徒然日記

街の小児科医のつれづれ日記です。

HPVワクチン(子宮頸がんワクチン)はホントに危険なのか?

2015年03月29日 08時34分59秒 | 小児科診療
 ワクチン接種の現場にいる者として「HPVワクチン(通称「子宮頸がんワクチン」)はホントに危険なのか?」を知りたいです。
 最近の記事を紹介します;

■ 子宮頸がんワクチンで新研究班 信州大などに設置
共同通信:2015/03/28
 接種後に全身の痛みやしびれなどが報告されている子宮頸がんワクチンで厚生労働省は28日までに、接種後に生じるさまざまな症状と接種との因果関係を調査する新たな研究班(研究代表者・池田修一信州大教授)を設置することを決めた。
 信州大のほか全国の7大学病院が参加し、4月から1年間研究を行う。池田教授は接種後に生じる体の痛みや運動障害といった症状のほか、記憶力や読解力の低下などの「高次脳機能障害」と呼ばれる症状にも着目しており、ワクチン接種とこれらの症状との因果関係や治療方法についても調べる。


 HPVワクチンが引き起こす病態について「HANS症候群」という概念が提唱されたのは2014年7月のこと(以前にも取りあげました)。

■ 日本線維筋痛症学会が「HPVワクチン関連神経免疫異常症候群」を提唱
MTPro:2014.9.17
 子宮頸がん予防のヒトパピローマウイルス(HPV)ワクチン接種と,中高生を中心とした全身性疼痛などとの因果関係が指摘されている中,日本線維筋痛症学会(理事長=東京医科大学医学総合研究所所長・西岡久寿樹氏)は,第6回学術集会(9月13~14日)で記者会見を開催。HPVワクチン関連の副反応について,厚労省副反応検討部会が接種部位以外の広範囲疼痛および運動障害のみを重篤患者と発表していることを問題視し,重篤症状では中枢神経症状が群を抜いて多いことから過小評価の可能性があると指摘。HPVワクチン副反応の適正な評価のために「HPVワクチン関連神経免疫異常症候群(Human papillomavirus vaccination associated with neuropathic syndrome;HANS)」を提唱し,診断予備基準案を発表した。




■ 疑問その1:HANS症候群は死亡率100%?
さて、この診断基準、どう考えても科学的とは思えない点がひとつ。
それは最初の項目である「1.HPVワクチン予防接種後(期間は限定としない)」です。
(期間は限定しない)とは、1週間あるいは1ヶ月後のみでなく、1年から数年以内も発症する可能性を考えての設定なのでしょう。
しかし、10年後、20年後も入るのは変では?
例えば、HPVワクチンを接種した女子は、幼少時に他のワクチンも受けているはずです。「HPVワクチン」という単語を「BCG」や「3種混合ワクチン」「麻疹ワクチン」などの置き換えても通用してしまう矛盾。
さらに云えば100年後も入るので、寿命が尽きますから、ほぼ「死亡率100%」ですよ!?
アカデミズムの代表であり医学学界の重鎮達が、このようなアバウトな診断基準を設けたことに疑問を持つ人は多いと思われます。

■ 疑問その2:発生率の疫学データを見せて欲しい
一般論として、ワクチン後の有害事象を副反応と認定するのは、不活化ワクチンでは困難な作業です。
このときに有用なのが「疫学」的手法です。

日本でHPVワクチンを接種した女子は約300万人。
では、ワクチンを接種していない同年代の女子300万人を調査して、同様の症状を訴える人数を比較すればよいのでは?
これで明らかに差が出るのであれば、誰もが納得しますよね。
しかし、この数字をまだ見たことがありません。

