徒然日記

街の小児科医のつれづれ日記です。

「とびひはプール禁止、水いぼは可」

2013年05月30日 06時05分42秒 | 小児科診療
 皮膚の学校感染症とプールに関する 日本臨床皮膚科医会・日本小児皮膚科学会の統一見解が発表されました。

■ お子さんとその保護者さん、ならびに保育園・幼稚園・学校の先生方へ
皮膚の学校感染症について~プールに入ってもいいの?

1) 伝染性膿痂疹(とびひ)
 かきむしったところの滲出液、水疱内容などで次々にうつります。プールの水ではうつりませんが、触れることで症状を悪化させたり、ほかの人にうつす恐れがありますので、プールや水泳は治るまで禁止して下さい。

2) 伝染性軟属腫(みずいぼ)
 プールの水ではうつりませんので、プールに入っても構いません。ただし、タオル、浮輪、ビート板などを介してうつることがありますから、これらを共用することはできるだけ避けて下さい。プールの後はシャワーで肌をきれいに洗いましょう。

3) 頭虱(あたまじらみ)
 アタマジラミが感染しても、治療を始めればプールに入って構いません。ただし、タオル、ヘアブラシ、水泳帽などの貸し借りはやめましょう。



 専門学会が「みずいぼはプールの水ではうつりませんので、プールに入っても構いません」と明言したことは画期的ですね。
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「漢方味見表」を更新しました。

2013年05月23日 04時52分12秒 | 小児科診療
 4月から試みていた漢方エキス剤の味見・第二弾が一段落しましたので、HPを更新しました。

子どもへの漢方エキス剤の飲ませ方

 今回は夜泣き・寝ぼけなど精神的に不安定な子どもに使用する方剤(抑肝散、柴胡加竜骨牡蛎湯、桂枝加竜骨牡蛎湯)や、皮膚疾患に使う方剤(温清飲、消風散、十味敗毒湯、当帰飲子、越婢加朮湯)、かぜ薬(苓甘姜味辛夏仁湯、辛夷清肺湯)、それからまずくて飲みにくい薬の代表とされる呉茱萸湯、当帰四逆加呉茱萸生姜湯などを試しました。

 連日味見をしていると、お勧めしていた「前処理としてエキス剤をつぶす」手間が大変だということに気づきました。
 そして、少量のお湯で錬って5~10分ほど放置してから目的の味付け(ジュースなど)に溶かすとまあまあ溶けてくれることを発見し、前処理は口に残りやすい食材(ペースト状のマルツエキスやチョコレートシロップ、半固形のアイスクリームなど)のみでよいこととしました。

 昨年版ではココアが最強の混ぜ物でしたが、それは今回も同じ結果。
 ただ、毎回毎日ココアを飲ませることに抵抗のあるお母さんもいるので、「健康飲料」との呼称のある「ミロ」を試しました。
 結果はココアとほぼ同等。

 味の感じ方には個人差があります。
 表に示した評価は、あくまでも当院スタッフの平均です。
 スタッフの証を考えますと、実証の方、虚証の方、瘀血証の方など様々、また私は漢方薬を飲み慣れているので評価が甘くなる傾向があります。
 「これ、まあまあいけるよね」と私が言っても「先生、この味を子どもが好むわけないじゃないですか!」と否定されたり・・・(苦笑)。
 私自身、同じ漢方薬を飲む時でも体調により味が異なることを実感していますので、ホントに「ひとつの目安」に過ぎないと思います。

 また、溶けにくいエキス剤は最後の一押しとして「電子レンジでチン」をお勧めしていたのですが、「レンジでチンすると有効成分が化学変化を起こす」という研究結果が近年発表され、標準法として採用しにくくなりました。
 この件は今後も注意してチェックしていくつもりです。

 とにもかくにも、漢方エキス剤を処方して「がんばって飲ませてください」と励ますだけの数年前と比較すると、具体的に飲みやすい方法を提示するようになってから服用達成率が随分上昇してきた印象があります。
 そして効果を実感すると飲ませるモチベーションが上がり、さらに服用率アップ。
 なかには「漢方薬希望」と問診票に書いてくる患者さんも出てきましたので、スタッフ一同、「人柱になって味見した甲斐がある」と手応えを感じている今日この頃です。
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「人を幸せにするものは何か?」

2013年05月18日 04時53分09秒 | 小児科診療
人を幸せにするものは何か?ということがハーバード大学の75年間の研究で明らかに
(2013.5.17:Gigazine)

