徒然日記

街の小児科医のつれづれ日記です。

圓楽襲名

2010年02月28日 19時41分48秒 | 日記
6代目「三遊亭圓楽」の誕生を『笑点』で知りました。
楽太郎さんが襲名したのです。
大喜利でお馴染み仲間達がお祝いの挨拶をしたのですが、皆ケチョンケチョンにこき下ろす始末。
愛されているんだか嫌われているんだか、ワケわかんない「お披露目」でした。

思い起こせば、私が子どもの頃の『笑点』の司会者は三波伸介さん。
最高視聴率40%を越えたこともある歴史的人気番組です。
大喜利の真ん中には先代(5代目)圓楽さんが鎮座し、場を盛り上げていました。
風流で、ワサビの利いたご時世批判もちょっぴり入り、切れのある回答・・・正統派・王道を行くという佇まいのある粋な落語家でした。
一歩下がってひねりを利かせた回答で名脇役を務めた小円遊さん(故人)の存在感も捨てがたかった。
座布団運びの松崎真さんの「横断歩道、手を挙げて渡りましょう」の決まり文句も懐かしい。
6代目圓楽はちょっと小粒ですが、これから大きく羽ばたいていただきたいと思います。

昔から日本の家庭にとって、日曜日夕方は家族団らんの時間でした。
笑点に始まり、サザエさんを見て、家族みんなで「アッハッハッ」と笑って・・・。
途中からちびまる子ちゃんも仲間入りしましたが、こちらも今年で20周年なんですね。

こららの番組に共通するのは「勧善懲悪」という要素がないことです。
つまり「戦い」がない。
現在、人気のあるアニメは少なからず敵味方・戦いが描かれています。
ポケモンは疑似ペットを戦わせ、アンパンマンでさえバイキンマンとの戦いの構図を捨てられないのはちょっと悲しい設定です。

最近、カーステレオで「落語」を聞くようになりました(年ですねえ)。
昔の名人芸を集めたCD集。
「話芸」とは云いますが、ホントにみんな話がうまい!
その名調子に思わず引き込まれてしまいます。

江戸の長屋暮らしの日々のできごとを題材にしたものが多いのですが、みな貧乏で、でも結構おもしろおかしく生活している様子がうかがわれて微笑ましい。
今で云えば「サザエさん」に似ているのかもしれません。

人と人との距離が近かったんだなあ、と感じます。
仕事上、左官屋とか豆腐屋とか役割分担がはっきりしているので、他人を踏みつけてのし上がろうという雰囲気がない。
「あいつはいいやつだか、あそこが気にくわねえ」などと、お互い長所短所を認め合った上でつき合っている。
長屋の壁は薄くて、話は筒抜けでプライバシーなんてあったモンじゃない(苦笑)。

そう、仲間に囲まれて安心するのが人間の性だったはず。
一人になるとホッとするようになったのはいつからなんだろう。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

「痛いの痛いの、飛んでゆけ~」

2010年02月25日 18時54分15秒 | 小児科診療
 子どもが怪我などで痛い思いをしたとき、お母さんが発する決まり文句・・・でしたけど、最近あまり聞かなくなりました。なんでかなあ?

 小児科の診察室で経験する「痛いこと」と云えば、なんといっても「予防接種」。
 一度経験すると、トラウマになってしまう子どもがいます。
 その後しばらくは診察室に入ると泣き出して診察できなくなることもまれではありません。

 一方、注射の際に子どもではなく『お母さんウオッチング』をするとバラエティに富んだ反応を見せてくれます;

「痛くない、ぜんぜん痛くない、ほうら終わっちゃった~」(①)
「我慢しなさい! 男の子(お兄ちゃん/お姉ちゃん)でしょ!」(②)
「痛かったね、そうだよね~、痛いの痛いの飛んでゆけ~!」(③)

 自分が子どもだったらどんな風に感じるでしょうか。(カッコ)に気持ちを入れてみてください。

 私だったら・・・
(①)(痛いよ~、お母さんの嘘つき!)
(②)(痛い! 涙が出ちゃう・・・我慢したんだからお菓子買ってよ。)
(③)(ウン、飛んでいって痛くなくなったような気がする)
 と、こんなところでしょうか。

 最近読んだ『金子みすゞのこころ』(佼成出版社、2002年発行)という本の中に「痛いの痛いの飛んでゆけ」という文言が取り上げられていました。
 彼女の詩はTV-CMでお馴染みですね; 

 青いお空の底ふかく、
 海の小石のそのように、
 夜がくるまで沈んでる、
 昼のお星は眼に見えぬ。
   見えぬけれどもあるんだよ、
   見えぬものでもあるんだよ。

 これは「星とたんぽぽ」という作品の前半部分です。
 もう一つ、彼女の詩をどうぞ;

