徒然日記

街の小児科医のつれづれ日記です。

ポリオ・ワクチン、いよいよ生→ 不活化へ移行

2012年08月30日 06時11分06秒 | 小児科診療
 来る9月1日に従来のポリオ生ワクチンが不活化ワクチンへ移行します。
 関連記事を2つ;

ポリオ生ワクチン、乳児の接種控え顕著 広島県内、今春13・4ポイント減78・8%
(2012年8月21日:中国新聞)
 ポリオ(小児まひ)の予防接種で今春、広島県内で生ワクチンを投与した乳児の割合が78・8%にとどまり、昨春より13・4ポイント減少した。副作用がないとされる不活化ワクチンの導入が9月に迫る中、接種控えが増えたとみられ、山口県でも同様の動きが出ている。予防接種が9月に集中すると、不活化ワクチンが不足する事態が懸念される。
 2010年までの接種率はほぼ100%だった。だが生きたウイルスの毒性を弱めた生ワクチンでは、ごくまれにまひを生じる恐れがあり、保護者たちに生ワクチンへの抵抗が広がった。11年春に92・2%(全国84・2%)、同秋には90・5%(同76・2%)と減少。不活化ワクチンの導入時期が明らかになった今春、接種控えがさらに加速した。
 不活化ワクチンが導入される9月に、接種希望者が一気に押し寄せると、ワクチンが足りなくなる事態も起きかねない。広島県健康対策課は「ワクチンメーカーの製造計画をみると、本年度内の不活化ワクチンは十分足りる。9月初めに集中しないで、あせらず接種を計画してほしい」と呼び掛けている。


 生ワクチンの接種控えと不活化ワクチン不足を懸念している内容です。
 次の記事は、不活化ワクチン接種の際の注意事項;。

不活化ポリオワクチン導入へ 接種の注意点は
(2012年8月28日:東京新聞)
 ポリオ(小児まひ)の予防接種が9月、現行の生ワクチンから不活化ワクチンに切り替わる。移行期には、それまでに子どもがどのワクチンを何回接種したかによって、今後の不活化ワクチンの接種回数が違ってくる。保護者がスケジュールを管理する上で、必要なポイントをまとめた。 
 不活化ワクチンはポリオウイルスの病原性をなくし、免疫を作る成分だけを取り出して製造される。生ワクチンと違って、ポリオを発症する恐れがない。
 生ワクチンは二回、口から一滴ずつ飲むだけだったが、不活化ワクチンは皮下注射を四回打つ必要がある。また、多くの市区町村では、春と秋に生ワクチンの定期接種を実施してきたが、九月以降は個別に医療機関で不活化ワクチンを接種することになる。原則無料で通年、接種できる。
 九月に導入されるのはフランスのサノフィパスツール社製の単独の不活化ポリオワクチン。十一月には、阪大微生物病研究会と化学及血清療法研究所がそれぞれ製造したジフテリア、百日ぜき、破傷風の三種混合と不活化ポリオを合わせた四種混合ワクチンの導入が予定されている。対象が生後三カ月からなので、厚生労働省は八月以降に生まれた子どもについては四種混合を勧めている。



 一方、これまでに
(1)生ワクチンを一回接種
(2)独自に不活化ポリオワクチンを一回以上接種
(3)三種混合ワクチンを一回以上接種
-のいずれかに該当する子どもは、単独の不活化ワクチンを接種することになる。図に示したように、すでに受けたワクチンの内容や回数によって、今後の不活化ワクチンの接種回数が異なるので、注意が必要だ。また、厚労省はこれまで生ワクチンの接種を控えてきた子どもについて、四種混合の導入を待たず、早めに単独ワクチンを接種するよう勧めている。
 同省の検討会のメンバーで、川崎医科大小児科学の中野貴司教授は「ワクチンは対象の月齢に達したら、なるべく早く接種して、病気を防ぐことが望ましい。かかりつけ医と相談して、焦らず、着実に打ってほしい」と話している。


 もうひとつ、こんな記事を見つけました;

