徒然日記

街の小児科医のつれづれ日記です。

花粉症は「初期療法」で上品に乗り切りましょう。

2016年02月20日 06時17分37秒 | 小児科診療
 花粉症の季節が始まりました。
 流行中のインフルエンザに混ざって、薬をもらいに来る花粉症患者さんが散見されるようになりました。

 例年、花粉症に悩まされるけど今年はまだ大丈夫かなあ・・・という方へ。
 「初期療法」といって、花粉症の症状が出るか出ないかのうちに治療を始めれば、軽く済むのです。
 赤い目をしてゴーグルとマスクという“怪しい”重装備が避けられるかもしれません。

■ 花粉症持ちの人は「初期療法」で早めの予防・治療を ‐ 内閣府政府広報室
[2016/02/19:マイナビニュース]
 内閣府政府広報室はこのほど、花粉症対策の基本情報について、政府広報オンラインで発表した。
 花粉症の原因となるスギ・ヒノキ花粉は、地域などにもよるが、例年2月から3月にかけて飛散のピークを迎える。今回は、すでに症状が出ている人だけではなく、まだ症状が出ていない人のための予防策についても紹介している。
 まだ症状が出ていない人のための予防策としては、「規則正しい生活習慣」を挙げている。花粉症の発症や症状の悪化には、生活習慣の乱れによる免疫機能の異常が影響すると言われている。そのため、十分な睡眠や適度な運動など規則正しい生活習慣を心がけ、正常な免疫機能を保つことが大切。また、鼻などの粘膜を正常に保つためには、風邪をひかない、たばこを吸わない、過度の飲酒をしないこともポイントとしている。
 一方で、毎年花粉症の症状が現れている人は、悪化する前に「初期療法」を行うことも効果的とのこと。初期療法とは、花粉が飛び始める前から予防的に抗ヒスタミン薬などを服用するというもの。症状が出てから治療を始めるよりも症状を軽減し、治療期間が短くなるなどの効果が期待できるという。


 私ももう、薬を飲みはじめています(^^;)。

■ 薬の早期投与で花粉症の重症化を防ぐ「初期療法」とは
[2016/02/17:マイナビニュース]より
 「花粉症」のアレルギー症状は、花粉飛散開始前から薬を投与する「初期療法」を行うことでシーズン中のつらさを緩和できる。本稿では、あまきクリニック院長の味木幸医師の解説をもとに、花粉症における初期療法の重要性について紹介する。
 花粉症の症状が悪化してから治療を始めると、それだけ効果が強い薬を使用する必要があるし、症状が緩和されるまでの時間もかかる。近年では、花粉飛散開始の2週間ほど前から薬を使い始めると、シーズン中の症状が軽くなることがわかってきている。これが初期療法だ。
 「飛散開始の2週間ぐらい前から、抗アレルギー薬を内服と外用で両方とも使用します。シーズン前に薬を投与することで、飛散時期に向けて体の"準備"を整えるという意味合いがあります」。
 目のための投薬というと外用の点眼のイメージが強く、内服薬はあまり意味をなさないのではと考えている人もいるだろう。それでも、やはり体の内と外から防御した方が効き目は高いと味木医師は指摘する。
 地域によっては、既に「1平方cmあたりの花粉が連続して1個になった最初の日」と定義されている飛散開始日を迎えているだろう。
 「じゃあもう、今から治療しても遅いじゃないか」と感じるかもしれないが、花粉が飛散しだしてからでもシーズン序盤に治療を始めておけば、ピーク時の症状を緩和できるという。まだ決して遅くないのだ。

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ハチミツが小児の咳嗽に有効・・・

2016年02月12日 06時52分13秒 | 小児科診療
 諸外国(とくに先進国)では子どものかぜ薬に制限が設けられています。
 主に、市販かぜ薬(OTC)過量投与による中毒事故が後を絶たないことと、効果を示すエビデンスが乏しい、という視点からの施策です。

