徒然日記

街の小児科医のつれづれ日記です。

新型コロナ感染対策で、激減した感染症・減少した感染症・減らない感染症

2022年03月27日 20時02分09秒 | 小児科診療
新型コロナ禍で、生活が一変しました。
“三密”(密集、密閉、密接)を避け、
手洗い励行、
そして究極は“ユニバーサルマスク”。

しかし、新型コロナは消えません。
その理由は、
“エアロゾル感染”と“無症状者からの感染”
という強力な武器を持っているからです。

エアロゾル対策は、
ユニバーサルマスク(症状がない人でもマスク着用)でも防ぎきれない。
って、どうすればいいの?

エアロゾルの大きさは、タバコの煙の粒子とほぼ同じです。
タバコを屋内で吸うと、
その部屋は換気してもしばらくタバコのにおいが残りますよね。
そのイメージです。
もし新型コロナに感染している人がその部屋でしゃべったら、
タバコの煙のニオイを消すほど徹底的に“換気”をしないと、
新型コロナウイルス粒子はなくならないのです。

一方、新型コロナが登場してから、
インフルエンザの流行は消えてしまいました。
2021年冬も2022年冬も、
当院で「インフルエンザ」と診断した患者さんはゼロ。

小児科医生活30余年、
こんな経験は全く持って初めてです。

他の感染症も軒並み激減しています。
その状況をわかりやすくグラフで提示していましたので、
一部引用させていただきます。

【溶連菌感染症】

溶連菌は飛沫&接触感染です。
手洗い&マスクで激減。

【インフルエンザ】

新型コロナが登場したのは2019年末。
2020年1月にインフルエンザが流行りはじめたタイミングで、
日本に入ってきました。
するとインフルエンザはピークを迎える前に流行がしぼみ、
それから2シーズン、ほとんど流行していません。

新型コロナ以前でも今くらい感染対策をすれば、
インフルエンザ流行は制圧できたのでしょうか。
それとも、インフルエンザと新型コロナが入れ替わるような、
なにかウイルス界のバランスが働くのでしょうか・・・。

【咽頭結膜熱】

別名「プール熱」。
原因はアデノウイルスで、飛沫&接触感染ですが、
結膜炎由来の“目やに”が強力な感染力を持つのが特徴です。
それから、便の中にもしばらく排泄されます。
ふつうのカゼの咳の飛沫だけでなく、目やにと便が加わり、
流行は減少したものの、ゼロ近くまでは減っていません。

【感染性胃腸炎】


ノロとかロタによるウイルス性胃腸炎です。
例年より少なめで推移していますが、インフルエンザほど激減はしていません。
感染性胃腸炎は、嘔吐物と排泄便の中にウイルス粒子がたくさんいます。
下痢便1g中に“億”の単位のウイルスがいるとか。
そして、そのうち10個が口に入ると感染が成立します。
恐ろしい感染力・・・保育園などでは流行が止められない理由です。

【突発性発疹】

ヒトヘルペスウイルス6と7(HHV6/7)が原因の感染症です。
これは例外的に減少していません。
HHV6/7は、子ども同士で感染するのではなく、
お母さんからもらってしまう感染症といわれています。
ヘルペスウイルスの仲間は、
ヒトに感染して症状が出て治ってからも居座る性質があります。
身近な例として、水ぼうそう/帯状疱疹や口唇ヘルペスが挙げられます。
突発性発疹の原因もヘルペウイルスの仲間なので、
1歳前後で感染して治っても身体の中に潜んでいるらしい。
大人になって、体調が悪いと口や鼻から出てきて、
それが赤ちゃんに感染する、というカラクリです。

以上、前代未聞の新型コロナ感染対策により、
激減した感染症、
減少した感染症、
あまり変わらない感染症、
等を見てきました。
みんな、それなりの理由があるのですね。
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関東地方では、そろそろスギ花粉→ヒノキ花粉の移行時期

2022年03月27日 07時02分16秒 | 小児科診療
2週間ほど前からスギ花粉症患者さんが一気に増えて、
「スギ花粉症、襲来」という文章を書きました。

現在は一時期よりもやや勢いが落ちていますが、
さて、今後はどうなるでしょう。


まず、“桜前線”同様日本全国一様ではなく、
地方によって差があるようです。
下の日本地図では、きれいに分かれていますね。


群馬県は・・・まだスギ花粉がメイン、
今後ヒノキ花粉に代わっていくことが予想されます。

ただ、スギ花粉がヒノキ花粉にパッと代わるわけではなく、
オーバーラップしながら徐々に入れ替わります。


上図は山梨県の予測グラフですが、
日本全国の予想は以下の棒グラフに示されています;



