新型コロナが登場してから約2年半が経過しました。
当初、正体不明の新たな病原体による“パンデミック”として、
人類を恐怖に陥れましたが、
少しずつその特徴が明らかになってきました。
私の認識は、ザックリ言うと、
・感染力が強く、無症状期から飛沫感染(エアロゾル感染)する。
・高齢者は重症化しやすいが、若年者・小児はそれほどでもない。
というものです。
では、この新型コロナ、歴史の中で恐怖番付上位のウイルスなのでしょうか?
昨日視聴した森内浩幸Dr.のセミナーの中に、そのヒントがありました。
結論は、
「新型コロナウイルスはふつうのかぜウイルスと同じかもしれない」
という、意外なもの。
そこに至るまでのお話をしましょう。
まず、コロナウイルスは昔から“風邪を起こすウイルス”(以後、“感冒コロナウイルス”と呼びます)として存在してきました。
小児科医は風邪の種類により季節の移り変わりを感じる人種です。
(冬)RSウイルス、インフルエンザ
(夏)プール熱(アデノ)、ヘルパンギーナ(コクサッキー)、手足口病(コクサッキー)
(春秋)ライノウイルス、コロナウイルス
と季節により流行するウイルスが異なり、
それぞれ症状に特徴があります。
というわけで従来は、感冒コロナウイルスは春と秋に流行る鼻風邪程度の認識でした。
森内先生の話では、
「年間を通して成人の風邪の原因は15%がコロナウイルス」
だそうです。
感冒コロナウイルスは4種類に分けられ、
その4種類とも4-6歳までに感染して免疫ができます。
果たして、感冒コロナウイルスはすべて軽症で済むのでしょうか?
感冒コロナウイルスも高齢者では重症化するという報告があります。
子どもでも2歳未満や基礎疾患のある場合は重症化することも報告されています。
あれ、この特徴「2歳未満・基礎疾患・高齢者は重症化しやすい」は、
新型コロナと共通しますね。
もしかしたら、
迅速検査がないので一般的に知られていないだけかもしれません。
では、従来の感冒コロナイウルスと新型コロナウイルスの最大の違いはなんでしょう。
それは“疫学像”と森内先生は指摘されました。
感冒コロナウイルスは、
・子どもでは風邪
・大人はすでに免疫があるのでかかっても軽症で済む
一方の新型コロナウイルスでは、
・子どもでは風邪
・大人も初めてかかるので免疫がないから(特に高齢者では)重症化しやすい
これを聞いて、私は“なるほど!”と大きく頷きました。
高齢者は免疫力が落ちてくるので、新たなウイルスに反応できず、
炎症を抑えきれずにこじれてしまうのですね。
さて、今回以前にも“新型コロナウイルス”が席巻するエピソードが20世紀以降、何回かありました。
略称でMERS、SARSと呼ばれています。
この2つは、おもに下気道(気管支・肺)で増殖するので重症化しやすいけど感染性は弱いという特徴がありました。
なので感染を抑え込むことができています(MERSは終息、SARSは消滅)。
しかし、感冒コロナウイルスと新型コロナウイルス(COVID-19)では、
上気道(咽頭・喉頭)でも増殖するので感染性が強く、
そして新型コロナでは無症状期から感染力があるため、
感染拡大を止められないでいます。
症状がない人から感染するなんて、
なんて賢い生き残り戦略なのでしょう。
脱帽するしかありません。
次に病毒性・致死率について触れてみます。
季節性インフルエンザと比較した致死率データは以下の通り;
・季節性インフルエンザ :0.01-0.09%
・新型コロナ(デルタ株) :1.2-1.6%
・新型コロナ(オミクロン株):0.13%
デルタ株は突出していますね。
オミクロン株になっても、まだ季節性インフルエンザより高く、
“オミクロン株になってふつうの風邪と同じレベルになった”
とは言いがたい事実。
オミクロン株は致死率は低くなったものの、
患者総数が多いため、
死亡者数は第5波(デルタ株流行)よりも多くなっています。
この現象は、
第5波のタイミングが高齢者の2回接種が済んだ頃で、
第6波のタイミングが高齢者の2回接種後半年以上経った頃、
という説明で理解できます。
“高齢者の3回目接種が遅れたことは岸田政権の決定的な失策である”と森内先生は指摘しています。
私の印象は、
安倍政権の尻拭いをさせられたのが管政権、
管政権の頑張りの恩恵を被って生きながらえているのが岸田政権、
・・・ですね。
さて、まとめてみます。
最初に書いた私の認識、
・感染力が強く、無症状期から飛沫感染(エアロゾル感染)する。
・高齢者は重症化しやすいが、若年者・小児はそれほどでもない。
はその通りでした。
ただ、後者は新型コロナウイルスだけの特徴ではなく、
感冒コロナウイルスにも共通するもので、
今回は「すべての世代が初感染」という特殊な状況のため、
臨床像が従来の感冒コロナウイルスとは異なる結果となった、
という背景がわかりました。
子どもがかかると軽く済むけど、
大人がかかると重症化しやすい感染症は他にもあり、
水痘や麻疹が有名ですね。
現在、新型コロナワクチンの4回目接種が話題になっています。
4/21時点では「高齢者とハイリスク患者に対して3回目から5ヶ月後を目安に接種予定」と報道されています。
今回は医療関係者は外されるようですね。
さて、このブログの内容から、
「新型コロナワクチンは何回必要か?」
という問いのヒントも見え隠れします。
高齢者は、
初感染だから重症化する、
複数回感染した後は重症化しにくい・・・
現在の mRNA ワクチン接種は、
自然感染より抗体価が上昇するという優れものです。
つまり、
「ワクチン1回接種≒自然感染1回」
と考えられるわけで、
すると高齢者はすでに3回感染しているのと同じ免疫状態と見なすことが可能、
よって延々とワクチン接種を繰り返す必要はない、
という視点も有りです。
今回の4回目接種は、
「念には念を入れて、3回よりは4回の方がより重症化しにくい」
というスタンスですね。
ただし、新型コロナウイルスが変異しない、という条件付。
もし大きく変異すれば、また話は変わってきますから。