 そんな中、「ハチミツが子どもの咳によい」という話を耳にするようになり、先日「ためしてガッテン!」でも取りあげられました(以前に「世界一受けたい授業」でも)。

 ハチミツの中に存在するグルコースオキシダーゼという酵素が、過酸化水素という物質をつくり、これが強力な殺菌作用を持っているそうです。さらにハチミツの成分は荒れた粘膜を保護することにより咳嗽反射を軽減するとのこと。

 その関連論文を紹介した記事をどうぞ;

■ ハチミツが小児の咳嗽に有効
2014/11/20:ケアネット
 呼吸器内科医の間では、ハチミツが鎮咳薬として有効かもしれないという話は有名です。ただし、基本的には小児の咳嗽に対して、だそうです。ご紹介するのはイタリアの研究。ミルクとハチミツを混ぜると咳嗽に対して効果があるとする研究です。
Miceli Sopo S, et al. Effect of multiple honey doses on non-specific acute cough in children. An open randomised study and literature review. Allergol Immunopathol (Madr). 2014 Sep 5. [Epub ahead of print]
 この研究の冒頭にも書かれていますが、これまでハチミツが有効とされた研究は「夜にスプーン1杯(2.5mL)飲ませるだけ」という研究であり、継続的にハチミツの効果を検証した論文はないとしています。システマティックレビューでも、継続的なハチミツの効果については言及していません(Oduwole O, et al. Cochrane Database Syst Rev. 2012; 3.)。
 この研究では、非特異的な小児の急性咳嗽に対してハチミツを3日間連続して夜に投与し、これをデキストロメトルファンとレボドロプロピジンと比較しました。イタリアではこれら鎮咳薬はOTC医薬品のようです(街の薬局で買える)。
 非特異的な咳嗽のある134人の小児がランダムにミルク90mL+ハチミツ10mLあるいはデキストロメトルファン、レボドロプロピジンに割り付けられました。効果は両親からの咳嗽アンケートで評価しました。プライマリエンドポイントは鎮咳効果と治療成功としました。治療成功は、咳嗽アンケートによるスコアがベースラインから50%以上改善するものと定義しています。
 その結果、治療成功率はミルク+ハチミツ群で80%、そのほかの鎮咳薬で87%でした(p=0.25)。有意にハチミツの効果が上回ってくれたらセンセーショナルだったのですが、差はないという結果でした。というわけで、一般的な鎮咳薬と同じくらい効果があるという結論になっていますが、個人的にはプラセボ効果がどこまで入っているのか、不安です。


 「プラセボ」というのは偽薬(外見は同じだけど薬成分が入っていないモノ)のことで、人間は中身に関係なく「これ、よく効く薬ですよ」といわれて飲むと3割くらい効果を実感するという“思い込み効果”があるのです。
 さて、大人でもハチミツの効果はあるのでしょうか?

■ 大人の咳嗽に対してハチミツ+コーヒーが有用
2016.2.5:ケアネット
 以前「ハチミツが小児の咳嗽に有効」という論文を紹介しました。親も快適に眠れるでしょうから、難治性の小児の咳嗽に対して、ハチミツは一考の余地がありそうです。
しかし、大人に対してはコーヒーと合わせて飲むほうが良いそうです。なにっ!?
Raeessi MA, et al. Honey plus coffee versus systemic steroid in the treatment of persistent post-infectious cough: a randomised controlled trial.
Prim Care Respir J. 2013;22:325-330
.
 これはイランの大学病院で実施されたランダム化比較試験です。3週間以上続く感染後咳嗽の成人患者97人(平均年齢40歳)が被験者です。
・お湯200mLにハチミツ20.8gとインスタントコーヒー2.9gを溶かして8時間ごとに1週間飲み続けるハチミツコーヒー群(29人)
・ハチミツ+コーヒーの代わりにプレドニゾロン13.3mgを入れるステロイド群(30人)
・同じく鎮咳薬グアイフェネシン25gを入れるコントロール群(26人)
 を設定し、ランダムに割り付けました。ハチミツはイランの山奥で採れたものを用いました。スーパーで買ったんじゃないんでしょうか、高級ハチミツなんですかね? アウトカムは介入前と介入1週間後の咳の頻度をスコアで比較しました。
 97人中12人が脱落しているのが気になりますが、残りの85人で解析が行われました(ITT解析ではない)。その結果、ハチミツコーヒー群とステロイド群では有意に咳嗽の頻度が減りました。スコアの変化は圧倒的にハチミツコーヒー群で高かったようです。ハチミツコーヒー群は、ほぼ咳嗽スコアがゼロになっています。
 ハチミツだけでなく、コーヒーにもある程度気管支拡張作用がありますから、これも咳嗽の軽減に寄与したのかもしれません。なるほど、ハチミツコーヒーか。今度、難治性咳嗽の患者さんにも勧めてみようか。


 Wikipediaの「蜂蜜」の項目には薬用の歴史について記載されていますが、“咳止め”効果は見当たりません。
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16歳以下のこどもの3人に1人が花粉症!

2016年02月09日 22時17分52秒 | 小児科診療
 今日は空気の乾燥のせいか今日は目がしばしば・・・いや、鼻も少しグズグズするから花粉症のはじまりかな?
 と、そんな季節になりました。
 目をこすりながら眺めたパソコン画面にこんな記事が;

■ 低年齢化が進む花粉症 16歳以下のこどもを持つ親 3人に1
2016.2.8:ガジェット通信
 眼科薬を主力製品とする製薬会社が、2月8日までに花粉症の実態調査について発表しました。
 インターネットを使って16歳以下の子ども持つ保護者に対して調査したデータによると(有効回答2618名)、ご自分のお子さんのうち、3人に1人が、花粉症だと思うと回答したことがわかっています。
 製薬会社のこのアンケートの集計によると、花粉症とみられる子供は全体の33.4パーセントに達していることになります。
 この製薬会社は2012年に同様のアンケートを実施しています。12年の結果は25.7パーセントだしたが、その後、年々上昇し、今回の結果となっています。
 また、これらのアンケートの中で、「何歳で子どもが花粉症を発症したと考えているか」と質問しています。3・4・5歳と答えた保護者は、全体で前年より10%増えており、5歳までに発症したと回答した保護者は、お子さんが花粉症であると答えた方の45%となっています。
 花粉症で問題になったスギ花粉は、戦後相当数が植林されています。したがって、戦後すぐに花粉症の症状を訴える方が出てきても不思議ではないのですが、花粉症とみられる症状が増えたのが知られるようになってきたのは1980年代です。
 つまり、花粉症にかかるお子さんが増えたのは、単に花粉だけの問題だけではないことが推測されます。
 アンケートを行った製薬会社は、PM2.5やディーゼルエンジンの排気ガスも考えられると指摘しています。
 おそらく他にもあるでしょうが、小児のアレルギーや呼吸器疾患は適切なコントロールをしないと、大人になって重篤になりやすいといわれています。


 現在、小学生にアレルギーの検査をすると、約5割がスギとダニに陽性と報告されています。
 {検査で陽性}={発症}ではありませんが、将来の予備軍とも考えられます。
 国民の3割に同じ病名が付くなんて・・・スギ花粉に汚染された公害病のように思えてきました(^^;)。
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インフルエンザにかかったら出席停止期間は何日?

