徒然日記

街の小児科医のつれづれ日記です。

重い熱性けいれんで「てんかん」

2012年07月18日 04時22分11秒 | 小児科診療
 先日、下記のニュースが流れました;

重い熱性けいれんで「てんかん」(7月16日:NHK)

幼いときにインフルエンザなどで重い熱性けいれんになると、脳の一部で神経回路が発達せず、てんかんを発症しやすくなるとする研究結果を、東京大学のグループがネズミを使った実験を基にまとめました。

東京大学薬学系研究科のグループは、てんかんのうち、脳の海馬と呼ばれる部分で神経回路に異常が生じているタイプに着目し、ネズミを使って発症の仕組みを調べました。
神経回路が発達するのは、インフルエンザなどで熱性けいれんになりやすい幼い時期のため、生まれて間もないネズミ16匹に人工的に重い熱性けいれんを起こしたところ、成長後、いずれも脳波に異常が現れ、半数でてんかんの発作を確認しました。
さらに、海馬では、成長とともに移動する神経細胞が特定の神経伝達物質に過剰に反応し、本来の場所に到達できていないことが分かったとしています。
研究グループでは「重い熱性けいれんになると海馬で神経回路が発達せず、てんかんを発症しやすくなる」と結論づけています。
そのうえで、重い熱性けいれんの治療で使う薬の大半に、この神経伝達物質の働きを強める作用があることから、薬の投与でてんかんのリスクが高まるおそれがあると指摘しています。
研究を行った池谷裕二准教授は「熱性けいれんの患者の追跡調査を行い、治療法の見直しを検討することも必要ではないか」と話しています。

“患者の追跡調査必要”
今回の研究について脳神経外科が専門でてんかんに詳しい東北大学の中里信和教授は「てんかんが起きる仕組みを解明しただけでなく、熱性けいれんと治療薬の関連についても分析を進めた点で、画期的と言える。研究の進展によっては、熱性けいれんの治療を見直さなければならない可能性があるので、よりよい治療法の開発に向け、患者の追跡調査や別の薬を使った臨床研究を進める必要がある」と話しています。


 従来、熱性けいれんとてんかんの関係は以下のように云われてきました;

 熱性けいれん発症者の約7%がてんかんに移行すると云われている。次の「てんかん発症に関する要注意因子」があるときは慎重な経過観察を要する。

1. 熱性けいれん発症前の明らかな神経学的異常(脳性マヒ、精神遅滞、小頭症)もしくは発達遅滞
2. 部分発作
3. 発作の持続が15~20分以上
4. 24時間以内の繰り返し
5. 発作後のマヒ
6. 両親、同胞におけるてんかんの家族歴


 7才までにてんかんを発症する確率は、上記の因子が無い場合(熱性けいれん全体の60%が該当)1%。1因子のみ陽性の場合(34%)2%、2~3因子陽性の場合(6%)10%である。
 また、熱性けいれんを繰り返しても10才時の知能発達や行動に遅延は認めないと報告されている。


 つまり、現時点でも重い熱性けいれん(時間が長いなど)はてんかんの発症因子とされているので、今回の動物実験の何が新しいのか、私にはよくわかりません。治療薬が悪化因子になり得ると云うことでしょうか。
 他の新聞では別の視点から報道されていました;

難治性てんかん:原因を解明…東大准教授らのチーム(毎日新聞 2012年07月17日)

 難治性てんかん患者の多くを占める「側頭葉てんかん」の原因を、池谷裕二・東京大准教授(薬理学)らのチームが突き止めた。乳幼児期の風邪やインフルエンザの発熱で起こるけいれん(熱性けいれん)によって、脳内の神経回路の発達が妨げられていた。てんかん予防法につながる成果といい、15日付の米科学誌ネイチャーメディシン電子版に発表した。
 難治性てんかんでは、学習や記憶をつかさどる脳の一部「海馬」の神経細胞が異常を起こしていることが知られているが、原因は謎だった。
 チームは、患者の多くが乳幼児期に、熱性けいれんを経験していることに注目。マウスの神経細胞を可視化した上でけいれんを起こさせ、正常なマウスと比較した。
 その結果、けいれんさせたマウスの神経細胞は正常に発達せず、てんかん患者と同じような神経回路になることが分かった。また、神経細胞を調べると、その活動を抑える効果を持つ神経伝達物質「GABA」に、逆の興奮作用を起こさせるたんぱく質が過剰に存在することが判明。このたんぱく質の働きを薬で抑えると、てんかん発作を防ぐこともできたという。


 NHKの方が不安を煽るイヤな言い方ですね。やめて欲しい。
 熱性けいれんは日本人の子どもの1人/15~20人に発症する珍しくない病気です。10分以内の短い熱性けいれんなら繰り返しても後遺症は残らず、全く心配ないと教科書には記載されています(私も何回か経験したそうですが一応医者をやっていますので)。
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2012年ウィンブルドンはフェデラーが奪還

2012年07月10日 22時29分45秒 | テニス
 フェデラーが吠えた!
 3年ぶりのウィンブルドン制覇
 7回目の賜杯はサンプラスと並ぶ最高記録であり、この優勝後に世界ランキング1位に返り咲くという歴史に残る快挙となりました。

 決勝の相手はイギリスの期待を一身に背負うアンディ・マレー。
 何年もNo.4の地位に甘んじてきたマレーにとって初めてのグランドスラム決勝となりました。イギリス勢の決勝進出は76年ぶりとのこと。もし優勝すれば伝説のフレッド・ペリー以来となります。

 いざ、蓋を開けてみるとスロー・スターターで有名なマレーが最初から目の覚めるようなプレーを披露しました。
 第一セットはブレーク合戦で、どちらに流れが傾くのかわからない拮抗したゲーム展開。フェデラーはショットの切れはあるもののミスが目立ち、気がつくとマレーが奪取していました。
 第二セットはうって変わってサービス・キープ合戦となり、試合が引き締まりました。どちらも譲らず、ワンチャンスをものにしたフェデラーが取り返しました。
 第三セットに入っても実力が伯仲。両者とも自分のプレーの良いところを披露し、観客は大いに盛り上がりました。
 試合の流れを決定づける分岐点が第三セットの第6ゲームでした。マレーのサービス・ゲームを約20分のしのぎ合いの末、フェデラーがついにブレーク。流れが一気にフェデラーに傾いたことを誰もが感じたことと思います。
 ショットの切れが益々冴え、ミスが減ってきたフェデラー、一方で腰痛と足首に故障を抱えるマレーは動きが鈍くなり、ショットのコントロールミスが目立つようになりました。
 そしてそのまま、フェデラーが押し切ったのでした。

 見応えのある素晴らしい試合となりました。
 久しぶりにフェデラーのエレガントなプレーを堪能できて幸せな気分になりました。

 マレーのコーチを往年の名選手イワン・レンドル(52歳)が勤めていたのが印象的でした。彼はボルグ、マッケンローとベッカー、サンプラスの間をつなぐ1980年代に活躍したグランド・ストローカーです。

 今大会を振り返ると、ナダルが2回戦でロソルの神がかり的プレーにより姿を消すという波乱がありました。
 ランキングNo.1のジョコビッチは準決勝でフェデラーに屈しました。この試合を見逃したことに悔いが残ります。

 日本勢では錦織圭くんが初勝利を記録し、3回戦進出を果たした記念すべき大会となりました。現在ランキング18位の彼には物足りない結果かも知れませんが、腹筋を痛めてフレンチ・オープンを欠場し、ギリギリ間にあった大会での活躍は特記すべきものです。他の添田君も伊藤君も現在ランキングが50位程度まで上がってきているのを見て驚きました。歴史上、日本男子がこれほどランキング上位に食い込んだのは初めてではないでしょうか。

 次は8月末の全米オープンですね。

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