徒然日記

街の小児科医のつれづれ日記です。

新型コロナでは“集団免疫”が成立しない → 流行の制圧はできない

2022年04月29日 19時54分49秒 | 小児科診療
ウイルス感染症の流行が収まる目安として、
集団免疫”という考え方があり、
新型コロナ・パンデミック以降TVでもたびたび取り上げられてきたので、
皆さんご存じのことと思います。

「人口の一定割合以上の人が免疫を持つと、感染患者が出ても、他の人に感染しにくくなることで、感染症が流行しなくなる状態のことです」
と説明しています。

さて、ウイルスに対する免疫を獲得する方法は、
1.自然感染
2.ワクチン接種
の2つがあります。

ワクチンと自然感染で、100%に近い国民が免疫を獲得しているイギリスは、
集団免疫が成立するはずですが・・・実際には感染者が今でも後を絶ちません。

なぜかというと、新型コロナは罹患して免疫獲得しても数ヶ月で減衰し、
3ヶ月後には再感染する状態になってしまうから。

▢ 「人口の6割が感染」なぜ集団免疫はできないのか ほぼ100%イギリス人は抗体を持つが防げず

ワクチン接種で獲得できる免疫は自然感染を上回ることはできない、
というのが従来の基本でした。

自然感染でも3ヶ月後には再感染するウイルスですから、
ワクチンを何回接種しても“罹らない”状態を維持できないことは明白です。

つまり、新型コロナは集団免疫により流行終息を目指せる感染症ではないということ。

このようなウイルスは他にも存在します。

例えば、季節性インフルエンザ。
例えば、ノロウイルス。
この2つは感染回数を重ねても軽く済むようにはならないので、
そういう視点からは新型コロナよりやっかいかもしれません。

ではどうすべきか?

新型コロナはそういうウイルスと諦め、方針を変更しましょう。
目標を流行終息ではなく、重症化予防にシフトするのです。

ブログ内の記事「新型コロナウイルスの“正体”見たり!」でも書きましたが、
新型コロナに何回か罹患するとだんだん軽症化することが期待できるウイルスです。

ワクチンを1回接種すると、1回自然感染したこととほぼ同じ免疫状態になります(実はワクチン接種の方が強力なのですが)。
すると「ワクチン3回接種≒自然感染3回」ですから、
罹るのは防げないけど重症化はしないと思われます。

これから、高齢者と基礎疾患のある人には4回目接種が始まります。
「4回罹ったのと同じ」状態にして、重症化率をさらに下げる考えですね。

今回、医療関係者は接種対象から外されました。
まあ、どちらでもいいんですけど。

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2022年春の花粉症は終了

2022年04月29日 12時51分34秒 | 小児科診療
先日、今季の春の花粉症が終わりに近づいていることが報道されました。

花粉 関東など本格的な飛散は終了

私自身、4月中旬までは目がシバシバしていたのですが、
ここ1週間はあまり感じなくなりました。
敏感な方でも、GW終了頃には症状が消えるはずです。

もし、その後も症状が残る場合は・・・イネ科花粉症の可能性があります。
イネ科花粉症と言っても田んぼの稲ではなくて、
道ばたに生えているカモガヤなどの雑草です。
こちらのサイトに花粉カレンダーがありましたので引用します;


花粉を飛ばすのは植物ですから、
桜前線同様、日本全国で飛散時期が少し異なります。
また、花粉の種類も異なります。
例として、北海道エリアと九州エリアの花粉カレンダーも引用;


北海道では、関東地方ではほとんど飛ばないシラカバがメインです。
昔は「北海道にはスギ花粉症はない」とされていましたが、
現在は少し飛んでいるので患者さんもいるのでしょう。

一方、九州エリアでは、
スギ・ヒノキ花粉の飛散期間が関東地方より1ヶ月ほど早まり、
イネ科も4月中旬からたくさん飛びます。



例年、花粉症症状がつらい人には、
「シーズンが終わったから安心」
で済ませないで、来期以降に向けての治療である、
をお勧めします。

抗アレルギー薬による対症療法ではなく、
体質改善して花粉に反応しなくなる体を手に入れよう、
という治療法です。

当院でも数十人のお子さんがこの治療法を行っており、
昨シーズンよりひどかった今シーズンのスギ花粉症も、
「昨年より楽だった」
と手応えは十分です。

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新型コロナ後遺症、アップデート(2022.4.29)

2022年04月29日 12時00分00秒 | 新型コロナ
新型コロナウイルス感染症の後遺症は“long-covid”とも呼ばれて注目されています。
これに関する最近の記事を整理してみます。



たくさんありますね・・・。
後遺症には急性期の症状が長引くパターンと、
治ってから「あれ、おかしい?」と新たに現れる症状があります。

その原因は未解明ですが、可能性として、
・ウイルスに感染した組織(特に肺)への直接的な障害
・感染によって免疫の調節機能に影響が起こることによる炎症の持続
・血液が固まりやすくなる状態が続くことによる血栓症
・集中治療後症候群(PICS)
などが挙げられています。

後遺症状の種類は、大阪府の新型コロナ受診相談センターの統計では、
・倦怠感
・嗅覚障害、味覚障害、
・咳、呼吸苦、
・脱毛、
・頭痛
の順で頻度が高いようです。

新型コロナに罹患した患者さんのどれくらいに後遺症が出現するかについては、さまざまな報告があり数字は一定しませんが、30-40%程度のようです。イギリスでの50万人以上の住民を対象にした新型コロナ後遺症に関する大規模調査では、新型コロナに感染して何らかの症状があった人のうち、37.7%で発症から12週時点でも症状が続いており、女性・高齢者・重症者・喫煙者・肥満に頻度が高かったと報告されています。

