院内待合室に配布しているプリントの内容を転載します。ポイントは以下の2点です;
・接種料金値上げ
・1回接種法導入
■ インフルエンザワクチンを毎年接種する必要があるのはなぜ?
インフルエンザウイルスは生き延びるために絶えず変異を繰り返しています。その変異のため、昨年ワクチンを接種してできた免疫が今年は効かない可能性があります。
また、このワクチンの効果は長持ちせず(約半年)、翌年まで持ちません。
以上の理由で、効果を期待するためには毎年接種する必要があるのです。
■ 効果が低いといわれているけど・・・
子どもは毎年2回接種しても、有効率はほかのワクチンに比べると確かに低いです。
各種ワクチンの有効率はふつう90%以上ですが、
インフルエンザワクチンの6歳未満児に対する発症防止効果は20~30%しかありません(日本小児科学会の見解)。
その理由は、インフルエンザ感染は喉の粘膜が入り口ですが、注射タイプのワクチンでは血液中の免疫抗体はたくさんできるものの、喉の粘膜の免疫ができにくいためです。
ほかに、6歳未満における発症予防効果は42~69%、入院防止効果は71~72%という報告もあります(福島県における6年間の検討)。この数字は「
発症を抑える能力は弱いけれど、重症化を約7割減らしてくれるワクチン」とも読めます。
慶応大学がまとめた最新のデータでも同様の傾向です(発症防止効果は下のグラフ参照、
重症化予防は全年齢で約70%:2015.8.30の毎日新聞より)。
現在、欧米では粘膜免疫をつける能力に優れた経鼻生ワクチンが開発され導入されています(日本でも準備中)。日本ではより安全な経鼻不活化ワクチンを開発中です。
■ 学童集団接種が再評価されています。
日本では1960年代から学童集団接種を行ってきましたが、効果が疑問視され1990年代に終了しました。しかし近年、過去の
学童集団接種が「学級閉鎖」「小児のインフルエンザ性脳症」「高齢者死亡」を減少させていたことが統計学的分析で明らかにされ、世界的に再評価されています。みんなでワクチンを接種すると、接種できない免疫弱者(乳児、慢性疾患患者など)を守ることにつながるのです。
Q. 毎年2回接種が必要? →
A. 3歳以上は1回でもOK
■ 日本・WHO・米国のインフルエンザワクチンのスケジュールを比較してみましょう。
下表のように、日本では小学生までは2回接種ですが、WHO/米国方式では9歳以上は1回接種、それ以下の年齢でも過去の接種をカウントして回数を減らしています。
近年の日本の検討でも「A型では抗体保有率70%以上が得られる接種回数は1~2歳では2回必要、3~12歳は1回で十分」と報告されました(2015年、外来小児科学会)。
つまり、基礎免疫ができていれば
3歳以降では1回接種でも2回接種でも効果は同じということです。
■ 2015年、インフルエンザワクチンの中身が変わり、価格も上がります。
現在日本で認可されているのは皮下注射するタイプの不活化ワクチンです。その中には流行に合わせた3種類のワクチン株(H1N1/H3N2/B)が入っており「3価ワクチン」と呼ばれてきました。
さて、2015-16シーズンのワクチンはB型が1種類から2種類に増え「4価ワクチン」に変わります。それに伴い、ワクチン価格が約1.5倍に上がりましたので、接種料金も上げざるを得ません。何卒、ご了承ください。
★ 今シーズンの当院の方針 ★
日本方式を「基本」とします。
このプリントを読んで「1回接種」を希望する方は、WHO法に準じたスケジュールへ変更できます。
~予約開始は9月下旬です~