「私はスギ花粉症だから、ヒノキ花粉は関係ない」
と思っているあなた、それは違います。

スギ花粉に反応する人は、8割以上がヒノキ花粉にも反応します。
なので、あと一か月は症状が続くと思われます。

私は患者さんに、
「GWで症状が消えるでしょう」
「GW明けも症状が残るようなら、それはイネ科花粉症です」
と説明しています。

では皆さん、あと一か月は花粉に注意して過ごしましょう。
かくいう私もスギ花粉症患者なので、
コロナ自粛&スギ花粉症自粛のダブル自粛で、
ほぼ引きこもり生活です。

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開業医の平均年齢は60歳超

2022年03月25日 08時23分46秒 | 小児科診療
かくいう私も気が付いたらアラ環、
もうすぐ還暦で「60歳超」に仲間入りする予定です。

診療所医師の平均年齢、28年ぶり60歳超...病院勤務医は45歳
 全国の診療所の医師の過半数が、60歳以上になったとの調査結果を厚生労働省が発表した。
 発表によると、2020年末の時点で、診療所の医師数は10万7226人で、2年前の前回調査より3390人増えた。年齢別にみると、60歳以上が51・4%を占めた。診療所の医師の平均年齢は60・2歳で、病院勤務医(45・1歳)より大幅に高かった。厚労省は、診療所の医師の高齢化が進む背景を、「若い世代の医師は病院勤務を選ぶ傾向があり、診療所などの開業医には定年がない。医師全体も高齢化している」としている。
 診療所で60歳以上の医師が5割を超えるのは1994年以来。

一般企業では60歳定年ですから、まあ activity が落ちてくる年齢です。
私自身、昔のようにがんばりや踏ん張りが利かなくなり、体がついていかないことを日々実感しています。

少しずつ、仕事を整理して減らすタイミングかな・・・
と思うこともしばしば。

しかし、状況が許してくれません。

昨今の少子高齢化、
それに新型コロナウイルス流行に伴う“受診抑制”、
かつ感染対策順守による子どもの感染症全体の減少・・・
等々の影響で、
小児科開業医では外来患者さんの数が激減し、
“経営危機”に陥っているのです。

まだ閉院には早すぎる、何とかせねば・・・

そこに2022年4月、診療報酬改定に伴い、
“小児科救済”目的で新たに「小児かかりつけ診療料」が設定されたと耳にしました。

期待して解説を読むと・・・驚きの事実!

なんと、「24時間対応の診療」が求められているのです。

私は勤務医時代の“ブラック労働”(24時間ポケベル拘束、当直明けも普通勤務)で体調を崩したことが退職の一因になった過去があります。

もう「時間外労働」で体を痛めつけるのは嫌、拒否反応が出ます。

平均年齢60歳超の人々に「夜も働け!」とは・・・
「働き方改革」に逆行するこの施策はいったい誰が考えたのでしょう?

それから、このような改定を見るたびに思うのですが、
厚労省は「開業医はもっと働け!」と指示しますが、
現場で患者さんを診療するには、
医師だけではなく看護師も事務スタッフも必要です。
夜間、患者さんを診療する場合、
それらのスタッフも呼び出さなくてはならないことを全く考えていません。

やはり小児科開業医は絶滅危惧種になりそうです。

ああ、だんだん腹が立ってきた・・・。
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新型コロナワクチンの“長期的副反応”がわからないから不安、という方へ

2022年03月21日 07時29分15秒 | 小児科診療
5〜11歳の小児への新型コロナワクチン接種が始まりました。
希望者は想定より少ないようです。

TVで街行く父母にインタビューしていました。
「オミクロン株への効果があるのかどうか」
「自分が副反応でつらかったので子どもがかわいそう」
等々、定番の疑問・不安に混じって、
「将来、どんな副反応が出るのか不安」
という意見もありました。

どの疑問・不安もごもっともです。

この中で、今回は「将来出るかもしれない長期的副反応」についてコメントさせていただきます。

新型コロナウイルスが登場して2年が経過しました。
WHOによりパンデミック認定され、
世界各国で医療崩壊を起こし、
死者はすでに500万人を越えています。

日本も例外ではなく、
感染対策を遵守する国民性から他国より被害は少ないものの、
医療逼迫から非常事態宣言やマンボーという施策をとらざるを得ず、
どう見ても、季節性インフルエンザの比ではありません。

それに対抗する武器として、現時点ではワクチンが最強です。

従来の他のワクチンと比較して、
“高い有効率と強い副反応”が特徴の mRNA ワクチン。

新たなワクチンですから、
当然、“長期的副反応”は不明です。

しかし新型コロナウイルス事態が新参者ですから、
当然、“長期的後遺症”も不明です。

インフルエンザと異なるところは、
単なる“呼吸器感染症”ではないこと。
新型コロナウイルスはその入り口が「ACE受容体」であり、
それがある臓器にダメージを与えます。
そしてACE受容体のある臓器はたくさんあるのでやっかいです。

今わかっているだけでも、
・味覚・嗅覚障害
・ブレインフォグ
・脱毛
は有名です。
最近、それ以外の“長期的後遺症”の報告も相次いでいます。

まずは「精神疾患罹患率が増える」という報告。
PCR陽性者78万人を罹患後1年間フォローした解析では、
あらゆる精神障害の新規診断のリスクは36倍に上ります。
各疾患の発症リスクは、

・不安障害:11倍
・うつ病性障害:15倍
・ストレス障害:13倍
・適応障害:13倍
・認知機能低下:11倍
・睡眠障害:24倍

と、すごい数字。
外見上わからないけど、
こころを病んでつらい生活を強いられる人たちが増えるということですね。


COVID-19罹患者では精神疾患発症率が増加診断から1年後の各種疾患発症率を対照群と比較した大規模コホート研究
大西 淳子=医学ジャーナリスト
 米国VA Saint Louis Health Care SystemのYan Xie氏らは、退役軍人局(VA)のnational healthcare databaseを利用して、急性期を乗り越えた新型コロナウイルス感染症(COVID-19)患者が1年後までに各種の精神疾患を発症するリスクを対照群と比較する大規模コホート研究を行い、同時期にVAの医療機関を受診した新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)非感染対照群や、パンデミック前にVAの医療機関を受診した対照群に比べ、各種精神疾患の発症リスクが増加していたと報告した。結果は2022年2月16日BMJ誌電子版に掲載された。
・・・
 同時期対照群と比較すると、COVID-19群では、不安障害の発症リスクが増加していた。ハザード比は1.35(95%信頼区間1.30-1.39)、1000人・年当たりのリスク差は11.06(9.64-12.53)だった。うつ病性障害のハザード比は1.39(1.34-1.43)、リスク差は15.12(13.38-16.91)、ストレス障害と適応障害のハザード比は1.38(1.34-1.43)で、リスク差は13.29(11.71-14.92)と有意であった。
・・・
 以上を合わせて分析したところ、あらゆる精神障害の新規診断のハザード比は1.46(1.40-1.52)、リスク差は36.48(31.93-41.19)、あらゆる精神障害関連治療薬の新規処方のハザード比は1.86(1.78-1.95)、リスク差は47.60(43.26-52.12)で、それらを合わせたハザード比は1.60(155-1.66)、リスク差は64.38(58.90-70.01)になった。


高齢者が重症化しやすいのが新型コロナの特徴ですが、
当然、後遺症も問題になります。


新型コロナ感染の高齢者、32%が後遺症を発症/BMJ
2022/02/18:ケアネット)より抜粋;
・・・
 新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)に感染した65歳以上の高齢者は、急性期後に診療を要する持続的または新規の後遺症のリスクが高いことが、米国・Optum LabsのKen Cohen氏らによる後ろ向きコホート研究の結果、示された。後遺症は、呼吸不全、認知症、ウイルス感染後疲労を除くと、高齢者のウイルス性下気道疾患の後遺症と類似していたが、SARS-CoV-2感染後は、重要な後遺症が多岐にわたって発生することが明らかになったという。著者は、「後遺症のリスクは、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)で入院した人で高いことが明らかで、いくつかの後遺症のリスクは男性、黒人、75歳以上で高かった。
・・・
 SARS-CoV-2感染が診断された65歳以上の高齢者のうち、32%(87,337例中27,698例)が急性期後に持続的/新規後遺症のために医療機関を受診し、これは2020年群(非感染群)と比較して11%高かった。
・・・
 呼吸不全(リスク差:7.55)、疲労(5.66)、高血圧(4.43)、記憶障害(2.63)、腎障害(2.59)、精神的診断(2.50)、凝固能亢進(1.47)、心調律異常(2.19)は、2020年群(非感染群)と比較してリスク差が大きい結果が得られた。


下記の報告を読むと、男性は恐くなってきますね。
新型コロナウイルス感染は、動物実験で雄の生殖器を傷つける・・・。


新型コロナによる雄生殖器の損傷、サルやハムスターで確認
William A. Haseltine , CONTRIBUTOR
新型コロナウイルスはサルやハムスターの雄の生殖器に感染し、損傷を引き起こすという有力な証拠を示した査読前論文が、このほど相次いで発表された。新型コロナウイルスに感染した男性の一部に精巣痛や生殖能力の低下、精液中のウイルス残存などがみられる理由の解明につながる成果だ。ワクチン接種によって雄生殖器の損傷を予防できることも、初期段階の結果ながら確認された。
香港の研究チームは、鼻腔内投与または精巣への直接注入によってウイルスに感染させたハムスターで、精巣へのダメージが確認されるかを調べた。ウイルスは初期の新型コロナウイルスの分離株「HK-13」のほか、変異株「ベータ」と「オミクロン」の各分離株を用いた。その結果、これらの分離株はいずれも、病理学的にわずかな違いはあるものの精巣の損傷を引き起こすことが確認された。

以上、徐々に明らかになってきた新型コロナ感染症の後遺症の一端を紹介しました。
これからも自然感染による“長期的後遺症”がどんどん報告されてくると思われます。

ワクチン接種を迷っている方へ、
私が繰り返していつも言うセリフ;

・免疫をつけるために、ウイルス全部を体に入れる自然感染より、ウイルスの一部を体に入れるワクチンの方が、基本的にダメージが少ない。
・自然感染をワクチンに例えると、最強(免疫が強力)であるが最悪(重症化・後遺症のリスク大)のワクチンです。自然感染は「有効率最高のワクチンですよ」としてウイルスそのものを注射するのと同じこと。

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地球温暖化で花粉飛散数増加が止まらない。

2022年03月19日 15時18分08秒 | 小児科診療
一口に“花粉症”といっても、
世界を見回すと、国により代表的な花粉の種類が異なります。

(日本)花粉症 ≒ スギ花粉症

ですが、

(アメリカ)花粉症 ≒ ブタクサ花粉症
(ヨーロッパ)花粉症 ≒ シラカバ花粉症

をイメージすると読んだことがあります。

日本におけるスギ花粉症の歴史は、
1960年代の“発見”に遡ります。
最初に報告されたのが栃木県日光市。
その後どんどん増えて現在に至ります。

なぜ日本でスギ花粉症が多いのか?
答えは単純に「スギが多いから」。

第二次世界大戦後、
一面焼け野原になった日本では家を建てる材木が不足し、
政府はスギの植林を補助金を出して奨励しました。

そして日本の山々にスギ林が増えました。
お山の杉の子」という童謡がありますが、
そんな背景が感じられる歌詞ですね。

さて、杉の植林をして材木として使う、
という計画はよかったのですが、
予定通りにはいきませんでした。

杉が成長しきる前に、
外国から安い輸入材が入ってきたのです。

すると、杉の木を切って麓まで運んで加工する方が、
コストが高くなるので、
杉の木は切られることなく放置され成長し続けました。

そして花粉をたくさんたくさん飛ばすようになり、
それと比例して日本ではスギ花粉症が増えて、
“国民病”という称号を得るまでになったのでした。

「杉が成長して花粉を飛ばす」
ことは、科学的に当たり前のことですが、
この現象を文学的に語った立松和平さんの講演を聞いたことがあります。

「杉の木の植林は、本来は5m以上の間隔が望ましいと聞いている」
「しかし補助金ほしさに狭い間隔でたくさん植えた」
「杉の木は自分が長生きできないと不安になり花粉をたくさん飛ばすようになったのではないか」
「私にはスギ花粉増加は杉の木の悲鳴に聞こえる」

文学者が自然を見るまなざしの鋭さにハッとした瞬間でした。

以下の記事を読むと、このまま地球温暖化が進むと、
スギだけでなく、世界中で花粉は増加して飛び続けるようです(種類にもよりますが)。

アメリカにおける2100年の予想では、

・花粉全体の飛散はプラス40%
・気候変動を抑えると花粉飛散増加も抑えることが可能
・ブタクサ、カバノキは減る

だそうです。

花粉症は温暖化でより過酷に、21世紀末には花粉が4割増、米研究
〜花粉の飛散予測モデルを新たに開発、公衆衛生に多大な影響
文=CONNIE CHANG/訳=米井香織
2022.03.17 National Geographic)より一部抜粋;
・・・
 3月15日付けで学術誌「Nature Communications」に発表された研究によれば、米国で飛散する花粉の量は、気候変動により2100年には40%まで増えるおそれがあるという結果が導き出された。
・・・
 スタイナー氏のチームは・・・アレルギーを引き起こす最も一般的な15の植物(種あるいは分類群)を対象に、気温や降水量などの要素に応じて花粉の飛散を予測するモデルを開発した。・・・このモデルは二酸化炭素濃度の上昇や、植物分布の経年変化も考慮に入れられる。
 例えば、草木の分布拡大によって、ブタクサが犠牲になる可能性もある。ブタクサは主要なアレルゲンだが、このモデルのシナリオでは、米国東部で最大80%減少すると予測されている。
・・・
 花粉を生成する植物の多くが繁栄する一方で、カバノキをはじめとする一部の木は、二酸化炭素が多い環境に適さない。スタイナー氏らのモデルではこうした影響も捉えている。
 スタイナー氏らはこのモデルを用い、過去(1995〜2014年)と2つの気候シナリオ(2081〜2100年)を対象に、米国の大陸部で飛散する花粉の量を比較した。2つの気候シナリオとは、温室効果ガスの排出量がある程度まで抑制された「中間的なシナリオ」と化石燃料主導の「奇妙なシナリオ」で、それぞれの気温上昇は2〜3℃と4〜6℃だ。特に後者の奇妙なシナリオでは、気温や降水量とは別に、濃度が高くなった二酸化炭素が花粉の量を2倍まで増やす可能性があると予測された。
・・・
 より重要なのは、穏やかな前者のシナリオの未来だろう。米ユタ大学の准教授ウィリアム・アンデレッグ氏はこのように指摘する。
「簡単に言えば、排出量が多いシナリオに比べて、花粉の影響は半分です。つまり、気候変動に取り組むことが私たちの呼吸器の健康にどれほど重大な利益をもたらすかを、この研究結果は強調しているのです」。
・・・
 世界保健機関(WHO)は、少なくとも1つのアレルギー疾患を持つ人が2025年までに世界人口の半数に達すると推定している。現時点で何らかのアレルギーを持っている人は成人の10〜30%、小児の最大40%だ。花粉の飛散量の増加だけでなく、汚染物質が花粉と化学反応することも原因となる。


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スギ花粉症、襲来!

2022年03月16日 07時08分59秒 | 小児科診療
当院は小児科ですが、
先週末からスギ花粉症患者さんが押し寄せてきています。
まるで季節性インフルエンザの流行期のように、
外来患者さんがモノトーンに見えてきます。

「昨年は来なくて済んだけど、今年は我慢できないので来ました」
「目がかゆくて痛くて泣いている」
「鼻が詰まって苦しくて夜眠れない」

等々の訴えで受診されます。

「今年初めてなんです」

と目をかき壊して赤く腫らした3歳前後の幼児も散見されます。

2月までは、
というニュースも流れましたが、
先週末からの患者激増を見るとそうでもなさそうです。

さて、肝心の治療の話を。

花粉症の治療のスタンダードは、
・抗アレルギー薬内服
・抗アレルギー薬点眼
・抗アレルギー薬点鼻
のラインナップです。

今年は、
薬を飲んでいるけど症状が治まらない、なんとかして!
という訴えを耳にします。

上記抗アレルギー薬中心の治療でも症状が治まらない場合は、
アレルギー反応を強力に抑える“ステロイド薬”の出番です。
しかし、この“ステロイド薬”は上手に使わないと副作用が問題になります。

危険度から言うと、

△ ステロイド点鼻
❌️ ステロイド点眼
❌️ ステロイド内服

と考えてください。

鼻水中心なら抗アレルギー薬内服や、
抗アレルギー点鼻薬で治まることが多いのですが、
鼻づまりがひどいときは飲み薬だけでは無理で、
ステロイド点鼻薬を使います。
他のルートと比べて、点鼻では心配な副作用は少ないです。
内側に向けてプッシュすると鼻血が出やすくなるくらい。
私は、

【指導】ステロイド点鼻は後頭部に向けて、かつ少し外側に向けてプッシュしましょう。

と指導しています。
長年ステロイド点鼻を使用してきましたが、
副作用で困ったことはほとんどありません。

白目がブヨブヨに腫れて充血し、
「目を取りだして洗いたい」
レベルの患者さんは、抗アレルギー薬点眼では解決せず、
ステロイド点眼が必要になります。
しかし、ステロイド点眼には、
眼圧上昇」「緑内障
という怖い副作用がありますので、

点眼・点鼻にステロイドを使わざるを得ず、
それでもなお症状がつらい・・・
最後の切り札は“ステロイド内服”。

しかし、ご存じのようにステロイド内服は全身にステロイドが巡るので、
頓用・頓服なら許容範囲ですが、
常用すると全身各臓器に副作用が出る可能性があります。
全身投与という意味では、
「一月に一回のケナコルト注射」
も同様です。

当院では症状のつらい方に対して、
ステロイド点眼・内服に手を出す前に、
漢方薬の併用を勧めています。

漢方薬の利点は、
・抗アレルギー薬と併用できる
・眠くならない
・鼻づまりに効く
・目のかゆみに効くエキス剤もある
等々。

花粉症に使う漢方薬は1種類ではありません。
私が使用するラインナップは、
・小青竜湯
・大青竜湯(麻黄湯+越婢加朮湯)
・葛根湯加川芎辛夷
・苓甘姜味辛夏仁湯
・麦門冬湯
・柴朴湯
・柴胡桂枝湯
等々。
これらを患者さんの症状・診察所見で使い分け、
飲めた患者さんは確実に満足度が上がっています。

毎年薬が欠かせず、春がゆううつな患者さんには、
舌下免疫療法による体質改善がお勧めです。

イメージがわきにくいと思いますので、
具体的な投与方法を提示します;

スギ花粉のエキスを固めた柔らかい錠剤を、
舌の下に置いて口を閉じます → すぐに溶けます。
でもそれをすぐに飲み込まないで、
1分間ガマンしてから飲み込み、その後、
5分間は飲食を避け、
2時間は激しい運動は避けていただきます。

これを数年間毎日続けると、
スギ花粉症の症状が軽くなり、薬が減らせます。
有効率は8割です(残念ながら10割ではありません)。

「舌下免疫療法は何歳からできますか?」

という質問をよくいただきます。
実は開始年齢に制限はありません。
が、実際にはこの治療を理解し、
・1分間つばを飲み込まないでガマンできる
・2時間暴れないようにできる
ことが可能な、小学生以降にお勧めです。
(中には5歳で始めた患者さんもいます)

なお、スギ花粉が飛んでいる季節に開始することはできませんので、
今希望される方は6月まで待っていただくことになります。

当院ではすでに数十人の子どもがこの治療を受けており、
手応え&満足度は十分です。
詳しく知りたい方は、こちらをご覧ください。

以上、当院の花粉症治療を紹介させていただきました。
・他院でよくならなかった方
・漢方薬を試したい方
・舌下免疫療法に興味のある方
どうぞご相談ください。

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オミクロン株に対する5-11歳へのワクチン効果(ファイザー製)

2022年03月10日 06時41分35秒 | 小児科診療
日本でも5-11歳への新型コロナワクチン接種が始まりました。

12歳以上と異なるのは、ワクチン成分の力価で、
12歳以上の1/3の量に減量されています。

治験では同量(30μg)・1/2量(15μg)・1/3量(10μg)で検討され、
1/3量(10μg)でも十分効果があった、と判定されたためです。
※ ちなみに、5歳未満への接種も検討されていますが、その量は成人の1/10(3μg)です。

しかし、そのときはまだオミクロン株は登場していませんでした。
最近ようやく、オミクロン株への効果のデータが出てきました。

結論から申し上げると、
mRNAワクチンが登場したときの高い効果(発症阻止率95%)はやはり期待できないようです。

ニューヨーク州のデータでは、発症阻止率は、
2回接種2週間後では65%、
しかし1ヶ月後には15%まで速やかに減少しています。

成人同様、追加接種(3回目)が必要になりそう。

しかし、重症化予防(入院阻止率)は比較的保たれているようです。

子どもへのワクチン接種はベストの選択とは言えなくなりましたが、
他に選択肢のない今、ベターな選択として接種する意義はあると思います。

効果については、ファイザー社製ワクチンは武漢株に対するワクチンですから、
変異したオミクロン株への効果が高くないのは仕方ありません。

これは、毎年接種する季節性インフルエンザワクチンをイメージしていただくと分かり易い。

インフルエンザも変異を繰り返すタイプなので、
それを解析して合うワクチンを毎年製造し、接種しています。

新型コロナワクチンもおそらくそのような経緯を辿ると思われます。
つまり、武漢株は先々シーズン、デルタ株は先シーズン流行した株。
現在のオミクロン株にはそれ用のワクチンが求められるのです。

ファイザー社とモデルナ社はすでにその開発と治験に入っており、
3月中には登場するらしいと耳にしました。

これから新型コロナウイルスの変異とワクチン開発のいたちごっこが始まります。
モデルナ社は季節性インフルエンザ&新型コロナのハイブリッドワクチンを開発しているそうです。

ファイザーCOVID-19ワクチンの5~11歳での感染予防効果、相次ぐ報告
2022/03/08、ケアネット)より抜粋;

<ニューヨーク州のデータ>
・新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)オミクロン株出現後の米国ニューヨーク州のデータを調べた査読前のmedrxiv掲載報告によると、5~11歳小児へのPfizer/BioNTechワクチンBNT162b2接種の感染(COVID-19)予防効果は接種が済んでから僅か1ヵ月ばかりで激減していました。
・ニューヨーク州の試験では去年12月13日から今年1月2日までにBNT162b2接種済みの5~11歳小児の検討が含まれ、それら小児のSARS-CoV-2感染予防効果は接種が済んでから2週間(13日間)以内では65%だったのが約1ヵ月(28~34日)後には12%に低下していました。
・より年長の12~17歳小児のBNT162b2接種の同期間の感染予防効果は76%と56%であり、5~11歳小児ほどは低下しませんでした。5~11歳小児への投与量はそれより年長の小児に比べて少ないことが効果の大方の消滅の原因かもしれないと著者は考えています。12~17歳小児への投与量は30μgで、5~11歳小児への投与量はその3分の1の10μgです。
・5~11歳小児のCOVID-19入院予防効果は感染予防の大方の消失とは対照的に比較的保たれました。オミクロン株検出が感染の19%であった去年12月13~19日の入院予防効果は100%、オミクロン株検出が感染のほぼ100%(99%超)を占めるようになった今年1月24~30日では48%でした。
・効果はおよそ半減したとはいえワクチンは重病を防いだ(was protective)と著者は判断しており、5~11歳小児への接種普及の取り組みを続けるべきと言っています。報告時点での米国のそれら幼い小児のワクチン接種率は4人に1人に満たない25%未満でした。

<CDC主催VISION Network試験>
・3月4日にMorbidity and Mortality Weekly Report(MMWR)に発表された米国疾病管理センター(CDC)主催VISION Network試験の査読済み(reviewed)結果報告でもニューヨーク州データほどではないもののその年齢層の小児へのBNT162b2の効果の衰えは比較的早いらしいことが示唆されています。試験では救急や急診(emergency department and urgent care)を要した小児のCOVID-19とワクチン接種歴が検討され、5~11歳小児の2回目接種から2週後(14日後)~およそ2ヵ月後(67日後)のCOVID-19予防効果は46%でした。
・5~11歳小児のBNT162b2接種の入院予防効果は感染予防効果よりどうやら高いと示唆されています。2回目接種から14~67日間のCOVID-19関連入院予防効果は74%でした。

<5歳未満への接種>
・Pfizer/BioNTechはすでにその方向で事を進めています。
去年12月の両社の発表によると、2歳以上5歳未満小児への両社のワクチン2回接種後1ヵ月間の免疫反応はワクチンの確かな効果が判明している青少年(16~25歳)の人のそれに残念ながら及ぶものではありませんでした。この結果を受けて両社は生後6ヵ月から5歳未満の小児を対象にした進行中の試験に3回目投与を含めることを決めています3回目の用量は1回目と2回目と同量の3μgで、2回目から2ヵ月過ぎてから投与されます。3回目接種の検討が成功したら生後6ヵ月以上5歳未満小児への同ワクチン使用の米国FDAの取り急ぎの認可を今年前半に手にするのに必要なデータが揃うと両社は見込んでいます。その発表の際に両社は5~11歳の小児への3回目接種も検討することを明らかにしています。それら小児への3回目接種の用量もより幼い小児への投与がそうであるように1回目と2回目と同じ10μgです。
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オミクロン株に罹った小児の症状は?

2022年03月09日 07時33分10秒 | 小児科診療
2021年末に登場した新型コロナウイルスのオミクロン株、
2022年に入り、それまで“感染しにくい”と言われてきた子どもへの感染拡大がとうとう始まりました。

それに伴い、2月に入ると小児科開業医レベルでもPCR陽性者をふつうに診療する日々に突入。

私が診療したのは二桁後半程度ですが、印象は・・・
・発熱が多いが1-2日で解熱する。
・頭痛、倦怠感は発熱とリンクして発症。
・咽頭痛はあったりなかったり・・・痛がる患児でも咽頭発赤は軽度。
・咳も出るがひどくならない。
・消化器症状を訴える例もある。
・味覚/嗅覚障害は経験なし。
といったところ。

ポイントと思われるところを抜粋します。

・2020年2月1日~22年2月20日に同レジストリに登録した0~15歳のCOVID-19患者5,129例を解析対象とした。
・主要な流行株により解析期間を、
① 流行初期(2020年2月~21年7月)1,830例 (55.2%)、
② デルタ株流行期 (2021年8~12月) 1,241例 (24.2%)、
③ オミクロン株流行期 (2022年1~2月20日) 1,058例(20.6%)
ーに3分類。 
・COVID-19の臨床症状および重症度を、年齢層別に1歳未満、1~4歳、5~11 歳、12~15歳に分けて比較した。
・年齢中央値は6歳5カ月(四分位範囲2歳3カ月~10歳9カ月)、年齢分布は1歳未満が677 例(13.2%)、1~4歳が1,435例 (28.0%)、5~11歳が2,072例(40.4%)、12~15 歳が945例(18.4%)だった。対象の47.2%が女児で、62.6%に入院管理が行われていた。

対象の62.6%が入院管理ですから、比較的症状が重かった患児の集まりで、私が診療している患者層とは異なります。

重症度
・入院を要した割合は、
① 流行初期は79.4%、
② デルタ株流行期は53.4%、
③ オミクロン株流行期は28.6%
ーと経時的に減少傾向が認められた。
ただし、流行初期には隔離や経過観察目的などによる入院が含まれていた可能性が高く、「入院率で各流行期における重症度を評価することは困難」としている。実際、小児集中治療室(PICU)入室率に、各流行時期で大きな変化は認められなかったという。

私が診療した患者さん達の中で、入院例はゼロです。

症状
発熱
 ① 流行初期:41.0%、
 ② デルタ株流行期:58.7%、
 ③ オミクロン株流行期:80.6%

乾性咳嗽
 ① 23.6%
 ② 28.7%
 ③ 32.3%

鼻汁
 ① 24.5%
 ② 22.8%
 ③ 26.6%

咽頭痛
 ① 8.6% 
 ② 13.1%
 ③ 26.1%

湿性咳嗽
 ① 13.9%
 ② 19.4%
 ③ 19.2%

発熱と咽頭痛が目立ち、咳や鼻も出る・・・私の印象と同じです。
ただ、3月に入ってから咽頭痛を訴える患児が減ってきているような気もします。

意外なところでは、オミクロン株になってから熱性けいれんが増えたというデータ。

熱性けいれん
好発年齢である1~4歳で、
 ① 1.3%
 ② 3.0%
 ③ 9.4%
5~11歳の年長児においても、
 ① 0.4%
 ② 0%
 ③ 3.5%

好発年齢における頻度が増加し、熱性けいれんを起こしにくくなる年長児でも認められる・・・
これって季節性インフルエンザ流行期と同じ現象ですね。
私の経験では、高熱せん妄(高熱でうなされる)例が一人いましたが、熱性けいれんはゼロです。
やはり対象が中等症以上に偏っている可能性がありますね。

悪心・嘔吐
 ① 4.2%
 ② 5.6%
 ③ 9.9%(特に5-11歳では14.5%)

消化器症状は10%程度認める、これは私の印象に一致。

【味覚障害・嗅覚障害】
 ① 4.1%、3.4%
 ② 3.9%、4.2%
 ③ 0.7%、0.5%

味覚・嗅覚障害はまれ、というのも私の印象に一致。

【肺炎】
 ① 1.1%
 ② 1.6%
 ③ 1.3%

重症化率は高くないままです。

以上をオミクロン株に限定して頻度順に症状を並べると、

1.発熱:80.6%
2.乾性咳嗽:32.3%
3.鼻汁:26.6%
4.咽頭痛:26.1%
5.湿性咳嗽:19.2%
6.悪心嘔吐:9.9%

となります。

小児科学会は結論的コメントとして、

「レジストリに登録されているのは国内小児COVID-19症例の0.5%にすぎず、国内には未登録の軽症外来患者が多数存在すると推定される。このことから、レジストリには比較的重症度が高い症例が登録されている可能性が想定されるにもかかわらず、オミクロン株を含む変異株の流行による小児患者の重症化傾向は確認されなかった」

と締めくくっています。
まあ、私の印象とそう変わらないことがわかりました。

が、この報告に出てこなかったのですが、気になることがあります。
それは「一部に症状が長引く患児がいる」こと。

隔離期間が終わっても、
・諸症状が消えず体がつらくて1ヶ月学校へ行けていない小学生、
・咽頭痛・咽頭違和感が残る小学生、
・嘔気が残る幼児
などを経験しました。
しかしメディアでは話題になっていません。
これから顕在化してくるのでしょうか・・・。


<参考>
▢ オミクロン流行期、国内小児患者の特徴判明〜デルタ株より発熱、咽頭痛、痙攣、悪心・嘔吐が高頻度
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