徒然日記

街の小児科医のつれづれ日記です。

2015年冬、インフルエンザは流行らずに年末を迎えました。

2015年12月29日 07時34分21秒 | 小児科診療
 昨日、2015年の診療が終了しました。
 インフルエンザの流行がないまま。
 こんな年は珍しい、というか記憶にない。
 下記ニュースによると、2006年以来だそうです。

■ インフル流行、今季は年明け? 06年以来、国立感染研
朝日新聞デジタル 12月28日
 今季はインフルエンザの全国的な流行が例年より遅くなっている。国立感染症研究所(感染研)の28日の発表では、全国約5千カ所の定点医療機関から報告された最新の1週間(14~20日)のインフルエンザの患者数は1カ所当たり0・46人で、流行開始の目安の1人を大きく下回っていた。
 感染研によると、インフルエンザは例年、11月下旬~12月に流行期に入ることが多い。今季の流行期入りが年明けになったとすると、2006年以来となる。
 今季の最新1週間の患者数を都道府県別でみると、1人以上は秋田県(3・41人)、北海道(1・54人)、新潟県(1・26人)、福島県(1・14人)、沖縄県(1・00人)の計5道県だった。
 感染研は「流行期入りが遅れている理由はわからない」としている。


 その代わりといっては何ですが、RSウイルスが流行しました。
 小児科医にとってはインフルエンザの前座を務めるイメージのあるRSウイルスですが、今シーズンはその前座のみで終わってしまった印象。

 当院ではインフルエンザとRSウイルスの両方が検出できる迅速診断キットを導入しています。
 12月に入り発熱&咳嗽の患者さんにインフルエンザを疑って検査しても、陽性になるのはRSウイルスばかりでした。

 RSウイルスは乳児が気管支炎を起こしやすく、とくに3ヶ月未満の赤ちゃんはハイリスク。
 しかし、今シーズンは乳児よりも2-3歳の幼児が目立ちました。

 
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日本のHPVワクチンの状況を世界はどう見ているか?

2015年12月27日 16時35分00秒 | 小児科診療
 「積極的勧奨はしない」という状況が続くHPVワクチン。
 日本では混沌としてトンネルの出口が見えません。

 さて、外国のとらえ方はどうなのでしょうか。
 実は副反応を危惧して(事実上)接種停止になっている国は日本だけらしいのです。
 つい先日、この件についてなんとWHOから日本を名指しで批判されました。
 これは異例のこと;

■ WHO、子宮頸がんワクチンで日本を「名指し非難」 接種勧奨中止は「乏しい証拠に基づいた政策決定」
2015年12月25日 J-CASTニュース
 接種後に原因不明の痛みを訴える人が相次いでいるとして、日本で接種の推奨が中止されている子宮頸がんワクチン(HPVワクチン)について、世界保健機関(WHO)の諮問委員会が日本側の対応を強く非難する声明を出した。
 WHOの声明は、こういった副反応とHPVワクチン接種の因果関係は確認されていないなどと指摘。日本のみを名指しして「乏しい証拠に基づいた政策決定」と批判する異例の内容だ。

□ 接種後に「原因不明の痛み」30例以上で中止に
 HPVワクチンは2006年に米国で販売が始まり、日本でも2009年に販売が始まった。2013年4月には予防接種法に基づく定期接種にも組み込まれた。しかし、13年6月の厚労省の専門家会議は、接種後に原因不明の痛みを訴えるケースが30例以上報告されているとして、公費による定期接種は継続するものの、積極的な接種の推奨を中止するように求めた。当時、メディアでは痛みに苦しむ女性の姿が大々的に報じられた。
 今回の声明は、WHOの「ワクチンの安全性に関する専門委員会」(GACVS)が2015年12月17日付で出した。
 「現時点まで、ワクチン接種推奨に変更があるような安全上の問題は確認されていない」とする内容で、200万人以上を対象にフランスで行った調査の事例などを紹介。接種後に起こる自己免疫疾患について、接種した人としていない人とでは有意な差がなかったとした。
 そのうえで、

 「リスクは仮に存在したとしても小さく、長期間続くがん予防の利益との文脈で考慮すべき」

として、「リスクの小ささ」を主張した。
 ワクチン接種の副反応だとの指摘もある複合性局所疼痛症候群(CRPS)、体位性頻脈症群(POTS)については、

 「これらの症状を診断したり完全に特徴づけるのは難しいが、データを検証しても、これらの症候群がHPVワクチン接種と関連しているという証拠は得られなかった」

とした。慢性疲労症候群(CFS)についても、同様に関連を否定した。

□ 「日本は子宮頸がんを予防する機会が奪われている」
 声明はA4用紙で3枚にわたり、その中で国名が2つ登場する。ひとつが前出の調査で登場したフランスで、もう一つが日本だ。「日本の状況については、さらにコメントが必要だ」という形で登場する。接種推奨を中止したことで、子宮頸がんを予防する機会が奪われているとする内容だ。

 「専門家の委員会が臨床データを検討した結果、これらの症状はワクチンとは関係ないという結論が出たが、ワクチン接種の再開に向けた合意には至っていない。結果として、若い女性は、予防しうるHPV関連がんにかかりやすい状況に置かれたままだ」

 政策決定のあり方についても「乏しい証拠に基づいている」と言及。接種推奨の中止が合理的な理由ではなく世論や国民感情の影響で決まったことを非難した形で、

 「以前にも指摘したように、乏しい証拠に基づいた政策決定で、安全で効果的なワクチンが使用されなくなり、それは実害につながり得る」

と、警告している。


 予防接種に関わる一人の医療者として、恥ずかしい限りです。

 しかし、これはメディアを含む日本の国民性なのかもしれません。
 日本のメディアは、副反応に関しては世間を扇動するように取り上げるのに、副反応を否定する報告はほとんど取り上げません。
 「人を褒めるより悪口を書いた方がウケる」という低レベルのメディアの品位に呆れるばかりです。

 ヨーロッパでも、日本で騒がれている副反応については否定的な報告が出ています;

欧州医薬品庁「HPVワクチンとCRPS,POTSの因果関係示されず」
2015.11.06:Medical Tribune
 欧州医薬品庁(EMA)の医薬品安全監視リスク評価委員会(PRAC)は11月5日,若年女性へのHPVワクチンと複合性局所疼痛症候群(CRPS),体位性起立性頻拍症候群(POTS)の因果関係の評価結果を公表した。「現在利用可能なエビデンスでは,同ワクチンとCRPSあるいはPOTS発症の因果関係は示されていない」と結論付けた。

□ CRPSやPOTSの専門家,患者団体からの情報も含め評価
 今回の評価はデンマークの要請により今年(2015年)7月から開始されていた(関連記事)。対象となったHPVワクチンは欧州連合(EU)内で承認されている2価ワクチン(サーバリックス),4価ワクチン(ガーダシル),9価ワクチン(Gardasil-9)。 公表されている文献,臨床試験,そして患者や医療従事者からの副反応疑い例の報告,さらにはCRPSやPOTSなどの専門家のグループからの意見や両症候群による影響を訴える患者団体からの詳細な情報提供を含めた評価を行ったと説明している。 その結果,これらのエビデンスからはHPVワクチンとCRPS,POTS発症の因果関係は示されなかったと結論付けた。

□ 「一般人口集団と有病率に差なし」
 WHOの諮問委員会(GACVS)は,特定の疾患が偶然にワクチン接種と同じ時期に起きているのか,それともワクチンによるものなのかを把握するために「特定の疾患についての確実な集団特異的あるいは年齢特異的なベースライン値(例えば,自己免疫疾患の率)を把握するよう努めるべき」と勧告している(IASR 2007; 28: 90-91)。
 PRACは「CRPSとPOTSは他の疾患とのオーバーラップが見られる場合があり,一般人口とワクチン接種集団を問わず診断が難しい」と指摘。一般人口においてHPVワクチン接種年齢(10~19歳)を含むCPRSあるいはPOTSの有病率はそれぞれ100万人当たり約150人との推計を示す。一方,接種者の集団における検討でも,一般人口の推計と有病率が異なる結果は得られなかったなどと述べている。
 こうした評価結果から「現在のHPVワクチンの使用方法あるいは添付文書を改訂する理由は見当たらない」と判定。「同ワクチンのベネフィットは,リスクを依然上回っている」との見解を示した。


 メディアにおかれましては、賛成と反対の意見を平等に取り上げて、視聴者・読者に判断を問うという心意気を見せていただきたいものです。


<追加>
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「世界が注視する日本のHPVワクチン」2015.12.29:宮崎県議会議員 清山知憲氏のブログ
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警察官の「交通安全取り締まり」の質について

2015年12月25日 07時53分01秒 | 小児科診療
 先日、久しぶりに違反切符を切られました。
 理由は「踏切一時停止違反」。

 場所は某観光地です。
 交差点を右折するとすぐに目的の観光地の駐車場が目に入るシチュエーション。
 しかしその手前に踏切がありました。
 ふつうの道であれば当然目に入る踏切ですが、右折するとすぐに目的地が目に入ったため、それに気づかなかった・・・。
 見逃してしまった自分にショックを受けました。
 当然、私が悪いのですが、それを待ってましたとばかりに隠れていたパトカーが出てきて警官が私を責めるのでした。
 「あんなに人通りが多いのに注意しなかったのですか?」と。

 私はゴールド免許保持者であり、ふだんから無理な運転はしません。
 はじめはミスを責められて「申し訳ない」と謝るばかりでしたが、頭が冷えてくるといろんな矛盾に気がつきました。

・ここは違反が多いらしい、つまりヒューマンエラーが起きやすいシチュエーション。気づきにくい踏切を目立たせる工夫が必要ではないのか?
・歩行者の安全を第一に考えるなら、警官は隠れていないで通りに出て体を張って誘導すべきではないのか?

 ・・・そんなとき、この記事が目に留まりました;

■ これが本当のお仕事 交通違反を未然に防いでくれた白バイ隊員
grape
年末になると、交通量も増え、普段よりもいっそう厳しくなる交通違反の取締り。
ある白バイ隊員が見せた「お仕事」に、「これが本来あるべき姿」という声が寄せられています。
当たり前のように本来のお仕事を全うされた姿がこちらです。
(動画)
この交差点、白い車が走っていた車道は直進しかできない道です。
そこへ白い車が左折しようとしたところ、「ここは曲がれない」と手をふって注意を促しました。
近年では、自らの点数稼ぎのために、一時停止や進入禁止などの場所に隠れて見張っていることが問題視されています
自らの成績を優先するのではなく、事故の危険と、交通違反を未然に防いだ白バイ隊員。これこそ、本来あるべき警察官の姿なのではないでしょうか。
今後も、交通安全や事故防止のための取締りをお願いします!


 御意!
 税金は正しく使っていただきたいと切に願います。
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化血研、業務停止へ。

2015年12月25日 07時49分16秒 | 小児科診療
 まあ、当然ですね。
 敢えて言えば、ワクチンの供給に問題がないように対処していただきたい。

■ 厚生労働省 化血研を業務停止処分へ
2015年12月25日:NHK
熊本市にある製薬会社「化血研」が、長年にわたって国の承認とは異なる方法で血液製剤を製造し、組織的な隠蔽を図っていた問題で、厚生労働省は来月にも会社に対し、薬の販売を一定期間禁止する業務停止処分を行う方針を決めました。
この問題は、熊本市にある製薬会社「化血研」=化学及血清療法研究所が、およそ40年にわたって国の承認とは異なる方法で血液製剤を製造し、不正を隠すために製造記録を偽造するなど組織的な隠蔽を図っていたものです。
不正が発覚したことし5月以降、厚生労働省は化血研に対し立ち入り検査を行い、業務改善命令を出したうえで業務停止処分を行う方針でしたが、立ち入り検査で書類の偽造など悪質な行為が確認できたとして手続きを早め、医薬品医療機器法に基づき来月にも業務停止処分を行う方針を決めました。
業務停止の期間は数十日から数か月の間となる見込みで、会社はほかに代替できるものがない一部の血液製剤やワクチンを除いてすべての薬を販売できなくなります。
化血研ではこのほかにも、医薬品の原料で生物テロにも使われるおそれのあるボツリヌス毒素を運ぶ際に、必要な届け出を怠るなど問題が相次いで発覚しています。

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化血研ワクチン問題・・・臨床現場にいる小児科医のつぶやき

2015年12月23日 07時31分36秒 | 小児科診療
 インフルエンザワクチン接種が迫った2015年9月に「ワクチンが足りなくなる!」という情報が飛び込んできました。
 寝耳に水、です。

 購入元の話では「化血研(製薬会社の名前)のワクチンが出荷停止になった」とのこと。
 その理由は、化血研が血液製剤の製造方法を国が認めた承認書通りに行っていないことが判明し、さらに同社のワクチンも同じ状況であることがわかったため。

 さて、化血研のインフルエンザワクチンは、接種が始まるギリギリのタイミングで出荷を許可されました。
 え? 大丈夫なの? 安全なの?
 と一般の方以前に、医療者が疑問に感じました。
 
 実は、出荷停止となったワクチンは、すでに国家検定を通り倉庫に眠る状態だったのです。
 つまり、国が安全性を保障した医薬品、ということになります。
 
 国は以下のことを天秤にかけて判断せざるを得なかったのです;
(マイナス面)製造過程が承認書と異なる行為 
(プラス面)すでに国家検定を通過しているという事実
 そして決め手が、インフルエンザワクチンが足りなくなると社会問題化し混乱を招く、ということ。
 これらを鑑み、更なる安全性を確認する作業も行なった後、出荷に踏み切ったと思われます。
 実際にワクチンを接種する臨床現場では、それを信じて使わざるを得ません。

 しかし、小児科医をはじめとする医療関係者には「化血研は怪しい製薬会社」という根深い不信感が生まれました。
 予防医学に用いる医薬品には、疾患治療に使用する医薬品は高レベルの安全性が要求されます。
 健康な人に投与するものですから、健康被害はあってはならないというのが一般の認識です。
 まあ、薬ですから副反応をゼロにするのは不可能ですが・・・。

 化血研は他のワクチン(四種混合・日本脳炎・B型肝炎・A型肝炎)も製造しています。
 このうち四種混合と日本脳炎ワクチンは定期接種に指定されています。
 12月に四種混合ワクチンが足りなくなる・手に入らないことが小児科医の間で問題になりました。
 でも、こちらも社会問題化する前にギリギリのタイミングで出荷が許可されました。
 日本脳炎ワクチンは流通量が多かったので、まだ何とかなっている様子。

承認外の方法で製造 化血研ワクチン大丈夫?
2015年12月15日:東京新聞
 国の承認と異なる方法で血液製剤やワクチンを不正に製造していた一般財団法人「化学及血清療法研究所」(化血研、熊本市)。化血研製の主な五種類のワクチンのうち二種類はすでに出荷が再開されているが、「子どもに接種しても本当に安全なのか」という不安が保護者らの間に広がっている。
 名古屋市医師会には、市内のクリニックなどから「保護者にどう説明したらいいのか」との問い合わせも相次いでいる。接種の時に「本当に安全ですか」と聞いてくる親が多いためだ。医師会担当者は「効果や安全性に問題があるという結果は出ていないと伝えて」と答えているという。
 化血研のワクチンをめぐっては、厚生労働省が九月、血液製剤に加えて、ワクチン十種類について同社に出荷自粛を要請。このうちインフルエンザ(国内シェア29%)は十月二十一日、百日せきやポリオなどに対する四種混合(64%)は十一月二十六日に出荷が認められた。A型肝炎(100%)、B型肝炎(80%)、日本脳炎(36%)などのワクチンの出荷は止まったままだ。
 厚労省は、インフルエンザと四種混合の出荷を認めた理由について、「これまでの調査で、ワクチンに健康を害する病原体や異物の混入がないことが分かり、安全であると確認した。品質は問題ないと考えている」と説明する。ただ、不正を長年続けてきた化血研への不信感が十分ぬぐい切れたとはいいがたく、保護者らの間に迷いが生じている。
 まだ出荷が認められていないワクチンでは、品薄による影響も広がっている。岐阜市の矢嶋小児科小児循環器クリニックでは、B型肝炎ワクチンについて、計三回のうち初回接種を優先し、以降の予約を制限している。矢嶋茂裕医師は「少数のメーカーに依存するワクチン供給体制も大きな問題ではないか」と憤る。
 厚労省は「需要が逼迫(ひっぱく)しているワクチンから安全確認作業を進めているが、出荷再開の見通しは立っていない」としている。



 そして、今問題になっているのが肝炎ウイルスに対するワクチン。
 特にB型肝炎ワクチンは小児に重要なワクチンで、2016年に定期接種化が予定されています。
 当院では、出荷停止時点で新たな予約受付を停止していました。
 しかし、かき集めましたがとうとう足りなくなり、出荷停止前に予約していた患者さんへの接種さえもできなくなりました。

B型肝炎ワクチン、接種の中止相次ぐ 化血研問題で不足
2015.12.20:朝日新聞
 化学及(および)血清療法研究所(化血研、熊本市)の不正製造の影響で、B型肝炎ワクチンが足りずに接種の予約を中止する医療機関が出てきている。国内シェア8割を占める化血研製の出荷が9月から止まっているためだ。厚生労働省は、安全性が確認されれば出荷を認める方針だが、年明けになる可能性もあるという。
 B型肝炎ワクチンは、国内に流通するのは化血研製とMSD製のみ。昨年は計約200万本出荷された。厚労省は来年度にも、市町村が実施する定期接種にする方針。対象は0歳児で1人に3回する。


 日本小児科学会では緊急声明を出し、B型肝炎ワクチン接種に優先順位をつけるよう促しています。

B型肝炎ワクチン供給不足が見込まれる現状での医療施設における対応 -日本小児科学会 予防接種・感染症対策委員会からのお願い-

 この中で、次のように優先順位がつけられています;

1.母子感染予防のためのワクチン接種
2.HBs抗原陽性の血液による針刺し等の汚染事故後のB型肝炎発症予防のためのワクチン接種
3.家族内にB型肝炎キャリアの方がいる場合の乳児へのワクチン接種

 なるほど、という内容ですが、当院では全くワクチンが手に入りませんので、あまり意味がありませんね。

 今回の問題点を整理しますと、
「国の承認書と異なる方法で作成したワクチン、しかし国家検定を通過したワクチン・・・この安全性をどう評価するのか? 見切り発車的に出荷を認めてよいのか?」
 ということかと。
 このままうやむやには終わらない問題であり、化血研はその倫理性を厳しく追及されることになるでしょう。

■ 薬害エイズの製薬会社、40年にわたる不正発覚!入念な偽装工作、未承認の製法(2015.12.22:Business Journal
■ ボツリヌスを無届け運搬 厚労省が化血研に立ち入り検査(2015年12月21日:東京新聞夕刊
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TVドラマ「コウノドリ」完。

2015年12月19日 07時39分18秒 | 日記
 先日紹介した医療系ドラマ「コウノドリ」が昨日、最終回を迎え終了しました。
 最高視聴率は12.6%だそうです。
 産婦人科・新生児医療の現場を真面目に取材し、奇をてらう演出を極力廃した直球勝負、そして小児科医の私から見てもド・ストライクの作品。
 中高生の保健体育系授業にも使えそうです。
 おそらく、長く語り継がれるドラマになることでしょう。

 最終話は「命のバトン」というテーマでした。
 子どもが生まれることと引き替えに自らの命を犠牲にした母親。
 それを成長して知ることは、子どもにとって重荷になるのか?
 いや、そんなことはない。
 命のバトンを託されたことを知る方が、自分の命を実感し、自分に自信を持って充実した人生を送ることができるだろう。
 
 相田みつをさんの詩を思い出します;

<自分の番(いのちのバトン)>

 父と母で二人
 父と母の両親で四人
 そのまた両親で八人
 こうして数えていくとゆくと

 十代前で、千二十四人
 二十代前では―?

 過去無量の
 いのちのバトンを
 受けついで
 いま、ここに
 自分の番を生きている
 それがあなたのいのちです
 それがわたしのいのちです


 ・・・その昔、結婚式のスピーチで使わせていただきました(^^;)。
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「今冬のインフルエンザ」覚え書き

2015年12月13日 14時41分30秒 | 小児科診療
 医学系商業誌「日経メディカル」の2015年12月号の特集は「早わかり!今冬のインフルエンザ」でした。
 読んで目に留まった箇所をメモしておきます;
 (医学用語が使われていますので一般の方にはわかりづらい箇所があることをお許しください)

■ 流行予想
・AH3亜型が主役だった昨シーズンとは違い、今シーズンはAH3亜型とAH1pdm09亜型の混合流行に始まり、B型の流行が重なるという展開が予想される。ちなみに今年8月の南半球の流行ではB型が6-7割を占めた。
・2009年の新型インフルエンザ流行の洗礼を受けていない低年齢層を中心に、AH1pdm09亜型が流行する可能性あり。AH1pdm09亜型の変異が徐々に進んでいることも気がかり。
・AH3亜型は昨シーズン、子どもたちの間で大流行した。今シーズンは昨年罹患しなかった成人、特に高齢者で流行するかもしれない。
・それぞれに感受性のある年齢層が存在すると考えられることから、複雑な流行になりそう。
・今シーズンはB型の流行になるだろう。AH3亜型は昨年大流行したばかりであり、またAH1pdm09にはこれまでのところ抗原性の変化が見られないから。


■ ワクチン
・今シーズンはワクチンに含まれる抗原が従来の3種類(A型2種、B型1種)から4種類(A型2種、B型2種)に増え、それに伴いインフルエンザワクチンの価格が昨年の1.5倍に上がり、接種料金も値上げせざるを得なかった。
・B型は山形系統とビクトリア系統が毎年同時に流行してきた。このため、ワクチンに1種類のB型抗原しか盛り込めなかった3価時代には、B型に対する予防効果が不十分だった。
・今シーズンのワクチンの安全性については、接種後の接種部位腫脹の大きさは4価ワクチン接種群が有意に大きかったが、全身反応や局所反応の発現率に有意な差はなかった。


■ 診断
・迅速診断キットでは、検体中のウイルス抗原量が少ない発病から12時間未満に検査を行った場合、偽陰性となる例が増えてしまう。
・迅速診断では鼻汁鼻かみ液を使用すると、鼻腔ぬぐい液より感度がやや落ちる。
・咽頭後壁の「インフルエンザ濾胞」(インフルエンザの発病から6時間程度で咽頭後壁に出現してくるリンパ濾胞で、大きさは直径3-4mm程度、半球状で赤く不透明なイクラのような濾胞が一斉に出てくる)が診断に有用。アデノウイルス感染などでも咽頭後壁にリンパ濾胞は現れるが、急性期でも濾胞同士がくっついていたり、ペタッと平べったい形をしている。インフルエンザ濾胞は独立した、緊満した半球なので、ペンライト(クリプトン球よりLEDの方がわかりやすい)を当てるとそれぞれのつぶが光る。その光の点を探すのがインフルエンザ濾胞を見つけるコツ。


■ 抗インフルエンザ薬
・現在発売されているのはノイラミニダーゼ阻害薬4種(タミフル®/リレンザ®/イナビル®/ラピアクタ®)の作用機序はすべて同じで「感染細胞からのウイルスの放出を防ぐ」こと。
・吸入剤(リレンザ®/イナビル®)には乳糖が付加されており、乳糖には微量の乳蛋白が混入している。よって少量の牛乳でアナフィラキシーの既往のある重症乳アレルギー患者にリレンザ®/イナビル®を使用してはいけない(添付文書では「慎重投与」扱い)。ここ3年間でアナフィラキシー発症が6例(リレンザで1例、イナビルで5例)報告されている。
・タミフル®には依然として「10歳以上の未成年には使用を差し控える」という記載が添付文書にある。一方、吸入製剤を喘息患者に使用すると発作を誘発するリスクがあり、10歳代の喘息患者や乳アレルギー患者に使いやすい薬が存在しないジレンマが存在する。
・注射薬であるラピアクタ®に関して、日本小児科学会から「服薬や吸入が困難な重症例への治療の切り札であるため外来での使用を推奨しない」という見解が出され、現在では入院例に限定して使用されることが多い。
・現在「感染細胞内でのウイルス増殖を防ぐ薬剤」も開発されている;
(例)
 アビガン(RNAポリメラーゼ阻害薬)・・・エボラ出血熱にも用いられて有名になった薬。国が必要と判断した場合のみ製造販売が許可されるという付帯条件付の製造販売承認。
 S-033188(Capエンドヌクレアーゼ阻害薬)・・・2017/8シーズンを目指して開発中


■ 新型インフルエンザ
・新型インフルエンザへの変異が懸念されているトリインフルエンザ2種;
A(H5N1)・・・1997年に鳥から人への感染事例初確認。2015年2月までの感染者数は840人、死亡者数は447人で、死亡率53.2%。主な流行地は東南アジア、エジプト。パンデミック用ワクチンは3種類用意され、発生時は原則として集団接種が予定されている。
A(H7N9)・・・2013年に鳥から人への感染事例初確認。2015年2月までの感染者数は571人、死亡者数212人で、致死率は37.1%。主な流行地は中国。ワクチンはまだない。

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RSウイルス感染症流行中

2015年12月08日 09時02分37秒 | 小児科診療
 現在、当院外来ではRSウイルス感染症が目立ちます。
 全国的にも今年の流行は大きいようです;

■ 1週間当たりのRSウイルス感染患者、2015年最多を記録
2015.12.1:マイナビ
国立感染症研究所は12月1日、11月16~22日の期間中の感染症発生動向調査を公開した。同調査の結果から、同期間中における1週間あたりの「RSウイルス感染症」の患者が、2015年で最多だったことがわかった。
RSウイルス感染症は、RSウイルスによって引き起こされる呼吸器の感染症。ウイルスの典型的な潜伏期間は4~6日とされている。風邪のように発熱や鼻水などの症状が出るが、重度の場合だと肺炎や気管支炎になるケースもある。
同研究所は、生後1歳までに半数以上の子どもが感染するとしており、同2歳までにはほぼ100%の子どもがRSウイルスに初感染するという。ただ、生後数週間~数カ月間程度の乳児が初めて感染した場合は、重篤な症状が出る可能性が高まるとされている。
全国約3,000カ所の定点医療機関から11月16~22日(第47週)の期間中に報告があった全国の患者数は6,687人。第43週に1週間あたりの患者数が4,000人を超え、第47週に2015年になって初めて6,000人を突破した。
直近5年間の同時期の患者数と比較しても、2015年が最も多い。2番目に同時期の患者数が多かったのが2014年で、その数は5,151人。最少だった2011年は2,389人となっているから、いかに今年の患者数が多いかがわかる。


 小児科医にとって、RSV感染症は「インフルエンザの前座を務める風邪、乳児が重症化しやすいので要注意」というイメージです。

RSウイルス感染症(当院HP)

 しかしながら、今シーズンは勢いがあり、1~2歳の子どもでも発熱が長引いたり、重症化して呼吸困難に陥る例も経験しています。ご注意ください。

 上記リンクのHPにも記しましたが、残念ながらRSウイルスに対する特効薬は存在せず「薬が効かないのがRSウイルス感染症の特徴」と言っても過言ではありません。

 重症者が一人出た場合、その周囲にはふつうの風邪症状で済んでいるRSウイルス感染症が10人以上いますので、重症者だけ隔離しても無意味です。
 ですから「罹るのは仕方ない、重症化しないかどうか注意して観察する」ことに尽きます。

 今の時期に咳と鼻の風邪を引いた乳幼児が以下のような症状に陥ったら・・・
【黄信号】息づかいが荒い、哺乳力(食欲)低下、咳で眠れない → 医療機関受診
【赤信号】呼吸が苦しそう、顔色が悪い → 救急対応病院へ

 ちなみに、当地域(群馬県館林市)の夜間・休日の相談窓口はこちらです。
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