2016年02月07日 08時08分51秒 | 小児科診療
 インフルエンザ流行中です。
 当院では昨日土曜日の受診は80名弱で、半分位インフルエンザの迅速検査をしました。

 さて、毎年混乱する「出席停止期間」。
 以前は「解熱後2日間」が基本でしたが、その後の分析や抗インフルエンザ薬の登場により修正され、現在は

 「発症した後5日を経過し、かつ、解熱した後2日(幼児については、3日)を経過するまで」

 となっています(2013.1.3:当院ブログ)。
 参考になる最近の記事を紹介します;

■ インフルエンザにかかったら出席停止期間は何日?
2016.2.6:MEDLEY

◇ インフルエンザ感染症の学校・学級閉鎖への影響とは?
 インフルエンザにかかると、感染力が高いため流行を予防するために、出席停止や場合によっては学級閉鎖といった方法を取ることになります。平成26年9月から平成27年5月までの間に、インフルエンザ(またはインフルエンザ様の症状)で欠席した子ども(保育所、幼稚園、小学校、中学校、高校)の数は累計37万人弱でした。また、学級閉鎖を行った学校の数は約23,000校、学年閉鎖を行った学校の数は約7,000校でした。

◇ インフルエンザ感染症の潜伏期間はどのくらい?
 インフルエンザウイルスの潜伏期間は、非常に短く、平均して2日から3日です。その理由のひとつとして、インフルエンザウイルスの増殖スピードが早いためであるという説があります。1個のウイルスが100万個まで増殖するのにおおよそ1日あれば達するほど、増殖スピードは早いのです。

◇ インフルエンザ感染症にかかった時の対応法とは?出席停止は何日間?
 感染が流行しないために、インフルエンザウイルスに感染したらどの程度学校を休む必要があるのでしょうか。その規定は、学校保健安全法という法律で定められています。学校保健安全法の目的は、「学校における、児童生徒等及び職員の健康の保持増進を図るため、学校における保健管理に関し必要な事項を定めるとともに、学校における教育活動が安全な環境において実施され、児童生徒等の安全の確保が図られるよう、学校における安全管理に関し必要な事項を定め、もつて学校教育の円滑な実施とその成果の確保に資することを目的とする。」です。つまり、学校に通っている子ども、大人が健康を維持し、学校教育が円滑に進むように管理するためのものです。インフルエンザ感染症は健康の維持を脅かすため、学校感染症の指定疾患に含まれています。
 学校感染症の種類としては、第一種感染症から第三種感染症まであり、第一種感染症ではエボラ出血熱や鳥インフルエンザ(H5N1型)が含まれています。一般的なインフルエンザは第二種感染症に含まれており、百日咳やおたふくかぜ(流行性耳下腺炎)なども第二種感染症のひとつです。
 出席停止期間は、感染症によって異なりますが、インフルエンザ感染症の場合は、「発症した後5日を経過し、かつ、解熱した後2日(幼児については、3日)を経過するまで」と指定されています。ただし、第二種感染症では病状によって学校医やかかりつけ医などが伝染する危険性がないと判断した場合では、この限りではないとされています。
 つまり、インフルエンザに感染した場合の出席停止期間が解除されるためには、基本的に、解熱してから2日以上経っていること、そして発症した後5日以上経っていること、が必要となるというわけです。また、インフルエンザ感染症または疑いがある人が家族にいる場合、学校医などの医師が伝染の恐れがないと判断するまで、出席停止になることもあります。


 早見表はこちら;

「インフルエンザ出席停止期間の基準」早見表
■ 「インフルエンザ出席停止期間早見表
■ 「インフルエンザ出席停止期間について
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この冬は何回インフルエンザに罹る?

2016年02月06日 07時15分38秒 | 小児科診療
 昨日もインフルエンザの患者さんがたくさん来院しました。
 今年のインフルエンザは当初重症感が乏しかったのですが、ここにきて典型的な「からだがつらい」「ぐったりしてお母さんが抱えてくる」という患者さんが増えてきました。

 さて、インフルエンザワクチンには以下の4種類のインフルエンザ株が入っています。昨年までの3種類から4種類に増えました;

①A:H1N1:2009pdm
②A:H3N2香港
③B:山形株
④B:ビクトリア株
 
 このうち一つに罹っても、残念ながら他の株の免疫はできません。
 つまり最悪の場合、ひとシーズンに4回罹る可能性があるということ。
 まあ、毎年4種類すべてが流行するわけではありませんので、「ひと冬に2回罹った!」という人はいても3回・4回罹ったという話はほとんど耳にしませんね。

 しかし、今年はすでに3種類のインフルエンザ株が流行しているようです。
 くわばらくわばら・・・

■ インフルエンザ流行ピーク!トリプル感染に注意・・・3タイプが同時蔓延
2016/2/4:Jcast
◇ A香港型、B香港型、H1N1型
今シーズンのインフルエンザはトリプル連続感染の恐れあるという。A香港型・B型に加え、A香港型の一種であるH1N1型の3種類が一緒に流行している。「みやの子どもクリニック」の宮野孝一院長は「春先にこれでおしまいという頃にB型が流行するのが一般的なパターンですが、今年は流行が遅く始まったために同時に来ています」と話す。


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抗インフルエンザ薬について、再確認

2016年02月04日 07時21分48秒 | 小児科診療
 当地ではインフルエンザ流行中(A型>B型)。
 抗インフルエンザ薬について最新情報を交えてお復習いしておきましょう。

 現在、使用可能な抗インフルエンザ薬は以下の通り(日経メディカル「抗インフルエンザ薬の使い分けと留意点」より);

<各ノイラミニターゼ阻害薬の概要 >



 小児科では・・・

 1歳から9歳まではタミフル®(幼児はドライシロップで、体重37.5kg以上ではカプセルも)。
 5歳以降は吸入剤(リレンザ®、イナビル®)を選択可能ですが、吸入力が弱いと効果が期待できないため、当院では小学生以上に処方しています。
 
 実際の処方は、
・幼児期はタミフル®ドライシロップ
・小学生以上はリレンザ®とイナビル®がタミフル®より多い
 といったところ。
 イナビル®は1回勝負なので、過去に吸入薬を使用した経験がない子どもにはリレンザ®を勧め、経験のある子どもにはイナビル®もOK、と説明しています。
 なお、1歳未満に使用が許可されている薬はありません。

 さて、その効果には差があるのでしょうか?

<迅速診断キットA型およびB型における解熱時間(2014/15シーズン)>


 
 A型よりもB型の方が解熱時間はやや長いが、A・B型ともに薬剤間での有効性の差は比較的小さい、という結果ですね。

 一方、ウイルス消失率と家庭内感染抑止力には微妙に差があるようです(日経メディカル「抗インフル薬選択に家族内感染防止という視点も」)。

 2013/14~2014/15シーズンにおける4~12歳の123例を対象に、ワクチン接種の有無、年齢を調整し4種類の抗インフルエンザ薬(オセルタミビル、ザナミビル、ペラミビル、ラニナミビル)に無作為に割付けた。診断はインフルエンザ迅速法で行い、患者から経時的に鼻汁を採取し、ウイルス力価(50%感染価:TCID50)を測定した。患者ごとに投与開始からウイルス消失までの時間を調べ、ウイルス消失の患者数の推移を4剤で比較検討した。

 ウイルス力価の推移を確認できた102例で、ウイルス消失までの時間を解析した結果、ペラミビル群では投薬開始の翌々日にウイルス消失の患者が80%を超えていた。同時点で、他の3剤ではウイルス消失の患者が40~60%に留まっていた

 一方、廣津氏は、生活を共にする家族内での感染者発生率についても研究している。上記の患者と年齢、罹患ウイルスなどの患者背景が同じ2014/15シーズンの4~12歳の感染者を対象とした家族内感染者の発生率を見たところ、全体では患者本人から感染する可能性のある1261人のうち122人に感染が確認された。

 これを抗インフルエンザ薬別に見たところ、ペラミビル群とザナミビル群の家族内感染率が7~8%だったのに対し、オセルタミビル群とラニナミビル群は12%程度と、前者の2剤の方が家族内の感染率が低下していた


 この報告によると、
・ウイルス消失率は、ペラミビル(ラピアクタ®)は他の3剤より高い。
・家族内感染率は、ペラミビル(ラピアクタ®)とザナミビル(リレンザ®)がオセルタミビル(タミフル®)とラニナミビル(イナビル®)より低い。

 となりますね。
 ただ、タミフル®ドライシロップを使用するのは主に幼児ですから、家族内の接触が濃厚であり、感染しやすい環境にあることを考慮すると・・・あまり差がないのかなあ。ラピアクタ®は点滴なので多用は無用(当院では受験生用と考えています)。あえて言えば、リレンザ®がベターでしょうか。
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WHOがジカ熱に関して「緊急事態宣言」

2016年02月03日 08時23分27秒 | 小児科診療
 日本全国、インフルエンザが流行中です。 
 当地域も例に漏れず、学級閉鎖の話を耳にするようになりました。
 A型中心にB型も混じった流行となってますが、「高熱でグッタリ」というイメージの患者さんが少ないのが特徴です。抗インフルエンザ薬も希望者は半分くらいにとどまり、「抗インフルエンザ薬は感染者全員に必要ではない」という知識が浸透してきた感がありますね。

 さて、世界を見渡すと感染症の話題は「ジカ熱」が席巻しています。
 日本でも蚊が活動的になる5月以降に、デング熱のように社会問題化する可能性があり、人事ではありません。

 そしてジカ熱の一番の問題点は、罹った人は軽い症状で済むけど、妊婦さんが罹患した場合はお腹の赤ちゃんに影響が出る可能性があること(まだ証明はされていないようですけど)。
 これは妊婦さんが風疹に罹った場合に赤ちゃんに影響が出る先天性風疹症候群に似ています。
 ただし、風疹にはワクチンがあり、ジカ熱にはないことが決定的に異なるところです。

■ WHO ジカ熱 緊急事態宣言
2016年2月2日:NHK
 胎児への影響も指摘され、中南米を中心に感染が急速に拡大しているジカ熱について、WHOは、感染がほかの地域にも広がるおそれがあるとして、「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態」を宣言しました。
 WHOによりますと、ジカ熱は、去年5月にブラジルで感染が確認されてからこれまでに中南米を中心に25の国と地域に広がり、感染者は、今後400万人に上るおそれがあるとしています。
 ジカ熱は、新生児の脳が先天的に小さく、脳の発達に遅れがみられる「小頭症」との関わりも指摘されていますが、予防のワクチンなどはありません。小頭症との関わりについてWHOのチャン事務局長も会見で「科学的にはまだ証明されていないが強く疑われる」と述べました。
 またチャン事務局長は「妊娠している女性は感染が拡大している地域への渡航を延期することが望ましい」と述べたうえで「やむを得ず渡航する場合は、長袖や長ズボンを着用し、外出を控えるなど対策を講じてほしい」と呼びかけるとともに、各国に流行の拡大を防ぐための措置を徹底するよう勧告しました。

◇ 特に妊婦は渡航控える選択肢も
 WHOが緊急事態を宣言したことについて、感染症の問題に詳しい国立国際医療研究センターの大曲貴夫国際感染症センター長は「日本国内には、ジカ熱の患者はいないし、感染が拡大するおそれがあるわけでもない。ただ、今回のWHOの宣言を受け、ブラジルなどの流行地に渡航するかどうかをより慎重に考えるタイミングに来ている。特に妊婦については本当に必要な渡航なのかをしっかりと考えたうえで、控えるという選択肢も検討することが望ましい。また流行地に向かう方は肌の露出を控え、虫よけスプレーを使うなどして蚊に刺されない対策を徹底してほしい」と話しています。

◇ 症状と対策
 ジカ熱は「ジカウイルス」を持つ蚊に刺されることで発症するウイルス性の感染症です。感染すると3日から12日間ほどの潜伏期間の後、発熱や頭痛、それに関節痛などの症状を引き起こします。ワクチンや特効薬はなく、対症療法が中心となりますが、同じように蚊がウイルスを媒介とする「デング熱」と比べると比較的症状は軽く、多くの場合1週間ほどで回復します。また感染しても実際に症状が出る人は4人に1人程度という報告もあります。
ウイルスを媒介するのは主に熱帯や亜熱帯に生息する「ネッタイシマカ」や、日本にも生息する「ヒトスジシマカ」です。去年5月以降にブラジルで感染が確認されて以降、中南米を中心に24の国や地域に広がり、アメリカやヨーロッパでも流行地を訪れた人たちが帰国後にジカ熱を発症するケースが報告されています。
 一方で、ジカ熱は
▽患者の血液からウイルスを検出できる期間が僅か数日なことや
▽他の蚊を媒介とする感染症と症状が似通っていて区別が難しいため、
正確な患者数を把握するのは難しいのが実態です。
 日本国内では3年前に当時、ジカ熱が流行していたフランス領ポリネシアから帰国した27歳の男性が発症するなど、これまで渡航歴のある3人がジカ熱と診断されていますが、国内で感染した例はありません。
 専門家は仮に流行地で感染した人が帰国したとしても、国内では、冬の時期、蚊は、活動していないため感染が広がる可能性は低いと指摘しています。一方で流行地に渡航する場合は、蚊に刺されないよう、
▽皮膚を露出しないように長袖を着ることや
▽虫よけのスプレーの使用、それに
▽蚊帳の中で寝るなどの対策を徹底すること
が必要だとしています。

 小頭症との関係は、ブラジルでは、ジカ熱の流行と同じ時期に「小頭症」の子どもが相次いで報告され、関連が指摘されています。「小頭症」は脳の発達が遅れることで知的障害などを引き起こす病気です。
 病気の主な原因は
▽遺伝子の異常や
▽妊娠中に母親が何らかのウイルスに感染することで、赤ちゃんにも感染してしまうこと
などです。ブラジルではジカ熱の流行前に報告された小頭症の患者が
▽2010年は153人
▽2011年は139人
▽2012年は175人
▽2013年は167人
▽2014年は147人だったのに対し、
去年10月以降ではこれまでに4000人以上が報告される事態となっています。
▽亡くなった小頭症の赤ちゃんの血液や
▽出産後の母親の羊水からジカウイルスが検出されている
ことからWHOは「関連が強く疑われる」としています。
 またブラジルの保健当局によりますと「小頭症」になる最も大きなリスクとして妊娠初期のウイルス感染が挙げられていますが詳しいことはまだ分かっておらず、引き続き、原因やリスクを明らかにする研究が行われています。

★ WHO 緊急委員会とは
 WHOは、2007年以降、流行が拡大するおそれがあると判断した感染症について、緊急の委員会を開いて対応を協議しています。
 協議では、ウイルスの感染状況のほか、国や地域を越えて感染が広がるなど、深刻な状況だと判断した場合、「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態」を宣言します。
 WHOは、宣言を通して感染のさらなる拡大を防ぐために各国がとるべき措置などを勧告し、感染症への警戒を呼びかけます。今回の委員会のメンバーは、WHOが任命したウイルス学や虫が媒介する感染症に詳しい専門家のほか、各国の保健当局の担当者など12人で構成されています。感染症への警戒を呼びかける緊急事態は、これまでに、
▽2009年の豚インフルエンザのほか、
▽おととし、ポリオやエボラ出血熱の感染が拡大した際
に出されています。


 ニュースで小頭症のCTスキャン画像を見ましたが、小さいだけではなく脳室が拡大して大脳形成不全の所見が明らかであり、発達遅延/障害は必発と思われます。
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