先日、下記のニュースが流れました;
■ 重い熱性けいれんで「てんかん」(7月16日:NHK)
幼いときにインフルエンザなどで重い熱性けいれんになると、脳の一部で神経回路が発達せず、てんかんを発症しやすくなるとする研究結果を、東京大学のグループがネズミを使った実験を基にまとめました。
東京大学薬学系研究科のグループは、てんかんのうち、脳の海馬と呼ばれる部分で神経回路に異常が生じているタイプに着目し、ネズミを使って発症の仕組みを調べました。
神経回路が発達するのは、インフルエンザなどで熱性けいれんになりやすい幼い時期のため、生まれて間もないネズミ16匹に人工的に重い熱性けいれんを起こしたところ、成長後、いずれも脳波に異常が現れ、半数でてんかんの発作を確認しました。
さらに、海馬では、成長とともに移動する神経細胞が特定の神経伝達物質に過剰に反応し、本来の場所に到達できていないことが分かったとしています。
研究グループでは「重い熱性けいれんになると海馬で神経回路が発達せず、てんかんを発症しやすくなる」と結論づけています。
そのうえで、重い熱性けいれんの治療で使う薬の大半に、この神経伝達物質の働きを強める作用があることから、薬の投与でてんかんのリスクが高まるおそれがあると指摘しています。
研究を行った池谷裕二准教授は「熱性けいれんの患者の追跡調査を行い、治療法の見直しを検討することも必要ではないか」と話しています。
“患者の追跡調査必要”
今回の研究について脳神経外科が専門でてんかんに詳しい東北大学の中里信和教授は「てんかんが起きる仕組みを解明しただけでなく、熱性けいれんと治療薬の関連についても分析を進めた点で、画期的と言える。研究の進展によっては、熱性けいれんの治療を見直さなければならない可能性があるので、よりよい治療法の開発に向け、患者の追跡調査や別の薬を使った臨床研究を進める必要がある」と話しています。
従来、熱性けいれんとてんかんの関係は以下のように云われてきました;
熱性けいれん発症者の約7%がてんかんに移行すると云われている。次の「てんかん発症に関する要注意因子」があるときは慎重な経過観察を要する。
1. 熱性けいれん発症前の明らかな神経学的異常(脳性マヒ、精神遅滞、小頭症)もしくは発達遅滞
2. 部分発作
3. 発作の持続が15~20分以上
4. 24時間以内の繰り返し
5. 発作後のマヒ
6. 両親、同胞におけるてんかんの家族歴
7才までにてんかんを発症する確率は、上記の因子が無い場合(熱性けいれん全体の60%が該当)1%。1因子のみ陽性の場合(34%)2%、2~3因子陽性の場合(6%)10%である。
また、熱性けいれんを繰り返しても10才時の知能発達や行動に遅延は認めないと報告されている。
つまり、現時点でも重い熱性けいれん(時間が長いなど)はてんかんの発症因子とされているので、今回の動物実験の何が新しいのか、私にはよくわかりません。治療薬が悪化因子になり得ると云うことでしょうか。
他の新聞では別の視点から報道されていました;
■ 難治性てんかん:原因を解明…東大准教授らのチーム(毎日新聞 2012年07月17日)
難治性てんかん患者の多くを占める「側頭葉てんかん」の原因を、池谷裕二・東京大准教授(薬理学)らのチームが突き止めた。乳幼児期の風邪やインフルエンザの発熱で起こるけいれん(熱性けいれん)によって、脳内の神経回路の発達が妨げられていた。てんかん予防法につながる成果といい、15日付の米科学誌ネイチャーメディシン電子版に発表した。
難治性てんかんでは、学習や記憶をつかさどる脳の一部「海馬」の神経細胞が異常を起こしていることが知られているが、原因は謎だった。
チームは、患者の多くが乳幼児期に、熱性けいれんを経験していることに注目。マウスの神経細胞を可視化した上でけいれんを起こさせ、正常なマウスと比較した。
その結果、けいれんさせたマウスの神経細胞は正常に発達せず、てんかん患者と同じような神経回路になることが分かった。また、神経細胞を調べると、その活動を抑える効果を持つ神経伝達物質「GABA」に、逆の興奮作用を起こさせるたんぱく質が過剰に存在することが判明。このたんぱく質の働きを薬で抑えると、てんかん発作を防ぐこともできたという。
NHKの方が不安を煽るイヤな言い方ですね。やめて欲しい。
熱性けいれんは日本人の子どもの1人/15~20人に発症する珍しくない病気です。10分以内の短い熱性けいれんなら繰り返しても後遺症は残らず、全く心配ないと教科書には記載されています(私も何回か経験したそうですが一応医者をやっていますので)。
■ 重い熱性けいれんで「てんかん」(7月16日:NHK)
幼いときにインフルエンザなどで重い熱性けいれんになると、脳の一部で神経回路が発達せず、てんかんを発症しやすくなるとする研究結果を、東京大学のグループがネズミを使った実験を基にまとめました。
東京大学薬学系研究科のグループは、てんかんのうち、脳の海馬と呼ばれる部分で神経回路に異常が生じているタイプに着目し、ネズミを使って発症の仕組みを調べました。
神経回路が発達するのは、インフルエンザなどで熱性けいれんになりやすい幼い時期のため、生まれて間もないネズミ16匹に人工的に重い熱性けいれんを起こしたところ、成長後、いずれも脳波に異常が現れ、半数でてんかんの発作を確認しました。
さらに、海馬では、成長とともに移動する神経細胞が特定の神経伝達物質に過剰に反応し、本来の場所に到達できていないことが分かったとしています。
研究グループでは「重い熱性けいれんになると海馬で神経回路が発達せず、てんかんを発症しやすくなる」と結論づけています。
そのうえで、重い熱性けいれんの治療で使う薬の大半に、この神経伝達物質の働きを強める作用があることから、薬の投与でてんかんのリスクが高まるおそれがあると指摘しています。
研究を行った池谷裕二准教授は「熱性けいれんの患者の追跡調査を行い、治療法の見直しを検討することも必要ではないか」と話しています。
“患者の追跡調査必要”
今回の研究について脳神経外科が専門でてんかんに詳しい東北大学の中里信和教授は「てんかんが起きる仕組みを解明しただけでなく、熱性けいれんと治療薬の関連についても分析を進めた点で、画期的と言える。研究の進展によっては、熱性けいれんの治療を見直さなければならない可能性があるので、よりよい治療法の開発に向け、患者の追跡調査や別の薬を使った臨床研究を進める必要がある」と話しています。
従来、熱性けいれんとてんかんの関係は以下のように云われてきました;
熱性けいれん発症者の約7%がてんかんに移行すると云われている。次の「てんかん発症に関する要注意因子」があるときは慎重な経過観察を要する。
1. 熱性けいれん発症前の明らかな神経学的異常(脳性マヒ、精神遅滞、小頭症)もしくは発達遅滞
2. 部分発作
3. 発作の持続が15~20分以上
4. 24時間以内の繰り返し
5. 発作後のマヒ
6. 両親、同胞におけるてんかんの家族歴
7才までにてんかんを発症する確率は、上記の因子が無い場合(熱性けいれん全体の60%が該当)1%。1因子のみ陽性の場合(34%)2%、2~3因子陽性の場合(6%)10%である。
また、熱性けいれんを繰り返しても10才時の知能発達や行動に遅延は認めないと報告されている。
つまり、現時点でも重い熱性けいれん(時間が長いなど)はてんかんの発症因子とされているので、今回の動物実験の何が新しいのか、私にはよくわかりません。治療薬が悪化因子になり得ると云うことでしょうか。
他の新聞では別の視点から報道されていました;
■ 難治性てんかん:原因を解明…東大准教授らのチーム(毎日新聞 2012年07月17日)
難治性てんかん患者の多くを占める「側頭葉てんかん」の原因を、池谷裕二・東京大准教授(薬理学)らのチームが突き止めた。乳幼児期の風邪やインフルエンザの発熱で起こるけいれん(熱性けいれん)によって、脳内の神経回路の発達が妨げられていた。てんかん予防法につながる成果といい、15日付の米科学誌ネイチャーメディシン電子版に発表した。
難治性てんかんでは、学習や記憶をつかさどる脳の一部「海馬」の神経細胞が異常を起こしていることが知られているが、原因は謎だった。
チームは、患者の多くが乳幼児期に、熱性けいれんを経験していることに注目。マウスの神経細胞を可視化した上でけいれんを起こさせ、正常なマウスと比較した。
その結果、けいれんさせたマウスの神経細胞は正常に発達せず、てんかん患者と同じような神経回路になることが分かった。また、神経細胞を調べると、その活動を抑える効果を持つ神経伝達物質「GABA」に、逆の興奮作用を起こさせるたんぱく質が過剰に存在することが判明。このたんぱく質の働きを薬で抑えると、てんかん発作を防ぐこともできたという。
NHKの方が不安を煽るイヤな言い方ですね。やめて欲しい。
熱性けいれんは日本人の子どもの1人/15~20人に発症する珍しくない病気です。10分以内の短い熱性けいれんなら繰り返しても後遺症は残らず、全く心配ないと教科書には記載されています(私も何回か経験したそうですが一応医者をやっていますので)。