■ 疑問その3:AS04というアジュバント(免疫増強剤)
それから、ワクチンの成分で問題にされているのは「アジュバント」(免疫増強剤)。
サーバリックス®に使用されているのは「AS04」という新しい物質です。
これが「危険である」とやり玉に挙げられています。
しかし、もう一つのHPVワクチンであるガーダシル®には、日本の他のワクチンにもたくさん使用されてきたアルミニウム塩が採用されています。三種混合(DPT)など、何十年も使用されてきましたが、危険視されることはなく、当然全身の痛みなどの副反応も問題になったことはありません。
もし、新しいアジュバント「AS04」が問題ならば、サーバリックス®の方が発生頻度が多くなるはずですよね。
しかし、HPVワクチン接種後の副反応の発生頻度はサーバリックス®とガーダシル®とで差がないとのこと。
すると、アジュバントは関係ない、と判断するのが常識でしょう。


・・・以上の私の疑問が解決するのはいつになるのでしょう。現場は困っていますので、できるだけ早く「科学的に」解決していただきたいです。
コメント (2)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

「麻疹輸出国」から「麻疹排除国」へ

2015年03月29日 07時22分31秒 | 小児科診療
 日本がWHOから「麻疹排除国」の認定を受けました。
 10年前はアメリカから「麻疹輸出国」と批判されていたことを考えると、短期間に排除を実現したことは驚きです。「MRワクチン2回接種」の絶大なる効果ですね。
 
■ 日本の「麻疹排除」を認定!
(MTPro:2015.3.27)
 厚生労働省は),世界保健機関西太平洋地域事務局(WPRO)により日本が麻疹の排除状態にあると認定されたと発表した。
 WPROが同日発表したリリースによると,新たに麻疹排除が認定されたのは日本とブルネイ・ダルサラーム国,カンボジアの3カ国。西太平洋地域の麻疹排除国はオーストラリア,マカオ,モンゴル,韓国と合わせて7つの国と地域になる。
 日本では,2000年前後の小児の麻疹流行,そして2007年前後の10歳代を中心とした流行(2008年の報告数は1万1,015例)を受け,麻疹の国内排除を目標に掲げた特定感染症予防指針を策定。2008~12年の5年にわたり中学1年生相当,高校3年生相当年齢への麻疹風疹混合(MR)ワクチンの定期接種化,サーベイランス体制の強化などを行い,2012年の排除を目指していた。予防接種率の向上に伴い,国内での患者数は激減,国内流行の遺伝子型は2010年5月を最後に検出されておらず,2009年以降検出されるウイルス遺伝子は海外で流行している型のみとなっていた(IASR 2014, 35: 93-95)。
 今回,WHOが定める麻疹排除の基準である「適切なサーベイランス制度の下,土着株による麻疹の感染が3年間確認されないこと,または遺伝子型の解析によりそのことが示唆されること」を満たしたと認定された。


 一方のアメリカでは、ワクチン拒否者が麻疹流行の火種としてくすぶっています。2014年末には、なんとディズニーランドが流行の発信地となってしまいました。

■ ディズニーランドで麻疹が流行
media pickup:2015/01/20
 最近、アメリカのディズニーランドに来園した人々が体調に異変をきたし、検査してみると麻疹であったという人が大勢いたことが明らかになっており、その感染者数は現在では50人以上と、ディズニーランドの枠を越えて徐々に広まりつつあります
 カリフォルニア州の保険当局によると、ホリデーシーズン中にディズニーランドで始まった麻疹の流行によって、故郷へ戻った感染者が他の人に麻疹を感染させる状態になっており、テーマパークを越えて病気の感染が広がっていると述べています。
 2014年12月17日現在、カリフォルニアでの感染者は51人が確認されており、他にもユタ州(2人)やワシントン州(2人)、そしてメキシコ(1人)でも感染が確認されています。
 感染者のほとんどは昨年の12月15日と12月20日の間にディズニーランドに来園した客であるとみられており、保険当局は麻疹のワクチンを摂取していない者が感染していると推測し、今後の麻疹の感染を予防するためにもワクチンの摂取を行うことが推奨されています。
 サンディエゴ郡のケースでは、10人の麻疹感染者の内、9人が麻疹ワクチンを打っていなかったことが明らかになっています。


 う~ん、この記事でもワクチンへの誤解がありますね。
 正しい情報は、こちらの記事をご覧ください;