とっても興味深い内容の研究・分析です。
結論は「老年における幸福と健康、そして暖かな人間関係の3つの持つ強い相関関係」であるとし、いろいろな要素に言及していますが、私が注目したのは「男性とその母親との関係」。
その部分を抜粋します;

 「暖かな人間関係」の測定で高得点だった男性58人の年収は平均して年間14万1000ドル(1440万円)で、55~60歳におけるピーク時の給料は、点数の低かった男性31人よりも多かったそうです。また、「暖かな人間関係」を築けている男性は、そうでない男性に比べ専門的分野で成功を収めた人が約3倍もいたとのこと。
 この時、母親との関係の暖かさは成年期に長期にわたって重要となることもわかりました。調査から明らかになったことの1つは、幼年期に母親と暖かな関係が築けていた男性は、そうでない男性よりも8万7000ドル(約890万円)も年収が高いということ。2つ目は、幼年期に母親との関係が乏しかった男性は、老年において痴呆を発症する可能性が高いということ。そして、専門家の人生の後期において、少年期における母親との関係は仕事の効率性に関係するということです。


幼児期に母親に愛情をたっぷりともらった男性は、その後も幸せな人生を送る確率が高くなると言うことです。
これは、発達心理学・児童精神医学の分野でも指摘されてきたこと。

すると気になる、父親との関係は・・・

一方で、幼年期における父親との関係は、成年期の不安や休暇の楽しみ、老年期における人生の満足度とはあまり相互関係がなかったとのこと。

う~ん、そうなんだ。
ちょっと寂しい結果ですね(苦笑)。

児童精神医学者である佐々木正美先生の言葉

「勉強しなくちゃダメだよ」というのは父性性であり、「できなくたっていいよ」というのが母性性です。そして、幼いときに母性性が十分与えられた子どもにしか、父性性は伝わっていかないという順序があります。育児をするときは、母性性と父性性がバランスよくあればよい、と思っている人は間違いであり、順序があることを知るべきです。

生きていくために必要なのは母性、社会生活を送るために必要なのが父性という位置づけでしょうか。

父親は母親のサポート役、という意見もあります。
母親が幸せなら子どもも幸せになれる、その母親の幸せをサポートするのが父親の役割である、と。
また、「結婚相手の女性は神様からの授かり物だと思え」という話を聞いたことがあります。

え?神様からの授かり物は子どもじゃないの?

とその時は思いました。
いえいえ、男性にとって自分の子供を産んでくれる(遺伝子を残してくれる)女性という存在は、それほど大切な存在なのですよ、という民族の知恵として紹介されていました。

ま、しょせん人間は「哺乳類」という動物だと云うこと。
「哺乳類」の子どもは母親のおっぱいを飲んでたくさんの愛情ももらってはじめて自立できることは動物の種類にかかわらず共通しています。
動物界での父親の役割は母子を外敵から守ったり、食べ物を調達してきたり・・・。
人間の社会は産業革命以降激変し価値観も多様化した現代ですが、子どもが健やかに育つために必要な環境はいつの時代も変わらないはず。
「哺乳類」としての基本を忘れずにいたいものです。
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「H7N9」は怖い?怖くない?

2013年05月17日 05時48分32秒 | 小児科診療
数ヶ月前から話題になっている中国でのトリインフルエンザ「H7N9」。
感染者と死亡者が徐々に増えてきましたが、現在までの報道では2009年の新型インフルエンザ(H1N1)の時より差し迫る危機感を感じません。
また、WHOもパンデミック認定をせず、今のところ静観している状況です。

では、何が違うのか?
もっと危機感をもって対応すべきなのか?

という視点で書かれた記事が少なく、判断に迷います。
というところに、わかりやすい記事を見つけました。

鳥インフルエンザA(H7N9)を正しく怖れる
(2013.5.1:アピタル・・・朝日新聞の医療サイト)
 高山義浩 (たかやま・よしひろ)

この中では問題点を3つに整理しています;

① 病原性が高いのではないか? 重症者や死亡者が多発するのではないか?
→ 中国が発表する数字には正確な感染者の数がなく氷山の一角と思われ、重症化率を計算する時の母数が不明確、つまり重症化率はより低いと考えられる。

② 治療法がないのではないか? 既存の抗ウイルス薬が効かないのではないか?
→ タミフルが効くらしい、との情報もありWHOも「通常の治療でOK」との声明を出している。

③ 感染力が強いのではないか? 大流行により医療機関がパンクするのではないか?
→ まだ「ヒト→ ヒト感染力」を獲得していない段階であり心配ない。将来新型化(つまり「ヒト→ ヒト感染力」獲得)した場合は、未知数であり要注意。

 最後に、今までのインフルエンザとSARSをわかりやすい表にまとめています:


 これをみると、今回のインフルエンザよりも特効薬がなく死亡率が高いSARSがいかに怖い感染症であるかがわかりますね。
 SARSの原因はコロナウイルスというありふれた鼻風邪ウイルスが強毒性に変異したものです。
 類似のコロナウイルスが「新型コロナウイルス」として現在また報告されており、こちらも注視する必要があります:

新型コロナウイルス、サウジで医療従事者が感染
(2013年5月16日 読売新聞)
 【ジュネーブ=石黒穣】世界保健機関(WHO)は15日、新型コロナウイルスに関して、サウジアラビアで医療従事者2人の感染が新たに確認されたと発表した。
 共に40歳代の男女で、患者と接触した後に発症した。医療従事者が感染者からウイルスをうつされた初の事例という。
 感染者が確認された国はサウジ、ヨルダン、カタール、英国、フランス、ドイツの計6か国。同日までに感染者は、サウジを中心に40人に達し、このうち死者は20人になった。
 これまでにサウジに渡航歴のある患者とその家族内や、感染者と同じ病室内にいた患者での感染例が確認されている。

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「太もも予防接種」導入後1年を経過して

2013年05月15日 07時35分35秒 | 小児科診療
昨年5月に以下の「太もも予防接種導入記」を書きました。

「太もも予防接種」導入記
 予防接種の世界では「日本の常識は世界の非常識」の数々がまかり通っています。 接種ルートと接種部位もそのひとつ。 世界では「不活化ワクチンは筋肉注射」が標準ですが、日本はなぜ...


あれから1年が経過し、現在当院ではゼロ歳児には太もも接種が標準です。
今実感しているメリットとデメリットを挙げてみます;

よかったこと
・接種可能面積が広いのでためらうことなく同時接種が可能。また、腕へ接種していたときに気になった前回接種部位のしこりを避けることが可能。生後2ヶ月の赤ちゃんの腕に同時接種を繰り返すとしこりでボコボコになる傾向あり(一過性ですが)。
・皮下脂肪が多い場所であり深めに針を刺せる。すると、発赤・腫脹などの局所副反応が軽くなる。
・赤ちゃんは抑えられているときは泣くけれど、終了して抱き上げると泣き止む傾向があり、腕に接種していた当時の「いつまでも泣き止まない」子が減った印象がある。
・お母さんが中心になって抑えてもらうことにより「この子の健康のために接種するのだから私がしっかり抑えなくちゃ」という意識が芽生えやすい。

気になること
・慣れていない、また「予防接種はしてもらうもの」という意識のお母さんは抑え方が甘いのでサポートと啓蒙が必要。
・痩せているお母さんは太ももに挟もうとしてもスカスカで固定不十分になる傾向あり。
・首が据わっていない生後3ヶ月未満の赤ちゃんには抑え方の工夫が必要になる。

・・・総じてプラス効果が勝っていると思います。全国的にはどれだけ普及しているのか(とくに小児科医以外に)、知りたいところですね。

一方、近年「貼るワクチン」の開発も進んでいることが聞こえてきます(↓)。
数十年後、現在行っている注射針を使用した同時接種を「野蛮な医療だった」なんて批判される時代が来るかもしれませんね(苦笑)。

貼ってインフルエンザ予防 阪大などワクチン開発 臨床で効果確認
(2012/11/17 日本経済新聞)
 創薬ベンチャーのコスメディ製薬(京都市、神山文男社長)と大阪大学は、皮膚に貼って使うインフルエンザワクチンを共同開発した。阪大が実施した人への臨床研究で有効性を確認したのは初めてという。貼るだけで済むため注射が要らず、ワクチンも保存しやすくなる。大手製薬会社などと研究を進め、5年後にも実用化を目指す。
 開発したのは直径1センチ程度の丸いパッチ。皮膚に貼り付ける面に微細な突起が230本ついている。突起は根元部分の直径が0.16ミリメートル、先端は0.04ミリメートルで、高さは0.8ミリメートル。貼ると皮膚に刺さり、突起部分に注入してある成分が溶けて吸収される。突起は小さいため、刺さっても痛みはほとんど感じない。
 健康な19人を対象に、3種類のインフルエンザワクチンで実験した。突起に注射と同じ必要量(15マイクログラム)を入れて6時間貼った。3週間後に体内の抗体の量が欧州医薬品庁(EMA)が定める基準を満たしていることを確かめた。
 ワクチンは通常、空気接触などによる酸化を防ぐため、冷温で管理する。突起内にワクチンを密封すれば酸化しにくくなり、常温で保存できる。消費期限も1年以上に延びるという。
 貼るワクチンが実用化すれば、注射技術を持つ医師や看護師がいない場所でも使えるようになる。使用時の痛みがほとんどないため、子どもに接種しやすい。ワクチンを手軽に使えるようになれば途上国などで需要が期待できる。

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抗生物質連用による副作用「低カルニチン血症」

2013年05月03日 07時02分17秒 | 小児科診療
 近年話題になっている病態です。
 フロモックス、メイアクト、トミロン、オラペネムなどの抗生物質連用により低血糖(意識障害・けいれん)を起こすことがあるのです。

■ 「ピボキシル基を有する抗菌薬投与による 小児等の重篤な低カルニチン血症と低血糖について」(PMDA)

 主なところを抜粋しますと、

ピボキシル基を有する抗菌薬は中耳炎などの感染症の治療に汎用さ れていますが、小児等に投与した際に、重篤な低カルニチン血症に伴って低血糖症、 痙攣、脳症等を起こし、後遺症に至る症例も報告されています。
ピボキシル基を有する抗菌薬服用時には、カルニチン排泄が亢進し、低カルニチン血症に至ることがあり、小児(特に乳幼児)では血中カルニチンが少ないため、下記の事項にご留意ください!


・小児(特に乳幼児)への投与においては、血中カルニチンの 低下に伴う低血糖症状(意識レベル低下、痙攣等)に注意し てください。
・長期投与に限らず、投与開始翌日に低カルニチン血症に伴う 低血糖を起こした報告もあります。
・妊婦の服用により出生児に低カルニチン血症が認められた報 告もあります。

<低カルニチン血症、低血糖に至る機序>
 ピボキシル基を有する抗菌薬は、消化管吸収を促進する目的で、活性成分本体に ピバリン酸がエステル結合されています。これらの薬は吸収後、代謝を受けてピバ リン酸と活性本体になります。ピバリン酸はカルニチン抱合を受けピバロイルカル ニチンとなり、尿中へ排泄されます。この結果、血清カルニチンが低下することが 知られています。
 カルニチンは、食物からの摂取のほか、アミノ酸からの生合成により体内に供給 されます。また、ミトコンドリア内での脂肪酸β酸化に必須な因子です。空腹、飢 餓状態では通常、脂肪酸β酸化によって必要なエネルギーを確保し、糖新生を行い ます。しかし、カルニチン欠乏状態だと脂肪酸β酸化ができず、糖新生が行えない ため、低血糖を来たします。


 上述の抗生物質がよく知られた名前ですが、最近普及してきたジェネリック医薬品では同じ薬でも名前が違うので要注意。

<ピボキシル基のある抗生物質一覧>
■ セフカペン ピボキシル塩酸塩水和物:フロモックス、 セフカペンピボキシル塩酸塩
■ セフジトレン ピボキシル:メイアクト、セフジトレンピボキシル
■ セフテラム ピボキシル:トミロン、セトラート、ソマトロン、テラミロン、 テラセフロン
■ テビペネム ピボキシル:オラペネム
■ ピブメシリナム塩酸塩:メリシン
※ これらの医薬品を切り替えて使用しても、ピボキシル基を有する抗菌薬を継続して投与したことになります。なお、長期の漫然とした使用は避けてください。


 心配なのが中耳炎を繰り返して長く耳鼻科へ通院している子どもたち。
 「おくすり手帳」を見ると、上記の抗生物質が長期にわたり入れ替わり立ち替わり処方されている例も希ではありません。
 このような副作用を承知の上で処方されているのか、日々疑問を感じております。

 ただ、長期連用でなくても、投与開始翌日に発症した例も報告されています。
 抗生物質を処方する際は、期待される治療効果と副作用を秤にかけて塾考する必要があります。

 10年前はまだ「かぜ薬=抗生物質」のような社会通念がありました。
 受診される患者さんにも抗生物質を処方してくれないと納得しない方が時々いらっしゃいました。

 いわゆる「かぜ」の原因の90%はウイルスであり、ウイルスには抗生物質は効きません。
 残りの10%の原因が抗生物質が有効な細菌類です。
 ですから、風邪で受診された患者さんで抗生物質が有効なのは10人に1人の割合ということ。
 それを見極めて適正使用する能力が臨床医に求められる時代になりつつあります。
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「風疹で成人男性が脳炎に」

2013年05月02日 06時58分53秒 | 小児科診療
 近年まれに見る大流行中の風疹。
 先日も「先天性風疹症候群(CRS)」を取り上げたところですが、今回は大人でも重症化するというお話です。
 一般的には大人は軽症で済むと考えられていますが、感染症の常として一定の確率で重症化します:

■ 「風疹で成人男性が脳炎に」(2013年3月15日、NHK生活情報ブログ)

 より詳しい情報はこちら:

■ 「風疹髄膜脳炎を発症した成人男性の1例」(IASR Vol. 34 p. 102-103: 2013年4月号)

 上記より抜粋:

 風疹は、微熱、頸部リンパ節腫脹、全身の発疹の三徴を呈するウイルス疾患である。不顕性感染も多く、発症者の多くは軽症例であるが、関節炎、血小板減少性紫斑病、甲状腺炎、脳炎を時に合併する。脳炎を呈するのは、 6,000人に1人の頻度と稀な合併症である。脳炎症状は、皮疹の出現から通常1~8日後に認められる。主要な神経学的所見は、頭痛、失調、片麻痺であり、意識の変容、昏睡、痙攣を呈するのは稀である。80%は後遺症なく回復するとされる。稀な合併症ではあるが、昨年にも1例の成人の脳炎症例が発生した。
 風疹の多くは軽症例であるが、時に脳炎などの重篤な合併症を呈する。現在の流行期においては、風疹患者数の増加に伴い、今後も風疹による重症合併症例の発生が懸念される。このような事実を含めて、妊婦を除く妊娠可能年齢の女性やそのパートナーのみならず一般成人に対しても、注意喚起とワクチン接種の勧奨を行っていく必要がある。国立感染症研究所や当院においても風疹流行に関しての啓発ポスターを作成し、注意を呼びかけている。
 また風疹は、非典型的な症状を呈する例もみられることから、全身の紅斑を認める患者では、風疹を鑑別に挙げ精査を行うとともに、周囲の風疹ワクチン接種や抗体価の確認を含めた適切な感染拡大防止策を検討することが重要である。


 これを読むと、典型的な風疹の経過「3日間の微熱と発疹」とはかなり異なり、症状だけからの診断は困難と思われます。不顕性感染(感染しているが症状はなく、しかし他人にうつす能力はある状態)もあるので後手に回った現在の状況では重症者・被害者の発生を止めることはできません。

 自治体レベルの予防接種費用の補助(↓)が増えてきましたが、国はまだ「注意しましょう、予防接種を受けましょう」と啓発のみで危機感が感じられません。

風疹予防接種助成、29市町村に拡大 神奈川
2013.5.2:産経新聞
 神奈川県は2日、妊娠を予定している女性らを対象とする風疹の予防接種費用の一部助成(大和市と秦野市は全額助成)を行う市町村が1日までに県内33市町村のうち29市町村に拡大したと発表した。
 県によると、残る南足柄市と箱根、湯河原、真鶴の3町も実施する方向で検討しており、全県で助成が行われる見通しという。


 群馬県では、まだまだ少ないですね。

大人の風疹予防接種、一部助成 群馬
2013.4.24:産経新聞
 安中市は23日、「大人の風疹」緊急対策として、市内在住で妊娠を希望する女性と、その夫が市内の医療機関で予防接種を受ける場合、費用の一部を助成すると発表した。対象期間は来年3月末まで。今月1日以降、すでに接種を受けた人も対象で、所定の請求書や領収書などを提出すれば、助成額を振り込むという。
 助成は一回限りで、麻疹風疹の混合ワクチン(MR)5千円、風疹単独ワクチン3千円。予防接種を受ける際、医療機関に設置されている助成券を窓口に提出し、助成額を差し引いた金額を支払う形で助成が受けられる。
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