徒然日記

街の小児科医のつれづれ日記です。

“痛くない”インフルエンザワクチンの時代到来?

2015年04月14日 07時34分31秒 | 小児科診療
 インフルエンザワクチンの新時代が到来です。
 インフルエンザワクチンを「接種方法」「生か不活化か」から分類すると、

① 皮下注射型不活化ワクチン ・・・ 現在日本で使用中(外国では筋肉注射が一般的)
② 経鼻接種型生ワクチン   ・・・ ただし日本では未認可
③ 経鼻接種型不活化ワクチン ・・・ 日本で開発中
④ 皮内接種型不活化ワクチン 

 の4種類。
 今回、④の「皮内接種型不活化ワクチン」が認可されたとのニュースが流れました。


(TERMOのHPより)


■ ジャパンワクチン、皮内投与型季節性インフルワクチンを承認申請
(2015/4/11:日経バイオテク)
 第一三共とテルモは2015年4月10日、ジャパンワクチンが皮内投与型季節性インフルエンザワクチンの製造販売承認申請を行ったと発表した。
 同ワクチンは、鶏卵培養した季節性HAスプリットワクチンを、確実に皮内投与できる皮内投与デバイスを用いて投与するもの。皮膚上層部には樹状細胞が多いため、効率的に抗原が送達され、従来の皮下投与型季節性インフルエンザワクチンに比べて、高い有効性が得られると考えられる。
 季節性インフルエンザは、2015-16年シーズンから、現状の3価ワクチンから、2種類のB型を加えた4価ワクチンへスイッチされる予定。今回申請された皮内投与型季節性インフルエンザワクチンも、4価ワクチンとして承認申請されたとみられる。
 なお、皮内投与型季節性インフルエンザワクチンは、第一三共とテルモが2012年2月に締結した、皮内投与型感染症予防ワクチンの実用化に関する基本合意に基づいて、ジャパンワクチン、北里第一三共ワクチンを含めた4社が共同で開発した。


 皮内投与型という言葉からはイメージしにくいのですが、要は“痛くない”ワクチン(らしい)。
 イメージ図ではBCGに似てますね。
 子どもにとっては朗報です(大人も?)。

 記事の中で「3価ワクチン」「4価ワクチン」という言葉が出てきます。
 これは、同じインフルエンザの中でも、さらに分類されるサブタイプのことを指しています。
 A型には、「A香港型」「2009年型」の2種類。
 あまり知られていませんが、実はB型にも2種類の流行型があり、米国の経鼻接種用生ワクチンは既にA型2種類+B型2種類の4種類が入った「4価ワクチン」が導入済みです。

 そういえば、今シーズンはB型の流行が不発でした。
 来年は感受性者が多くなるので、中規模以上の流行が予測されます。
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今シーズンの花粉症は1週間早めに終了

2015年04月12日 19時32分40秒 | 小児科診療
 スギ花粉症患者に朗報です。
 weathernews によると、2015年シーズンの春の花粉症は昨年より1週間ほど早く終了するという予想が発表されました。

花粉シーズン中間発表:関東



 このグラフを見ると、もうスギ花粉は終了しつつあり、ヒノキ花粉が4月いっぱい飛散する感じですね。
 記事の中の表を見ると、花粉飛散数は昨年と比較すると群馬県は3倍!
 やっぱり多かった。
 ビックリしたのが、「花粉症が辛い人の割合(%)」で、群馬県では47.2%と、約半分の人が花粉症に悩む時代になってしまったこと。

 今シーズンの私自身の治療は、眠くならないタイプの抗アレルギー薬を毎日服用し、点鼻も毎日行い、それでも症状が出てしまう日には漢方薬を追加内服、随時点眼薬使用、というパターン…これで何とか乗り切れそう。
 昨年秋に解禁となった「舌下免疫療法」をはじめたスタッフ2人は、例年鼻閉になやまされウサギの目になってしまうのですが、今年は予想より軽く済んでいると言ってますね。
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2014/15年シーズンのインフルエンザワクチン、有効率は23% 米CDC

2015年04月08日 21時47分19秒 | 小児科診療
 しばらく前のニュースですが、インフルエンザワクチンの有効率の低さに愕然としました。

■ 今季インフルエンザワクチン、有効率は23% 米CDC
(AFPBB News:2015年01月16日)
【1月16日 AFP】米国の今冬のインフルエンザワクチンについて、全年齢層での医師の受診を防ぐ有効率が23%前後となっていることが、15日に発表された米疾病対策センター(Centers for Disease Control and Prevention、CDC)の早期評価によって明らかになった。
 過去10年間のインフルエンザワクチンの有効率は10%~60%の範囲なので、2014~2015年にかけて使われたワクチンが史上最悪だったわけではない。だが今回の評価結果を憂慮したCDCは、インフルエンザに罹患した患者への抗ウイルス薬の使用を増やすよう医師らに呼び掛けている。
ワクチン効果が十分でなかった原因は、現在の感染流行を引き起こしているインフルエンザA型(H3N2)ウイルスの多数の変異型が、今季のワクチンに組み込まれていなかったためとされている。
 一般に、インフルエンザワクチンの有効性は、65歳未満の健康な人々で最も高い。CDCによると、今季のワクチンは、生後6か月から17歳の子どもで有効率が26%で最も高かった。18~49歳の年齢層のワクチン有効率は12%、50歳以上では14%だったという。


 あ、もっと最近のニュースがありました。
 日本は慎重にウイルス株を選択したけど、やはり有効率は低かったという内容です。
 この記事の中で、日本人のインフルエンザ接種者は5000万人、国民の40%に上ることを知りました。私の印象より高いですね。

■ ワクチン効果低かった? 今冬のインフルエンザ
(2015.4.2:神戸新聞)
 ワクチンを打ったのにインフルエンザにかかってしまった。今冬はこうぼやいた人が例年より多かったかもしれない。世界保健機関(WHO)の予測と違うウイルスが北半球の流行で主流となったためだ。通常は平均50~60%とされるワクチンの効果が、米国では19%、英国では3%などと報告された。日本は欧米と違うウイルスでワクチンを製造したが、国立感染症研究所の分析では効果が低い可能性が示された。専門家はそれでも「重症化予防にワクチンは重要」と強調する。
 国内のインフルエンザ流行は昨年11月下旬に始まり、今年3月8日までに全国で推定約1395万人が医療機関を受診した。この時期までの累計受診者数は過去4シーズンで最も多かった。
 日本のほか北米、欧州などで流行の中心になったウイルスはA香港(H3N2)型。高齢者が重症化しやすいとされる。

▼遺伝子が変化
 WHOは日本を含む各国の専門家を集めて昨年2月に開いた会議で、今冬のワクチンに加える推奨ウイルス株を選定、欧米はそれに基づきワクチンを製造した。A香港型も含まれていたが、実際の流行で主流になったのは推奨株とは特徴が異なるウイルス。ワクチンの効果が不十分になる恐れがあるため、米疾病対策センターは12月、ワクチンとずれたウイルスが広がっていると医療関係者に注意喚起した。
 日本はワクチン製造で欧米とは違う株を選択した。A香港型は鶏卵を使ってワクチンを製造する過程でウイルスの遺伝子が変化し、ワクチンの効果の低下につながりやすいという問題が指摘されていた。このため感染研の小田切孝人インフルエンザウイルス研究センター長らは、同じA香港型でWHOの推奨株と遺伝的には極めて近いが、製造過程では変化しにくい性質の株を探し出して採用した

▼抗体反応試験
 これでワクチンの効果が保たれることが期待されたが、ワクチンでできた抗体が流行株の増殖を抑えるかどうか各地から集めた80株について反応試験をしたところ、十分な反応が見られたのはこのうちの36%にとどまった。米国がWHO会議で報告した同様の試験の結果は30%で、大きな差はなかった
 米国は患者らを対象にした調査も進め、3月にワクチンの効果は19%との中間報告を発表した。ワクチンの効果は患者の年齢や持病など他の要素にも左右されるため、日本で本格的な臨床研究をしないと正確な効果は分からないが、小田切さんは「抗体との反応試験から推定すると、日本のワクチンの効果も低かった可能性がある」と話す。

▼約4割が接種
 国内のインフルエンザワクチン接種者は推定5千万人超。人口の約4割に上るが、効果をめぐる誤解も多い。感染の完全な阻止はできず、期待できるのは発病やそれによる受診を減らすこと。それも平均50%程度とすると「打ったのにかかった」は当然ある。最も重視されるのは高齢者や持病のある人の重症化リスクを減らす効果で、専門家によると、ワクチンが流行株と一致していない場合でも多少の防御効果はあるとみられる。



 昨シーズンの大阪での検討結果では、もう少し高い有効率が出ています。

小児におけるインフルエンザワクチンの有効性について
(福島 若葉 大阪市立大学大学院医学研究科 公衆衛生学)
2013/14シーズンの大阪府において、 6歳未満児を対象に、インフルエンザワクチンの有効性を評価
 ワクチン有効率:51%(統計学的に有意)
 有効率は、
• 1回接種≒2回接種
• 0-1歳>2-3歳>4-5歳
• A型・B型にかかわらず有効
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市販かぜ薬の副作用で15人死亡

2015年04月08日 21時17分58秒 | 小児科診療
 市販かぜ薬の副作用が報道されました。

■ 市販薬で重い副作用も 注意を
(NHK:2015年4月8日)
 市販薬のインターネット販売が解禁され、薬が簡単に購入できるようになるなか、かぜ薬や痛み止めなどの市販薬でも、まれに重い副作用が起きるケースがあるとして、消費者庁は、異常を感じたら、すぐに医師に相談することなど注意を呼びかけました。
 劇薬などを除くすべての市販薬は、去年6月、インターネットでの販売が解禁されましたが、消費者庁によりますと、こうした市販薬で副作用が起きたケースは、去年3月までの5年間に1225件報告されていて、このうち15人が死亡し、後遺症が残ったケースも15件あったということです。
 副作用の報告のうち症状が重いのは、スティーブンス・ジョンソン症候群と呼ばれる高熱が出て皮膚が赤くなり視力が低下するものや、だるさや吐き気が続いて肝障害に至るケースなどです。
 いずれもかぜ薬や解熱剤、痛み止めなど、市販されている医薬品を飲むことで起きているということで、対処や治療が早いほど重症化を防ぐことができるということです。
 このため消費者庁は、医薬品を利用して異常を感じたらすぐに服用をやめて医師に相談することや、医薬品を購入するときはアレルギーや持病などについて薬剤師とよく相談するよう注意を呼びかけました。
 また、医薬品を販売する事業者の業界団体に対しては、こうした副作用について消費者に啓発を行うよう要請しました。
 記者会見した消費者庁の板東久美子長官は「市販薬でも重い副作用が出るおそれのあることを知らない人が多いので、十分に注意してほしい」と話しました。


 当然ですが、「薬」と名のつくものにはすべて「副作用」がつきものです。
 抗生物質などの副作用を気にする患者さんは時々いらっしゃいますが、かぜ薬の副作用を心配する方はまれです。
 あまりに副作用を心配する方には「かぜ薬の添付文書を読むと、その副作用の項目にも同じようなことが書いてありますよ」とコメントすると、患者さんは複雑な表情をされますね。

 予防接種のワクチンであれば、何百万回接種のうち1人でも死亡例が出ると販売中止となりますが、市販かぜ薬は販売が続いていることに違和感を感じる私です。
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HPVワクチン(子宮頸がんワクチン)関連記事(2015年4月)

2015年04月04日 07時41分44秒 | 小児科診療
 賛否両論、異論反論。
 昏迷状態の日本。

 まずは推進する産婦人科医の声明を紹介します。

子宮頸がんワクチンに対する国民に向けた声明(吉村やすのり、慶応義塾大学産婦人科教授、2015.3.31)

 「接種後に○○が生じたからワクチンのせいだ!」という短絡的思考に終始することなく、科学的に論証し、病気のインパクトとワクチンの副反応を冷静に比較検討して評価する必要性を説いています。

 次に、メディアの報道を。

子宮頸がん:ワクチンの健康被害 国の救済ストップ(毎日新聞、2015.4.3)

 この記事の中で、以下の文言が?と気になりました:

 医師で弁護士の大磯義一郎・浜松医科大教授(医療法学)は「副作用の診断基準がはっきりしない中での判断は難しい面もあるが、健康被害を幅広く補償するのが救済制度の趣旨で、因果関係は厳密な証明ができなくても認めるべきだ。・・・」

 「原因がはっきりしなくても、実際に苦しんでいる患者がいる以上、国は治療の支援をしてほしい」と母は訴える。


 記事は「ワクチンと健康被害との因果関係が証明できなくても国は補償すべきだ」という論調です。
 確かに、日本の薬害の歴史をひもとけば、国が責任を認めるまでには多大の労力と時間を要して来ました。
 例えばサリドマイド事件では、発売国のドイツで危険性が発覚して発売中止になってから日本が措置を取るまでに時間のずれがあり、さらに薬害裁判が和解に至るまでに10年を要し、国への信頼は失墜しました。
 予防接種を仕切る国と接種を受ける国民との間に信頼関係が存在しないことがそもそもの問題でありこれを放置したまま議論を続けてもかみ合わないことは明白です。

 しかし今回、世界を見渡すとHPVワクチンの副反応で混乱しているのはほぼ日本のみ(フランスも?)のようです。
 非科学的な経緯のまま、勢いで国が補償をすれば「ワクチンの副反応と認めた」ということになってしまい、「日本の常識は世界の非常識」と批判されることを免れません。
 議論を日本の中で完結しようとしても無理があるようですから、世界に視野を広げて解決を図るというのはいかがでしょうか。
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