■ アメリカの「はしか」大流行の一因となった「反ワクチン」派を論破する
The Huffington Post、執筆者:Jacqueline Howard: 2015年02月18日
 2014年12月、ディズニーランドで発生した「はしか」が2015年1月から2月にかけてアメリカで15年ぶりに大流行している。この大流行の背景には、アメリカの親たちに根強く残る「ワクチンへの不信」がある。「ワクチンが原因で自閉症になる」といった、根拠のない医師の論文やデマがひとり歩きしているためだ。ハフポストUS版では、そういったワクチンにまつわるデマについて紹介している。
 小児用ワクチンの安全性と効果には、多くの科学的根拠がある。アメリカの公衆衛生当局によると、ワクチンはシートベルトと同じくらい子供たちを守るのに重要だ。オバマ大統領も、子供に予防接種を受けさせるよう親に促している。
 それなのに一体なぜ、アメリカの多くの親たちが子供に予防接種を受けさせないのか? まさに、14州で102人もの患者が出るはしかの大流行が起きているというのに。


 この記事の中で「ワクチンに関する間違った主張」が紹介されています。あなたは論破できますか?

 間違った主張1:ワクチンが自閉症の原因になっている。
 間違った主張2:イギリスの研究でワクチンと自閉症の関連が示された。
 間違った主張3:予防接種を受けたあと自閉症を発症した子供の事例がたくさんある。
 間違った主張4:うちの子が予防接種を受けようが受けまいが勝手だ。
 間違った主張5:ワクチンは子供の免疫系に「過剰な負荷」を与える。
 間違った主張6:予防接種で得られる免疫よりも「自然の」免疫の方が優れている。


 間違っている理由を知りたい方は、ぜひ記事をお読みください。
 さて、次は政治的視点からの記事;

■ はしかの流行が暴露したアメリカの予防接種の実態
日本/アメリカ新時代 by 冷泉彰彦:2015年02月04日

 この記事の中で、CDCは「アメリカ国内においてワクチン未接種の人口が増えていることが流行拡大の原因」だという問題提起をしています。
 どうやら「ワクチン先進国」のお手本と考えられてきたアメリカも、日本と同じような問題を抱えているようですね。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

「われわれは自分たちだけのためにワクチンを接種しているわけではない」

2015年03月21日 06時35分31秒 | 小児科診療
 という意識を持ってワクチン接種を希望される方は、どれだけいるでしょうか?
 ワクチンのことを調べていると、何回も「集団免疫」という単語に出会います。
 「みんなでワクチンを打てってこと?」という単純なものではありません。
 「みんなでワクチンを打って、事情で打てない人達も守るという思想」なのです。

 でも、ピンときませんよね。なかなか説明するのが難しい・・・と、こんなわかりやすい記事を見つけました(一部抜粋);

■ 知ってますか?ワクチンの持つ“もう一つ”の意味
 忽那賢志先生(国立国際医療研究センター国際感染症センター)
(日経メディカル:2015/3/20)

one for all,all for one
 集団免疫という言葉をご存知でしょうか。図をご覧ください。
(上段)集団の中で免疫を持っている人がいない状態です。その中に感染者が出ると、周りにどんどん広がって集団のほとんどが感染してしまいます。
(中段)集団の中に何人か免疫を持つ人がいる状態です。その中に感染者が出ると、免疫を持っている人は感染しませんが、免疫を持っていない人はやはりほとんどが感染してしまっています。
(下段)は集団のほとんどが免疫を持っていて、数人が免疫を持っていない状態です。その中に感染者が出ても、周囲は免疫を持っている人ばかりなので周りに感染は広がらず、結果的に免疫を持っていない人にまで感染が及んでいません。
 これが集団免疫です!(バーン)



 麻疹ワクチンや風疹ワクチンは生ワクチンです。生きたウイルスを弱毒化させて接種するわけですが、例えばステロイドを内服しているような免疫不全患者さんは接種することができません。しかし、同時に、免疫不全患者さんは麻疹や風疹に罹患すると重症化してしまいます。
 ワクチンが抱えるこの悩ましい問題、一つの解決策は集団免疫です。われわれが麻疹ワクチンや風疹ワクチンの接種率を高めることで、間接的に生ワクチンを接種できない免疫不全者を麻疹や風疹から守ることになるのです。インフルエンザワクチンも同様です。インフルエンザに罹患して重症化するリスクが高いのは高齢者ですが、成人と比較して高齢者ではインフルエンザワクチンの効果が低いことが知られています。しかし、われわれがインフルエンザワクチンの接種率を高めれば、集団免疫によって高齢者の感染を防ぐことができるのです。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

保育園で起きたB型肝炎集団発生~ワクチンの必要性

2015年03月21日 05時52分46秒 | 小児科診療
 今後定期接種化が予定されているB型肝炎ワクチンに関する記事を見つけました。
 一般の方にはピンと来ないワクチンですが、医療関係者の中では定期接種化が待望されてきました。
 そのポイントは、

・「元祖がんワクチン」である。
・日本は垂直感染(=母子感染)対策のみ、水平感染対策が抜け落ちている。
保育士の湿疹から園児に感染拡大した集団発生例もある。
・近年見られるようになったジェノタイプAは慢性化しやすい、つまりがん化のリスクが高い。
・感染既往者は、ガンの治療で免疫抑制状態になると、休眠状態のウイルスが再活性化し劇症感染(de novo 肝炎)化して命を落とすことがある。


 現在は任意接種ですが、意識の高いご家族は乳児早期からB型肝炎ワクチンを接種希望する例が増えています。
 世界標準なので、外国の方は当たり前のように接種希望されます。
 私の子どもたちも、当然接種済みです。 

■ B型肝炎ワクチン…0歳児に3回 定期接種へ
(2015年3月19日 読売新聞)
 慢性化すると、肝硬変や肝臓がんを発症する恐れがあるB型肝炎の感染を防ぐため、早ければ2016年度から予防接種法に基づいた子どもへのB型肝炎ワクチンの定期接種が実現しそうだ。



 B型肝炎は、B型肝炎ウイルスの感染で起きる。ウイルスは感染者の血液などに潜み、消毒が不十分な注射針を複数の人に使ったり、性交渉を通じたりして感染が広がる。また、母親が感染していると、出産時に赤ちゃんも感染する恐れがある。
 思春期以降に感染しても、無症状のまま自然に治る人は多い。一部は、全身の疲労感や発熱、吐き気などの症状が出る急性肝炎を起こす。急性肝炎も自然に治ることが多いが、1割はウイルスが感染し続けるとみられている。一方、抵抗力が不十分な乳幼児が感染すると、ウイルスが排除されずに持続感染が起きやすい。感染が続くと、一部は慢性肝炎を起こし、肝硬変や肝臓がんに進行する。
 国内の持続感染者は、献血者の調査から人口の約1%とされる。世界保健機関の推計では、持続感染者は世界に約2億4000万人おり、年78万人が肝硬変や肝臓がんなどに進行し亡くなっている。B型肝炎はワクチンで予防できるため、同機関はすべての乳幼児への予防接種を推奨している。
 ワクチンの乳幼児期の定期接種制度を導入しているのは2013年7月末現在で182か国。日本では、妊婦検診で感染が確認された母親に対して、1986年から母子感染対策として出産後直ちにワクチンを子どもに接種させることを公費で認めているが、それ以外での接種は自費となっている。
 だが、B型肝炎に詳しい済生会横浜市東部病院小児肝臓消化器科顧問の藤沢知雄さんによると、B型肝炎ウイルスは、唾液や汗、涙などにも含まれており、家族や子ども同士の濃厚な接触で、傷口などから感染する恐れがある。さらに、近年では、成人になってから感染しても持続しやすい遺伝子型のウイルスが、欧米から国内に広がる懸念も指摘されている。
 藤沢さんは「保育園での集団感染も報告されている。思春期以降の感染を防ぐためにもワクチン接種を受けることが大切」と話す。




コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

世界で批判される「予防接種に及び腰」な日本の姿勢

2015年03月04日 08時12分24秒 | 小児科診療
 こんなニュースが目に止まりました;

ワクチン支援表明せず 日本、G7で唯一  国際社会から非難も
(2015.3.2:共同通信)
 貧しい国に暮らす子ども向けワクチン調達のため、各国政府などが出資する国際組織「GAVIアライアンス」(本部・ジュネーブ)が募る2016~20年の活動資金に対して、先進7カ国(G7)で日本が唯一、拠出を表明していないことが1日、分かった。
 今年は、各国首脳が秋に米ニューヨークに集まり貧困や飢餓の撲滅を目指した「国連ミレニアム開発目標(MDGs)」の後継目標を決める重要な年。貧困対策に非協力的だとして、国際社会から非難の声が上がりかねない事態だ。



 外務省国際保健政策室は、拠出をやめるわけではないが、1年ごとに予算を組む日本の現行ルールでは、16年以降の拠出要請には14年度の時点で明確に応じられないと理由を説明する。
 ただ過去には、長期的な資金提供を前もって宣言し、後の予算編成に反映させるという対応をとった例は多くある。拠出表明できないのは、もともと国際的な医療支援の予算が少ない中で、エボラ出血熱対策への支援が増えたことも背景にあるとみられる。
 GAVIは00年に設立。14年末までに各国政府や民間から約120億ドル(約1兆4千億円)を集め、先進国ならば普通に受けられるはしかや肺炎球菌などの基本的なワクチンを、最貧国の4億人以上の子どもに提供した。日本も11年から拠出を始め、GAVIによると、14年までに約3600万ドルを提供している。
 GAVIは1月末、16年からの5年間に 新たに75億ドル を集めるという目標を掲げ、1月末にベルリンで各国を集めた増資会合を開催。英国が約23億ドル、米国が8億ドルなど、日本を除くG7各国が軒並み支援を表明した。中国や韓国など日本の近隣諸国も拠出を決めた。
 GAVIのセス・バークレー事務局長は「増資会合までに日本の拠出表明が出なかったことは非常に残念だ。今後も資金協力を期待し続けたい」とコメントした。


 今までは資金を提供してきました。
 その際、外国の識者から「日本は外国人にワクチン接種費用を提供しているのに、なぜ自国民にワクチン接種が一部有料なのか?」と質問されて答に困った、という記事を読んだことがあります。
 今後は「日本国民のみならず外国人にもワクチン接種は自己責任、自己負担で行うべし」という意思表明なのでしょうか。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

東京の保育所で「疥癬」が集団発生

2015年03月01日 09時46分27秒 | 小児科診療
 ちょっと花粉症から話題を変えましょう(笑)。

 小さな子どもが体をすりあわせて過ごす保育園/幼稚園は感染症が流行しやすい環境。
 先日、「疥癬」の流行記事が目にとまりました。
 感染源は保育士さんでした。医療機関へ通院しながらも診断が遅れ、感染拡大の後にわかったという事例。

■ 保育士をきっかけに保護者・家族まで感染が拡大 ~昨年9月に東京都の保育所で疥癬が集団発生
(2015/2/25 加納亜子=日経メディカル)
 2014年9月に、東京都中央区の認証保育所で疥癬の集団発生が起きていたことが、国立感染症研究所の疫学調査結果の報告から明らかになった。報告者数は疑い例を含め19人だった。
 疥癬は、人の皮膚角質層に寄生するヒゼンダニ(疥癬虫、Sarcoptes scabiei)により引き起こされ、皮膚病変と掻痒を主症状とし、人から人へ感染する疾患だ。医療機関や高齢者施設などで集団発生事例が増加傾向にあり、問題視されている。
 今回報告された保育所での報告者数は19人(確定例8人、疑い例11人)で、性別は男性4人、女性15人。所属別では、0歳児クラス2人、1歳児クラス6人(うち確定例3人)、2歳児クラス0人、3歳児クラス1人、4歳児クラス2人(同1人)、5歳児クラス2人、保育士1人(同1人)、保護者4人(同3人)、交流保育児1人であった。
 症状は、掻痒感が17人、皮疹が19人(体幹と手の両方10人、体幹のみ8人、その他1人)に認められた。
 なお、通所園児は0~4歳児各7人、5歳児6人の計41人。職員数は、保育士7人、栄養士2人、その他子育てサポート員が10人だった。

◇ 担任保育士をきっかけに感染が拡大
 初発例と考えられた1歳児クラスの担任保育士は、2014年6月中旬に湿疹が脇腹~腹部に出現し、強い掻痒感を自覚していた。医療機関で処方を受けていたが、8月中旬に手荒れが現れ、9月上旬からは手荒れに対して外用ステロイドが処方された。その後、急速に皮膚症状が増悪し、9月16日には保育所で疥癬患者が発生したため、9月17日に確認のため受診し、状況を主治医に伝えたところ疥癬と診断され、翌日の再診で角化型疥癬と診断された。
 初発例の保育士の症状の推移から、手荒れが出現した8月中旬頃より感染力の強い角化型となっていたと推測された。同保育士は、発症後確定診断がつくまでの13週間にわたり、勤務を続けていた。
 こうした事例を受け、国立感染症研究所は「保育所等集団生活を行う場においては、日頃からの職員の健康チェックが重要となる。発疹や掻痒感が長期間続いたり、ステロイド薬の塗布で改善がみられない、あるいは増悪する場合は、所属の看護師へ相談することが望ましい」と説明。
 同事例は、一斉健診による症例の早期発見・早期治療、非症例に対する一斉健診や消毒、職員の予防内服などの予防的処置、発症者の隔離、保護者への適切なリスクコミュニケーションが更なる患者発生の抑制につながったとされた。そのため、「疥癬が保育施設内で発生することはまれだが、万一の場合に備え、発生時の対応を決めておくことが大切である」とまとめている。加えて、「早期の探知を図る上で症候群サーベイランスの一つである保育園サーベイランスが役立つと考えられる」と提言している。


 記事の中で出てきた「保育園サーベイランス」。
 HPを見ると、当地群馬県の状況がわかります。

 私は小児科なので、ふだん見慣れているアトピー性皮膚炎系の乾燥性湿疹と異なる印象があるときは皮膚科受診を勧めています。
 その“違和感”とは、皮疹の様子や分布だったり、処方したステロイド軟膏の効果に手応えがなかったり・・・
 その中の何人かは「疥癬」と診断されて治療に至りました。

 昨年、「スミスリンローション」という塗り薬が認可され使用可能になっています(医師の処方箋が必要)。
 スミスリンと云えば、シラミの治療で使われる「スミスリンシャンプー」が有名ですね(こちらは薬店で市販されています)。
 フ~ン、疥癬とシラミは同じ薬が効くんだ・・・。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

花粉対策グッズのお話

2015年03月01日 08時05分39秒 | 小児科診療
 薬店に行くとたくさん並んでいる花粉症対策グッズ。
 こんな記事を見つけました;

花粉を遮断! 対策に有効なグッズ7選いしゃまち:2015.1.21

1. マスク
 花粉症の予防と対策に最も効果的なのは、マスクの着用です。さまざまな種類のマスクが市販されていますが、必ずしも「花粉症用」のマスクを使う必要はありません。花粉症用のマスクは息苦しいと感じる人は、通常のマスクを着用するだけでも体内に入る花粉の量を3分の1以下に減らすことができます。
 また、スギ花粉は水につきやすいため、湿ったガーゼをマスクに挟み込むとさらに効果が増します。

2. メガネ
 花粉が飛び始めると、目のかゆみに悩まされる人も少なくありません。目に入る花粉を防ぐにはメガネが非常に有効です。度が入っている必要はないので、視力に問題がない人は、この時期はダテメガネを着用すると良いでしょう。
 また、普段コンタクトレンズを使用している人は、特に注意が必要です。コンタクトレンズと結膜との間で花粉が擦れ、炎症を起こす原因となることがあります。できるだけメガネを着用するようにしましょう。

