徒然日記

街の小児科医のつれづれ日記です。

広葉樹による日本再生

2012年02月26日 10時23分54秒 | 日記
 東日本大震災で、沿岸の「防災林」としてのマツ林が津波の被害で根こそぎ倒れたことは皆さんご存じのことと思います。
 1本だけ生き残ったマツも枯れてしまいました。

 その際、生き残った樹木が注目されています。
 もともとその地域に自生する広葉樹(タブノキなど)です。
 特に「鎮守の森」として神社境内に植えられていたものは強く、神様を守りました。

 広葉樹は地中に深く根を伸ばすので、倒れにくい。
 一方、針葉樹は根の張り方が浅いので倒れやすい。
 砂浜のマツ林は景観は美しいけれど、実は津波対策にはなり得なかったのです。

 最近、自分の庭に植えたクスノキから落ちた種が芽吹いて苗木になったものを植え替えました。
 ほんの30cmの木ですが、根っこはゆうに50cm以上伸びていてビックリ。「大地に根を張る」ことを実感した次第です。



 うまく根付いてくれるといいのですが・・・。

 「鎮守の森」の著書で有名な宮脇昭さんが立ち上がりました。
瓦礫を活かす「森の防波堤」が命を守る: 植樹による復興・防災の緊急提言
 がれきを埋め立てて土手を作り、そこに土地固有の広葉樹を植えるべしと指南しています。
 すると、根っこが伸びて土手を自然の強固な防波堤にしてくれる、がれき処理もできると一石二鳥。

 すばらしい!

 がれき処理は日本全国の市町村がその受け入れを躊躇している難題です。
 環境省には、そもそもがれきをその土地で活用するという視点がありません。
 凝り固まった認識を新たにして、対応していただきたいと思います。

 東北地方ではカキ養殖家の畠山重篤さんも活動しています。
 彼も「森は海の恋人」としてカキを育てるのは豊かな森であることに着目して植林を続け、東日本大震災で大打撃を受けた養殖業が、森の力で見事に蘇った自然の力を実感していると見聞きしました。

 「日本固有の広葉樹林による森の再生
 これは震災復興のみならず、日本再生のキーワードでもあると思います。
 「花粉を作らないスギ」を研究している場合じゃない。
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スギ花粉症シーズン始まる

2012年02月26日 08時51分07秒 | 小児科診療
 インフルエンザ患者さんに混じって、花粉症で受診する春だけのレギュラーメンバーが来院されるようになりました。
 私も外で活動すると目がしばしばし始め、花粉の存在を感じています。

13府県で花粉シーズン突入 ウェザーニューズ発表
(2012.2.24:朝日新聞)
 気象情報会社ウェザーニューズは24日、大阪府や愛知県など1府12県が花粉シーズンに入ったと発表した。同社は全国千カ所に独自の花粉観測機を配置しているが、大阪と愛知のほか山梨、静岡、岐阜、福井、兵庫、和歌山、山口、福岡、佐賀、長崎、熊本で、花粉に敏感な人に症状が出始める飛散量になっていると判断した。今後、3月にかけて寒さが緩み、花粉の飛散量が増えるという。


★ 「ウェザーニューズのリアルタイム花粉飛散情報

 北海道はスギがないのでスギ花粉症が存在しないと云われてきました。彼の地で花粉症と云えばシラカバ花粉症を意味するそうです。
 そのシラカバ花粉も、スギ花粉同様、前年夏の暑さにより飛散数が変化することを知りました;

シラカバ花粉 今年は少なめ 日本気象協会
(2012年02月24日:朝日新聞)
「今年は少なめ」
 道内での花粉症の最大の原因とされるシラカバ花粉の今年の飛散量について、日本気象協会北海道支社は23日、例年より少なめになる、と発表した。昨年比で札幌では40%、旭川では25%程度になる見通しだ。
 道支社によると、花粉を飛散させる雄花が形成される昨年5~6月は気温が低めで、日照時間が短かった。このため雄花の量が少なくなり、飛散量も減ることになるという。
 道内にはスギの花粉は道南などの一部にしかなく、シラカバが花粉症の大きな原因となっている。4月下旬から6月にかけて飛散する。
 道立衛生研究所の予想でも今年の飛散量は少なめで、札幌、岩見沢、旭川、北見では、例年の40%未満、函館と帯広では例年の40~80%という。

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今年のインフルエンザは“ワクチン効果が低い”

2012年02月25日 06時32分02秒 | 小児科診療
 昨夜、NHKのニュースで大々的に報道されたそうです。
 その頃、私はまだインフルエンザ患者の診療をしていました。


インフルエンザ“ワクチン効果低い”
(2012年2月24日 NHK)
 過去10年で2番目の大きな流行となっているこの冬のインフルエンザのウイルスは、各地で「ワクチンの効果が低い」と判定されていることが分かりました。
 専門家は「シーズン途中でも、こうした情報を公表して対策に反映すべきだ」と指摘しています。
 この冬のインフルエンザは、全国の推計患者数が5日までの1週間で211万人に達するなど、過去10年で2番目の大きな流行となっていて、ほとんどはA香港型のウイルスによるものとみられています。
 各地の自治体の衛生研究所は、患者から検出したA香港型のウイルスにワクチンがどの程度効果があるか調べていますが、NHKが取材したところ、これまでに神戸市と横浜市、三重県、佐賀県、それに堺市は、分析した80%以上で「ワクチンの効果が低いと考えられる」と判定していたことが分かりました。
 このうち神戸市では、分析した23株すべてで「効果が低いと考えられる」と判定していました。「抗原」と呼ばれるウイルスに特有のたんぱく質がワクチンに使われたものと大きく異なっていたためとみられています。
 国立感染症研究所は、こうしたデータを全国から集めているものの、改めて分析し直したうえでないと内容を公表できないとしています。
 これについて、日本感染症学会のインフルエンザ委員を務める菅谷憲夫医師は「ウイルスが変異してワクチンの効果が低下したことが、大きな流行につながった可能性がある。シーズンの途中でもこうした情報を公表して対策に反映すべきだ」と指摘しています。

◇ 対策に「予防投与」
 ワクチンの効果が低いと考えられる場合、病院や老人ホームなど重症化しやすい高齢者の多い施設で対策の柱となるのが、タミフルやリレンザといった抗ウイルス薬の「予防投与」です。
 インフルエンザを発症した人と同じ部屋にいたり、会話を交わしたりした人はウイルスに感染しているおそれがあるため、予防的に薬を服用してもらうものです。
 インフルエンザに詳しいけいゆう病院の菅谷憲夫医師によりますと、インフルエンザは感染してから熱などの症状が出るまでに1日から3日程度かかるため、最初に症状のある人が出てから24時間以内に薬を服用してもらうのが最も効果的だということです。適切に実施すれば、施設や病院での感染の拡大を大幅に抑えられるとしています。
 ただ、公的な医療保険が使えないため、1週間から10日間の薬剤費として1人4000円程度かかるということです。


 私自身は、ワクチンの有効性を実感しているのですが・・・もともと感染防御能力は低いので何を求めるか、ですね。
 ある幼稚園でA型インフルエンザが流行し、ほとんどの子どもが罹患してしまいました。でも、ワクチン接種者は総じて軽く済んだとの話も聞きました。
 最終的な判断は、このニュースの続報、シーズン終了時の総括を待ちたいと思います。

 一方、当地域におけるインフルエンザ流行はB型がメインです。A型:B型=2:8程度でしょうか。
 B型にはもともと抗インフルエンザ薬の効きが悪いとされており、現場でも実感しています。
 子どもに多いとされる「二峰性発熱」(熱のピークが2回ある)がこれほど観察されるシーズンも珍しい。

 もうひとつ、誤解しないでいただきたいのですが、「予防投与」の有用性はあくまでも閉鎖空間である病院や高齢者施設でのことです。予防投与は耐性ウイルス出現と表裏一体なので一般診療の中で行うべきではないとされています。

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再度、はしか(麻疹)情報

2012年02月23日 07時02分37秒 | 小児科診療
 2月11日に「麻疹輸出国から麻疹輸入国になった日本」を取り上げました。
 その関連記事ですが、一目瞭然の表/グラフがありましたので再掲します;

合言葉は「MRワクチン済んでる?」輸入麻疹が増加中
(2012.2.21:メディカルトリビューン)
 今年(2012年)に入って麻疹の報告者数が47例と昨年を上回るペースで増加していることが国立感染症研究所情報センターの調べで明らかになっている。愛知県では7例の発生が報告。うち6例はMRワクチン未接種であったという。今年に入り,輸入麻疹の報告が相次いでいることから,同センター第三室室長の多屋馨子氏は,小社の取材に対し「2回目の定期接種(第2~4期)の対象期間があと1カ月と少ししかない子どもも多い」と懸念を示した。また,欧州では麻疹の流行も続いているほか,国内では30歳代男性を中心に風疹も流行中だ。同氏は定期接種の対象であるか否かを問わず,「海外に渡航する前にはMRワクチンを!」と呼びかけている。

◇ 渡航歴,ワクチン歴なしの子どもからD8型が多く検出
 日本では来年度(2012年度)を麻疹排除達成の目標としており,現時点で世界保健機関(WHO)が定めるサーベイランス体制の強化や国内株の伝播が見られないことといった麻疹排除の定義を満たしつつある。
 一方,今年に入ってからも輸入麻疹例の報告が各地で相次ぎ,2月15日現在47例に達している。昨年春に多く報告されたのが欧州からの輸入株(D4型)であったのに対し,今年は今のところD8型が多くを占めている(表)。D8型はネパールやインドからの輸入株とされている。


(クリックで拡大します)

 2月20日の感染研速報には,同じ小学校に通う11歳男児,12歳女児,14歳の女児の兄のほか,近隣に住むが濃厚接触歴が確認できない4歳女児の報告と,父親からの二次感染と見られる1歳男児,別の1歳男児,6歳女児の報告が同時に取り上げられている。発症者はいずれも渡航歴がないほか,MRワクチン接種歴なし,あるいは確認できていないことが明らかになっている。
 報告を行った愛知県衛生研究所によると,その後の詳しい検査の結果,全例ともに1月,千葉で報告されたD8型麻疹ウイルスの部分塩基配列との100%の相同性が認められたという。D8型は2009年沖縄で初めて検出された輸入株で,以来,国内でも散発例が見られている。

◇ 追加接種措置は来年まで,しかし2回目未接種例は毎年20万人発生

 日本では2006年からMRワクチンの2回(第1期:1歳,第2期:小学校入学前)接種が開始された。2008年からは当時既に対象年齢を過ぎていた子どもに対し,第3期(13歳,中学1年生に相当),第4期(18歳,高校3年生相当)の接種を勧奨する時限措置が継続中だ。この措置は2012年度末(2013年3月)で終了する。

 この時限措置開始以降,2010年には国内の患者数は96%減少(図)。しかし,2008年からの3年間,第3期,第4期の接種率は90%を達成できていないと感染研。少なくとも毎年20万人程度が2回目のワクチン接種を逃したと考えられるという。その上で,麻疹排除を目前にしながら2010年以降流行が再燃している欧州の状況は「決して対岸の火事ではない」としている。


(クリックで拡大します)

 多屋氏は「小学校入学前,中学1年生,高校3年生相当年齢の人の,定期接種の期間はあと約1カ月。この人たちへの啓発が今まさに必要」と2回目のMRワクチン接種の重要性を強調する。さらに,風疹の流行も心配であるとして「海外渡航の機会のある人は,その前にMRワクチンの接種を終えているかどうかを確認してほしい」としている。



 図表を見ると、ワクチン未接種者あるいは1回の未接種者しか発症していないこと、2008年に定期接種を2回に増やしてからは麻疹患者数が激減していることが読み取れます。

 現在日本では水痘とおたふくかぜの定期接種化も検討されています。
 これらの感染症についてはお母さん方に今ひとつ危機感がありません。
 「絶対罹りたくない」<「罹った方が楽」という雰囲気。
 まあ、病気の重要性はまた別の機会に記すとして・・・。
 二つとも麻疹/風疹と同じく生ワクチンです。感染を制御するにはやはり「2回接種」が基本となりますが、厚生労働省がどう判断するのか注目しましょう。

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インフルエンザの広がり方

2012年02月23日 06時39分38秒 | 小児科診療
 学級閉鎖が相次ぐと、インフルエンザ流行はピークを越えて収束に向かうのが一般的です。
 当院を受診される患者さんの訴えも、
 「クラスで○人がインフルエンザで休んでいる」
 「明日から学級閉鎖が始まる」
 という集団生活による感染事例から、今週は
 「兄がこの前インフルエンザと診断され、この子も昨日熱が出た」
 と家族内感染パターンへ変化してきました。

 そしてこの家族内感染から他の集団生活の場へ飛び火していくのが常です。
 ここで問題になるのが、隔離期間/出席停止期間。
 2月15日に「イナビル使用者はインフルエンザウイルスをばらまく?」でも触れました。
 共働きの家庭が多い昨今、親としてはできるだけ早く保育園/幼稚園/学校へ行かせたい・・・このような社会事情がジレンマを形成しています。

インフルエンザ:対策、学校模索 薬ですぐ解熱、登校…感染拡大の懸念
(毎日新聞 2012年2月22日)
 猛威を振るうインフルエンザは、いまだ収束に向かっていない。国立感染症研究所の最新のデータ(6~12日)によると、学級・学年閉鎖や休校した保育所、幼稚園、小・中・高校などは全国で8090施設。患者の半数以上を子どもが占め、教育現場では感染の拡大防止に必死だ。一方、国も児童らの出席停止基準を見直す。インフルエンザ対策の現状を探った。
 「まだ3日しか休んでないのに、大丈夫かしら」--。東京都町田市立忠生小(児童712人)の主任養護教諭、新井典恵さんはある朝、登校してきた児童の中にインフルエンザで出席停止だった子を見つけ不安になった。各地の小学校などで、インフルエンザにかかっても3日程度しか欠席せず早期に登校する子が増えている。
 学校保健安全法施行規則では78年以降、インフルエンザにかかった子の出席停止期間について、「解熱した後2日を経過するまで」を基準とした。この基準ができた当時、熱が下がるまで5日ほどかかったため、そこから2日休み、計1週間程度欠席するのが目安だった。
 しかし、最近ではインフルエンザの治療薬が普及し、解熱までの時間が大幅に短くなった。治療薬の効き目はその年のウイルスの型などで多少異なるが、日本臨床内科医会の昨シーズンの調査では、A型インフルエンザの場合は平均約20~29時間、B型では平均約36~40時間。つまり発症後すぐに投薬を受ければ、3日程度の欠席で済むケースも出てくる。
 医療現場からは、こうした状況に対し、「解熱してもウイルスの排せつは続き、感染力が残っている」との指摘は少なくなく、「感染力があるのに登校する子が増えれば、感染拡大につながりかねない」との声も上がっていた。
 働く母親が増えていることも、感染した子が早期に登校する傾向に拍車をかけているようだ。足立区で小児科医院を開業する和田紀之医師(都医師会公衆衛生委員会委員長)は「母親から『どうしても仕事を休めないから早く子どもを登校、登園させたい』としばしば懇願される。特に5歳未満は重症化して脳症になる恐れも強く、『他の子に感染して、もしものことがあってはならない』と理解を求めている」と話す。
 こうした現状を問題視し、文部科学省は16日、34年ぶりに出席停止期間の基準を見直す方針を決めた。4月から「発症した後5日を経過し、かつ、解熱した後2日を経過するまで」と改める予定だ。また、低年齢ほどウイルスの排せつが長く続くため、幼稚園児は09年に厚生労働省が保育所・園を対象に定めたガイドラインに合わせて「発症した後5日を経過し、かつ、解熱した後3日を経過するまで」とする。
 発症した日や熱が下がった日は1日目と数えるのか、従来「分かりにくい」と指摘されてきたが、文科省学校健康教育課は「発症した翌日が1日目となる。これまで明文化されていなかったが、作成中の感染症対策マニュアルにはっきり書き、今年度中に示したい」とする。

 ◇薬…年齢、生活で選んで
 インフルエンザの治療薬は昨シーズンに吸入式の「イナビル」が発売され、現在「タミフル」「リレンザ」「ラピアクタ」と合わせ計4種類が使われている。日本臨床内科医会が研究グループ内での昨シーズンの使用状況を調べたところ、0~4歳は94%がタミフルなのに対し、5~9歳はタミフル56%、イナビル21%、リレンザ19%。10~19歳は服用時の異常行動の問題でタミフルはなく、リレンザ59%、イナビル35%だった。
 和田紀之医師は「イナビルは1回で済む点が好まれるが、吸入を失敗すると治りが悪くなるので、特に年少の患者は十分に指導することが重要だ。治療薬は年齢や生活スタイルに合わせて選ぶとよい」と話す。


<インフルエンザ治療薬4種>
・タミフル…1日2回、5日間の内服
・リレンザ…1日2回、5日間の吸入式
・ラピアクタ…通常は1回だけの点滴
・イナビル…1回だけの吸入式


 ちなみに私が診療している地域ではB型優勢であり、残念ながら抗インフルエンザ薬の効きは今ひとつ。実際に薬を使用後も数日間発熱がつづく例が多く認められ、効いているんだか効いていないんだかわかりません。幸い重症化して病院へ紹介した患者さんはゼロですが。

 検査陽性者に説明する際、
 「B型には期待するほど効きませんよ
 と加えるようになりました。
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子どもにも漢方

2012年02月21日 21時34分57秒 | 小児科診療
 多くの日本人は「漢方」は中国の医学だと思い込んでいます。
 実はこれ、誤解であり間違いです。
 正解は「漢方は中国生まれ、日本育ちの医学」。
 はじまりは1000年以上前に中国から伝来した医学ですが、日本の中で独自の発達を遂げ、特に江戸時代に熟成・完成しました。
 幕末に入ってきたオランダ医学と区別する必要が出てきたので、オランダ医学を「蘭方」、日本の伝統医学を「漢方」と名付けて呼んだのが最初なのでした。誤解を避けるために「日本漢方」と書いたほうがよいかもしれませんね。
 1500年前に仏教が伝来した際、日本古来の信仰を「神道」と呼んで区別したのと似ています。
 
 さて、2月25日(今週土曜日)夜に放送予定の『夜なのにあさいち「漢方スペシャル」』という番組がひそかに話題になりつつあります。

【会見レポート】2/25(土)「夜なのにあさイチ 漢方スペシャル」(NHK総合)
漢方でむくみを改善した有働アナにイノッチが「すごいよね」。NHK『あさイチ』スピンオフ番組

 その経緯は、あさいちスタッフが漢方の取材をはじめたら盛り上がってゴールデンタイムのスペシャル企画に拡大してしまったらしい。
 なにかと物議を醸し出す有働アナが実体験を報告するのが目玉ですが、わたしは「子どもの虚弱体質への漢方」に注目しています。

 なぜって、私が日々実践している診療だから。
 漢方とお友達になってQOLが上がった子ども達の声をお聞きください。

■ 「漢方飲めたよ&効いたよ!
 
 どんな内容が放送されるのか、楽しみです。
 さて、予約予約・・・。

<付記>
 その後、漢方仲間の小児科医に「この番組知ってました?」とメールを書いたところ、
 「実は取材を受けたのは私です」という返事をいただきびっくり仰天。
 ますます楽しみ。
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イナビル使用の10歳代患者が転落死

2012年02月21日 21時26分45秒 | 小児科診療
 タミフルによる異常行動が話題になり、因果関係がわからないまま10歳代には使用制限がかかっています。
 そして今回、昨年認可された吸入の抗インフルエンザ薬「イナビル」使用後の転落死というニュースが飛び込みました。
 しかし下の記事を読むと、すべてのクスリで異常行動が起こりえるような錯覚を受けます・・・つまりインフルエンザそのものによる症状ではないか、とさえ思ってしまう私ですが、どうなのでしょう。

イナビル使用の10歳代患者,転落死で厚労省が再度注意喚起
(2012.2.21:メディカルトリビューン)
 厚生労働省は昨日(2月20日),各都道府県に向け,抗インフルエンザウイルス薬使用後の異常行動に関する注意喚起の徹底を通達したことを明らかにした。インフルエンザの本格的な流行が続く今シーズン,ラニナミビル(商品名イナビル)を使用した10歳代のインフルエンザ患者の転落死が報告されたため。厚労省は,抗インフルエンザ薬使用後少なくとも2日間は小児・未成年者を1人にしないよう呼びかけている。

◇ インフルエンザ発症後少なくとも2日間は1人にしない
 厚労省の文書によると,今シーズン,ラニナミビル使用後に転落死した10歳代の患者の報告があったという。現時点では,抗インフルエンザ薬と異常行動を含む精神神経症状の因果関係は明らかになっていないものの,各種薬剤の添付文書において以下の使用上の注意が記載されている。

<重要な基本的注意(下線は編集部)>
 因果関係は不明であるものの,本剤を含む抗インフルエンザウイルス薬投薬後に異常行動等の精神神経症状を発現した例が報告されている。小児・未成年者については,異常行動による転落等の万が一の事故を防止するための予防的な対応として,本剤による治療が開始された後は,
 1)異常行動の発現のおそれがあること,
 2)自宅において療養を行う場合,少なくとも2日間,保護者等は小児・未成年者が一人にならないよう配慮することについて患者・家族に対し説明を行うこと。
 なお,インフルエンザ脳症等によっても,同様の症状があらわれるとの報告があるので,上記と同様の説明を行うこと

 ラニナミビルは2010年9月に承認された,第一三共の新しい抗インフルエンザ薬で,1回の吸入で治療が完結する特徴を持つ。また,今回の通達はオセルタミビル(商品名タミフル),ザナミビル(同リレンザ),アマンタジン(同シンメトレルなど),ペラミビル(同ラピアクタ)を販売する各企業に対しても行われている。

◇ 解熱薬服用例や薬剤非使用例でも異常行動の報告あり
 なお,厚労省の「インフルエンザQ&A」にはインフルエンザ患者で報告されている異常行動として次のような事例も示されている。以下の行動は解熱薬(アセトアミノフェン)服用例や薬剤を服用しない例でも認められているという。厚労省は「インフルエンザに罹患し,自宅療養する場合には突然走り出して2階から転落することなどないよう少なくとも2日間は保護者が小児・未成年者を1人にしないように」と呼びかけている。

・突然立ち上がって部屋から出ようとする
・興奮状態となり,手を広げて部屋を駆け回り,意味のわからないことを言う
・興奮して窓を開けてベランダに出ようとする
・自宅から出て外を歩いていて,話しかけても反応しない
・人に襲われる感覚を覚え,外に飛び出す
・変なことを言い出し,泣きながら部屋の中を動き回る
・突然笑い出し、階段を駆け上がろうとする

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2月19日休日当番医報告~インフル流行のピーク~

2012年02月20日 07時13分18秒 | 小児科診療
 昨日は休日当番医を担当しました。
 まさにインフルエンザ流行のピークです。
 どれだけ患者さんが来るのか、医師の私が前日からハラハラドキドキ。

 当番医が必要以上に混雑しないよう、以前から当院では以下のルールを作っています。
・定期投薬の処方はしない。
・治癒証明書の発行はしない。

 ・・・ふだんの診療を希望される方は平日に来院してください、というスタンスです。

 今回はもう一つ、ルールを加えました。
・発熱当日のインフルエンザ検査はしない。

 インフルエンザ迅速診断キットは感度の問題から発熱当日は陽性になりにくいことが知られています。
 つまり、熱が出てすぐ来院、検査で陰性・・・でも否定できないから明日もう一回検査が必要、ということになります。
 現在の流行でも「発熱当日は陽性にならない」ことを日々実感しています。翌日に再検査して初めて陽性になる例の多いこと多いこと。
 時間の節約目的で上記ルールを適用させていただきました。
 
 いざ、フタを開ければやはりインフルエンザ一色です。
 合計143名の患者さんが来院されました。
 インフルエンザ検査をしたのは100名弱。
 陽性者は66名(A型7名、B型59名)とB型優勢が明瞭でした。

 想定外の検査数に、午後になって検査キットが底をついてしまいました。多めに用意していたのですが・・・(涙)。
 検査を希望して来院された患者さん達には、説明して他の当番医へ行ってもらいました。
 ご迷惑をお掛けし、申し訳ありませんでした。
 
 インフルエンザ流行期は、一人あたりの診療時間が長くなります。
 (診察して検査)+(結果が出たら説明してクスリの希望を聞く)と2回分時間がかかるのです。
 それを見越して診療の流れ、患者さんの動線をあらかじめ決めておいたので、昨日は比較的スムースに診療が流れました。
 夜7時過ぎにようやく終了。

 アラフィフの私は息切れしながら何とか責任をまっとうできてホッとした次第です。
 手首・肩はパソコン操作による疲労でボロボロですが(苦笑)。
 一日中走り回った当院スタッフもご苦労様でした。

 さて、2月にB型>A型の流行を診ることは希です。
 12~2月にA型が流行し、3月にB型が取って代わるのが例年のパターン。
 今シーズンの流行も例に漏れずA香港型が口火を切りましたが、ピークを迎える前にB型優勢になりました。

 実はB型は、診療する医師にとって悩ましい感染症です。
 まず、ワクチンが効きにくい
 発症阻止率はA型で7割程度ですが、B型は5割程度にとどまります。
 そして、くすりが効きにくい
 抗インフルエンザ薬(タミフル、リレンザなど)は、A型に比べてB型ではキレが悪いのです。
 もともとA型より軽症で済むとされていますので従来あまり話題になりませんでしたが、これだけ大流行すると無視できませんね。

 ワクチンも効かない、クスリも効かないB型。
 対策は流行させないことです。
 ウイルスの蔓延を防ぐにはワクチンの接種率向上しか有りません。
 不顕性感染者も2割存在しますので、学級閉鎖などの後手に回った対策では感染制御は不可能なのです。
 今後、厚生労働省がどういう方針をとるのか、注視していきたいと思います。

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インフルエンザ 出席停止を延長

2012年02月17日 06時52分22秒 | 小児科診療
 インフルエンザは今週がピークのようですね。
 さて、インフルエンザの出席停止・隔離期間に関しては再三取り上げてきましたが、とうとう基準が変わることになりそうです。

インフルエンザ 出席停止を延長
(2012年2月17日 NHK)
 インフルエンザにかかった児童や生徒から学校で感染が広がるのを防ぐ「出席停止」の対応が、抗ウイルス薬の普及で現状に合わなくなったとして、文部科学省は、「発症後5日を経過するまで」とする基準を新たに設け、実質的に出席停止の期間を延長することになりました。
 インフルエンザの流行は、学校を中心に拡大することが多いため、法律で、症状のある児童や生徒の「出席停止」が定められ、期間は、昭和33年以降、「解熱したあと2日を経過するまで」という基準が用いられています。しかし、ここ10年ほどの抗ウイルス薬の普及で、熱が下がるまでの期間は半分程度に短くなった一方で、ウイルスを排出する期間はほとんど変わらず、医療関係者から、基準が現状に合わなくなっているという指摘が出ていました。
 このため、文部科学省は、これまでの「解熱後2日を経過」に加え、「発症後5日を経過するまで」とする基準を新たに設け、実質的に「出席停止」の期間を延長することを決めました。幼児は体内にウイルスが長く残るため、幼稚園児については、解熱したあとの日数を1日長い3日とすることで対応するということです。
 文部科学省は一般からの意見を募ったうえで、新たな基準を正式に決め、ことし4月から導入することにしています。


インフル出席停止の期間延長、「発症から5日」も条件に
(2012/2/16 日本経済新聞)
 文部科学省は16日、インフルエンザを発症した子供の出席停止期間を延長することを決めた。学校保健安全法の施行規則(省令)で「解熱後2日」と定めていたが、新しい薬の効果でウイルスが残っていても熱が引き、2日を過ぎても感染力が続くことから、「発症後5日」の出席停止を条件に加える。幼稚園児については、解熱後の停止期間も2日から3日に改める。
 インフルエンザにかかった場合の出席停止期間は、風疹、百日ぜきなどと同様に学校保健安全法の施行規則で決まっている。同省は今年4月の省令改正を目指し、17日からホームページで国民の意見を募る。
 省令が定められたのは1958年。インフルエンザ治療薬が普及する前は、発症から解熱までは3~4日かかり、事実上1週間近く出席停止となっていた。
 しかし、近年はタミフルやリレンザ、1回の服用で強い効果があるイナビルなどの登場で、ウイルスが体内に残ったままでも2日程度で熱が引くことが多く、医療現場では「2日では二次感染のリスクが残る」という見方が強かった。
 出席停止期間に関し、保育園児については、厚生労働省が2009年に定めたガイドラインで「発症後5日かつ解熱後3日」の登園を避けるように求め、すでにルールが普及している。現状では同じ年齢でも幼稚園か保育園かで解熱後の出席停止期間が異なるため、文科省は省令の改正により日数を合わせることにした。
 また、おたふくかぜと百日ぜきについても、出席停止期間を見直す。



 ちなみに同時に見直すとされるおたふくかぜと百日咳の従来の出席停止期間は・・・

□ おたふくかぜ:耳下腺の腫脹が消失するまで
□ 百日咳:特有の咳が消失するまで


 とされてきました。非常にアバウトです。
 ほかの感染症でも「感染力が無くなったら隔離解除」なんて基準もまかり通っています。しかし何を持って感染力が無くなるのか判断基準の記載はありません。

(参考)学校・幼稚園・保育園において予防すべき感染症

 実際におたふくかぜの患者さんを診療していると、発症後10日経過しても耳下腺の腫れが引かない子どもも少なからず存在します。私はアメリカの基準である「発症後9日間で隔離解除」を考慮しつつ判断しています。
 百日咳に関しては、現実的には発症後4週間隔離している医師が多いと思います。

 厚生労働省・文部科学省はファジーな基準で現場の医師に責任を押しつけることなく、誰もが納得できるわかりやすい基準を設けることを期待したいですね(無理?)。
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「イナビル」使用患者はインフルエンザウイルスをばらまく?

2012年02月15日 06時39分28秒 | 小児科診療
 前々回の書き込みでも触れましたが、抗インフルエンザ薬を使用して早めに解熱しても、ウイルスの排泄も早めになくなる(つまり感染力が無くなる)とは限りません。
 新薬のイナビル(吸入)、ラピアクタ(点滴)は1回のみの投与で済み、従来よりさらに早く解熱する例も出てきました。まあ、患者にとってはうれしいことなのですが・・・。

 こんな記事を見つけました;

■ インフルエンザ新薬に落とし穴―ウイルスばらまく服用者
(2012/2/14:J-CAST)
インフルエンザの猛威が止まらない。2月5日(2012年)までの1週間に医療機関を訪れたインフルエンザ感染者は211万人と過去最悪となった。一方で、2年前から1回の服用で高熱が下がる新薬が登場している。「画期的な薬ができたのに、なんで猛威が止まらないのかと思いますよね。ところが、この新薬に思わぬ落とし穴があって、逆にインフルエンザを広めているんです」と科学文化部の田中陽子記者が報告した。

◇ 1回の処方でたちまち解熱のワナ
東京・文京区の宮田健史君(小3年)は高熱を出し、近くの小児科医でインフルエンザと診断された。処方されたのは、昨シーズンから販売されている治療薬「イナビル」だった。母の宮田康美さんは言う。
「お薬を戴いたのが金曜日で、翌日の土曜日には熱が下がっていました。凄く早かったです」
実は、この速攻型解熱がインフルエンザ大流行の落とし穴だと小児科医師澤田雅子さんは警告する。
1回の処方で熱は下がっても、ウイルスの排出は約1週間続きます。インフルエンザが治ったと錯覚して、外出して他の人に感染を広げてしまうんです
葛飾区・金町小学校の養護教師岩切直子さんは、「治療薬がない頃は、1週間休むのが当たり前でした。今は新しい治療薬の影響で4~5日で再登校の子供が増えています。まだ感染力のあるウイルスを持った子供たちが再登校すれば、感染は一層広がります」と訴える。

◇ 熱下がっても「会社に来るな」「学校行くな」
金町小学校は感染を広げないための対抗策として、学級閉鎖を通常の3日から4日に延長しているという。
「ウイルスは7日程は体内に残ります」と言う田中記者の報告に、柳沢秀夫解説委員は「熱が下がったら治ったと思うよね」とうなずく。
井ノ原快彦キャスター「熱出して仕事休んだ後に『僕大丈夫ですから』って早々と出てくる人いるじゃないですか。あれがいけないんだよね」
治りかけなのに会社や学校に出てくる人にはしばらく近寄らないこと。また、ムリして出社しても、会社も同僚も「頑張ってるな。仕事熱心だな」なんて見てくれない。迷惑顔されるだけである。
インフルエンザ流行は3月下旬までがピークで、これからはA香港型に加えてB香港型も広がりそうだ。


 ちなみに「B香港型」というタイプは存在しませんので、正しくは「B型」です。
 B型はワクチンの効果が低く、抗インフルエンザ薬の効果も今ひとつ、と指摘されています。近隣地域では現在B型患者が優勢で、学級閉鎖が相次ぎ、なかには学校閉鎖に追い込まれたところもあります。
 抗インフルエンザ薬が当たり前のように使用されるようになった昨今、感染対策としての隔離期間を再検討・再考する時期に来ているのではないかと感じる今日この頃です。
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