また、日本国内での457人の新型コロナから回復した方の調査では、発症時もしくは診断時から6カ月経過時点で26.3%(4人に1人)、12ヶ月経過時点で8.8%(11人に1人)の人で少なくとも1つ以上の症状が残っていたそうです。

新型コロナの急性期に心臓合併症(心筋炎、心筋梗塞)が出ることがわかっていますが、後遺症としてはどうでしょうか。

アメリカの在郷軍人病院の新型コロナ患者および、非感染者とを比べた臨床研究では、感染から1年後の心血管系の合併症のリスクは、非感染者と比べて、
・脳梗塞 1.52倍
・不整脈 1.69倍
・心筋炎 5.38倍
・心筋梗塞 1.63倍
・肺塞栓 2.93倍
・深部静脈血栓症 2.09倍
と軒並み高くなっているそうです。

そのほかにも、
などの後遺症も報告されています。

気になるオミクロン株の後遺症はどうでしょうか。
知りたいところですが、まだ解析されたデータは公表されていません。
ただ、相談センターでは実数が増えているそうです。

後遺症を避けるためには・・・罹らないことが大原則。
感染対策を励行し、ワクチン接種で自身の身を守り・・・

以上で終わりのはずだったのですが、
先日、これらのすべてをひっくり返す情報を目にしました。

森内浩幸Dr.のWEBセミナーで紹介されたフランス発の論文
自己申告で“新型コロナ罹患”した患者さんに対して、
罹患後症状と血清抗体価の関連を統計処理した内容です。

“自分は新型コロナに罹りました”と申告する人に、
血液検査で新型コロナに対する抗体を調べると、
上昇している人と上昇していない人が出てきます。
上昇している人を「真のCOVID-19」
上昇していない人を「偽のCOVID-19」
として統計処理をすると・・・

血清学的診断(新型コロナに対する抗体上昇が証明された真のCOVID-19)と関連があったのは「嗅覚障害」のみであった
という衝撃的な結論。
他のすべての症状は抗体価と関連がなかったのです。

つまり、嗅覚障害以外の後遺症状は「思い込み」、
言い換えれば「心理社会的ストレスによるもの」という可能性が否定できません。

HPVワクチンによる多彩な副反応も、接種者と非接種者で差がないと証明された「名古屋スタディ」もありました。

事ほど斯様に、人間というものは、様々なストレスに心理的に反応してしまう生物であることを前提に考えるべきなのでしょう。

でないと、科学の進歩が人間の漠然とした不安により妨げられかねません。

<参考>
新型コロナウイルス感染症診療の手引き:別冊「罹患後症状のマネジメント」

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世界人口の40%超が新型コロナに罹患済み、日本人は?(2022年4月)

2022年04月29日 07時28分01秒 | 小児科診療
2019年末に新型コロナが登場して、約2年半が経過しました。
インフルエンザ以外の想定外の“パンデミック”に世界は混乱し、
未だに終息の目処が立ちません。

さて2022年4月時点で、
世界人口のどれくらいが新型コロナに罹ったのでしょうか?
最近の記事から探ってみましょう。

 世界人口の40%超がコロナ感染、感染率の高い地域は?/Lancet
2022/04/29:ケアネット)より抜粋;
 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は、オミクロン変異株(B.1.1.529)の急増が始まるまでに世界に衝撃的な影響を及ぼし、2021年11月14日の時点ですでに38億人の感染または再感染を引き起こし、世界人口の43.9%が少なくとも1回の感染を経験しており、累積感染割合は地域によって大きな差が認められることが、米国・ワシントン大学のRyan M. Barber氏らCOVID-19 Cumulative Infection Collaboratorsの調査で示された。研究の詳細は、Lancet誌オンライン版2022年4月8日号に掲載された。
・・・
COVID-19の世界的流行の開始から2021年11月14日の期間に、SARS-CoV-2感染と再感染を合わせた総感染者数は推定で38億人(95%不確定区間[UI]:34億4,000万~40億8,000万)に達し、世界人口のうち33億9,000万人(43.9%[95%UI:39.9~46.9])がSARS-CoV-2に1回以上感染していた。
累積感染者数は、7つの広域圏のうち南アジアが13億4,000万人(95%UI:12億~14億9,000万)と最も多かったが、累積感染率はサハラ以南のアフリカが100人当たり79.3人で最も高かった。また、高所得地域(日本を含む世界の高所得国を合わせた地域)は感染者数(2億3,900万人、95%UI:2億2,600万~2億5,200万)が最も少なく、東南アジア/東アジア(日本は高所得国に分類され、ここには含まれない)/オセアニアを合わせた地域は感染率(100人当たり13.0人[95%UI:8.4~17.7])が最も低かった
累積感染割合は国や地域によって大きなばらつきがみられ、70%を超えた国が40ヵ国、20%未満が39ヵ国であった。
日本は、感染者数が645万人(不確定区間:508万~802万)、感染率は100人当たり5.0人(不確定区間:4.0~6.3)、感染割合は5.0%(不確定区間:4.0~6.2)だった。

論文はタイムラグがあるので、データは2021年11月までの統計です。
つまり、オミクロン株の流行は含まれていません。
その時点で、なんと世界人口の約40%がすでに罹患!

地位域別ではアフリカ大陸の南部は80%と異常に高い。
現在流行中のオミクロン株は南アフリカで登場しましたが、
南アフリカ内ではそれほど社会問題にはなりませんでした。
その理由は“すでにみんな罹っていたから”と聞いています。

アメリカではこの当時で約30%、
でもその後も増え続けて現在では60%?

“全米人口の60%近くが新型コロナ感染か” 米CDC報告書公表
2022年4月27日 :NHK)より抜粋;
アメリカCDC=疾病対策センターは26日、全米各地で行われた血液検査で検出された新型コロナウイルスの抗体の分析から、これまでに、人口の60%近くが感染したと推定する報告書を公表しました。
CDCは26日、全米で行われた血液検査のサンプルから、新型コロナウイルスの抗体が検出された割合をもとに、これまでに感染した人の割合を推定した報告書を公表しました。
それによりますと、ことし2月に採取された、およそ4万6000人分の血液検査を、統計的に分析した結果、これまでに、アメリカの人口のおよそ57.7%が、新型コロナウイルスに感染したと推定されるとしています。
年代別に見ると、0歳から11歳では75.2%、12歳から17歳で74.2%、18歳から49歳で63.7%、50歳から64歳で49.8%、65歳以上で33.2%となっていて、若い世代ほど感染したと推定される人の割合が高くなっています。
この割合は、アメリカでオミクロン株の拡大が始まった去年12月から大幅に増加していて、報告書は「オミクロン株は、特に子どもの間での感染率が高かった」と分析しています。

アジアは10%台で世界の中では低く抑えられています。
民族の差なのか、生活習慣の差なのか・・・。

日本ではどうでしょう?
緊急事態宣言とかマンボーとか騒いでいても、
まだ5%と非常に低く抑えられていますね。

オミクロン株流行後の日本のリアルタイムのデータ(2022.4.28)は以下の通り;


日本の総人口は、2022年4月現在での1億2,550万2,000人ですから、
単純計算で「6.2%」になります。

まあ、統計に出てくる“PCRや抗原検査で陽性になった”数字のため、
抗体価で評価するとアメリカのように倍増する可能性は否定できません。

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話題の「小児急性肝炎」は原因はアデノウイルス?

2022年04月28日 07時55分14秒 | 小児科診療
4月に入ってから、この話題が目につくようになりました。

原因不明の「急性小児肝炎」専門家が警戒する理由〜まだ不明点が多いが、重度な肝炎の兆候とは

子どもに増加する謎の肝炎、移植が必要なケースも 原因はウイルスか
Bruce Y. Lee , CONTRIBUTOR

欧州を中心に小児の急性肝炎例の報告相次ぐ、日本でも疑い例が発生
久保田文=日経バイオテク、加藤勇治=日経メディカル

欧米で重症化する小児肝炎が一定数認められ、
今までわかっている肝炎ウイルスが検出できない、とのこと。

“肝炎”とは字の通り“肝臓の炎症”です。
いろいろな原因によって起こりますが、
急性肝炎はウイルスが原因になることが圧倒的に多いです。

特徴的な症状は黄疸(皮膚と白目が黄色くなる)ですが、
軽症の場合は目立たないこともあり、
ほかは「だるい(倦怠感)」「食欲がない」など、
ふつうの風邪と区別できません。

重症化すると「肝不全」状態となり、
血液中のアンモニアが上昇し、命に関わります。

記事では死亡1例、
それから「生体肝臓移植」を行った事例も紹介されています。

診察では、
おなかを触ると肝臓が腫れている所見で発見されることもあります。

さて、いわゆる“肝炎ウイルス”(肝臓に悪さしやすいウイルス)を忽那Dr.が以下のようにわかりやすくまとめています
B型肝炎ウイルスにはワクチンがあり、
乳幼児の定期接種に組み込まれていますね。

A型肝炎ウイルスにもワクチンが存在しますが現時点では任意接種で、
海外旅行や滞在する場合は接種が推奨される位置づけです。

C型肝炎にはワクチンがなく、
従来急性肝炎 → 慢性肝炎 → 肝硬変 → 肝癌という嫌なサイクルの主役でしたが、
近年薬剤開発が進み、
現在では内服薬で除菌ならぬ除ウイルスできる病気になりました。

D型、E型肝炎は少し特殊で、
私はこれらの肝炎の主治医になったことはありません。

そのほかにもEBウイルス、サイトメガロウイルスなどマイナーなウイルスが原因になることもあります。

しかし記事によるとこれらの既知のウイルスが原因ではなさそうで特定できていません。


なかでもアデノウイルスそのなかでも41型が多い)が多いと報告されています。

アデノウイルス?

夏風邪のプール熱(咽頭結膜熱)の原因として有名なウイルスです。
それから、流行性角結膜炎(略して“流角”)という感染力の強い結膜炎の原因にもなり、胃腸炎を起こすこともあります。

でも小児科医の知識の中に、
というイメージはありません。

新たに登場した変異アデノウイルス?
・・・記事を読むと、まだアデノウイルスを原因と断定する根拠はなさそうです。
三つ目の記事にWHOの見解が引用されています;

WHOは、アデノウイルスが原因という仮説があるものの、患者の臨床像および重症度を完全に説明できないとしている。また、COVID-19パンデミック下において社会のアデノウイルスの広がりが低下したことによる幼児における感受性の亢進、新規のアデノウイルス出現の可能性、SARS-CoV-2との同時感染の影響など、今後さらに検討していく必要があるとしている。なお、患者の多くはCOVID-19ワクチン接種を受けていないため、ワクチンの副反応によるものという仮説は支持されていないとWHOは指摘している。

引き続き情報収集をしていきましょう。

<参考>
小児の原因不明の急性肝炎について
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濃厚接触者の隔離期間(自宅待機期間)を再確認(2022.4.24)

2022年04月24日 21時44分56秒 | 新型コロナ
濃厚接触者の隔離期間はたびたび変わり、
現場は振り回されてきました。

現時点での私の基本認識は、

・陽性者と接触した翌日から数えて、無症状者は7日間
・陽性者と接触した翌日から数えて、有症状者は10日間

ですが、無症状者では検査を併用すると短縮できる場合がありますね。

・陽性者と接触した翌日から数えて4日目と5日目の両方が検査陰性なら解除
・エッセンシャルワーカーは、その日に検査をして陰性なら就労可能

さて、私の認識は正しいのでしょうか?
倉原優Dr.によるこちらの記事を参考にして、
現在の状況を確認しておきましょう。

まず、濃厚接触者と陽性者が同居しているのか、していないのかでスタートが異なります。
非同居者では接触日が特定できるので単純です(⇩)。



しかし同居者の場合は「はじまりはいつ?」と素朴な疑問が生まれます。
便宜上「感染対策を講じた日」を0日目とし(⇩)、
その「感染対策を講じた日」は具体的には「陽性判明した日」ということになります。



家庭内では、家族や兄弟が波状攻撃されるように次々と発症する場合が希ではありません。
すると、隔離期間がゴチャゴチャになっていつまで自宅待機すべきなのかわからなくなりがちです。
基本は下の図のように考えます。
すなわち、新しい陽性者が判明した時点で、無症状の濃厚接触者の隔離期間はリセット(再設定)されることになり、乳幼児期の兄弟がいる家庭ではエンドレスの隔離地獄に陥ります(⇩)。



ただし、この判断は自治体ごとに差があり、
子どもが大きくて感染対策を理解して十分対応できる場合は、
リセットしなくてもよいと判断されるケースもあるようです。

次に、検査により隔離期間が短縮できるお話。
基本は以下の通りです(⇩)。


エッセンシャルワーカーの内容も以前より明確化されていますね(⇩)。
勤務する場合は当日の検査で陰性確認できれば可能であることは私の理解通りです。


エッセンシャルワーカー以外の一般市民も、
検査を併用することにより短縮が可能ですが、
検査内容(抗原キットかPCRか)で多少差別化されているので注意が必要です。

濃厚接触者の具体的な生活について、倉原Dr.は以下のようにまとめています;



さて、濃厚接触者に指定された場合は以上のルールに従うことになりますが、
実は現場ではその濃厚接触者かどうかの判断に迷うグレーゾーンの患者さんが多くて悩ましいのが現状です。

濃厚接触者の定義そのものも変遷があり、
現在は保健所が判断するのは家庭内やクラスター(5名以上)のみで、
他は施設や現場に任されています。



基本的には「同居者」「1m以内、15分以上の接触」ですが、
私は小児科医ですので、後者の定義に悩まされます。

なぜかと言えば、
子どもに大人と同じような感染対策を強いても無理があるからです。
マスクも遊んでいる内にずれたり外れたりしますので。

なので、集団生活の場で「陽性者が発生したけど濃厚接触者と言われていない」という子どもでも、
「グレーゾーン」として症状のある患者さんには検査希望の有無を聞き、
希望される場合はPCR検査に誘導しています。

するとその半分くらいが陽性になります。

当然希望されないご家族もいるわけで、
しかし濃厚接触者ではないからこちらから強制もできません。

連日「本日の陽性者は〇〇名でした」と報道されていますが、
現実にはその数倍の陽性者がいるのではないか、と感じています。

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新型コロナ感染対策は消毒(接触感染対策)から換気(エアロゾル感染対策)重視へ

2022年04月24日 07時31分33秒 | 新型コロナ
前項の続きです。

新型コロナがここまで拡大し、かつ消えない原因は、
その「エアロゾル感染」という感染様式にあります。

接触・飛沫感染中心なら「環境消毒」は有効な対策ですが、
いくらそれを頑張っても新型コロナは消えませんでした。

私は以前から、クラスター発生の際の「環境消毒」に違和感を持っていました。
中国の街中全体を消毒して廻る映像、
日本の医療機関でも消毒液を吹き付けまわり、
「消毒完了」しないと再開できない・・・等々。

当院には医学書の類いがたくさんあるので、
もしクラスター発生した際に大切な本に消毒液をかけられてはたまらないと危険を感じ、
私は本棚にはビニールカーテンを付けたり、
本をビニールで包んだりしました。

つい最近ですが、
「環境には感染力のあるウイルスは残っていないらしい」
という科学的事実が報告され、
私の違和感が見事に解消しました。

▢ 環境表面を介したコロナ感染リスクは極めて低い
 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)パンデミックの発生当初、多くの人が、環境表面に付着しているウイルスに触れることで感染するのを恐れ、買ってきた食品を消毒していたことは記憶に新しいだろう。しかし、米デューク大学医学部教授のDeverick Anderson氏らが実施した新たな研究により、汚染された表面から新型コロナウイルスに感染する可能性は低く、このような消毒は不必要であることが明らかにされた。この研究の詳細は、「Clinical Infectious Diseases」に1月12日掲載された。
 Anderson氏らは今回、同大学病院に入院中のCOVID-19患者20人の部屋の内外の環境表面から、新型コロナウイルスの陽性判定後24時間以内、および3、6、10、14日目に検体を収集した。検体は、ベッドレール、シンク、準備スペース、室内のコンピューター、ドアノブ、室外の看護ステーションのコンピューターの6カ所から採取された。
 集められた総計347点の検体のRT-PCR検査を行ったところ、新型コロナウイルス陽性の判定が出た検体は、全体のわずか5.5%(19点)であった。陽性は、ベッドレールからの9点(9.2%)、シンクと室内のコンピューターからのそれぞれ4点ずつ(ともに8.0%)、準備スペースとドアノブからのそれぞれ1点ずつ(ともに2.0%)の検体で確認された。また、陽性検体の採取日は、新型コロナウイルス陽性の判定後24時間以内に採取されたものが6点、3日目が10点、6日目が2点、10日目が1点だった。
 さらに、培養細胞を用いて陽性の検体に含まれるウイルスの感染性を調べたところ、ウイルスの増殖が確認されたのは、下痢と発熱の症状があった患者のベッドレールから発症後3日目に採取した1点(0.3%)の検体のみであった。
 Anderson氏は、「パンデミックが始まって間もない頃の研究では、新型コロナウイルスが環境表面で何日も残存することが報告されていた。しかしこれは、ウイルスが感染力を持ち続けることを意味するわけではない。今回のわれわれの研究により、環境表面には、感染性のある生きた新型コロナウイルスはほとんど存在していないことが明らかになった」と述べている。
・・・
<原著論文>

コロナの「接触感染」リスクはそれほど高くない

PCR検査はウイルスのかけらを検出する手法なので、
PCR陽性イコール感染力がある、ではないのです。
つまり「PCR陽性≠感染力あり」。

ですから、感染対策も以下のようにシフトさせる必要があります。
消毒中心 → 換気・ソーシャルディスタンス〜マスク中心

以前にも書きましたが、ウイルス粒子・エアロゾル粒子はタバコの煙粒子と同じくらいの大きさです。
室内でタバコを吸うとしばらくニオイが残る=タバコの煙粒子が浮遊している状態です。
タバコをニオイを消すほど換気しないと新型コロナ対策として不十分なのです。
窓を少し開けておくくらいではタバコのニオイはしばらく残りますから、
不十分と言わざるを得ません。
その間、感染リスクが高い状況が続くことを認識すべきです。

一方で「過剰な接触感染対策を整理して減らしていこう」という声が、
ご意見番の医師からも聞こえるようになりました。

ビュッフェの手袋、エレベーターの抗菌シート・・・そろそろ過剰な感染対策をやめていこうッ!
忽那賢志:感染症専門医
2021/12/12:Yahooニュース)より抜粋;
・・・
新型コロナの感染経路は3つです。
接触感染:ウイルスで汚染した物、感染した人の手などに触れることで自分の手などにウイルスが付着し、その汚染した手で目や鼻など粘膜に触れる
飛沫感染:会話などで発生する飛沫を浴びる
エアロゾル感染:特に換気の悪い屋内では飛沫の飛ぶ距離(1-2M)を超えて感染が起こり得る
基本的にはこの3つの感染経路を意識した感染対策が重要です。
接触感染に対してはこまめな手洗い、飛沫感染やエアロゾル感染に対してはマスク着用と3密を避けることで感染を防ぐことができます。
◆ ビュッフェでの手袋は不要!
・・・結局ビニール手袋をつけたとしても、ビニール手袋であちこち触ればビニール手袋そのものが汚染してしまい、汚染したビニール手袋でトングを触ればトングも汚染し、何がなんだか分からなくなります。
なんとなく「ビニール手袋は汚染しないんだ」という謎の信頼感があるのかもしれませんが、ビニール手袋にもウイルスや細菌は付着しますし、ウイルスが付着したビニール手袋であちこち触ればウイルスは広がっていきます。
ということで、大事なのは食事を取る前にアルコールなどで手を洗うこと、そして取り終わった後にも手を洗うことです。
・・・スーパーのレジの店員さんもずっと同じ手袋をつけて接客をされているのを見かけることがありますが、あれも「手袋はウイルスに汚染されない神話」によるものではないかと思います。前述の通り手袋も普通に汚染されますので、手袋で触った商品もお釣りを渡したお客さんの手も汚染されていきます。これを避けるためには、こまめに手を洗うか、手袋を使う場合は毎回換える必要があります。
◆ ハンドドライヤーは普通に使ってもいい
・・・ハンドドライヤーは手を洗った後に使用するものですので基本的にきれいな手を乾燥させるために使用するものであり、そこに新型コロナウイルスがいて、エアロゾルが舞って感染するなんてことは極めて稀であり、そんなことを気にするよりはマスク着用と手洗いという基本的な感染対策を徹底することが重要です。
日本経団連のホームページにも、
「オフィスや製造事業場といった、基本的に有症者がいない管理された場所のトイレでのハンドドライヤーの利用での感染リスクは限定されること、また、ハンドドライヤーの利用で発生する水滴、マイクロ飛沫による感染リスクが極めて小さいことが、複数の実験と数値流体シミュレーションを組合せて確認できたことから、ハンドドライヤーの利用停止を削除する。」
と記載があり、経団連もこう言っていることですし、そろそろハンドドライヤーも普通に使いませんか?
最後に「トイレのフタ問題」についても言及したいと思います。
「新型コロナの感染対策としてトイレの水はフタを閉めて流してください」という張り紙を見かけることがありますが、これも流行初期にトイレの水を流すことでウイルスが舞い上がるのではないかというモデル上の仮説があったり、便から発生したエアロゾルがトイレの配管を通して感染に関与したのではないかという都市伝説的な症例報告があり、「トイレは危険だ!」ということになったのではないかと思いますが、もしトイレを介した感染が起こるとしても極めて稀な感染経路であり、フタをするしないで感染リスクが「ほぼゼロ」から「ほぼほぼゼロ」になるくらいのものでしょう。
◆ 感染対策はシンプルに
全く未知の感染症であった新型コロナも、この2年間で様々なことが分かってきました。当初はとにかく感染リスクを下げるために何でもやる、ということで行っていた対策の中には、現在では「ここまではやらなくてもいいんじゃないの?」と思えるものも出てきました。
マスク着用、こまめな手洗い、3密を避ける、といった基本的な感染対策を継続していくためには不要な対策はできるだけなくしシンプルにしていくことが大事です。

 トイレ問題に関しては、便中にウイルスが排泄され、それが便器や周囲に付着して感染するという考え方がありましたが、現在は便から排泄されるウイルスは基本的に壊れている“ウイルスのかけら”であり、感染力はないとされています。

新型コロナは接触感染・飛沫感染もしますので、
手指消毒が不要になることはありません。
しかし環境中のウイルスは感染力がないことが判明した現在、
それ以外の環境消毒は取捨選択して整理し、
空気感染対策(換気、ソーシャルディスタンス〜マスク)を重視する方向で考えていきましょう。
なお、マスクをする目的はソーシャルディスタンスが保てない場合のかわりの手段であることを再度強調したいと思います。

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新型コロナ禍でも減っていない「突発性発疹」

2022年04月24日 07時28分27秒 | 小児科診療
少し前に「新型コロナ禍で減った感染症、減らない感染症」という文章を書きました。

先日福島県で開催された第125回日本小児科学会でも題名の内容が報告され、
この事実がますます明らかになりました。

▢ 全国調査でコロナ下でも突発性発疹は減っていないことを確認
中西 亜美=日経メディカル

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)流行下で様々なウイルス感染症の疫学が変化している。一方、突発性発疹の患者数はCOVID-19流行前と変わらないことが示唆されていたが、新潟大学医学部小児科学教室助教の相澤悠太氏らによる調査の結果、全国的に減少していないことが確認された。成果は、第125回日本小児科学会学術集会(会期:4月15~17日、福島県郡山市の会場とウェブのハイブリッド開催)で発表された。
 相澤氏らが新潟県と全国の定点当たり報告数を調べたところ、2020年はいずれも学校閉鎖期間(第10~22週)に突発性発疹患者の減少を認めた以外には、2016~2019年の平均値と大きく変わらず、例年通りの報告数であることが明らかになった。学校閉鎖期間に報告数が減少した理由については、受診控えがあった可能性などが考えられた。
 突発性発疹は乳幼児期に発症する発熱発疹性疾患で、原因病原体であるヒトヘルペスウイルス6B(HHV-6B)とヒトヘルペスウイルス7(HHV-7)に感染すると、生涯にわたり体内にウイルスが潜伏する。感染経路は正確なところは不明であるものの、家族(同胞や親)の唾液を介して感染するとの仮説が有力視されている。また、この30年ほどで突発性発疹の罹患年齢が上昇しており、その要因として考えられているのが離乳食を口移しで与える機会の減少や出生数減による年長児との接触機会の減少などだ。
・・・
 COVID-19流行下では、感染対策の徹底により曝露機会を失った感染症が軒並み減少傾向にあるが、突発性発疹の感染者数は減少せず、2020年上半期で乳児の感染割合が高かったという結果を踏まえ、相澤氏は「HHV6/7の感染経路は市中ではなく家庭内にあるという従来の伝播様式の仮説を支持している」と結論した。


さて、新型コロナ禍で従来より強化された感染対策の影響で、
減った感染症と減らない感染症を観察すると、
その感染症の「感染様式」が浮かび上がってきます。

季節性インフルエンザが姿を消してしまうほどの感染対策でも、
新型コロナは消えないことを医療関係者は驚いています。

季節性インフルエンザは「接触感染+飛沫感染」、
新型コロナも当初は「接触感染+飛沫感染」とされていましたが、
これでは説明できません。
同じであれば、季節性インフルエンザ同様、感染拡大が止まるはずですから。

そこで登場したのが飛沫感染と空気感染の中間である、
「エアロゾル感染」あるいは「マイクロ飛沫感染」です。

先日、日本政府もようやく公式に認めました。

▢ 新型コロナ 「エアロゾルでも感染」 感染研、見解を変更
 新型コロナウイルスの感染経路について、国立感染症研究所(感染研)は28日、ウイルスを含んだ空気中に漂う微粒子(エアロゾル)を吸い込んでも感染するとの見解をホームページで公表した。感染研はこれまでエアロゾル感染に否定的で、飛沫(ひまつ)感染と接触感染だけを挙げた報告書を発表していたため、国内の科学者が「世界の知見とは異なる」と説明を求めて公開質問状を出していた。

実はこの「見解を変更」には伏線がありました。

未だ「空気感染を認めない」日本のコロナ政策の謎有識者8人が連名で国立感染症研究所に質問
鈴木 理香子 : フリーライター 著者フォロー
国立感染症研究所が1月に公表した「新型コロナウイルスの感染経路」の記述に間違いがあるのではないか――。2月1日、感染症や物理学などの有識者8人が連名で国立感染症研究所の脇田隆字所長に公開質問状を送った。

「新型コロナは空気感染」国はなぜ認めないのか空気感染は「迷信的な考え」と軽視される理由
西村 秀一 : 国立病院機構仙台医療センター臨床研究部ウイルス疾患研究室長 
2022/03/21:東洋経済オンライン)より一部抜粋;
・・・
ダイヤモンド・プリンセス号での感染の大流行が患者の移送作戦で終わろうとしていたころ、私は臨時検疫官として船に乗り込む機会を得ました。
事前の情報から船内の空調システムの概略を知ったのですが、これは「空気感染」が起きるのに最適なつくりだと驚きました。なぜなら、各部屋の空気を1カ所に集め、約3割分外気を混ぜただけで温度調節をし、それを一斉に各部屋に戻すものだったからです。
◆ 700人以上が感染した「仕組み」とは?
なるほど効率的な省エネ空調なのでしょうが、客室の1つに感染患者がいたために、これを介して日を追うごとに感染が拡大し、最終的に700人以上が感染してしまいました。
これだけ短期間に多くの部屋に分散していた大勢の人が感染したということは、特定の汚染か所に触れての接触感染や短時間で落下するような大きな飛沫での感染(飛沫感染)では説明できません。空気感染があった紛れもない証なのです。
何より重要なことは、新型コロナウイルスが発見されてから早い段階(2020年2月)で、すでに接触感染ではなく空気感染だということが、さまざまなところから報告されていた事実です。
それなのに、公に発表された感染経路は「感染者がくしゃみや咳をし、その飛沫あるいはそれを手で押さえたあと、その手で周りの物に触れてウイルスがつき、別の人がその物に触ってウイルスが手に付着し、その手で口や鼻を触って粘膜から感染する」というものでした。
・・・

これはひとつの進歩ですね。
このような科学的事実を踏まえて、感染対策を進化させていくべきだと思います。

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新型コロナウイルスの“正体”見たり!

2022年04月20日 15時11分34秒 | 新型コロナ
新型コロナが登場してから約2年半が経過しました。
当初、正体不明の新たな病原体による“パンデミック”として、
人類を恐怖に陥れましたが、
少しずつその特徴が明らかになってきました。

私の認識は、ザックリ言うと、

・感染力が強く、無症状期から飛沫感染(エアロゾル感染)する。
・高齢者は重症化しやすいが、若年者・小児はそれほどでもない。

というものです。

では、この新型コロナ、歴史の中で恐怖番付上位のウイルスなのでしょうか?

昨日視聴した森内浩幸Dr.のセミナーの中に、そのヒントがありました。

結論は、
新型コロナウイルスはふつうのかぜウイルスと同じかもしれない
という、意外なもの。

そこに至るまでのお話をしましょう。

まず、コロナウイルスは昔から“風邪を起こすウイルス”(以後、“感冒コロナウイルス”と呼びます)として存在してきました。

小児科医は風邪の種類により季節の移り変わりを感じる人種です。

(冬)RSウイルス、インフルエンザ
(夏)プール熱(アデノ)、ヘルパンギーナ(コクサッキー)、手足口病(コクサッキー)
(春秋)ライノウイルス、コロナウイルス

と季節により流行するウイルスが異なり、
それぞれ症状に特徴があります。

というわけで従来は、感冒コロナウイルスは春と秋に流行る鼻風邪程度の認識でした。

森内先生の話では、
「年間を通して成人の風邪の原因は15%がコロナウイルス」
だそうです。

感冒コロナウイルスは4種類に分けられ、
その4種類とも4-6歳までに感染して免疫ができます。

果たして、感冒コロナウイルスはすべて軽症で済むのでしょうか?

感冒コロナウイルスも高齢者では重症化するという報告があります。
子どもでも2歳未満や基礎疾患のある場合は重症化することも報告されています。

あれ、この特徴「2歳未満・基礎疾患・高齢者は重症化しやすい」は、
新型コロナと共通しますね。

もしかしたら、
迅速検査がないので一般的に知られていないだけかもしれません。

では、従来の感冒コロナイウルス新型コロナウイルスの最大の違いはなんでしょう。

それは“疫学像”と森内先生は指摘されました。

感冒コロナウイルスは、
・子どもでは風邪
・大人はすでに免疫があるのでかかっても軽症で済む

一方の新型コロナウイルスでは、
・子どもでは風邪
・大人も初めてかかるので免疫がないから(特に高齢者では)重症化しやすい

これを聞いて、私は“なるほど!”と大きく頷きました。
高齢者は免疫力が落ちてくるので、新たなウイルスに反応できず、
炎症を抑えきれずにこじれてしまうのですね。

さて、今回以前にも“新型コロナウイルス”が席巻するエピソードが20世紀以降、何回かありました。

略称でMERSSARSと呼ばれています。
この2つは、おもに下気道(気管支・肺)で増殖するので重症化しやすいけど感染性は弱いという特徴がありました。
なので感染を抑え込むことができています(MERSは終息、SARSは消滅)。

しかし、感冒コロナウイルス新型コロナウイルス(COVID-19)では、
上気道(咽頭・喉頭)でも増殖するので感染性が強く、
そして新型コロナでは無症状期から感染力があるため、
感染拡大を止められないでいます。

症状がない人から感染するなんて、
なんて賢い生き残り戦略なのでしょう。
脱帽するしかありません。

次に病毒性・致死率について触れてみます。

季節性インフルエンザと比較した致死率データは以下の通り;
・季節性インフルエンザ   :0.01-0.09%
・新型コロナ(デルタ株)  :1.2-1.6%
・新型コロナ(オミクロン株):0.13%

デルタ株は突出していますね。
オミクロン株になっても、まだ季節性インフルエンザより高く、
“オミクロン株になってふつうの風邪と同じレベルになった”
とは言いがたい事実。

オミクロン株は致死率は低くなったものの、
患者総数が多いため、
死亡者数は第5波(デルタ株流行)よりも多くなっています。

この現象は、
第5波のタイミングが高齢者の2回接種が済んだ頃で、
第6波のタイミングが高齢者の2回接種後半年以上経った頃、
という説明で理解できます。

“高齢者の3回目接種が遅れたことは岸田政権の決定的な失策である”と森内先生は指摘しています。

私の印象は、
安倍政権の尻拭いをさせられたのが管政権、
管政権の頑張りの恩恵を被って生きながらえているのが岸田政権、
・・・ですね。

さて、まとめてみます。
最初に書いた私の認識、

・感染力が強く、無症状期から飛沫感染(エアロゾル感染)する。
・高齢者は重症化しやすいが、若年者・小児はそれほどでもない。

はその通りでした。
ただ、後者は新型コロナウイルスだけの特徴ではなく、
感冒コロナウイルスにも共通するもので、
今回は「すべての世代が初感染」という特殊な状況のため、
臨床像が従来の感冒コロナウイルスとは異なる結果となった、
という背景がわかりました。

子どもがかかると軽く済むけど、
大人がかかると重症化しやすい感染症は他にもあり、
水痘や麻疹が有名ですね。

現在、新型コロナワクチンの4回目接種が話題になっています。
4/21時点では「高齢者とハイリスク患者に対して3回目から5ヶ月後を目安に接種予定」と報道されています。

今回は医療関係者は外されるようですね。

さて、このブログの内容から、
「新型コロナワクチンは何回必要か?」
という問いのヒントも見え隠れします。

高齢者は、
初感染だから重症化する、
複数回感染した後は重症化しにくい・・・

現在の mRNA ワクチン接種は、
自然感染より抗体価が上昇するという優れものです。

つまり、
「ワクチン1回接種≒自然感染1回」
と考えられるわけで、
すると高齢者はすでに3回感染しているのと同じ免疫状態と見なすことが可能、
よって延々とワクチン接種を繰り返す必要はない、
という視点も有りです。
今回の4回目接種は、
「念には念を入れて、3回よりは4回の方がより重症化しにくい」
というスタンスですね。

ただし、新型コロナウイルスが変異しない、という条件付。
もし大きく変異すれば、また話は変わってきますから。

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今シーズンのスギ・ヒノキ花粉は、まだ半分しか飛散していない。

2022年04月11日 22時23分04秒 | 小児科診療
気になるニュースが目にとまりました。

スギ・ヒノキ花粉 今シーズンの飛散は東京ではまだ予測の5割程度 終了時期はいつ?
2022年4月11日:tenki.jp)より抜粋;
東京都福祉保健局東京都アレルギー情報navi.のデータによると、今シーズン(1月4日から4月4日まで)、東京都千代田区のスギ花粉とヒノキ花粉合計の累積値は、2860.6個/㎠です。予測最大値(スギ・ヒノキ合計)は、5800個/㎠で、まだ予測の5割程度しか飛散していないことになります。

3月中旬から急に患者さんが増え、
「今年は去年よりひどいなあ」と感じつつも、
ようやくピークアウトしてきた印象を持っていましたが、
まだ半分残っている!?
・・・油断できません。

現在はスギ花粉はほぼ飛び終わり、
ヒノキ花粉に取って代わられているタイミングです。

でもスギ花粉に反応する人のほとんどが、
ヒノキ花粉にも反応するため、
4月いっぱいは症状に悩まされることになります。

私は患者さんに、
「GW開けまでは要注意!」
と説明しています。

さて、毎年このシーズンは花粉症情報をチェックしている私ですが、
案の定、昨シーズンもブログ記事を書いていました。

その中で、日本の各地域別花粉飛散状況図を引用しており、
今年の状況と単純比較ができます。

まずは昨シーズン(2021年)の図(ちょっと不鮮明);


「多い」が散見されますが「非常に多い」という表示はゼロです。
そして今シーズン(2022年)の図;


仙台・東京中心に、まだ「非常に多い」地域が認められますね。
今週半ばは台風1号の影響で天気が悪くなるため飛散数が一旦減りますが、
週末からまた「非常に多い」日が予測されています。

この図からも今シーズンの花粉は、
まだまだ飛びきっていないことがわかりますね。
予防や治療の手を緩めると飛散(悲惨)なことになりそうです。

花粉症の皆さん、ご注意ください。

という私自身も花粉症患者ですが、
マスクと花粉症対策ゴーグルを装着して、
近隣の桜巡りなんぞを楽しんでます。


今シーズンの花粉症関連記事
2022.3.27)関東地方では、そろそろスギ花粉→ヒノキ花粉の移行時期
2022.3.19)地球温暖化で花粉飛散数増加が止まらない。
2022.3.16)スギ花粉症、襲来!
2022.1.30)2022年、花粉症シーズン開幕。

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