーターは綿のシャツに比べると表面の凸凹が多く、花粉が付着しやすいといえます」(大貫さん)違いに大きく影響しているものとして静電気もあります。

・花粉は静電気によって衣類に付着しやすくなります。綿シャツは静電気が発生しにくいこともあって、花粉が付着しにくいと考えられます。また、同じ素材であっても静電気を帯電している場合とそうでない場合では、付着量に違いが見られました。



・花粉の付着量は、衣類やかばんのコーディネートによっても違いがあるといいます。「かばんと衣類がこすれたり、衣類同士がこすれるときに静電気が発生します。こすれやすい裾部分などでは、静電気が発生するからです。

・ショートコートとスラックスを着用した人と、ロングコートにスカートの人が15分歩いた後の静電気を測定したところ、静電気を帯電している部位に違いがありました。ショートコートとスラックスでは、かばんとこすれる部分、ふくらはぎ、スラックスの裾で発生しやすかったのです。
ロングコートにスカートでは、かばんとこすれる部分、コートの裾、おへそまわりでした。花粉はこれらの部位に付着しやすくなるので、帰宅時には念入りに花粉を払うといいでしょう。



花粉の付着を防ぐ3つのポイント

(1)付着しにくい素材の服を選ぶ
ウールより綿のような花粉の付着しにくいものを選びます。ウールセーターやポリエステルフリースなどは花粉が付着しやすくなります。アウターには、トレンチコート、ジャンパーなど凹凸の少ない素材を選んだり、または吸湿性の高い綿素材を選ぶとよいでしょう。

(2)静電気が起こりにくい組み合わせに
衣類の組み合わせによっても、静電気の発生が変わります。素材により、プラスの電気を帯びやすいものとマイナスの電気を帯びやすいものがあります。異なる素材がこすれ合うとき、静電気が発生しやすくなります。重ね着するときは、アクリルとアクリルなど、同じ性質の素材同士の方が静電気は発生しにくくなります。

(3)外出前に静電気防止スプレーを使用
静電気を抑える専用のスプレーを使用するのも効果的です。裏面に記載の使用量を目安にスプレーします。特に静電気が起きやすい部位は忘れずに。コートやスラックス、スカートの裾は、表だけでなく裏もスプレーします。

そうそう、「静電気が発生しやすい素材と組み合わせ」という話を聞いたことがあります。
検索すると、以下の記事がヒットしました;

(エレガード)より一部抜粋;

・衣類は様々な種類の素材からできていますが、素材によってプラスの電気を帯びやすいものと、マイナスの電気を帯びやすいものとがあります。プラス素材とマイナス素材がこすれあったときに静電気が発生しやすくなります。

・プラスとプラス、マイナスとマイナスのように、同じ性質の電気を帯電する素材ならこすれあっても静電気は発生しにくくなります。また、もともと帯電しにくい綿や麻などの素材は、こすれあっても静電気は発生しません。

イラストを見ると、天然素材は帯電しにくく静電気が発生しにくいのですね。
一方、化繊(化学線維)系は発生しやすく、しかも種類によりその程度は様々。
ありがちなナイロンとアクリルが最悪ということがわかります。

しかし化繊を使わないという生活も難しい。
ポイントは、化繊の衣服を使用する際は、
・化繊+天然素材
・化繊+おなじ化繊素材
でしょうか。




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スギ花粉飛散のピーク!~いつまで飛ぶの?

2024年03月11日 06時18分24秒 | 小児科診療
スギ花粉の飛散がピークを迎えています。
今週も天気の悪い火曜日を除き、
「非常に多い」日が続くと予想されています。

さてこの花粉飛散、いつまで続くのでしょうか。
3月下旬にはスギ花粉はほぼ終了するようです。
しかし、リレーのバトンを受け取るように、
ヒノキ花粉が飛散のピークを迎え、
4月中旬までは飛び続けるようです。


一日のうちで、花粉がたくさん飛ぶ時間帯のデータを紹介します。
昼付近と、意外なことに日没後の時間帯が多いのです。
これを知っていた方が、対策や心構えができますね。


近年、花粉症の症状として鼻と目だけではなく、
皮膚がかゆい(花粉症皮膚炎)とか、
熱っぽくて体がだるいなどを訴える患者さんも増えてきました。

当院では従来の薬物療法のほかに、
皮膚を保護する保湿剤や、
体のだるさを和らげる漢方薬も処方可能です。

ぜひ、ご相談ください。

<参考>
・東京都心で「花粉光環」 大量飛散サイン 広くスギ花粉ピーク あとどれくらい飛ぶ?

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スギ花粉症における漢方薬の使い分け

2024年03月04日 07時24分53秒 | 小児科診療
スギ花粉症シーズン真っただ中、
皆さんはいかがお過ごしでしょうか?

患者でもある私は、抗アレルギー薬と漢方薬の併用、
それから点眼&点鼻薬で治療中です。

前項目のごとく、私は西洋医学の治療でコントロールできない、あるいは副作用のため西洋薬を使いづらい患者さんに漢方薬を提案しています。
実は花粉症に適用できる漢方薬は複数存在し、
目の前の患者さんにどの薬が合うか考えて処方しています。

具体的には、季節や患者さんの様子や患者さんの鼻の中の状態を観察して使い分けます。

まず、一年中鼻水鼻詰まりがつらい通年性アレルギー性鼻炎患者さんの鼻の中を覗くと、
鼻粘膜(見えるところは「下鼻甲介」)が青白くむくんで腫れている状態がふつうです。
スギ花粉症の始まりは2月でまだ寒い時期です。
このタイミングで受診される患者さんの鼻の中も青白くむくんでいることが多いですね。

この所見を漢方医学的には「寒」、つまり“冷えている”状態と捉え、
温める漢方薬を使用します。

温める漢方薬の代表は小青竜湯です。
最近、花粉症の治療薬として認知されてきましたね。

小青竜湯の効きが今一つで、鼻詰まりがつらくて夜は口呼吸をしている患者さんには、葛根湯加センキュウ辛夷を処方します。
この薬、子どもの風邪の鼻づまりにもよく使いますが、
とにかく鼻が通って楽になります。

なお、小青竜湯と葛根湯加センキュウ辛夷には「麻黄」という体を温める生薬が入っており、
胃弱・虚弱体質の方が飲むと胃もたれや胃腸障害・動悸などの副作用が出ることがありますので、
心配な方は医師や薬剤師と相談してください。
なお、麻黄が体に合わない、胃がもたれてしまう方には麻黄を抜いたエキス剤である苓甘姜味辛夏仁湯があります。

それでもダメなら、強力に温める附子という生薬も入った麻黄附子細辛湯を使うのですが、
これはもともと高齢者用のかぜ薬で、
「風邪をひいても熱が出ない(免疫力低下で熱が出せない)、
 悪寒だけが続く虚弱体質に適用」
されるレベルなので、エネルギーの固まりである小児には使用したことはありません。

スギ花粉症のピークの時期は3月です。
特に雨上がりの翌日、温かくなって風が吹く日にたくさん花粉が飛びます。
このタイミングでは、鼻症状+目を真っ赤にして受診する患者さんが増えてきます。
そんな患者さんの鼻の中を覗くと…粘膜が赤く腫れています。
これを漢方医学的には「熱」(強い炎症が起きている)と捉え、
「寒」とは逆に、冷やす漢方薬を選びます。

代表的なものは越婢加朮湯です。
この薬は「赤く張れあがってつらい症状」によく効きます。
関節リウマチの赤く腫れた関節痛や、虫さされで赤く腫れあがって痛がる子どもにも効きます。
そして花粉症で目が赤く充血、周囲の皮膚も赤く腫れあがっているときに有効です。
ただし、麻黄という生薬がたくさん入っているため、
体力のない人(胃弱・高齢者)が飲むと胃もたれや胃腸障害が必発ですのでご注意ください。

越婢加朮湯でも症状を抑えきれないときは、
小青竜湯の親分格の大青竜湯を使います。
ただし、大青竜湯はエキス剤には存在しないので、
2つのエキス剤を併用することで代用します。
2つのパターンがあります:
(麻黄湯)+(越婢加朮湯)
(桂枝湯)+(麻杏甘石湯)

また、咳が目立つ方には、竜虎湯(小青竜湯+五虎湯)を選択します。
さらに、微熱やだるさがつらい花粉症患者さん用の漢方薬もあります。
余談ですが、関西では「虎」を先に持ってきて「虎竜湯」と呼ぶそうです。
理由は…お分かりですね。

西洋医学では、抗アレルギー薬の効きが悪い例、あるいはコントロールしきれない例には、ステロイド薬に頼らざるを得ません。
点眼(フルメトロン、リンデロン)は仕方ないとしても、
全身投与であるセレスタミン(内服)やケナコルト(注射)は、
副作用の点からできれば使いたくない薬です。

一方、漢方薬ではその患者さんの体質・病態に合う方剤がいくつも用意されており、さらに重症度に応じてアレンジできます。

私は「漢方薬をうまく使えばステロイド薬を使わずに済むのではないか?」と考え、長年診療してきました。
その結果わかったことは、
「冷えている患者さんは温める、
 熱を持っている患者さんは冷やす」
という単純明快な真実。
さらに寒熱を踏まえ、その患者さんの体質・体力を考慮して使い分けるとうまくいきます。
それを間違うと、思うような効果が期待できません。

これは西洋医学にはない考え方です。
とくに「温める」薬は西洋医学には存在しません。

ひとつ注意点があります。
前述しましたが、熱をターゲットにした漢方薬は、
強くなればなるほど麻黄の含有量が増えます。
つまり、副作用のリスクが増えます。
自己判断で服用したり、
自分で効いたから人にあげて飲んでもらうことは厳禁です。
ご注意ください。

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