子どもの予防接種 メールでお知らせ 大和市、全国初
(2012年8月29日:東京新聞)
 大和市は二十八日、子どもの予防接種のスケジュールを携帯電話やスマートフォン(多機能携帯電話)のメールで通知するサービスを十二月から始めると発表した。市によると、全国初の試み。九月三日開会の市議会定例会で、関連予算六十七万五千円を含む補正予算案を提出する。
 市によると、子どもの生年月日と希望の予防接種を登録すると、接種スケジュールが示され、それぞれの時期が近づくとメールで通知する。運営は、同様のサービスを有償で行っている民間会社に委託する。市は未就学の子どもを持つ世帯の約半数が登録すると見込んでいる。
 市では、予防接種の時期に保護者へ案内状と接種券を郵送しているが、集団接種のポリオ(小児まひ)ワクチンなども忘れられるケースもあった。予防接種の種類や回数、時期などが複雑になっていることが原因とみて、メールを活用することにした。


 これ、よさそうですね。

<追記:2012.9.7>
 当院でも接種予約を開始しました。
 ところがここでブレーキがかかる事態が発生・・・ワクチンが手に入らないのです。
 あれだけ準備期間があったのに、供給に問題ないとメーカーが保証していたのに・・・やはり日本のワクチン行政はお粗末と云わざるを得ません。

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第22回日本外来小児科学会へ参加してきました。

2012年08月26日 13時25分47秒 | 小児科診療
8/25-26に横浜で「第22回日本外来小児科学会」が開催されました。
この学会は、勤務医中心の日本小児科学会と異なり、開業医中心の学術団体です。
医師のみならず、コ・メディカルの参加も多いのが特徴です。

さて、私が参加したのは
やってみよう、小児漢方! ~子どもへの漢方薬の投与方法について~
というワークショップです。
メインの内容は、漢方エキス剤をいろんなもの・食材と混ぜて味がどうなるか実際に試すこと。
6つのテーブルに、実に様々な食材が並びました。
甘いもの系(ハチミツ、チョコなど)、ヨーグルト・アイス系、調味料系(みそ、ごはんですよ等)、おくすりゼリー系、ジャム系、etc...。

参加した小児科医・薬剤師・看護師さん達は、調理実習のように皆楽しんでいた様子。
私もいくつか新しい発見がありました。
明日からの診療に役立てたいと思います。
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「香港政府、日本製の粉ミルク2製品を販売停止 」

2012年08月13日 09時17分01秒 | 小児科診療
ドキッとするニュースです。まさか放射能が検出されたのでは・・・と心配しましたが、真実は「ヨウ素不足」でした。

香港政府、日本製の粉ミルク2製品を販売停止(2012/8/9 日本経済新聞)
 香港政府は8日夜、成分が基準を満たしていないとして日本製の乳児用粉ミルク2製品の不買を呼び掛けるとともに、販売停止にすると発表した。対象は日本の和光堂の「はいはい」と森永乳業の「はぐくみ」。
 香港政府はヨウ素の含有量が世界保健機関(WHO)の基準に比べ少なく、甲状腺機能や脳の発育に影響を及ぼす恐れもあるとしている。
 和光堂は「日本の法律で定める規格基準に基づいて製造されており、安心して使用できる」とコメントした。
 香港政府が市販の14の粉ミルクのカロリー量や基礎的な栄養素の含有量を調べて判明。対象の2製品は水に含まれるヨウ素分を含めてもWHOの基準の3分の1以下だったという。
 香港政府は9日から、指定した医療機関で対象の製品を飲んだ乳児の甲状腺機能の検査を受け付けることを決めた。


日本人はふだんの食生活で欧米の約7倍のヨウ素を摂取しているそうです。ですから、ヨウ素不足よりヨウ素過剰摂取が心配になるレベル。当然、育児用ミルクにも添加されていません。
海のものを日本人ほど食べない民族では、育児用ミルクに添加を義務づけている国々もあるという事情を今回初めて知りました。

■ 森永、和光堂「日本では問題ない」 香港当局回収の粉ミルク(2012.8.9 産経新聞)
 森永乳業と和光堂(東京)の粉ミルクに含まれるヨウ素が世界保健機関(WHO)の推奨する量に達していないとして香港当局が回収を指示した問題で、森永乳業は9日、「日本では日本の基準に沿って商品を製造しており問題ない」とコメントした。
 和光堂の親会社であるアサヒグループホールディングスも「基準は各国で異なる。日本では消費者庁から許可を得ているので安心して使用してもらえる」としている。
 森永によると、日本人は海藻からヨウ素を多く摂取するため、日本の基準はヨウ素の添加を認めていない。一方、中国など大陸では食物からヨウ素を摂取しにくく、推奨基準を設ける国もある。


参考「健康食品」の安全性・有効性情報 より

E.ヨウ素不足の問題
ヨウ素不足はどのようにして起こるのか?
ヨウ素不足は食品からの摂取不足により起こります。海に囲まれ、海産物を主とした高ヨウ素摂取の伝統的食習慣を持つ日本では、ヨウ素の摂取量が必要量を大幅に上回り、不足が問題となることはありませんが、世界的には不足が起こりやすいミネラルです。

F.ヨウ素過剰摂取のリスク
健康な人では、ヨウ素の摂取量が多少増えても、排泄により調節することが出来ますが、長期間の過剰摂取により、過剰症が起こることがあります。日本人は、その伝統的食習慣のために、ヨウ素の過剰摂取に対する影響が発現しにくい民族であると考えられていますが、日本でも海藻の多量摂取による過剰症の報告があります。ヨウ素を過剰に摂取すると、甲状腺機能低下症、甲状腺腫、甲状腺中毒症が起こります。この他、体重減少、頻脈、筋力低下、皮膚熱感などの症状が見られることもあります。食事摂取基準では、日本人の食生活の現状に合わせた上限量を算定しています
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インフルエンザの話題2つ

2012年08月13日 07時32分17秒 | 小児科診療
 猛暑の候、インフルエンザなんて忘却の彼方・・・と思いきや、下記ニュースが流れました。

■ 沖縄、夏でも季節性インフル流行 高齢者の割合高め(2012年8月11日 朝日新聞)
 季節性インフルエンザが沖縄県で流行している。県内全域で注意報が発令されており、一部の地域では警報レベル。発症すると重症になりやすい60歳以上の患者が多く、注意が必要だ。
 季節性インフルエンザは冬に流行するが、亜熱帯海洋性気候の沖縄では夏に流行することがある。2006年以来となる今回は、学校が夏休み期間に入って患者は減少傾向だが、60歳以上が全体の2割弱と通常より高い割合を占める。全国的には流行はみられない。


「夏でも沖縄ではインフルエンザが流行する」知識が小児科医の間で一般化したのは10程前と記憶しています。今年は話題にならないなあ、と思っていたところにこのニュースを目にしたのでした。

■ 米国内で豚インフル感染者急増、1週間で9倍に(2012年8月10日 読売新聞)
 【ワシントン=中島達雄】米疾病対策センター(CDC)は9日、米国内で新型の豚インフルエンザウイルス「H3N2変異型」に感染する人が急増していると発表した。
 7月以降に確認された感染者数は、8月9日現在で145人。3日には16人だったのが、約1週間で9倍に増えた。今後も増える見通しだという。
 9割以上が子供で、大半は地域の農業フェアなどで豚と接触していた。感染の中心はインディアナ州(113人)とオハイオ州(30人)。145人中2人が入院したが、いずれも既に退院した。死者は出ていない。
 このウイルスには、2009年に大流行したインフルエンザウイルス(H1N1)の遺伝子の一部が混ざっている。人間同士の感染はまだ限られているが、CDCは「感染しやすい性質に変わる可能性がある」として警戒している。


 こちらは新型インフルエンザ(pandemic2009)関連の話題です。H3N2タイプは本来「A香港型」ですが、それにH1N1遺伝子が混ざったハイブリットタイプが検出されたという内容。
 今のところ「ブタ→ ヒト」ルートのみのようですが、変異して「ヒト→ ヒト」ルートでの感染力を獲得すると、大流行する可能性が出てくるのが問題です。


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熱波の街・館林

2012年08月05日 19時01分08秒 | 日記
今年も館林は暑い。
7月下旬は連日日本一の最高気温を記録していました。
この1週間は西日本に首位の座を明け渡していましたが、今日は暑いなあと思ったら、37.9℃とやはり日本一。

件名は昨日(8月4日)の朝日新聞の「記者有論」(太田支局長・戸梶雄一氏)の題目です。
一部を抜粋します;

 群馬県館林市は、埼玉県熊谷市と並ぶ「日本一暑いまち」。今夏を通じて全国最高の39.2℃を7月17日に観測、35℃以上の猛暑日が今月3日まで9日間続いた。
 館林の暑さは年々、増している。年最高気温を見ると、
 1982年:34.6℃
 1992年:38.0℃
 2002年:38.5℃
 2007年:40.3℃
 2011年:39.3℃

 なぜ、暑くなっているのか。
 前橋地方気象台によれば、要因の一つが、ヒートアイランド化した都市部の空気が流れ込んでいること。館林は、関東平野が山地の屏風に突き当たる場所にある。首都圏の生活排熱が昼間の海風に乗り、地熱でさらに温まりながら押し寄せる。山越えのフェーン現象も重なっているらしい。
 館林の暑さは首都圏とリンクしており、首都圏で「暑い暑い」と冷房を利かせれば、排熱が出て館林が暑くなるわけだ。


 なんということでしょう!?
 首都圏のエアコン使用の尻ぬぐいをさせられているとは、心穏やかに受け入れることができません。

 でもこの記事を読んで、老タクシー運転手の昔話を思い出しました。
 「第二次世界大戦中、太田地区は集中爆撃を受けた。飛行機工場があったのが理由だが、東京からの気流がちょうどこの辺りに下りてくるので、狙いやすかったと聞いている。」
 というものでした。

 どうやら、首都圏から迷惑なものを運んでくるのは昔も今も変わらないようです。
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BCGの接種期限が1歳までに延長

2012年08月03日 05時58分38秒 | 小児科診療
 近年、乳児期前半に接種すべきワクチンの数が増えて、こなしきれない混乱状態が問題になっていました。

 一つの要因として、BCGの存在があります。
 BCGは生ワクチンのため、接種後次のワクチンまで4週間開ける必要があります。ですから、現場としては他のワクチンとの同時接種をしたいところです。
 しかし、集団接種で行っている自治体がまだ多く、同時接種が行えない状況です。
 集団接種会場でBCGを受け、その足で病院・医院へ行き他のワクチンを受ける・・・この方法は「同時接種」とはみなされず「同日接種」という表現になり、厚生労働省は同日接種を認めていないのです。
 事なかれ主義の腰の引けた予防接種行政がまだ残っていて、予防接種スケジュールの交通整理の足かせとなっているのが現状です。
 そこに件名のニュースが入ってきました;

BCG、生後1歳までに…予防接種ラッシュ緩和
(2012年8月1日 読売新聞)
 厚生労働省の厚生科学審議会結核部会は1日、結核予防のために「原則、生後6か月未満までに受ける」とされているBCGの接種について、期間を「1歳まで」に拡大する案を了承した。
 今後、同審議会の予防接種部会での検討を踏まえ、予防接種法に基づく政令を改める。
 乳児に求められる予防接種は、BCGのほか、DPT(ジフテリア・百日せき・破傷風混合ワクチン)やポリオ、ヒブ(インフルエンザ菌b型)、小児用肺炎球菌など多数ある。接種後、別のワクチン接種までには1~4週間空けるのが一般的で、乳児の過密な予防接種スケジュールの緩和が求められていた。
 BCGの接種では、早いほど髄膜炎など重い症状のリスクが減らせる一方、早すぎると結核菌が原因の骨髄炎などが増える可能性が指摘されている。同省は接種年齢を1歳までとした上で、望ましい時期を別に定める方針で、1日の部会では、「5か月以上8か月未満とすべき」との意見が多く出た。


 これが実現すればBCGを乳児期後半にも行えるようになるようなので、前半のワクチンラッシュが少し緩和されることになります。以前から挙がっていた小児科医の声を反映したものと推察されます。

 最近「アメリカにおける予防接種の予診表」を世界の予防接種事情に詳しい小児科医から教えていただきました。
 その解説部分を読むと、日本と大きく考え方が異なることがわかります。
 軽度の感染症(中耳炎、上気道炎、下痢)は予防接種を中止する理由にならないとか、妊娠中の不活化ワクチン接種は問題ないとか、不活化ワクチンの接種時期には制限がないとか、明記されているのです。
 某国の役人に読んでいただきたい内容ですね。

<参考HP>「KNOW★VPD
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