3. 化学繊維の服
 外出した際に服に花粉がつくと、どんなに窓を閉めて対策しても家の中に花粉を持ち込んでしまいます。ウールなどの表面がふわふわした衣類は静電気が起きて花粉が付着しやすいので、この時期は避けたほうが無難です。
 逆に花粉が付きにくいのは、ポリエステルなどの化学繊維や綿など、表面がツルツルしていて静電気が起きにくい素材です。
 これなら、もし花粉が付着してしまっても簡単に振り払うことができます。室内に入る前に、服から花粉を払うのを忘れずに。手で払うのに抵抗がある場合は、洋服ブラシを使うと便利です。

4. 帽子
 花粉が付着しやすいのは、表面に出ている顔や頭。特に髪は、付いてしまった花粉を落とすのが困難です。
 頭の花粉は帽子をかぶることで避けられます。長い髪の人は、髪をまとめて大きめの帽子ですっぽりと覆うといいでしょう。防寒効果もありますから、おしゃれ気分でお気に入りの帽子をかぶって出かけてみてはいかがでしょうか。

5. 花粉防止クリーム
 鼻の穴に塗って体内への花粉の侵入を防ぐクリームが市販されています。このクリームには花粉症の症状を軽減させる成分は含まれていませんが、花粉が粘膜につくのを防ぐ効果があります。マスクを通り抜けてしまった花粉を止める最後の砦(とりで)です。薬効成分を含まないため、抗アレルギー剤に比べると副作用の心配もかなり少ないです。
 花粉防止クリームは、薬局などで購入できます。値段は少し高めですが、ひどい花粉症に悩まされている人は早めに購入して試してみると良いかもしれません。

6. 静電気防止スプレー
 これまで紹介したように、服や帽子、カバンなどに花粉が付着すると、家に持ち込むことになりかねません。化学繊維のツルツルとした素材の服を着ていれば花粉が付着すること自体少ないですが、ウールや毛皮の服を着たい日は静電気防止スプレーを吹きかけておきましょう。
 静電気さえ防止すれば、着合わせをそれほど気にすることなく好きな服を着ることができます。
 さらに、洗濯の際に柔軟剤を使用するのも静電気防止に有効な方法です。柔軟剤には服を柔らかくする以外に、繊維同士のすべりをよくする働きがあります。そのため、重ね着をしたときの摩擦を防ぎ、静電気が発生するのを抑えることができます。

7. 人工涙液
 メガネを着用していても、一部の花粉は目に入ってきてしまいます。目の表面に付着した花粉を洗い落とすときにオススメなのが、人工涙液の使用です。
 目の表面は涙で覆われています。水道水で目を洗うと、涙を洗い流すだけでなく目の細胞を傷つけてしまいます。
 人工涙液は、塩化ナトリウムと塩化カリウムを含む点眼薬で、ドライアイの治療などにも用いられます。涙と似た性質を持つため、目を傷つけずに花粉を洗い流すことができます。人工涙液は、薬局などで市販されています。家に帰ったら、洗顔、うがい、鼻をかむのに加え、人工涙液で目を洗うのを習慣にしましょう。


 おなじみのラインナップですが、この中で気になったのが「花粉防止クリーム」。
 花粉が反応する場である粘膜の近くで花粉をトラップすると説明されているようです。
 これなら、ワセリンで代用できそうです。
 中でもアトピー性皮膚炎患者さんに保湿剤として処方しているプロペト※ (=眼科用ワセリン)は目に入っても大丈夫と保証されていますので、鼻の入口だけではなく目の周りに塗って眼症状を軽減する目的でも使用可能です。
※ プロペトは数年前はAmazonで500g瓶を1000円で購入できましたが、今は姿を消してしまいました。現時点では100g1000円の高価なチューブのみ。有名になったので商売に走っているのでしょう(苦笑)。あ、こちらでは500g1749円ですね。

 こちらも参考になります;
花粉症を少しでも軽く!最近の花粉対策グッズ事情
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする