徒然日記

街の小児科医のつれづれ日記です。

11月1日に肺炎球菌ワクチンが変わり、発熱の副反応が増えます。

2013年10月31日 15時59分59秒 | 小児科診療
 日本全国一斉に2013年11月1日付けで肺炎球菌ワクチンが変更されます。
 現在の7価ワクチン(プレベナー®)から13価ワクチン(プレベナー13®)への切り替えです。

 といわれても「えっ、どういうこと?」と思われるでしょう。

 簡単に説明します。
 肺炎球菌ワクチンは肺炎球菌による感染症を予防するワクチンです。
 その肺炎球菌は、さらに約90種類の型に細かく分けられます。
 しかし、全ての型がヒトに重篤な感染症を起こすわけではなく、悪さするのはその一部。
 現在の7価ワクチンは「90種類からヒトに悪さしやすい7種類をセレクトした」という意味です。
 では、13価ワクチンの意味もおわかりですね。そう、「90種類からヒトに悪さしやすい13種類をセレクトした」ワクチンです。

 なぜ 7価→ 13価に変更したのか?
 それは、7価ワクチンが普及して肺炎球菌感染症は全体的に減り、特にターゲットの7種類は劇的に減るという成果が得られましたが、7種類以外のモノが増えてしまうという困った状況になったのです。
 ですので、従来のものに6種類を追加して7+6=13価と相成りました。

 「それじゃあ、また同じ事が起こって数が13より増えるのではないか?」
 と考えたあなたは鋭い!
 まあ、その通りです。イタチごっこに似ています(苦笑)。
 ちなみに、以前からある成人用の肺炎球菌ワクチンは「23価」(ニューモバックス®)です。

 そろそろ本題に入ります。
 現行の7価ワクチンも他のワクチンと比較して接種後の発熱率が高いとされています。
 添付文書(薬の使用説明書)には20~25%、つまり4~5人に1人は発熱することになり、現場でも実感しました。

 この度登場する13価ワクチンの接種後発熱率はもっと高く、添付文書によると各回30~50%です(ただし37.5℃以上)。
 つまり「2~3人に1人は発熱する」ことになります。
 さらに4回接種のうちどれかで発熱する子どもの頻度は71.3%と非常に高率!
 こんなワクチンを慎重派の厚労省がよくもまあ認可したものだなあ、とヘンに感心する私。

 米国のCDCのマニュアルには「3人に1人が微熱を、約5%(20人に1人)が39℃以上の発熱」すると説明するよう記載されています。わかりやすいですね。
 日本の臨床治験の際の生データは下の表をご覧ください:


(プレベナー13®のインタビュー・フォームより)


 わかりづらいので知りたい情報を抜き出すと・・・
 38.0℃以上・・・1回目後(10.2%)、2回目後(15.3%)、3回目後(13.3%)、4回目後(32.1%)
 39.0℃以上・・・1回目後(0.9%)、2回目後(2.6%)、3回目後(3.1%)、4回目後(5.4%)


 というわけで、肺炎球菌ワクチン接種後に発熱しても「まれで重篤な副反応だ!」と驚かないでください。
 ほとんど一過性で、翌日には下がってくれますので基本的に心配要りません。
 万が一ですが、もし「ふだんと様子が違う、心配でたまらない」と親の第六感が働くような状況となったら、迷わず医療機関を受診していただくようお願い致します。

 さらに生後2ヶ月から同時接種に組み込んで接種する赤ちゃん、発熱の原因は肺炎球菌ワクチンで同時接種ではない可能性が大であることをあらかじめご理解ください。
 しかし以前死亡例が問題になった同時接種、その後に熱が出ると不安になるのは仕方がないことです。発熱の副反応を経験したら個別接種を選択する方法もあり、だと考えます。

 当院ではこのような混乱をあらかじめ予測し、しばらくの間は13価肺炎球菌ワクチン(プレベナー13®)を同時接種から外すことにしました。
 発熱の副反応が同時接種のせいにされることを危惧しての措置です。
 世論が「肺炎球菌ワクチン後の発熱は珍しいものではない、ましてや同時接種のせいではない」と認識するようになったら再度同時接種に組み込む予定です。
 何卒、ご了承ください。

<参考になるHP>
■ 「小児用肺炎球菌ワクチンの切替えに関するQ&A」(厚生労働省)
■ 「小児用肺炎球菌ワクチン(13価)」(KNOW! VPD)
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インフルエンザに抗生物質は効かない。

2013年10月31日 15時08分02秒 | 小児科診療
 風邪の原因の9割はウイルスであり、ウイルスに抗生物質(=抗菌薬)は効かない。
 原因の残り1割は主に細菌であり、抗生物質が効く。
 つまり「かぜ薬=抗生物質」は間違った考え方である。


 私は長年このように説明し、抗生物質の適正使用に努めてきました。
 ですから、私の外来では実際に抗生物質を処方する頻度は1割程度にとどまります。
 必要と判断してたまに抗生物質を処方すると「先生、抗生物質を飲んでもいいんですか?」と逆に患者さんから質問される始末(苦笑)。

 でも、日本全体ではまだまだ「かぜ薬=抗生物質」と思い込んでいる人がたくさんいます(医者を含めて?)。
 欧米ではそんなことはないだろうと何となく考えてきましたが、日本とあまり変わらない状況を報告する記事が届きました。

 文中の記載で特に注目していただきたいのは「いかなる薬にも副作用が起き得るという点だ。まれに深刻な症状になることもある。抗菌薬が下痢を引き起こすことはよく知られているが、1万分の1の確率でアナフィラキシーと呼ばれるアレルギー反応を起こし、早急に治療しなければ命を落とすこともある」という文言です。
 「1万分の1」は低い頻度ではありません。
 その昔、日本脳炎ワクチンがアデム(ADEM、急性散在性脳脊髄炎)の副反応により積極的勧奨停止とされたときの頻度は「400万接種に1回」でした。
 ワクチンの重篤な副反応より頻度の多い重篤な副作用を持つ抗生物質が湯水のごとく使われているのが現状です。
 皆さん、正しい知識を持って子どもの健康を守りましょう。