ー こだまでしょうか ー

 「遊ぼう」っていうと
 「遊ぼう」っていう。

 「馬鹿」っていうと
 「馬鹿」っていう。

 「もう遊ばない」っていうと
 「遊ばない」っていう。

 そうして、あとで
 さみしくなって、

 「ごめんね」っていうと
 「ごめんね」っていう。

 こだまでしょうか、
 いいえ、誰でも。


 この詩に寄せた矢崎節夫さん(金子みすゞの詩を発掘して世に広めた方です)の文章にドキッとしました。

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
 
 こだまとは ”丸ごと受け入れる” ということです。
 かつて、私たちの周りにいてくれた、すてきな大人の人たちは、こだましてくれる人たちでした。
 転んで「痛い」といった時、両親は「痛いね」と、私の痛さを丸ごと受け入れてくれて、返してくれました。
 「痛いね」と返してくれた時、私の痛さは半分になることができたのです。
 おじさんやおばさんはもっと上手に「痛いね、痛いね、かわいそうだね」と何度も何度も繰り返してくれたあとに「痛いの、痛いの、飛んでいけ」とことばをかけてくれたので、私の痛みは完全に消えることができました。
 しかし、今、私を含めた多くの大人が、こだますることをしないで、一方的に否定し、一方的に励ましていないでしょうか。
 転んで「痛い」といった時、「痛くない」といっていないでしょうか。すぐに「がまんしろ」といっていないでしょうか。
 痛さを否定し、励ますだけで一度もこだましてあげることをしなければ、痛さは消えることなく、生のまま、こころの中の辛さやさみしさや痛さという器に、押し込めるしかないのです。
 そして、中学生くらいになると、その器がいっぱいになってしまう子がいるのです。
 その子が新しい辛さや痛さに出会ったとき、もう入れることができませんから、一度、思い切って、その器をひっくり返すしかないのです。

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

 子どもの気持ちを受けとめること、寄り添うことが大事なのですね。
 小児精神医学専門医が書いた多くの本にも同じ事が記してあります。

 診察の度に泣いてしまう子、結構います。
 所見は取りづらいけど、大きな声で泣いているから、まあいいか。
 ぐったりしているわけじゃないから、ね。

 この子は何歳になったら泣かないで診察できるようになるかなあ・・・
 と観察していると、だいたい3歳頃には大丈夫になることが多いようです。

 私はこの地で10年以上小児科医として診療しているので、昔泣き虫だった子ども達はもう中高生。
 成長してたくましい青年や花が咲いたような女性になった姿をたまに見せてくれると「あらら、立派になっちゃって・・・」と感慨に耽るのでした。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

バンクーバー・オリンピックの注目選手

2010年02月20日 22時57分10秒 | 日記
開催中のバンクーバー・オリンピック。
カーリング、盛り上がってますねえ。選手は皆いい表情をしてます。
さて、私が個人的に注目している選手が3人います。

■ 高橋大輔(フィギュア・スケート)
 昨日銅メダルを取りました。
 膝の靱帯切断という致命的な怪我を乗り越えてのオリンピック。
 苦難を乗り越えてのドラマに日本人は弱いんです。
 彼の表現力は天下一品。思わず見とれてしまう・・・。
 トリノ惨敗以降の4年間を凝集した彼の渾身の演技を観ると、感動して目が汗をかいてしまいます。

 プルシェンコなんて4回転ジャンプだけだから観ててもつまんない。
 でも彼の「4回転ジャンプのない演技は男子フィギュアじゃない、アイスダンスだ。」という王者らしい言葉は重みがありました。
 織田選手は靴紐が切れるという信じられないアクシデントに見舞われましたが、4回転を封印したのは残念。
 高橋選手は失敗を恐れず4回転ジャンプに果敢に挑みました。
 「4回転ジャンプを含めた自分の全てを出し切る演技がぼくのオリンピック」と言い切った。ブラボー!

■ 安藤美姫(フィギュア・スケート)
 ミキティもトリノ惨敗の後遺症でしばらくなりを潜めていましたが、最近の演技は一皮むけた感じがします。
 昔はジャンプを失敗するとそれを引きずって演技が壊れてしまいがちでしたが、今はプレッシャーをサラッと流して別世界へ行っているよう。
 高橋選手同様、やはり表現力がすばらしい。
 彼女のスケーティングに『祈り』を感じるのは私だけでしょうか。

 一番注目されている浅田真央ちゃん。
 キム・ヨナの真似をして小悪魔を演じるのは無理があると思います。
 彼女の華やかな雰囲気を生かした正統派の演出の方がいいのに・・・。

■ 葛西紀明(スキー・ジャンプ)
 なぜか私はスキーのジャンプ競技が大好きで、高校生の頃から毎冬楽しみに見てました。
 あの頃は『鳥人ニッカネン』の全盛期。
 日本選手では秋元正博や八木弘和(レークプラシッド・オリンピックの銀メダリスト)が活躍してました。

 その二人と世代交代して登場してきたのが原田雅彦と葛西紀明です。
 原田選手も記憶に残る人でしたが、既に引退。今は全日本のコーチですね。
 葛西選手はオリンピック出場6回目と、鉄人道をまっしぐらに進んでいます。
 最初は1992年のアルベールビルですから競技人生が異常に長い。
 ジャンプは瞬発力が勝負の競技、37歳の彼が20代の選手と渡り合えるなんてどんな運動神経をしているんだろう。
 そういえば今回注目選手の一人だった岡部選手の名前を聞きませんね・・・よほど体調が悪いのかなあ。

 葛西選手の競技人生の中で印象に残っているのは、スキー板が体の後方に広がるムササビ飛型で距離を伸ばし、世界から「カミカゼ」と恐れられた頃。
 大倉山のバッケンレコードも何回も更新し「どこまで飛ぶんだ~」とハラハラドキドキして観てました。
 ワールドカップ優勝は15回を数え、船木選手と共に日本人タイ記録保持者です。

 でも、オリンピックなどのビッグタイトルには縁がないんですよねえ。
 そのせいか、いつも主役は他の選手で、脇役にまわる微妙な立場。
 ですから、恐らく今回が最後の晴れ舞台になるでしょう。
 ラージヒル予選は1位通過と上り調子(ただし上位10人は免除なので実質11位?)。
 是非、メダルを取って名前を残して欲しい・・・応援してます!

★ 葛西選手の妹は再生不良性貧血を患っていることが昔ニュースで流れましたが、その後どうなったんだろう・・・。

2/21朝:競技が終わりました。葛西選手は8位入賞!
 1回目は不本意でしたが、2回目で135mの葛西選手らしい大ジャンプを披露してくれました。
 おつかれさま、と云いたいです。
 あ、まだ団体が残っていた・・・。

2/23:団体戦が終わりました。結果は5位入賞。
 葛西選手の2回目は140mの大ジャンプ!
 始めから最後まで「主役」を立派に勤めました。
 ホントに、ご苦労様。
 出場の機会がなかった岡部選手もご苦労様でした。

 
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

立松和平さん逝く

2010年02月10日 06時46分46秒 | 日記
作家、立松和平さんの訃報がTVから流れました。享年62歳。
死因は解離性大動脈瘤~多臓器不全とのこと。

栃木県出身の同郷ということで親近感を覚える作家でした。
あの朴訥な栃木弁を聞くと、何だかホッとするのです。
栃木県の農家を題材にした映画「遠雷」では衝撃を受けましたし、医学学会の特別講演で聴いたお話はとても印象に残っています。
スギ花粉症増加に関して「私はスギ林が余りに過密な植え方をされ、長生きできないことを樹木自身が感じ取り、悲鳴を上げるがごとく花粉をたくさん飛ばしているように思われます」とコメントされ、その文学的な捉え方に目から鱗が落ちました。

TV露出の多かった1980年代後半~1990年代前半、私は大学生でTVの無い生活を送っていたのでよくわかりませんが、茶の間でお馴染みのタレントのような活動だったらしいですね。
私には、知的好奇心の塊で「現場を見て歩き考える環境問題発信者」というイメージが強い人物でした。
彼が残した著書をゆっくりかみしめながら読みたいと思います。

ご冥福をお祈りします。合掌。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

全豪オープン決勝「フェデラー vs マレー」

2010年02月01日 06時57分01秒 | テニス
 WOWWOWで見ました。
 2010年の決勝は、王者フェデラー(スイス、28歳)vs 挑戦者マレー(イギリス、21歳)。

 フェデラーは押しも押されぬ世界ランク1位を独走するマルチプレーヤ-。ウィンブルドン6回優勝の歴代タイ記録保持者であり、現役にもかかわらず伝説化しつつあるビッグネームです。
 一方世界ランク5位のマレーは、イギリスから登場した若手のホープ。

 このカード、前から見たかったんです。
 正当派フェデラーとくせ者マレー。
 昨年のウィンブルドンでも決勝で当たりそうでしたが、マレーが惜しくも準決勝で負けてしまい、実現せず。
 実はマレーは何回もフェデラーに勝ったことがあるんですね。

 さて、マレーのグランドスラム初優勝なるか、と注目の一戦でしたが・・・結果は3-0のフェデラー圧勝に終わりました。
 がっぷり四つの見応えあるゲームを期待していたので、少し残念。
 第1セットこそマレーが押していましたが、安定感のあるフェデラーが立ちはだかりました。

 グランドストローク戦が中心で、ネットプレーはほとんどありません。
 腰を気にするマレーのサーブは切れが今ひとつで、成功率も低い。
 ストローク戦でもマレーは押されがち。
 マレーが勇気を振り絞って打ったショットで攻めるけど、フェデラーはそれをしのぎ、ちょっと球筋が甘くなると攻めに転じてポイントを稼ぐ。
 そのくらいの差がありました。

 なにしろ、フェデラーの動きは自然体で練習でもしているかのよう。
 難しいショットも難なく決める彼の真骨頂です。
 自分のミスショットにもクールな表情で、ひとしきり悔しがるマレーと好対照でした。
 マレーが勝つとしたら、フェデラーがよほど不調か、マレーがひと皮剥けてふだん以上のプレーを維持するか、かな。

 昨今、衰えてきたと評されがちなフェデラーの健在ぶりを見せつけられたゲームでした。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする