徒然日記

街の小児科医のつれづれ日記です。

「入園症候群」が気になる頃

2012年04月28日 21時24分11秒 | 小児科診療
 春に保育園・幼稚園に入園されたお子さんとご家族の方、おめでとうございます。
 入園して数週間が経過し、少し慣れてきた頃でしょうか。

 と共に、風邪を繰り返すお子さんが目立ってくる頃でもあります。
 「入園してからずっと風邪を引いて治りません、うちの子、なにか大変な病気なのでは?」という相談が毎日のように持ちかけられます。

 カルテをめくると、確かに4月に入り毎週通院している例が珍しくありません。
 希ながらこじれて気管支炎・肺炎となる患者さんがいる一方で、たいていは診察所見は軽微で特に風邪がこじれた経過でもありません。
 このような患者さんは「ずっと風邪が治らない」のではなく、実は「風邪を反復している」だけの方が圧倒的に多いのです。

 その見分け方を伝授します;
 鼻水の様子をよく観察してください。
 風邪の始まりはクシャミと水っぱなです。数日経過するとちょっとネバネバの白っぽい鼻水になり、また数日経過すると量が減るとともに濃く(青っぱな)なり、痰がからみながら徐々に治まって治っていきます。

 だいたい1週間程度の経過ですね。

 しかし、青っぱなになったな・・・と思うのもつかの間、また水っぱなに変わることがあります。
 これ、別の風邪をもらった瞬間です。
 仕切り直しで、またネバネバ~青っぱなになっていきます。
 そろそろ治るかな、と思っていると、またまたクシャミ~水っぱな、そして・・・以下同文。

 いかがでしょうか。
 お子さんに当てはまりますか?
 上記のような経過で、機嫌と食欲が保たれていれば、まず心配ありません。
 これを「入園症候群」と呼ぶ小児科の先生がおられ、「上手いことを云う」と大いに頷いた次第です。


 ただ、注意すべき合併症として代表的なものを2つ挙げておきます;

 ひとつは中耳炎
 咳は目立たないけど鼻汁がダラダラつづいて、時々微熱が出てぐずりがちなとき・・・中耳炎が怪しいです。
 幼児期以降は小児科でOKですが、乳児期の診察は難しいので、心配な方は耳鼻科を受診してください。
 まあ、中耳炎でも8割は自然に治るとされていますが。

 もう一つは副鼻腔炎(通称:蓄のう症)。
 これは青っぱなが止めどなく出続ける状態です。
 熱がつづけば抗菌薬の適応ですが、けっこう元気な子も多く、そのような場合は鼻の通りをよくして楽になる漢方薬を私は処方しています。

 風邪のほとんどはウイルスが原因ですが、その種類は200以上あると云われています。
 ヒトは一生かかって200以上の風邪をこなして(罹って)いくのですね。
 その最初の登竜門というか、洗礼を受けるのが「入園」です。

 特に生後6ヶ月児の保育園入園は、お母さんからもらった抗体が無くなりまっさらな状態になったタイミングで風邪のるつぼの放り込むようなものですから、その結果は推して知るべし、です。

 入園前に必要なワクチンを受けさせることは、子どもの健康を守るための最短の手段ですので、お忘れ無く。
 ワクチン情報は「KNOW*VPD」内の「ワクチンデビューは生後2ヶ月」をご覧ください。
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ポリオ不活化ワクチン認可の見通し

2012年04月20日 06時35分52秒 | 小児科診療
 待ち焦がれているポリオ不活化ワクチンの認可に具体的な動きがありました。
 今年秋以降と思われた時期が「5月中」へ前倒しとなりそうです。

■ ポリオ不活化ワクチン承認へ…マヒの副作用回避(2012年4月19日20時27分 読売新聞)

 厚生労働省の薬事・食品衛生審議会医薬品第二部会は19日、製薬会社サノフィパスツール(本社・東京)が今年2月に申請していたポリオ(急性灰白髄炎)の不活化ワクチン「イモバックスポリオ皮下注」の製造販売を承認しても差し支えないとする意見をまとめた。
 早ければ5月中にも正式に承認される。
 同社のワクチンはポリオ単独で用いる。不活化ワクチンはこのほか、ジフテリア、破傷風、百日ぜきとの4種混合ワクチンを2社が承認申請している。
 現在は、ポリオ予防のため乳幼児に対して生ワクチンを経口投与で接種している。不活化ワクチンは、生きたウイルスの毒性を弱めた生ワクチンとは異なり、病原性がない。不活化ワクチンの導入まで予防接種を控える動きが保護者の間で広がっていたため、厚労省は審査を急いでいた。
 生ワクチンは、手足がマヒするポリオを発症する副作用が、100万人に1・4人の割合で生じている。国内では2001年からの10年間で15件が報告されており、発症の心配がない不活化ワクチンの導入を求める声が高まっていた。


 ただ、実際に定期接種として始まるのは単独ワクチンでは9月頃、3種混合(DPT)と合わさる4種混合ワクチンでは11月頃のようです;

不活化ポリオワクチンの定期接種導入「9月には始めたい」 小宮山厚労相(2012.4.20:産経新聞)

 小宮山洋子厚生労働相は20日、予防接種法に基づき乳幼児を対象に行われているポリオ(小児まひ)の定期接種で、まひの恐れのない不活化ワクチンを導入する時期について、「9月には接種開始できるよう準備を進めていきたい」と述べた。定期接種が始まれば、乳幼児の接種費用は原則、公費負担されるため、不活化ワクチンを無料で受けられるようになる。
 国はポリオの定期接種について、ごくまれにまひを起こす生ワクチンから不活化ワクチンへ切り替える方針を示しており、19日に行われた厚労省薬事・食品衛生審議会の部会では、サノフィパスツール社の単独不活化ワクチンの製造販売を認める意見をまとめている。
 ポリオの不活化ワクチンは、ほかに2社が、ジフテリア、百日ぜき、破傷風の3種混合にポリオを加えた4種混合ワクチンとして製造販売の承認申請をしている。
 小宮山厚労相は、4種混合ワクチンの接種開始時期についても、承認を前提に「11月ごろを目指して、いま努力している」と言及。一方で「定期接種が9月に始まったからといって、そこにみなさんが殺到されると品不足になることもある。順次冷静に接種していただければとお願いしたい」と述べた。


 こちらの記事もどうぞ。

未認可ポリオワクチンに踏み切った医師たち(月刊保団連12年2月号)
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インフルエンザ等の出席停止期間(隔離期間)が4月1日から変わりました。

2012年04月06日 07時21分04秒 | 小児科診療
 2012年4月1日からインフルエンザなどの感染症の出席停止期間(隔離期間)が変更されました。インフルエンザはちょっと長くなり、おたふくは逆に短くなりそうです。

インフルエンザ
(旧)解熱した後2日経過するまで
(新)学童生徒:発症した後5日を経過し、かつ、解熱した後2日経過するまで
   幼稚園児:発症した後5日を経過し、かつ、解熱した後3日経過するまで


おたふくかぜ(流行性耳下腺炎)
(旧)耳下腺の腫脹が消失するまで
(新)耳下腺、顎下腺または舌下腺の腫脹が発現した後5日を経過し、かつ全身状態が良好になるまで

百日咳
(旧)特有の咳が消失するまで
(新)特有の咳が消失するまで、または5日間の適正な抗生物質製剤による治療が終了するまで

髄膜炎菌性髄膜炎
(旧)設定なし
(新)病状により学校医などにおいて感染の恐れがないと認めるまで

 ・・・なるほど、と思う一方で、小児科医の視点から見るといくつか突っ込みどころがあります。

□ 「発症」「解熱」はいつから数えるか?
 インフルエンザに関して、熱が出た日が「発症0日目」なのか「発症1日目」なのか、数え方が指定されていません。一般的には「0日」と数える習わしに従うと、幼稚園児は「発熱した翌日から5日間」「解熱した翌日から3日間」休む必要が出てきます。
 う~ん、感染対策としては正しいのでしょうが、働くお母さんが耐えられるだろうか・・・。

□ 「幼稚園児」と指定され「保育園児」に言及していない。
 インフルエンザに関して、保育園児はどうすればいいのでしょう。また、幼稚園と保育園が合併した「こども園」や「託児所」などもこれに準じることになるのでしょうか。

□ 百日咳に対する「適正な抗生物質製剤」とは?
 薬品名で指定していただきたいものですね。ちなみに百日咳に保険適応のある抗生物質は「14員環マクロライド系」の仲間のみです。
(例)クラリス(=クラリシッド)、エリスロシン、ルリッド
 同じマクロライド系抗生物質でも、ジスロマック(15員環)やリカマイシン(16員環)は適応になりません。
 また、オリジナルの薬剤は適応になっている一方で、ジェネリック(=後発品)では百日咳が適応疾患になっていないものもあり、混乱しそうです。

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