インフルエンザ最大の危険は「勘違い」
(2013年 10月 29日:ロイター)
 今年もインフルエンザの季節がやってくる。本格的な到来を前に保健当局が予防注射を呼びかけているが、世界では毎年、最大500万人がインフルエンザで重篤な状態になり、25万─50万人が命を落としている。
 米国では毎冬インフルエンザによって1億1100万日の労働日数が失われているが、これは病欠や生産性低下による年間約70億ドル(6800億円)の経済的損失を意味する。
 極めて感染力が強いインフルエンザは、ウイルスによって引き起こされる。感染者の咳やくしゃみを通じた飛沫感染で急速に広がり、死に至るケースもある。万能薬とまではいかないが、ワクチンはインフルエンザの予防に効果を持つ。
 しかし、米国や欧州での啓発活動にもかかわらず、インフルエンザについては今も多くの人が誤った知識を信じている。つまり、インフルエンザの治療で最も効果的なのは抗生物質という誤解だ。そして多くの医師も、子どもを心配する親たちが抗生物質を望む場合には、インフルエンザには効かないという科学的・医学的な真実を無視して処方してしまう
 最近欧州で行われた調査では、回答者の半数が通常の風邪とインフルエンザの両方に抗生物質が効果的だと認識していた。──抗生物質という言葉はそもそも誤解を招く名前だ。厳密に言えば、抗生物質とは微生物が作った化学物質を指すが、実際には大半の薬は人工的に作られたものであり、まとめて「抗菌薬」とすべきだろう──。
 米国やオーストラリアなどでも調査の結果は同様だった。抗菌薬は細菌に効果があるのであって、ウイルスには効かない。インフルエンザはウイルス感染する病気である
 抗菌薬はインフルエンザに効果が無いどころか、以下に挙げる3つの理由から有害とも言える。
 まず、いかなる薬にも副作用が起き得るという点だ。まれに深刻な症状になることもある。抗菌薬が下痢を引き起こすことはよく知られているが、1万分の1の確率でアナフィラキシーと呼ばれるアレルギー反応を起こし、早急に治療しなければ命を落とすこともある。
 2つ目は、薬にはお金がかかり、効果の無い薬を買うのは無駄遣いということだ。ある研究によると、米国では、上気道感染症(かぜ症候群)にかかった成人に対し、不必要な抗菌薬の処方箋が年間4100万件出されており、これに10億ドル以上が費やされている。
 3点目は最も重要だ。抗菌薬を服用すると、菌を殺すことはできるが、抗菌薬に耐性を持つ「耐性菌」が成長し、増殖するということだ。薬を誤って使用してきたことで、耐性菌は世界的な脅威となり、だからこそ抗菌薬は高い治療効果が期待できる時だけ服用することが重要だ。言い換えれば、何に感染しているのか、感染の元を断ち切るのに最も効果的な薬は何なのかを知る必要があるということだ。
 インフルエンザに抗菌薬が効かないということは、これまで長きにわたって科学者や医師、医療専門家らの知るところであった。しかしこれまで見てきたように、患者や臨床医の行動を変えるところまで情報が行き届いているとは言えない。米シンクタンクのランド研究所が行った研究によれば、医師は子どもの親が抗菌薬を期待していると感じた場合に、より高い確率で抗菌薬を不適切に処方するという。
 一般の人々や専門家らの注意を喚起しようと、数々のキャンペーンも行われている。フランスでは2002年から啓発活動が実施されているほか、米国では疾病対策センター(CDC)が1995年から毎年、「賢くなろう、抗生物質が効く場合を理解する」と銘打ち、健康な成人や子どもの親が抗菌薬を欲しがるのを抑える目的で活動を行っている。両国では、処方された抗菌薬の数が4分の1減り、子どもへの処方が最も少なくなった。
 啓発活動が不適切な処方の減少につながっていることは称賛されるべきだが、今なお医療専門家はインフルエンザに抗菌薬を処方しているし、われわれも病気になった時に抗菌薬を求めてしまう。これからインフルエンザの本格的なシーズンを迎えるにあたって、われわれ全員には責任がある。効かない薬は求めない──危険かつ反社会的な行為だからだ。


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22例目の先天性風疹症候群が発生

2013年10月31日 11時54分18秒 | 小児科診療
 下記のニュースが流れました。
 風疹流行のピークと、先天性風疹症候群発生のピークは5~6ヶ月ずれますので、まだ発生する可能性があります。

先天性風疹症候群 全国22人に
(2013年10月30日:NHK)
 風疹の流行の影響で、東京で新たに2人の赤ちゃんが母親が妊娠中に感染したことで目や心臓などに障害が出る「先天性風疹症候群」と診断されました。去年から続く流行で、風疹によって障害が出た赤ちゃんは、全国で22人となりました。
 流行はピークを過ぎていますが、ことしに入ってからの風疹の患者数は、1万4000人を超えています。
 こうした赤ちゃんは、この冬にかけてさらに増えるとみられることから、国立感染症研究所は、診断のしかたや支援制度をまとめた問答集をホームページで公開したほか、国が設けた長期的な風疹対策を話し合う専門家の委員会でも、どんな取り組みが必要か検討を進めています。


(図表は朝日新聞より)
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HPVワクチン、その後

2013年10月30日 06時18分12秒 | 小児科診療
日本の現況
 厚労省の委員会はHPVワクチン(子宮頸がんワクチン)の積極的勧奨停止を続行することを決めました(下記)。
 まだCRPS(複合性局所疼痛症候群)との関連はシロともクロとも判断できないようですね。

子宮頸がんワクチン、副反応の3割超が重篤- 検討部会、接種勧奨中止を継続
(2013.10.28:CB News)
 子宮頸がん予防ワクチン(HPVワクチン)接種後に重篤な副反応が相次ぎ、積極的な接種勧奨が中止されている問題で、医療機関から報告のあった副反応のうち、意識消失や視力障害といった重篤症例が3割超あったことが分かった。厚生労働省は28日、厚生科学審議会の検討部会に、医療機関や製造販売業者から報告された症例数などを提示。検討部会はこれを受け、接種勧奨の中止の継続を決めた。
 厚労省の報告によると、4月1日から7月末までに、約25万人がHPVワクチンを接種。この期間に接種した人のうち、医療機関から105例の副反応報告があり、3割超の37例が「重篤」に分類された。
 未回復の10代女性のケースでは、意識消失、視力障害、頭痛などの副反応、回復した10代女性のケースでは、握力低下や多汗症、四肢痛などの副反応がそれぞれ出たという。
 厚労省はこのほか、専門家の評価で接種後のアナフィラキシーが疑われた重篤の2例を報告。副作用歴やアレルギーのなかった10代女性のケースでは、ワクチンを接種したところ、約5分後に数回嘔吐、顔面蒼白となった。アレルギー性のショック症状と考えられたため、生理食塩水などを静注。接種から45分後に回復し、帰宅したという。
 また、検討部会に対し、国外のHPVワクチンに関連する情報を収集していることも報告した。今回報告のあった症例などについて、検討部会は次回の会合で詳しく検証する見通し。


世界の状況
 一方、外国の状況として北欧からの報告を紹介します。
 不思議なことに、この論文の中では「HPVワクチンは有害事象として神経疾患の頻度を増やすことはない」と結論づけられています。CRPSの名前さえ出てきません。
 欧米ではCRPS様の症状は「心因反応」に分類され副反応として捉えないという文章を読んだことがあります。
 この違いは何なのでしょう?

HPVワクチンに神経疾患やVTEの発症リスク認めず~ベーチェット病、レイノー病、1型糖尿病は否定できず、北欧のコホート研究から
(2013. 10. 28:NM oline)
 デンマークとスウェーデンにおける大規模コホート研究から、4価ヒトパピローマウイルス(HPV)ワクチンは、重篤な有害事象として、ほとんどの自己免疫疾患、神経疾患、静脈血栓塞栓症(VTE)を生じないことが示された。ただし、ベーチェット病、レイノー病、1型糖尿病は弱い発症リスクが否定できなかった。スウェーデンKarolinska研究所のLisen Arnheim-Dahlstrom氏らが、BMJ誌電子版に2013年10月9日に報告した。
 これまでに海外で報告されているHPVワクチンの有害事象は、発熱、頭痛、注射部位の反応などで、多くが軽症で一過性だ。著者らは、ワクチン接種に関連する重篤な有害事象を同定するため、デンマークとスウェーデンのデータベースに登録された情報を利用したコホート研究を実施した。
 06年10月から10年12月に登録された10~17歳の少女99万7585人の個人データを得て解析を行った。両国でHPVワクチン承認後4年間に、ワクチン接種を1回以上受けていたのは29万6826人(全体の29.8%)、2回目の接種を受けたのは23万8608人(23.9%)、3回の接種を終えたのは16万986人(16.1%)だった。述べ接種回数は69万6420回だった。
 重篤な有害イベントは、自己免疫疾患と神経疾患、VTEを合わせた計53アウトカムに設定。入院記録、病院の外来と救急部門の受診記録から発生の有無を確認した。接種から180日間に、ワクチン接種群に5例以上の報告があった29アウトカムについてさらに分析を進め、接種群と非接種群の罹患率を比較した。
 主要転帰評価指標は、各回の接種から180日後までに発生した重篤な有害事象に設定。接種群と非接種群の発生率を推定し、年齢、居住国、年度、親の出生国、親の学歴、親の社会経済的地位などで調整して率比を求めた。
 接種群に5例以上認められた29種類のアウトカムのうち自己免疫疾患は23種類だった。そのうち20種類では、非接種群と比較した率比は有意でなかったが、残るベーチェット症候群(率比3.37、95%信頼区間1.05-10.80)、レイノー病(1.67、1.14-2.44)、1型糖尿病(1.29、1.03-1.62)の3疾患では、非接種群に比べて接種群で有意に高かった
 29種類のアウトカムのうち神経疾患は5種類だったが、率比はいずれも有意な上昇を示さなかった。また、てんかん(率比0.66、0.54-0.80)と麻痺(0.56、0.35-0.90)は、非接種群に比べて接種群で有意に発生率が低く、逆相関関係が見られた。
 ワクチン接種とVTEの間には有意な関係は見られなかった。率比は0.86(0.55-1.36)だった。
 自己免疫疾患の中で率比が有意に上昇した3疾患とワクチン接種との関係を、「接種群に20例以上発生(分析の信頼性)」、「率比が3.0以上(関係の強度)」、「2つの国のデータをそれぞれ別個に分析してもリスク上昇が有意(関係の一貫性)かどうか」の3つの基準で解析した。その結果、3疾患はいずれも、これら3基準のうちの1つしか満たさなかった。
 また3疾患とも、接種後の時間経過に対する発症のパターンに一定の傾向は認めず、181日以降の罹患率比もそれ以前の率比と同様の傾向を示した。ベーチェット病の率比は3.18(0.83-12.19)、レイノー病では1.50(0.95-2.37)、1型糖尿病(1.18、0.91-1.55)と、接種後に一過性に見られたものではなかった。
Autoimmune, neurological, and venous thromboembolic adverse events after immunisation of adolescent girls with quadrivalent human papillomavirus vaccine in Denmark and Sweden: cohort study
BMJ 2013; 347 doi: http://dx.doi.org/10.1136/bmj.f5906 (Published 9 October 2013)
Cite this as: BMJ 2013


 約100万人のデータですが、日本の報告と決定的に異なる点があります。それは「HPVワクチンを接種していない人との比較」つまりコントロール・スタディと呼ばれる統計学的手法を採用していることです。
 日本でのデータはHPVワクチンを接種後症状を訴えた人たちだけを問題にしていますが、同じ症状が接種していない人に発生する頻度と比較されていません。これでは客観的な評価ができませんね。

 肺炎球菌とヒブワクチンの同時接種が問題になったの時にも感じたことですが、日本人には科学的・統計学的視点が欠如しています。
 あるイベント後に乳児死亡例が報告された場合、イベントと死亡例に関連があるかどうか?
 そのイベントに参加していない乳児の死亡数と比較するとわかる、というのが統計学です。
 例えば、ワクチン同時接種後1週間以内に死亡例が報告されたとします。
 統計学では、それを以下の状況と比較します;
①ワクチン同時接種をしていない乳児が1週間に死亡する率と比較して多いかどうか。
②他のイベント(例えば乳児健診)後1週間以内に死亡した乳児数と比較して多いかどうか。
 私が得たいろいろな情報をもとに判断すると・・・
 ①も②でも「差はない」(統計学的有意差は存在しない)と判断され、同時接種は再開するに至りました。

 HPVワクチンについても、科学的に解析して万人が何得できる報告をしていただきたいと思います。
 国民は不安に駆られて接種を躊躇し、中止を呼びかける団体も出てきました;

子宮頸がんワクチン:被害者連絡会、中止要望 知事と前橋市長に /群馬
(毎日新聞:2013年10月29日)
 子宮頸(けい)がんワクチンの副作用による被害を訴える女性や家族らでつくる「全国子宮頸がんワクチン被害者連絡会」(東京都)は、ワクチン接種事業の中止などを求める要望書を大沢正明知事と山本龍・前橋市長に提出した。連絡会は県支部を発足させ、県内でもワクチン被害に対する支援などを呼びかけていく。
 同連絡会によると、県内にはワクチン接種後に体調不良を訴えている10代の少女が少なくとも4人おり、頭痛や体の痛み、ひどい物忘れなどに苦しんでいるという。同連絡会は原因究明や治療法の確立などを国に求めており、「病院を回っても原因が分からない人が多い。思い当たる症状があれば連絡してほしい」としている。問い合わせは同連絡会(042・594・1337)へ。
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世界の「赤ちゃんの夜泣き」対策

2013年10月28日 14時02分36秒 | 小児科診療
 世界中どの国でも赤ちゃんの夜泣きには例外なく悩まされているようです。
 添い寝が基本の日本では、オムツを見ておっぱいをあげて、暑くないか汗のかき方を確認して・・・それでもダメなら抱っこというのが基本でしょうか。近年はレジ袋をクシャクシャもむ音で寝てくれるという情報もありました(お母さんのお腹の中で聞いた音と似ているので落ち着くとのこと)。

 一方、欧米では子どもの自立を促すために基本的に赤ちゃんは夫婦とは別室で寝かされます。
 泣いても親は知らんぷり・・・そのうち赤ちゃんは泣いても無駄だと諦めて泣かなくなり、よく寝るようになるらしい。
 
 日本の児童精神医学者に云わせると、
日本方式:「自分が困っているというシグナル(泣く行為)を出せば誰かが助けてくれる」「自分はお母さんに大切にされている(基本的信頼感)」「自分は存在する価値のある人間なんだ(自己肯定感)」と心の発達の土台ができる。
米国方式:日本とは真逆の行為ですから基本的信頼感も自己肯定感も育たず、自立したように見えても不安だらけの見せかけの自立である。
 となり、推奨されません。

 しかし夜泣き対策論争に終わりはなく、こんな記事が日経メディカルに掲載されました;

赤ちゃんの夜泣きに有効な「ファーバー方式」(2013年10月24日)
 子供が一晩中続けて寝られるかどうかは大きな関心事で、多くの本が出版されている。中でも有名なのは、ボストンの小児病院で小児睡眠障害センター長を務めるファーバー医師による方法。
ファーバー方式
1) 最初に寝かしつける時も、夜中に赤ちゃんが起きた時でも、部屋で一人で泣いている赤ちゃんをすぐにあやさない。
2) 決まった時間(最初の日は3分)待ってから、 ベビーベッドの外から数十秒間、声を掛けたり触ったりして赤ちゃんをあやし、たとえ泣き続けていても、また部屋を去る。
3) そうして少しずつ、その間隔を長くしていき、親がいなくても自分一人で寝入ることを教えていく。

 ちなみに、南米やアジアからの移民たちの間では、添い寝(cosleeping)が一般的。アメリカ人でも、ナチュラル派や母乳育児促進派の人たちの間では添い寝がはやり始めているものの、乳幼児突然死症候群(SIDS)のリスクを高めるとして白い目で見られることもいまだに多い。実際、米国小児科学会は2011年に、添い寝に反対する声明を出している。だが、親たちが肥満であったりアルコールを飲んでいる場合を除き、添い寝は逆にSIDSを減らすという報告もあり、論争は続いている(Paediatr Respir Rev. 2005; 6:134-52.)。



 私は赤ちゃんの夜泣きの相談を受けたときには一通りのアドバイスをし、それでも解決しなくて保護者が疲れ果ててしまうようなら漢方薬を処方しています。
 なお、赤ちゃんのタイプにより2種類のエキス剤を使い分けます;
 一つは疳の虫を抑える「抑肝散」。キーキー泣くタイプで感情の暴走を和らげてくれます。お母さんもテンパっているときはお母さんにも飲んでいただきます。すると母子共々気持ちが楽になりトンネルから抜け出すことができます。この抑肝散は近年認知症の周辺症状(とくに徘徊)に有効であると有名になりました。認知症のお年寄りも、思うようにならない自分の体にいらだち、感情が暴走しがちなのでしょう。
 もう一つは不安を和らげる「甘麦大棗湯」。これはシクシク泣くタイプによく効きます。大人では不安が募るパニック障害にも有効です。

 夜泣きに有効な薬から逆に考えると、夜泣きをする赤ちゃんはイライラや不安が募って泣いていることが想像されます。
 それを放置する(米国式)のと、抱っこする(日本式)のと、どちらがよいと思いますか?

追記
 そうそう、もう一つの有名な夜泣き対策を忘れていました。
 それは「おくるみ」。
 赤ちゃんの体に布団を巻いてヒモで縛るのです。
 赤ちゃんは「疑似抱っこ」(ほどよい圧迫感がお母さんに抱っこされているのと似ている感覚)で眠りにつくと説明されてきました。
 しかしこの「おくるみ」、「股関節脱臼」「変形性股関節炎」の原因になることが以前から指摘されてきました。
 その話題を扱った記事をどうぞ;

「おくるみ」は赤ちゃんの股関節に悪影響、英論文
(2013年10月30日:AFP)
 赤ちゃんを布でくるんで腕の動きを固定し、足はまっすぐに伸ばして巻く「おくるみ」が今、再び流行っているが、おくるみは乳児の股関節に悪影響を及ぼすとの研究結果が英専門誌「小児期疾患アーカイブス(Archives of Disease in Childhood)」に掲載された。
おくるみは乳児の安眠を促す方法だとみなされている一方、専門家らは、成長して中年を迎えたときに、変形性関節炎を起こしたり、人工股関節置換術を受けることにつながると警告している。
 今回発表された研究で、小児整形外科医のニコラス・クラーク(Nicholas Clarke)氏は「伝統的なおくるみは、発育性股関節形成不全(DDH)を引き起こす要因となり得る」と述べている。「骨盤周辺の健全な発達を促すためには、足を股関節の位置で曲げ伸ばしできる余地を与えておかなければならない。そうすることで股関節の自然な発達が可能になる。乳児の両足をきちんと揃え、まっすぐに伸ばしたまま布をしっかり巻いてしまうようなことはすべきではない」という。
 またクラーク氏は「おくるみ用の布は市販のものであれば、足を折り曲げたり、股関節を動かす十分なスペースが確保できるものでなければならない」ともアドバイスしている。
 クラーク氏が引用した数字によると、最近の北米では幼児の約90%が生後数か月間「おくるみ」を施され、英国では2010年から2011年にかけての1年間で「おくるみ」用の布の需要が61%増となっている。
 古代ギリシャ・ローマ時代にまでさかのぼるとされるこの習慣は、全身に軽い負荷をかけて安心感と温もりを感じさせることで、乳児に子宮にいたときの感覚をよみがえらせているといわれている。
 欧米諸国では、おくるみの習慣は赤ちゃんに悪影響を与えるとして数十年前に廃れていたが、中東や一部の部族社会などではいまだに根強く残っている。
 クラーク氏によると日本の啓蒙活動では、おくるみを避けるよう指導した結果、股関節脱臼の発症数が半減したという。
 この論文について、英ロンドン(London)にある小児科医院、グレート・オーモンド・ストリート病院(Great Ormond Street Hospital)の整形外科医アンドレアス・ロポシュ(Andreas Roposch)医師も、おくるみが幼児の股関節の正常な発達を妨げる証拠があることに同意し「成長中の、特に未発達の股関節に害をもたらす可能性があり、逆に良好な結果をもたらす要因は見当たらないため、おくるみはするべきではないというのが私の見解だ」とコメントしている。
 英ロンドン大学ユニバーシティー・カレッジ(University College London、UCL)の小児科医であるアラステア・サトクリフ(Alastair Sutcliffe)医師は、伝統的に女性が自分の腰の上に乳幼児の足を広げさせて子どもを運ぶナイジェリアのような国では、赤ちゃんの股関節脱臼はほとんどみられないという例を挙げ、「もしも子どもを寝かしつけるためにおくるみをする必要があれば、親は子どもの身になって特に腰回りをきつく締めつけないように注意し、緩く巻いてあげた方が良い」と話した。


 しばらく前まで、日本のTV-CMでモンゴルの家族が赤ちゃんを空に向かって抱き上げるシーンがありました。その赤ちゃんは布でグルグル巻きにされている「巻きオムツ」であり、私は「股関節脱臼にならないんだろうか?」と気になって気になって仕方がありませんでした。
 報告がないかと検索してみると、次の論文がヒットしました:

■ 「モンゴル遊牧民の障害者とその家族」(長沢孝司)日本福祉大学社会福祉学部 『日本福祉大学社会福祉論集』 第 122 号 2010 年 3 月
 ・・・この中の8ページに「障害の種類においても都市部とは顕著な相違が見られるのである. まずその 1 つは, 股関節脱臼が多いことであり, 26 人中の 7 人を占めていることである. 股関 節脱臼は都市部にも見られるが, 地方ではこれが顕著である. 遊牧地域になぜこれが顕著に多い のかは, まだ医学的にも解明されていない. 」との記載があります。原因が不明って・・・乳児期の育児方法ですよ!

 こちらは接骨院のHP;
みずの接骨院:モンゴルボランティア
 ・・・「・・・モンゴルには足部障害を患った子供たちが多い話を聞き・・・その足部障害、特に先天性股関節脱臼が多い理由として、寒い土地柄と遊牧民という歴史の中から培われたミノ虫のような「まきおしめ」による子育てと栄養のバランスの悪さが原因ではないかと言われています。
 うん、こちらはキチンと指摘されていますね。

 こちらは小児科医院のHP;
ベビースリングの危険性・安全性(世田谷千歳船橋小児科:かるがもクリニックのブログ)
 ・・・「余談ですが、日本では少し前は巻きおむつもありました。これは足をのばすために、股関節脱臼の発生率が高かったといわれています。モンゴルでは寒いためか、いまだに巻きおむつであり、股関節脱臼も多いようです。」とモンゴルの巻きオムツにもついて言及していますが、主にスリングについてわかりやすく解説されています。日本でもその昔、整形外科には「股関節外来」というのがあるのが一般的でした。「巻きオムツ」→ 「股関節脱臼」というパターンに気づき、現行の「股オムツ」が普及後、いつの間にか股関節外来も消えていきました。現在高齢者で「変形性股関節炎」を患っている方の多くは、乳児期の股関節脱臼の後遺症だと耳にしたことがあります。
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インフルエンザ=麻黄湯ではありません。

2013年10月23日 07時05分34秒 | 小児科診療
 漢方薬が市民権を得てきたことを感じる今日この頃。
 古くは「風邪には葛根湯」から始まり、近年は「インフルエンザに麻黄湯」「認知症に抑肝散」という組み合わせも認知されてきました。

 しかし、西洋医学の病名に漢方薬を当てはめて使うと、思わぬ落とし穴があります。
 約3割の患者さんに漢方薬を処方している私でさえ「インフルエンザに麻黄湯」には違和感を覚えますし、実際にインフルエンザと診断してもめったに麻黄湯は処方しません。
 なぜかというと、麻黄湯はインフルエンザのくすりとして作られた方剤ではないからです。

 麻黄湯の本来の適応は「表寒実証」。
 といっても意味不明ですね(笑)。
 漢方医学の病名は「証」で表現され、これは患者さんの病態・病状を判断したものです。
 説明してみますと・・・

 「」とは体の表面、つまり皮膚です。
 「」とは冷えていること、すると「表寒」は皮膚が冷えていることを意味します。
 風邪を引いて熱が上がってくる過程でブルブル・ゾクゾク悪寒が走る経験を皆さんしたことがあると思います。
 熱を測るとすでに38℃超、しかし皮膚を触ってみると冷たく、自分自身は寒気を感じる・・・この状態がまさに「表寒」です。

 「実証」とは体力が充実していること。「実証」の反対は「虚証」で体力がない状態。
 「膨らんだ風船が実証で、しぼんだ風船が虚証とイメージしてください」と説く専門家もいます。
 より具体的には胃腸が丈夫、女性で云えば鎮痛剤で胃が荒れないこと。
 生理痛で鎮痛剤を飲んで胃をやられて胃薬が手放せない、という方は「虚証」です。

 というわけで、麻黄湯は「体力のある人が風邪の引き始めで体がゾクゾク悪寒が走り、皮膚を触ると冷たいとき」に使う漢方薬と云うことになります。そのような状態の人が麻黄湯を服用すると「皮膚が温まり汗をかき熱が下がって体が楽になる」という効き方をするのです。
 ですからインフルエンザ以外の風邪でも上記のような状態の時に服用すると体が楽になります。

 鋭い方はお気づきかもしれませんが、麻黄湯を飲むと皮膚が温まる・・・つまり一過性に体温が上がります。
 人は感染症に罹った時の生体反応として、自分で体温を上げて侵入してきた病原体(ウイルスや細菌)を追い出そうとしますが、麻黄湯はその生体反応を手伝い・加速させることで効果を発揮するのです。

 では、麻黄湯と解熱剤を併用するとどうなるでしょう。
 せっかく上げようとしている熱を押さえ込んでしまうことになり、麻黄湯の効果半減です。「漢方薬を服用するときは解熱座は使わないように」と指導されるのはこのためです。

 さて、麻黄湯を間違った使い方をするとどうなるか、例を挙げてみます;

・「虚証」の人に使うと、胃腸障害(胃が重い、胃痛、軟便/下痢)が出やすい。
・「虚証」の人に使うと、汗が出すぎてグッタリしてしまう(脱汗)ことがある。
・「表寒」以外の状態、例えば風邪を引いて数日経っても熱が上がったり下がったりしている状態(半表半裏)で飲んでも効かない。


 等々。
 というわけで、ブームに乗って「インフルエンザ=麻黄湯」と一律処方する医者はちょっと・・・というのが私の印象です。
 なお、インフルエンザに使用できる漢方薬は麻黄湯だけではありません。ちゃんと「虚証」の方向けのかぜ薬として「桂枝湯」や「香蘇散」なども用意されていますので、ご安心を。
「体が楽になる」という効力で評価すると、西洋薬より漢方薬の方が優れていることを日々実感している私です。

<参考HP>
■ 「インフルエンザに対する麻黄湯使用上の注意」(日本東洋医学会)
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自己判断の除去は危険 ー 子どもの食物アレルギー

2013年10月22日 07時41分05秒 | 小児科診療
 何となく不安なのでアレルゲンになりやすい食物を除去している家庭が少なからず存在します。
 食物アレルギーの治療の基本の一つは「必要最小限の食物除去」であり、もう一つは「適切な時期を医師が判断して食べさせる」ことです。
 自己流の食物除去(特に牛乳)をつづけると体がさらに過敏な状態になり、間違って食べたときに激しい症状が出ることが昔から伝わってきましたが、近年それがクローズアップされるようになりました。
 関連記事を二つ紹介します;

食物アレルギー:子供の過剰制限は逆効果 栄養障害誘因も
(毎日新聞 2013年10月18日)
 食物アレルギーを起こしやすい卵や乳製品などを子供が食べるのを過剰に制限した結果、アレルギーの悪化や栄養障害を起こす事例が出ていることが、複数の調査で分かった。保護者らがアレルギーの発症を過剰に恐れている実態があるようだ。19日から横浜市で開かれる日本小児アレルギー学会で発表される。
 東京都立小児総合医療センターでは、食物制限後にO脚などを発症した子供が、過去5年間に5人受診。うち4人に、栄養障害で骨が変形する「くる病」の症状を確認した。5人とも湿疹やアトピー性皮膚炎を治すために卵と乳製品を除去しており、魚も取らせていない例もあった。3人は保護者が自己判断しており、こうした食事の結果、ビタミンDが不足したとみられる。
 調査した清水麻由医師は「不必要だった食物除去で、逆に病気を生んでしまったが、親は『子供のため』と思っていた」と語る。
 東京都八王子市の松本勉医師の調査でも、アトピー性皮膚炎などを改善するため食物除去をしていた147人のうち、逆にアレルギー反応が強まった子が複数あり、うち2人は強いアナフィラキシーと呼ばれるアレルギー反応を起こしていた。明らかに皮膚炎が改善したのは10人だけだった。
 国立成育医療研究センターの大矢幸弘・アレルギー科医長は「最近は、こうした食物の摂取を遅らせる方がアレルギーを起こしやすくなるとの研究もある。食物除去は必要最低限にすべきだ」と訴えている。【田村佳子】

"都市伝説"信じないで! 子供守る食物アレルギー最新情報
日本臨床栄養学会などの市民公開講座より(2013.10.15:メディカルトリビューン)
 乳幼児の5~10%が食物アレルギーを起こすといわれる現在、その予防と子供の健やかな成長のための正しい知識が求められている。日本臨床栄養学会や日本臨床栄養協会などは10月6日、京都市で市民公開講座「子どもの食物アレルギー最新情報」を開催。その中で、神奈川県立こども医療センターアレルギー科の高増哲也医長は、子供の食生活で気をつけるべきポイントについて講演した。高増医長は、食物アレルギーに関する"都市伝説"を信じ込まず、正しい知識を身につけるよう助言している。

・最近は「イクラアレルギー」が増加
 アレルギーを起こしやすい食べ物として卵、乳製品、小麦はよく知られているが、最近問題になっているのがイクラだ。回転寿司が普及してイクラが身近になったためか、1~3歳の子供でイクラアレルギーになる例が増えているという。
 また、小学生以上の子供や大人では、卵や乳製品によって食物アレルギーを起こすケースは減る一方、甲殻類や果物で発症する例が増える。
 このように、食文化や年齢によってアレルギーの原因となる食べ物は異なる。タイ北部ではアリの卵を食べる習慣があり、その卵でアレルギーになる人が多いそうだ。

・食物アレルギーをめぐる都市伝説
 最新の研究で、食物アレルギーに関する常識は大きく変わっている。以前は、食物アレルギーの予防のために「妊娠中や授乳中の母親は食物アレルギーの原因になりやすい食べ物を食べない方がよい」「離乳食には食物アレルギーの原因になりやすい食べ物を入れない方がよい」などといわれていたが、これらの説には根拠がなく、今や都市伝説となっている。現在は、むしろ小さいうちから子供にさまざまな食べ物を食べさせた方がよいのではないかという説もあり、世界的に大規模な研究が行われているという。
 食物アレルギーを持つ子供の場合、食事の際に症状を引き起こす食べ物を除去せざるを得ない。しかし、大人と同様、子供にとっても食事は友達との社交の場であり楽しむべきものだろう。
 高増氏は「食物アレルギーの予防のために先回りして、アレルギーを起こす"可能性のある"食べ物を避けるのは適切な予防とはいえないのではないか。確実にアレルギー症状を起こす場合を除いて、基本は少しずつ食べさせるべきだろう。その上で、もし少しでも症状が出たらすぐにアレルギー専門医と相談し、今後食べるか食べないかを決めるべきだ」と語った。(宮下 直紀)
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子宮頸がんワクチンと慢性疲労症候群の関連なし ― 英当局

2013年10月22日 07時29分57秒 | 小児科診療
 以下のニュースを見つけました。
 良かれ悪しかれ、世界中でHPVワクチンは話題になっている様子。
 思春期女子という感受性豊かな対象に、想定外の副反応が発生しているようです。

子宮頸がんワクチンと慢性疲労症候群の関連なし―英当局 関係指摘する報道受け調査(2013.9.30:メディカルトリビューン)
 英国の医薬品審査当局(MHRA)は9月26日、複数のデータベースを調査した結果、子宮頸(けい)がんワクチン(2価ワクチン、商品名「サーバリックス」)が、原因不明の強い疲労感が長期間続く「慢性疲労症候群」を引き起こすことを示す証拠は見つからなかったと発表した。英国では、子宮頸がんワクチンの接種と慢性疲労症候群の関係を指摘する報道があり、これを受けて専門家らが検討を行っていた。

・定期接種の開始前後、接種後と他の時期で比較
 英国では2008年9月、12~18歳の女児を対象にサーバリックスの定期接種を開始し、200万人以上の女児が接種を受けた。2012年10月からは4価ワクチンの「ガーダシル」へ切り替えている。定期接種の開始以降、接種後に慢性疲労症候群と診断された人がいることが報道され、MHRAや英国保健サービス(NHS)など政府関連機関は「調査の結果、同ワクチンの安全性に関する懸念はない」との情報提供を続けてきた。
 今回の調査では、MHRAとNHSが運営するデータベースを使い、定期接種の開始前後で慢性疲労症候群の報告数を比較したほか、接種後と他の時期での慢性疲労症候群にかかった割合などを検討した。
 その結果、いずれの検討でもサーバリックスの接種で慢性疲労症候群になるリスクが上昇することを示す証拠は見つからなかったという。
 研究を行ったMHRAのPhilip Bryan氏は「英国の子宮頸がんワクチンプログラムは、女性を子宮頸がんから守るという観点で最も優れた制度。今回の知見で、このワクチンの安全性が再確認できたのではないか」と述べた。なお、今回の調査結果は、9月1日発行の国際医学誌「Vaccine」(電子版)にも掲載されている。


 イギリスはこの論文でひとつのハードルをクリアしました。
 日本のCRPSの検討結果はどうなっているのでしょう・・・まだ発表されませんね。
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20例目(19+2-1)の先天性風疹症候群が発生。

2013年10月11日 05時48分24秒 | 小児科診療
 新たに2名の先天性風疹症候群が確認されました。
 一方、今までに報告された中の1例が先天性風疹症候群ではないことが判明し、19+2-1=20例という計算になります。
 厚労省からの新たなコメントはないようです。

先天性風疹症候群 さらに2人の赤ちゃん
(2013年10月10日:NHK)
 大阪と埼玉で新たに2人の赤ちゃんが母親が妊娠中に感染したことで目や心臓などに障害が出る「先天性風疹症候群」と診断されました。去年から続く流行で風疹によって障害が出た赤ちゃんは、全国で20人となりました。
 風疹は、妊娠中の母親が感染すると赤ちゃんの心臓や目、耳などに障害が出る「先天性風疹症候群」になるおそれがあります。流行はピークを過ぎていますが、ことしに入ってからの風疹の患者数は1万4000人を超えています。
 大阪府と埼玉県によりますと、それぞれ1人の赤ちゃんが新たに先天性風疹症候群と診断されたと医療機関から報告があったということです。
 一方、国立感染症研究所によりますと、去年、大阪で先天性風疹症候群と診断されていた赤ちゃん1人がその後の検査で風疹の影響ではないことが分かったということです。
 この結果、去年から続く流行で先天性風疹症候群と診断された赤ちゃんは、全国で合わせて20人となりました。


記者の目:先天性風疹症候群
(毎日新聞 2013年10月03日)
 妊娠中の女性が風疹にかかることで赤ちゃんに障害が出る「先天性風疹症候群」(CRS)。今年の風疹大流行の影響で、その報告数は14人(9月22日時点)と過去最多となっている。風疹はワクチン接種で防ぐことができる。ところが、現在20~40代の男性は、ワクチン接種率が低く抗体を持たない人が多い。この世代に対し国などが費用(1人約1万円)を負担して予防接種を進めれば、妊婦への感染は大幅に防げるはずだ。厚生労働省の対応は後手に回り、9月30日に初めて風疹についての小委員会を開き、対策指針を決める方針を示した。国はCRSについて広く知らせるキャンペーンと、撲滅に向けた対策に乗り出すべきだ。
<妊娠初期感染>
 障害発生恐れ 風疹は春から夏にかけて流行する感染症で、重症化することはまれだ。ただし、妊娠初期の女性がかかると、赤ちゃんに心疾患や難聴、白内障、発達障害などさまざまな障害が表れる恐れがある。
 岐阜市の主婦、可児(かに)佳代さん(59)は、12年前にCRSの合併症で長女妙子さんを18歳で亡くした。妊娠3週目で風疹を発症。妙子さんは目や耳、心臓に障害を持って生まれた。心臓や目の手術を受け、ろう学校に通い、最期は心臓や肺の症状が悪化して亡くなった。可児さんは「私が風疹にかかったことで、妙子を死なせてしまった」と今でも悔やんでいる。
 理化学研究所の加藤茂孝氏(ウイルス学)によると、風疹が流行した年は、人工、自然ともに流産数が増加している。風疹による自然流産とCRSを恐れた人工流産を合わせると、生まれたCRSの赤ちゃんの60倍と推計されるという。
 神戸市の西村麻依子さん(30)は昨年、妊娠7週目で夫婦同時に風疹感染が分かった。産みたいと伝えたところ、主治医から「私が夫なら産ませない」と強い口調で中絶を迫られた。西村さんは転院して長女の葉七(はな)ちゃん(11カ月)を出産。CRSと診断されたが、現状で分かっているのは、右耳の高音が聞こえにくい可能性があることだけだ。西村さんは「ワクチンを接種していれば防げる病気なのに、中絶を考えたり、中絶してしまったりすることがないように、行政に対応してほしい」と話す。


★ 参考HP
■ 医療ガバナンス学会 Vol.227「風疹大流行になすべきこと
(2013年9月24日)
東京大学医科学研究所 先端医療社会コミュニケーションシステム 社会連携研究部門 特任教授 上 昌広
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秋の花粉症にもご用心。

2013年10月08日 22時15分12秒 | 小児科診療
 花粉症のカレンダーをひもとくと、春はスギ・ヒノキ、夏はカモガヤ・ハルガヤ・オオアワガエリ、秋になるとブタクサ・ヨモギ・セイタカアワダチソウ・・・と主役が入れ替わり立ち替わりで登場します。
 風邪は1~2週間で落ち着きますが、2週間以上水っぱなが続くときはアレルギー性鼻炎を、目のかゆみを伴うときは花粉症を疑いましょう。
 秋の花粉症のわかりやすい解説を毎日新聞で見つけましたのでご紹介します:

くらしナビ・ライフスタイル:秋も花粉症にご注意!
(毎日新聞:2013年10月08日)

 秋らしさを満喫できる時期の到来、と思ったら、鼻水が止まらない--。それはもしかして風邪ではなく、秋の草花による花粉症かも。最近はスギ花粉症患者の増加によって、別の花粉にも反応して、秋に症状が出る人が増えているという。

 ●春先と同様の症状
 神奈川県座間市の山田隆章さん(61)は30年近く前、ブタクサ花粉症と診断された。その5年ほど前からスギ花粉症があったが、8月のお盆の頃から、外出するとくしゃみや鼻水など、春先と同様の症状が出るようになった。毎年10月初めまで続き、薬が欠かせない。
 秋の花粉症の原因になるのは、ブタクサ、ヨモギなどの草が主体だ。春のスギやヒノキの花粉が数十キロ以上先までも届くのに対し、ブタクサなどの花粉が飛ぶのはせいぜい数百メートル~1キロ程度。半面、身近な道端や河川敷に生えているため、近くで大量に吸い込む恐れがある。
 山田さんは10年ほど前から、地域でオオブタクサなどの駆除に取り組み、夏場に草刈りを繰り返している。「1年草なので、何年か根気よく続ければ減らすことは可能。スギと同様に『花粉を減らすのは無理』と諦めてしまう人が多いが、ブタクサは自分たちで対策が取れます」と、活動の広がりに期待する。

 ●地域差が大きい
 「地域差が大きいのが秋の花粉症の特徴」と日本医科大の大久保公裕教授。「土手や公園など雑草の多い場所を避ければ、スギ花粉よりは自衛が可能」という。ただ、秋は運動会など屋外でのイベントも多く、連休も多い。肌寒い春先よりも屋外にいる時間が長いので、注意が必要だ。
 症状はスギ花粉症とほぼ同じで、くしゃみ、鼻水、目のかゆみなど。晴れた日は花粉の飛散量が増えるので症状が重くなり、雨の日は軽い。一方、草花の花粉は壊れやすく、細かいため、スギに比べてぜんそくを起こしやすい。口腔(こうくう)アレルギー症候群(OAS)と呼ばれる、口の中がかゆくなるなどの症状を伴うこともある。
 自衛策や治療法も、春とほぼ同じ。かかってしまったら、花粉症対策用の眼鏡やマスクを使い、花粉を取り込まないようにする。雑草の多い場所に行くことや、土手でのジョギングなどは避け、花粉が多く飛ぶ雨の日の翌日は外出を控えよう。毎年重症化する人は、飛散のピーク前に抗ヒスタミン薬などを飲んでおくと良い。

 ●スギ花粉も飛散
 秋の花粉症患者は、2000万人とも言われるスギ・ヒノキ花粉症の5~10分の1程度とされる。スギに反応する人が即ブタクサなどに反応するわけではないが、スギ花粉症のある人は、ない人に比べ反応しやすいという。

 スギ花粉症で、秋に症状が出る場合も。スギは秋にかけて花芽を作り、11月ごろに休眠状態に入る前に若干の花粉を飛ばすためだ。飛散する量、期間は、春に比べてわずかなため、症状が出るのは重症者だけとみられる。大久保教授は「風の強い日に対策をして、症状が出てから薬を飲み始めれば十分」と話す。
 気温が急激に下がる秋は風邪を引きやすく、通年性のアレルギー性鼻炎も悪化しやすい。別表のチェックポイントのうち三つ以上当てはまる場合は、花粉症の可能性があるので医師に相談しよう。屋外やジョギングの後で症状が出るのは花粉症、屋内でも悪くなるのは通年性のアレルギー性鼻炎の可能性が高い。
 大久保教授は「花粉症は放っておけば、体はますますアレルギー反応を起こしやすい状態になり、悪化する。医師と対策を立ててください」と助言する。
    *
 今季の花粉の状況について、NPO法人「花粉情報協会」事務局長の佐橋紀男・東邦大訪問教授は「ブタクサやヨモギは終わりかけているが、この数年はほぼ同量とみられる。スギは、来春は飛散の少ない年とみられており、この秋はごくわずかだろうが、敏感な人は10月後半から注意してほしい」と呼びかけている。

==============

花粉症チェックポイント
・透明でさらっとした鼻水が出る
・1週間以上くしゃみや鼻水が続いている
・目のかゆみがある
・くしゃみが止まらないことがある
・熱があっても微熱程度で高熱ではない
・晴れた日に、より強く症状が出る
 ※三つ以上当てはまる場合は花粉症の可能性も。大久保公裕教授の話を基に作成
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