徒然日記

街の小児科医のつれづれ日記です。

新型コロナワクチン接種 → mRNAは核内に入らないし、すぐ分解される

2021年06月30日 07時16分17秒 | 小児科診療
新型コロナワクチンの接種対象者が一般市民に広がるタイミングで、いろいろなデマが飛び交っています。
とくにSNS世代の若者の間でデマが拡散しています。
河野太郎ワクチン担当大臣もその対応としてブログでつぶやくほど。

河野太郎大臣、ブログで「ワクチンデマ」に反論 「実験用のネズミが2年で死亡」「不妊になる」などきっぱり否定2021.6.24

私もこのブログを読みましたが、彼の個人的な意見ではなく、医学専門家の監修を受けた内容で安心しました。

なぜ、医療者と一般市民の間にこれほどの認識の差が出るのか?

その大きな理由は、医療者と一般市民のニュース・ソースの違いです。
医師は客観的な専門家の審査を受けて合格した論文を根拠に求めます。
いわゆる“エビデンス”ですね。
もっともらしい意見でも、それが発言者の私見であれば、半分くらいしか信用しません。

しかし一般市民は、不安を煽りがちなメディアや、友人から聞いたウワサで判断しがちです。
そこには科学的“エビデンス”は存在しません。
不安(+少しの良心)から生まれた妄想が跋扈しています。

あ、もちろん一般市民の中にも医師以上にエビデンスにこだわる方もいらっしゃいます。
ふだんの診療でワクチンについて説明を始めると、
「ああ、その点についてはWHOのHPで読みました」(もちろん英語)
なんて患者さんもいて、一瞬たじろいだ経験もあります。

実は医療関係者の中にもワクチン拒否者がいます。
医師の中では少ないと思われますが、
看護師では思ったより多く、ワクチン拒否率は30%と一般市民と変わりません。

なぜ?

答えは簡単、ニュース・ソースが一般市民と同じだから。
これは医師が行ったアンケート調査で明らかにされています。

前置きが長くなりました。

ワクチンに対する不安、それを元に増殖するデマをなくすためには、
やはり「正しい知識の理解」に勝るものはありません。
その信念の元、ワクチンの成り立ちを説明し、そこからワクチンのデマを検証してみたいと思います。

ワクチンって何?

堅苦しい定義は色々あると思いますが、私の大まかな印象は、
感染症を起こす病原体に対する免疫を、その代用物を使って獲得する医薬品

「その代用物」の内容は、科学・医療技術の進歩と共に種類が増えて複雑化してきました。
私自身、どう整理すべきか迷うほどです。
昔は、
「生ワクチン」と「不活化ワクチン」
ですみましたが、その後不活化ワクチンが多様化し、
「生ワクチン」と「生ワクチン以外」
の方が適当かな、と思うようになりました。

そんなところに以下の記事に出会いました;

ワクチンで「不妊」「流産」デマが流れる理由 〜意外にも日本発オリジナルが多い「抗体療法」

この記事の中で、伊東氏はワクチンを「3タイプ7種類」に分けており、わかりやすいので私なりにアレンジして引用させていただきます。

1.病原体ワクチン:病原体そのものに由来するもの
 ① 生ワクチン
 ② 不活性化ワクチン
2.抗原ワクチン:抗原を人工的に作り出して接種するもの
 ① VIP(Virus-Like-Particle)ワクチン
 ② 組み換えたんぱく質ワクチン
3.遺伝子ワクチン:抗原を作り出す「遺伝子」を人工的に合成して接種するもの
 ① DNAワクチン
 ② mRNAワクチン
 ③ アデノウイルス・ベクターワクチン

この中で、現在日本で使用されている新型コロナワクチンは、

ファイザー社、モデルナ社 → 3-②
アストラゼネカ社 → 3-③

他国で開発、使用されているワクチンは、

シノバックス社、シノファーム社 → 1-②
ロシアのスプートニクV → 3-③

なお、ロシア製のスプートニクVはアストラゼネカ社のワクチンと同じものと考えられています(パクった?)。
さて、各タイプ・種類の解説を追加します。

1.病原体そのものに由来するもの

生ワクチン:病原体そのものをごく少量接種して抗原として認識させるもの。

不活性化ワクチン:ホルマリンなどで活性を奪った「毒性のないウイルス」を投与して抗原として認識させるもの。

2.抗原を人工的に作り出して接種するもの

VIP(Virus-Like-Particle)ワクチン:ウイルスの中身以外の部分、「外殻」の部分だけを昆虫などの細胞を使って大量培養、増殖して製剤、ワクチン接種して抗原として認識させるもの。
 日本国内では大阪大学などで研究が進められています。

組み換えたんぱく質ワクチン:ウイルスの「外殻」の中でも、特徴的な「スパイクたんぱく質」に特化して、やはり昆虫などの細胞を使って大量培養、増殖して製剤、ワクチン接種して抗原として認識させるもの。
 国際的にはノババックス、日本国内では塩野義製薬などが開発に取り組んでいます。

 これらのワクチンは、生ワクチンや不活性化ワクチンのように病原体そのものを利用するもの、あるいはVIPワクチンのように抗原分子を作って注射するもので、直接「抗原」を接種する考え方です。
 これに対して、抗原を注射するのではなく、抗原を作り出す「遺伝子」を注射して、抗原そのものは人間の体内で作らせてしまおう、というのが「第3のタイプ」遺伝子ワクチンにほかなりません。

3.抗原を作り出す「遺伝子」を人工的に合成して接種するもの

 私たちの体を構成するたんぱく質を作り出す情報は、一般に遺伝子、DNAに書き込まれています。
 これと同じように、新型コロナウイルスの外殻に生えた突起「スパイク」を構成するたんぱく質(「Sたんぱく質」と呼ばれます)を作らせるDNAの遺伝暗号を組み立てることができます。
 ただしDNAに書かれた暗号は、そのままではたんぱく質を作ることができません。
 私たちの遺伝子の全体をゲノムと呼びますが、ゲノムの中から、求められるたんぱく質を作るのに必要なだけの一部分、いわばメモに相当する「施工図面」を作り、それに従って部品であるアミノ酸を繋げていきます。
 このメモをメッセンジャーRNA(mRNA)と呼びます。

 一般に生物の遺伝情報はDNAに書き込まれていますが、新型コロナウイルスの場合は最初から外殻のなかに「施工図面」mRNAが格納されています。
 私たちの細胞がウイルスに感染すると、いきなりmRNAが送り込まれてきて、細胞本来の働きができなくなってしまいます。
 このmRNAの状態で外殻のSたんぱく質を直接、ヒトの体内で作らせてしまおう、というのがmRNAワクチンの戦略です。

DNAワクチン:Sたんぱく質だけを作り出すDNAをワクチンとして直接人体に接種し、ヒトの体内でSたんぱく質を合成、抗原として認識させるもの。
 米国ハーバード大学のグループがアカゲザルで有効性を確認、米イノビア社や日本の大阪大学+アンジェス社のグループがDNAワクチンを開発しています。

mRNAワクチン:ウイルスのSたんぱく質(あるいはその一部だけ)を作り出すmRNAを油の球の中に封じ込めてワクチンとして直接人体に接種し、ヒトの体内でSたんぱく質を合成、抗原として認識させるもの。
 米国モデルナ社はSたんぱく質を作り出すmRNAを油の球に封じ込めたワクチンを開発、米国ファイザー社とドイツのビオンテック社のグループも、Sたんぱく質全体を複製したmRNAワクチンを開発・販売しています。

アデノウイルス・ベクターワクチン:ウイルスのSたんぱく質を作り出すmRNAを、人間に容易に感染して結膜炎などを引き起こす「アデノウイルス」の遺伝子の一部に置き換えて製剤、接種することで、体内でSたんぱく質を合成、抗原として認識させるもの。
 英国の名門オックスフォード大学とアストラゼネカ社が共同で開発したのは、チンパンジーに感染するアデノウイルスを用い、これを運び屋=「ベクター」としてDNAの一部を新型コロナSたんぱく質の遺伝情報に置き換え、ヒトの体内にDNAを送り込もうと考えて作られたワクチンでした。


ここまで読んで、ようやく mRNAワクチンの立ち位置がわかります。
では、この mRNA がヒトの体内に入ったときの挙動を説明します。

<参考>
□ COVID-19ワクチンアップデート(2021.5月版)黒田浩一Dr.

mRNAワクチンの作用機序
・SARS-CoV-2のウイルス粒子表面にあるスパイク蛋白の遺伝情報を持った mRNA(脂質ナノ粒子によりカプセル化されているため、RNA分解酵素で破壊されない)を筋肉内注射し、筋肉組織に分布する樹状細胞の中に入り込み、そのリボソームの中で mRNA をもとにスパイク蛋白が作られ、その蛋白が歳病表面に表出してリンパ球に提示され、それを認識した免疫システムがスパイク蛋白に対する抗体を作る。
 つまり、SARS-CoV-2のスパイク蛋白の遺伝情報を持った mRNA を投与して、ウイルスのスパイク蛋白をヒト自身の細胞に作らせる、というもの。作られたスパイク蛋白は病原体そのものではないので、ヒトに感染することはない。

mRNA ワクチンは安全なのか?
・mRNA はヒトに細胞に侵入しても核には入らないため、ゲノムに組み込まれることはなく、ヒトの遺伝情報に変化を与えることはない。
・mRNA はヒト細胞内のリボソーム内で翻訳された直後に分解され、取り除かれるため、長期間存在することはない。
・mRNA ワクチンにより体内で作られたスパイク蛋白は、数週間で消える(体が作る他の蛋白質とおなじ期間)。


以上、突然現れた mRNA ワクチンですが、正しく知ることにより、現在飛び交っている「mRNA がヒトの遺伝情報に変化を与えて次世代へ受け継がれる」のようなデマが否定されることがわかります。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

新型コロナワクチンの副反応について考える 〜 PEG(ポリエチレングリコール)アレルギーについて

2021年06月27日 17時13分02秒 | 小児科診療
新型コロナワクチン接種が医療従事者 → 高齢者 → 一般市民にまで広がってきました。
そこで、接種に不安を抱えている人へ向けて、注意事項をまとめてみましたので、参考にしてください。

新型コロナワクチン(ファイザー社)の接種禁忌(やってはいけない!)と接種要注意者(注意しながらやってよし!)は以下の通りです;

禁忌
① 明らかに発熱している人(37.5℃以上)
② 重い急性疾患にかかっている人
③ 本ワクチンの成分に対し重度過敏の既往
④ 接種を受けるのに不適当な状態の人

要注意
① 抗凝固療法、凝固障害、血小板減少
② 本人か近親者に免疫不全
③ 心・腎・肝・血液疾患、発育障害
④ 過去の予防接種で2日以内に発熱、発疹が出た
⑤ けいれん歴
⑥ 本ワクチン成分にアレルギーの人

禁忌-①と②はわかりやすいですね(説明は省きます)。

禁忌-③はどうでしょう。
「本ワクチンの成分」とありますが、具体的な成分名は書いてありません。今までの情報では、新型コロナウイルスの mRNA とそれを包んでいるPEG(ポリエチレングリコール)がそれにあたります。
「重度過敏」とは現在は市民権を得つつある「アナフィラキシー」を指しています。

PEGについては後述します。

禁忌-④ は様々なことが考えられますが、キリがないのでここではスルーします。

要注意-① では、接種部位から出血が止まりにくかったり、筋肉内に内出血(血腫)が起きるリスクがあります。
これらに相当する人は、基本的に主治医の許可をもらっておくのが安全・安心ですね。
実際には、接種部位を2分間押さえておくことで対応します。
くれぐれも「もまない」でください。
もむとかえって接種部位の腫れ(局所反応)が強くなる可能性があるからです。

要注意-② の免疫不全状態では、ワクチン接種が危険なのではありません。
ワクチンの効果が得られない、あるいは不十分になる可能性があり、それを知っておく必要があるということ。
なので「禁忌」(やってはいけない)ではなく「要注意」(注意しながらやってよし!)となります。

要注意-③ の持病があるかどうかですが、その病気により接種のリスクと効果がバラバラです。
病状が安定していれば接種可能ですが、基本的には主治医に確認しておくことがより安全・安心です。

なぜって、問診を担当する医師は内科専門医とは限らないからです。
ふだん心臓・腎臓・肝臓・血液の病気を診療していない医師(たとえば、皮膚科、耳鼻科、放射線科、麻酔科・・・)たちも集団接種にかり出されて問診や接種を担当しています。
それらの医師に「私は持病があるけど新型コロナワクチンを接種しても大丈夫か? 主治医には聞いていないけど」と言われても判断できかねるのです。しかし接種後問題が起こったときの責任は問診医に覆い被さりますから、自信がなければ「今回は接種を延期しましょう」と判断せざるを得ない場合も出てくることでしょう。

ただ、主治医への問い合わせが殺到して負担が大きくなりクレームが出たようで、現在は「主治医への確認は必ずしも必要ではない」とされ、予診表から「かかりつけ医の許可」項目が削除されました。

小児科医である私は、日々たくさん予防接種を行っていますが、当院の他に通院先がある場合は、そこの主治医から接種許可を必ずいただいています(ない場合は接種しません)。

これは、今までにトラブルを何回か経験して、結果的にそうなっています。
例えば、内服していた薬がステロイド剤で(患者さんには説明なし)、ワクチン効果が得られない可能性があったり・・・。

ですから今回の「主治医への確認は必ずしも必要ではない」という指示は、個人的には受け入れられません。
ただ、今回は非常事態なので、しかたなく行政の指示の範囲で行う予定です。

要注意-④ については、予防接種で一過性の発熱がでることは珍しくありません。
現在、乳児に肺炎球菌ワクチン(プレベナー13®)が定期接種となっていますが、このワクチンは接種当日夜か翌日に37.5℃以上の熱が30-40%出ますので、経験のあるご家族も多いと思います。発熱した翌日には下がります。

「接種後の発疹」はじんま疹などを指していると思われますが、これも一過性で重度でなければ、注意しながら同じワクチンを接種してもよいとされています。
新型コロナワクチンは一定の比率で接種後にじんま疹が出ることが報告されています。その場合は抗ヒスタミン薬(=抗アレルギー薬)内服で対応可能です。
この項目に当てはまる方は、接種後会場待機時間が15分ではなく30分に延長されます。

なお、集団接種会場では薬を無料で渡されるところが多いと思われますが、個別接種では「診療扱い」になりますので自己負担金が発生します。ご了承ください。

要注意-⑤ のけいれん歴について。
小児期以降のエピソードがあっても症状が安定していれば(最近けいれん発作がなければ)接種可能です。
乳幼児期のいわゆる「熱性けいれん」も問題にならないと思います。

ただ、投薬を受けいているときはその内容確認が必要です。
以前、投薬を受けている発達障害児にワクチンを接種したら、不整脈による突然死例が問題になったことがあります。これは内服薬の禁忌事項に気づかなかった(患者側が申告しなかった)ため発生しました。

なので、今回「内服薬の内容を必ずしも確認する必要はない」という指令も、個人的には受け入れられません。

今回の新型コロナワクチン接種に関しては、小児科医が日常行っている予防接種と比較して以下のことが省略されています;

・診察(聴診、口内観察)
・持病のある場合、主治医からの接種許可
・内服薬がある場合、その内容確認

危ない橋を渡っているな〜と感じます。
逆に、この方式で問題なく完遂できれば、今後の小児科医院での予防接種方式も簡略化される可能性がありますね。

要注意-⑥ でまた出てきた「ワクチン成分」。禁忌-③ の軽症バージョンです。
ではここで、PEGについて説明してみます。


<PEG(ポリエチレングリコール)について>

mRNA型の新型コロナワクチン(ファイザー社、モデルナ社)が登場した頃から、
PEG(ポリエチレングリコール)アレルギーに注意!
という言葉が医療者の間で飛び交っていました。

副反応としてのアレルギー症状(じんま疹など)が、医療者かつ女性に多いことが報告され、
ワクチン成分の mRNA を包んでいるPEGが疑われたのです。

このPEG、聞き慣れない単語ですが、実はいろいろな日常品に含まれている化学物質です。

例えば、化粧品、歯磨き粉。
そして医薬品にも含まれています。
また、PEGの類似物質で、PEGに交差反応(※)性のある「ポリソルベート」も医薬品に使われており、こちらも要注意です。
※ 「交差反応」とは似た物質なので人間の免疫システムが反応してしまうことを言います。

例)【PEG】
・化粧品、歯磨き粉
・大腸内視鏡検査時に使う下剤(ニフレック®、モビプレップ®)

例)【ポリソルベート】
・ワクチン類;小児用肺炎球菌ワクチン(プレベナー®)、インフルエンザHAワクチン、HPVワクチン(ガーダシル®)、日本脳炎ワクチン(エンセバック®)、ロタウイルスワクチン(ロタテック®)、不活化ポリオワクチン(イモバックス®)など

なので、これらに触れる機会の多い女性&医療関係者にアレルギー症状が多いと説明されています。

アレルギー症状と言ってもピンきりです。
上記に対してじんま疹などの皮膚症状が出る人は、
「接種要注意者」(注意して接種しましょう)となります。
「接種禁忌」(接種してはいけない!)ではありません。
接種できないのはアレルギー症状の最重症型「アナフィラキシー」の経験がある人のみです。

アナフィラキシーという単語はTVで繰り返し使われるため、一般の人にも浸透してきました。
皮膚症状だけではなく、
・消化器症状(嘔吐・腹痛・下痢)
・呼吸器症状(咳・喘鳴・呼吸困難)
・全身症状(顔色不良・血圧低下・意識消失)
など複数の症状が同時に起こる状態を言います。

問診票に「アレルギーの病気はありますか?」という質問項目がありますが、
アレルギー体質の人がすべて危険というわけではありません。
喘息がある、花粉症がある、だけでは接種禁忌にはなりません。
ワクチン液成分にアレルギー反応がある人だけ、問題になります。

でもPEGそのものが初耳の方が多いですから、そのアレルギーなんていわれてもわかりませんよね。
実は医療者もほぼ初耳なのです。

私はアレルギー専門医ですが、「あなたはPEGアレルギーです」と診断した経験がありません。
なぜって、アレルギー検査に「PEG」の項目がありませんので。

実はPEGそのものが薬になっています。
その名は「モビコール®」。
数年前に登場し、現在子どもの便秘薬のベストセラーとなっています(ただし2歳以上)。
数年前に登場、といっても欧米では10年以上前から使われていましたので「新薬」ではありません。

私も多くの小児便秘患者さんにモビコールを処方していますが、
今のところアレルギー症状に出会ったことがありません。

ちなみに、新型コロナワクチンは、卵、ゼラチン、チメロサール、ラテックスは使用していませんので、
これらにアレルギー反応が出る人も安全に接種できます。

さて、実際に接種したデータによると、
アレルギー症状が出た人の70-80%が、アレルギーの項目に「YES」と答えています。

なので実際問題として、接種日に体調がよくても、
 喘息
 薬物アレルギー(ワクチンを含む)
 食物アレルギー
 化粧品アレルギー
 動物アレルギー
 金属アレルギー
のある人は、副反応出現の可能性を考えて15分ではなく30分、接種会場に待機していただく方が安全です。


<参考>

□ なぜ日本国内では新型コロナmRNAワクチン接種後のアナフィラキシーが多いのか?
□ 新型コロナワクチンでアレルギーを起こす物質といわれている『ポリエチレングリコール』ってなんですか?
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

子どもへの新型コロナワクチン

2021年06月20日 06時18分38秒 | 小児科診療
治療薬の開発が進まない現在、
新型コロナワクチン接種が、現在の自粛生活にピリオドを打つ唯一の方法です。
まあ、それで終わらないという意見もありますが。

日本でも医療従事者、高齢者から接種がはじまり、
先日、基礎疾患のない一般市民も対象になりました。

そしてファイザー社のワクチンが従来の16歳以上からハードルを下げて、
「12歳以上」に適用されることになりました。

情報では、若年者ほど副反応が強い、若年者ほど罹っても症状が軽い、とされています。
すると「子どもにコロナワクチンは必要なんだろうか?」という疑問が湧いてきます。

どう考えるべきなのでしょう。

接種した場合のメリット、デメリットと
接種しない場合のメリット、デメリットを、
比較検討する必要があります。

そんなタイミングで、小児に対する新型コロナワクチンに関する記事が目にとまりました。


 新型コロナワクチン、12~15歳に100%の有効性/ファイザー・BioNTech
米国・Pfizerとドイツ・BioNTechは3月31日、両社の新型コロナウイルスワクチン(BNT162b2、商品名:コミナティ筋注)の12~15歳の青年を対象とした第III相試験で、以前報告された16~25歳を対象とした試験結果を超え、100%の有効性と強力な抗体反応を示したという速報をプレスリリースで発表した。


有効性には全く問題がなく、副反応の想定内とのこと。
この記事には「生後6ヶ月〜12歳の小児への治験も始まっている」ことが記されています。


子供への新型コロナワクチン、接種を進めるべき9つの理由
1)子供の感染は多くの場合で無症候か軽症だが、まれに小児多系統炎症性症候群(MIS-C)や肺疾患のかたちで重症化する。
2)子供が感染してウイルスを排泄することで、親や教師、他の子供に感染する可能性がある。
3)子供の感染は無症候のことが多く、他の予防策では十分ではない。
4)変異株によって長期的に免疫が低下したとしても、感染や再接種への対応を早めることができる。
5)高い接種率と集団免疫獲得のためには、子供へのワクチン接種が必要である。
6)英国で発生したような変異株は、子供への感染力がより強い。
7)子供の予防接種プログラムは、国際的に感染症減少に大きな成果を上げた実績がある。
8)子供の予防接種にあたって、十分に整備された国際的なインフラがある。
9)教師への予防接種に続いて子供への予防接種を行うことで、学校の開校を加速させ、子供たちの活動を正常化させることができる。


著者のPlotkin氏はワクチン界のレジェンドです。
さて、上記9つの文章を分けてみると・・・
(接種のメリット/非接種のデメリット)1、2、3、5、6、7、8、9
(接種のデメリット/非接種のメリット)

・・・あれれ、接種のデメリット/非接種のメリットの項目がありません。
ひたすら接種のメリットを唱えても、不安を抱える一般市民に対して説得力がないような気がします。

先日、日本小児科学会と日本小児科医会から提言が出されました。


新型コロナワクチン~子どもならびに子どもに接する成人への接種に対する考え方~

1)重篤な基礎疾患のある子どもへの接種
 国外では、神経疾患、慢性呼吸器疾患および免疫不全症を有する子どもの新型コロナウイルス感染例において、COVID-19の重症化が報告されています。国内においても接種対象年齢となる基礎疾患のある子どもの重症化が危惧されますので、ワクチン接種がそれを防ぐことが期待されます。
 しかし、高齢者と比べて思春期の子ども達、若年成人では接種部位の疼痛出現頻度は約90%と高く、接種後、特に2回目接種後に発熱、全身倦怠感、頭痛等の全身反応が起こる頻度も高いことが示されています(例:37.5℃以上の発熱は20代で約50%、50代で約30%、70代で約10%)。以上のことから、ワクチン接種を検討する際には本人および養育者に十分な接種前の説明と接種後の健康観察が必要であると考えます。
 基礎疾患を有する子どもへのワクチン接種については、本人の健康状況をよく把握している主治医と養育者との間で、接種後の体調管理等を事前に相談することが望ましいと考えます。

2)健康な子どもへの接種
 12歳以上の健康な子どもへのワクチン接種は意義があると考えています。COVID-19予防対策の影響で子どもたちの生活は様々な制限を受け、子どもたちの心身の健康に大きな影響を与え続けています。小児COVID-19患者の多くは軽症ですが、まれながら重症化することがありますし、同居する高齢者の方がいる場合には感染を広げる可能性もあります。なお、子どもがワクチン接種をした場合、その後のマスク着用などの感染予防策の解除については、今後の流行状況などを踏まえて慎重に考える必要があります。
 子どもへのワクチン接種は、先行する成人への接種状況を踏まえて慎重に実施されることが望ましく、また、接種にあたってはメリットとデメリットを本人と養育者が十分に理解していること、接種前・中・後におけるきめ細かな対応を行うことが前提であり、できれば個別接種が望ましいと考えます。やむを得ず集団接種を実施する際には、本人と養育者に対する個別の説明をしっかり行う配慮が望まれます。ワクチン接種を希望しない子どもと養育者に対しては、特別扱いされないような十分な配慮が必要と考えます。
 小児COVID-19が比較的軽症である一方で、国外での小児を対象とした接種経験等では、ワクチン接種後の発熱や接種部位の疼痛等の副反応出現頻度が比較的高いことが報告されています。十分な接種前の説明がないまま副反応が発生することがないようにすることが重要です。
 最近イスラエルや米国などから、若年男性におけるワクチン接種後の心筋炎の発症が報告されています。ワクチンとの因果関係やその臨床像・重症度についても、まだ十分な情報は得られていませんが、学会として今後も情報を収集し発出していきます。当委員会では、小児のCOVID-19に関する論文を抄訳して学会ホームページ上で発表しています。今後も新たな情報をもとに更新していきます。

以上より、集団接種と個別接種を併用して運営していくべし、と結論づけています。
なかなか調整が難しそうですね。

同様に分類してみると・・・

(接種のメリット/非接種のデメリット)
・神経疾患、慢性呼吸器疾患および免疫不全症を有する子どもの新型コロナウイルス感染例において、COVID-19の重症化が報告されています。
COVID-19予防対策の影響で子どもたちの生活は様々な制限を受け、子どもたちの心身の健康に大きな影響を与え続けています。
小児COVID-19患者の多くは軽症ですが、まれながら重症化することがありますし、同居する高齢者の方がいる場合には感染を広げる可能性もあります。
ワクチン接種を希望しない子どもと養育者に対しては、特別扱いされないような十分な配慮が必要と考えます。

(接種のデメリット/非接種のメリット)
・高齢者と比べて思春期の子ども達、若年成人では接種部位の疼痛出現頻度は約90%と高く、接種後、特に2回目接種後に発熱、全身倦怠感、頭痛等の全身反応が起こる頻度も高いことが示されています。
小児COVID-19が比較的軽症である一方で、国外での小児を対象とした接種経験等では、ワクチン接種後の発熱や接種部位の疼痛等の副反応出現頻度が比較的高いことが報告されています。
最近イスラエルや米国などから、若年男性におけるワクチン接種後の心筋炎の発症が報告されています。

以上を読んできて、皆さんはどう感じましたか?
私なりの感想をまとめてみます。

ワクチン推奨(接種のメリット/非接種のデメリット)
・ワクチンの効果は高く必要十分である。
・小児は新型コロナ感染対策として行動制限されているが、ワクチンはそれを緩和できる。

ワクチン躊躇(接種のデメリット/非接種のメリット)
・小児は新型コロナに感染しても軽症で済むことがほとんど(希に重症化あり)。
・新型コロナワクチンの副反応は若年者ほど強い傾向がある。

つまり現時点での情報では、個人の感染対策より社会全体の感染対策のために接種推奨、という印象です。

具体的に言うと、
「現在の“自粛生活打破”“生活制限解除”のためにワクチンを打ちましょう」
でしょうか。

身近な例で言い換えると、
「自粛の影響で仕事がなくなる職業(飲食店、観光業など)を助けるためにワクチンを打ちましょう」
としてもよいかもしれません。

ただ、この提言ではあまり触れられていませんが、
「新型コロナに感染すると、周囲に広げる可能性がある」
「感染した時点では被害者だけど、同時に加害者になり得る!」
事実をより重視すべきだと思います。
この点に関しては、後ほどまた扱う予定です。

日本小児科医会からは「なぜやる必要があるのか」よりも「やるのは当たり前、どうやればスムースに実施できるのか」について言及しています。


 12 歳以上の小児への新型コロナウイルスワクチン接種についての提言
「12 歳以上の小児を対象とした新型コロナウイルスワクチン接種にあたっては、 保護者や本人への丁寧な対応が可能な個別接種を基本とし、集団接種を行う場合は、 リスクをできる限り軽減するための対策と対応を十分に整備したうえで実施すること。」


ここでいう「丁寧な対応」とは具体的に何を指すのでしょう。
本文を読むと、
「接種の必要性、副反応等の本人・保護者への十分な説明と同意確認、問診・接種・ 経過観察」がそれに当たるようです。
この「丁寧な対応」が集団接種では困難、個別接種では可能、という論調ですね。
しかし開業医院における個別接種では、
・学校生徒が学校を抜け出す必要がある
・医院では通常業務があるので短期間に多人数の接種が難しい
という問題が生じ、それを解決するために「土日の週末を利用して接種すべし」とあります。
小児科医院は平日、通常業務に加えて新型コロナワクチンをせっせと接種し、
そして週末も医師もスタッフも休日を返上して働けと・・・
働き方改革の思想が吹っ飛んでますねえ。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする