徒然日記

街の小児科医のつれづれ日記です。

麻疹輸出国から麻疹輸入国になった日本

2012年02月11日 07時47分02秒 | 小児科診療
 数年前まで、日本は「麻疹輸出国」としてアメリカなどから非難されていました。
 事情が変わったのがMRワクチン(麻疹/風疹ワクチン)が定期接種化してから。
 自然感染の患者が激減し、流行が抑えられました。
 そして日本は「麻疹輸入国」と認知されるようになった、という記事を提示します;


風疹・はしか、海外型急増 「旅行・出張前に接種を」(2012.2.8:朝日新聞)


(日本で検出された麻疹ウイルスの推移)

 国内の風疹やはしか(麻疹)の感染者で、海外で流行するタイプのウイルスが急増している。厚生労働省研究班が調べた。妊婦が風疹に感染すると、子どもに障害が出る危険があるほか、麻疹では流産や死産につながりかねない。30~40代の男性は風疹の予防接種を受けていない人が多く、専門家は「海外旅行や出張前には接種を」と呼びかけている。
 国立感染症研究所や地方衛生研究所が2011年に国内の患者からとった麻疹ウイルス約120検体、風疹ウイルス約20検体の遺伝子の特徴を調べた。この結果、麻疹は東南アジア、欧州など海外で流行しているタイプがほぼ100%を占めた。海外タイプは3年前から急増している。風疹も大半がタイやフィリピン、ベトナムなどで流行しているタイプの可能性が高かった。



 予防接種の効果/威力をヒシヒシと感じますね。
 他の感染症もこのスタンスで対処すれば、小児科医の仕事内容が激変するはず。
 「罹ってから治療する」ではなく「罹らないよう予防する」小児医療へ。
 少しずつ、小児科医の夢に向かって動き始めました。
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インフルエンザ、登校/登園はいつから?

2012年02月11日 07時27分45秒 | 小児科診療
 インフルエンザ流行シーズンまっただ中。
 働いているお母さん方には「いつから登校/登園できるか?」は切実な問題です。
 10年前までは学校保健法の「解熱後2日間」が一般的でしたが、近年事情が異なってきました。
 大きな要因は2つ;

1.抗インフルエンザ薬の登場
 タミフル、リレンザなど、抗インフルエンザ薬を投与すると自然経過より約1日早く熱が下がります。しかし、感染力(他人にうつす力)も早くなるのかどうか、正確な答えが今のところありません。

2.乳幼児は感染力が長く残る
 乳幼児は免疫力が不十分なので、ウイルスを排除するのに時間がかかります。学童は解熱後2日間でウイルス排泄が激減しますが、乳幼児が同じレベルまで達するには3日間かかるとされています。


 今から5年ほど前でしょうか、解熱後2日間で再登園してきた園児達からインフルエンザが再流行してなかなか終息しないことが問題となりました。
 以上より、「解熱後2日間」という従来のルールでは感染拡大を防ぐことができない可能性が出てきました。
 混乱を収束させるために科学的データによる検証と対策が急務です。

 なお、当地域では医師会が次のような指針を出し、医療機関に周知しています;
 「学童は解熱後2日間、園児は解熱後3日間は出席停止
 これは家族に対する嫌がらせではありません。あくまでも感染対策ですのでご了承ください。

 出席停止期間に関する、悩ましい現状を報告した記事を見つけました;

インフルエンザ発症 登校いつから?保護者混乱 
(2012/02/10 神戸新聞)
 インフルエンザが猛威を振るう中、感染した子どもの学校や幼稚園の出席停止期間をめぐり、保護者の間で混乱が生じている。教師らは学校保健安全法の施行規則にのっとって「解熱後2日を経過するまで」と指導するが、医師の多くは「抗ウイルス薬が効けば熱が下がるが、感染力は落ちない。発症後すぐに熱が下がっても最低5日間は登校しないで」と呼び掛ける。施行規則が抗ウイルス薬のない時代に定められたまま改訂されていないことから生じた混乱で、保護者らは「どちらを信じれば…」と頭を抱える。
 出席停止は感染症の拡大を防ぐため、感染した子どもの登校や登園を禁止する緊急避難措置。校長らの判断で実施でき、欠席扱いにならない。
 学校保健安全法(旧学校保健法)の施行規則は1958年に制定された。兵庫県小児科医会感染症対策委員会の吉田元嗣委員長(61)は「当時はタミフルやリレンザなどの抗ウイルス薬がなく、熱が下がるまで5日ほどかかった。その上での解熱後2日と考えるべきだ」と指摘する。
 抗ウイルス薬はウイルスの増殖を抑える作用があるが、退治するわけではない。発症後すぐに飲んでも4日間はウイルスが消えず、他人に感染させる可能性が高いとされる。日本臨床内科医会インフルエンザ研究班の2003~04年の調査によると、児童の約半数は学校で感染し、うち14~21%は欠席後に再登校してきた児童から感染したとみられる。
 厚生労働省は09年に策定した保育所対象のガイドラインで、感染した園児の登園基準を「発症後最低5日間かつ解熱した後3日を経過するまで」と規定。
 吉田委員長もこれに基づき登園登校の時期を助言しているが、子どもを一日も早く行かせたいと望む保護者は多く「施行規則を持ち出されたら『行くな』とは言えない。学校と病院の意見が違うと混乱する保護者もいる」と明かす。
 文部科学省は「現在の施行規則が実態にそぐわないという認識はある」。厚労省も「幼保一体化の流れの中で、施行規則の幼稚園とガイドラインの保育園で基準が違うことに混乱があるようだ。文科省と調整したい」と話す。


<参考資料>
・「保育所における感染症対策ガイドライン」(11ページと27ページにインフルエンザに関する記載があります)
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子どもの花粉症~何歳から?

2012年02月08日 06時31分08秒 | 小児科診療
 インフルエンザ流行のまっただ中、花粉症患者さんの受診も増えてきました。
 私自身の話で恐縮ですが、数日前から涙がなんとなく粘稠になった印象があります。これが私の体の「花粉症開始シグナル」です。

 とうとう今年もはじまりましたね~。

 この季節、こんな相談が増えてきます。
 「鼻水がつづくんですが、花粉症でしょうか?」
 「よく目をこすっていますが、花粉症でしょうか?」


 相談を受ける患者さんの半分以上は結果的に「風邪」と診断されます。
 では風邪と花粉症を症状からどう区別するかというと・・・

風邪と花粉症を区別するポイント
・花粉症では水性鼻汁(水っぱな)~鼻づまりが2週間以上つづきます。青っぱなではありません。風邪なら1~2週間のうちに落ち着きます。
・花粉症では目をかゆがるけど、目やには目立ちません。風邪に伴う結膜炎は「目やに>痒み」で花粉症の結膜炎は「目やに<かゆみ」が特徴です。


 近年、乳幼児の花粉症が増えてきたことがよく報道されます。
 ネット上でニュースを拾い読みすると・・・


子どもが花粉症~親の3人に1人が認識(2012年2月7日 NHK)
 16歳以下の子どもがいる親の3人に1人が「子どもが花粉症だ」と感じていて、「マスクを嫌がる」など対策に苦労しているという調査結果がまとまりました。
 この調査は、去年11月から12月にかけて16歳以下の子どもがいる全国の親を対象に、製薬会社がインターネットを通じて行い、およそ4100人が回答をしました。
 それによりますと、「子どもが花粉症だと思う」と答えた人は、3人に1人に当たる36%で、前回の6年前の調査に比べて5ポイント増えました。花粉症を発症したと思う年齢を聞いたところ、10歳以下という人が82%で、前回の調査に比べて7ポイント増え、早い時期から症状が出る子どもが一層目立ちました。また子どもの花粉症に関わる経験を聞いたところ、「目薬を自分でさせず、学校に行っているときは我慢をしている」とか「花粉を防ぐためのマスクを嫌がる」など、対策に悩む声が多く寄せられました。
 子どもの花粉症に詳しい大阪府済生会中津病院の末廣豊医師は「最近の報告を見ると、患者の低年齢化が目立つので、小さい頃から花粉を避ける対策をしてほしい。子どもは症状をうまく説明でなかったり、自分では十分な対策をとれなかったりするので、保護者の注意が大切だ」と話しています。


子どもの花粉症ロート製薬 花粉対策情報
 千葉大学大学院医学研究院 耳鼻咽喉科 岡本美孝 教授

◇ 低年齢化する花粉症患者 ~子どもの花粉症は近年増加~
 子どもの花粉症の発症は、最近増加がみられます。
 スギ花粉症の感作率(花粉に対して抗体を持っている割合)を昨年6 月に山梨県の農村部の小学校で調査したところ約60%の児童が感作を受け、このうち40%以上が発症していました。また、千葉県農村部の同一小・中学校で調査したところ、2000 年では約40%だった感作率が2005 年で約60%に増加していました。抗体を持っている方が全て発症する訳ではありませんが、小児での花粉症は確実に増加していると言えるでしょう。

◇ 花粉症の低年齢化の一因は、生活環境の変化
 子どもの花粉症発症の低年齢化を招いた主な要因としては、スギ花粉の増加に加えて、食生活の変化、大気汚染、ストレスなどの現代人を取り巻く生活環境の変化が影響しているのではないかと考えられています。免疫力が発達途上の子どもの場合、粘膜に外的影響をより受けやすい傾向が認められます。さらに昔の子どもに比べ過剰に衛生面に気を使うになったことも免疫力の変化を招いているのではないかと考えられています。

◇ 子どもの花粉症~0歳児でも花粉症に!
 これまでの花粉症は大人の病気として、治療の研究が進められてきたため、子ども(特に乳幼児)の場合は、臨床データは決して多くはありませんでした。
 しかし、最近では1歳以下でもスギ花粉に対する抗体が検出されるという報告もありますので、0歳児での発症も不思議ではありませんが、診断法も含めて詳しい調査が必要でしょう。


子どものスギ花粉症静岡県立こども病院アレルギー科HP

◇ スギ花粉症の始まる年齢
 治療が必要なスギ花粉症は学童期以降に増えてきます。しかし、1~2歳の幼児でも春になると目をかゆがったり、透明鼻汁が出て鼻をかゆがる場合があります。かつてはこのような年齢ではスギ花粉症はないと言われていたものですが、最近は事情が変わって、随分と早く症状が出るようになっているようです。これは専門の耳鼻科医師の報告でも確認されています。
 「こどものアレルギー新知識」でも触れていますが、実際にスギ花粉症の原因となるスギ花粉特異的IgE抗体が1~2歳児でもかなり高率に見られます。乳児でもまれですが陽性となることがあります。

◇ スギ花粉症としての乳児アトピー性皮膚炎
 乳児アトピー性皮膚炎は春に患者数が増えます。入院治療しなければならない重症患者もこの時期に増えます。年長児のアトピー性皮膚炎が入院するほど悪化するのは初夏から夏にかけてであるのと対照的です。
 春に皮膚炎が悪化して入院した乳児アトピー性皮膚炎患者では高率にスギ花粉に対する免疫反応が認められます。IgE抗体とは違うのですが、湿疹を悪化させるタイプのアレルギーの原因になります。
 スギ花粉が原因で悪化した症例では特に顔面の皮膚炎が強い傾向があります。通常は顔には弱いステロイド軟膏しか使用しないのですが、スギ花粉が原因の症例では皮膚炎の勢いが非常に強く、相当強いステロイド軟膏が処方されるに至りますが、それでも容易には収まりません。
 顔の汚れはまめに洗ったり拭いたりして取り除く、衣類は室内に干すか、乾燥機を使用する、花粉飛散の多い日には外に出さない、また戸や窓をあけない、ベッドに寝かせる(室内でも床付近にはスギ花粉が多い)などの注意を守ればかなり改善します。


 う~ん、数年前までは「1歳でも花粉症はありえる」程度の記述が多かったのですが、現在は「ゼロ歳でも発症の可能性あり」とまで云われるようになったのですね。
 また、皮膚症状にも要注意。冬は乾燥の季節でアトピー性皮膚炎が悪化しますが、春先に顔面中心に悪化するタイプではスギ花粉症の影響も考慮する必要がありそうです。乳幼児は自覚できませんので、周りの大人が気づいてあげないとわかりません。

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乳児期の全身麻酔がADHDの原因?

2012年02月07日 06時47分17秒 | 小児科診療
 その昔「病院出産が子どもをおかしくする」という本を読んでから、「医療化したお産」や「麻酔薬曝露と子どもの発達」に興味を持ってウォッチしてきました。
 学術的にも小児期の麻酔と学習障害(LD)の関係が取り沙汰されてきましたが、今回ADHDとの関連を示すデータが報告されました;

2歳までの全身麻酔反復曝露でADHDリスク2倍
(2012年2月6日:メディカルトリビューン)
◇ 米メイヨ―・クリニック研究,出生コホート5,000人超対象
 米メイヨ―・クリニック小児麻酔科医のDavid O. Warner氏らは,児の全身麻酔曝露と注意欠如・多動性障害(ADHD)発生との関連を検討するため,出生コホート約5,000人超を対象に観察研究を行った。その結果,2歳までに全身麻酔に複数回曝露した児が19歳までにADHDを発症するリスクは約2倍に上ることが分かった(Mayo Clin Proc 2012; 87: 120-129)。同氏らは「リスクの上昇は明らかになったが,因果関係が証明されたわけではない」として,あらゆる危険因子を考慮したさらなる研究の必要性を訴えている。

◇ 19歳までのADHD累計発生率7.6%,平均発症年齢10.3歳
 動物実験では,麻酔薬や鎮静薬の曝露により発達過程にある脳に神経変性が起こることが既に知られているという。さらに,Warner氏らの研究グループが出生コホート研究で麻酔薬の反復曝露と学習障害(LD)との関連について報告していることから(関連記事),同氏らは同研究の出生コホートを用いて麻酔薬曝露とADHD(※)発生リスクについて観察研究を行った。
 対象としたのは,米ミネソタ州ロチェスター市で1976年1月1日~82年12月31日に出生し,5歳以降も同市内に在住していた5,357人。ADHDの診断書などのほか,在学時の問題行動記録や医療診断書などからADHDの疑いがある場合はDSM-IVに基づいて判断した。麻酔の曝露については,2歳までの全身麻酔曝露の有無を調査し,曝露した児では曝露時間・回数,麻酔薬の種類などを集計した。
 ADHDの発症を19歳までとしたところ,5,357人中341人がADHDを発症していた〔推計累計発生率7.6%(95%CI 6.8~8.4%)〕。なお,ADHD発症の平均年齢は10.3歳であった。

◇ 全身麻酔曝露は男児,低体体重出産時などで有意に多い
 一方,全身麻酔は5,357人中350人が2歳までに1回以上受けていた(帝王切開時の曝露除く)。平均曝露時間は133分,曝露回数は1回が286人,2回以上が64人,最も多かった麻酔薬の種類はハロタンと亜酸化窒素の併用であった。また,非曝露の児に比べて,曝露は男児,低体重出産児,母親の低年齢妊娠で有意に多いことが認められた(すべてP<0.001)。
 続いて,2歳までの全身麻酔曝露と19歳までのADHD発症について検討した結果,ADHDの推定累計発生率は7.3%(95%CI 6.5~8.1%)であった。曝露回数別にADHDの推定累計発生率を求めたところ,曝露1回では10.7%(同6.8~14.4%),曝露2回以上では17.9%(同7.2~27.4%)であった(図)。



◇ 曝露1回ではADHD発症リスクの有意な上昇示さず
 Cox比例ハザード回帰モデルにより,母親の妊娠年齢,児の性,出生体重などで補正後の非曝露の児に対するADHD発生のハザード比(HR)を求めた。その結果,2回以上の反復曝露HRは1.95(95%CI 1.03~3.71)と,複数回の全身麻酔曝露でADHD発症リスクが有意に上昇した。しかし,曝露1回ではHR 1.18(同0.79~1.77)と有意差は示されなかった。
 同氏らは,今回の結果を受け,「2歳までに全身麻酔による2回以上の反復曝露を経験した児は19歳までにADHDを発症するリスクが約2倍になることが分かった」と結論。ただし,「これにより因果関係が証明された訳ではない」として,あらゆる危険因子を考慮したさらなる研究の必要性を訴えている。(松浦 庸夫)


ADHD(attention-deficit/hyperactivity disorder)の診断が原著ではDSM-IVに基づいているため,本記事でも「注意欠如・多動性障害」と表記しているが,国際疾病分類第10版(ICD-10)における「注意欠陥多動障害」と同義である。

 この報告では周産期麻酔(帝王切開、無痛分娩)が含まれてませんが、未熟な脳に麻酔薬を曝露するという意味では出生後の曝露より深刻な影響が出ることが推測されます。周産期麻酔曝露がADHDの原因になっていないかどうか、緊急の検証が必要です。
 私は小児科医なので、病院勤務時代はハイリスク分娩の立ち会いをたくさん経験しました。腰椎麻酔が多いのですが、事情により全身麻酔が選択された場合は赤ちゃんにも麻酔薬が移行しやすいため、麻酔がかかった状態で生まれて(sleeping baby)、自分で呼吸できない状況が発生しうるのです。
 「痛いからイヤ、麻酔をかけて無痛分娩にして!」などとお母さんの都合で赤ちゃんに負担をかけることはもってのほか・・・やめていただきたいですね。

参考HP
無痛分娩と sleeping baby
帝王切開の麻酔法
産婦人科の基礎知識~胎児に対するリスク
コメント (2)
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今のところ、A香港型がほとんど

2012年02月05日 07時24分10秒 | 小児科診療
 今シーズンのインフルエンザ流行はA香港型が多いと報道されています。
 A香港型はインフルエンザ脳症のリスクが一番高いタイプですが、今までのところ重症化の報告は少ない印象がありますね。
 日々の診療では、B型陽性者も少なからず存在します。
 ふつう、B型はA型が終息するのと入れ替わるように春先に流行することが多く、「A香港型&B型同時流行」は珍しいと思います。


(クリックすると画像が拡大します)


 インフルエンザ注意喚起の記事を一つ;

[医療解説] インフルエンザ 流行本格化… 今年はA香港型が9割(2012年2月4日 読売新聞)
 インフルエンザの流行が本格化している。今季は、2009年春~10年に大流行した「新型」(H1N1)はごくわずかで、A香港型が9割を占める。インフルエンザウイルスの特徴や注意点、予防法をまとめた。(野村昌玄)


 インフルエンザウイルスはA、B、Cの三つの型があり、大きな流行を引き起こすのは、AとBの二つだ。
 表面は、ヘマグルチニン(H)とノイラミニダーゼ(N)という2種類のたんぱく質のトゲに覆われ、人の鼻の穴や喉の粘膜などに取り付き、Hのトゲで細胞内に侵入。新たに増殖したウイルスは、Nのトゲで細胞から切り離されて増えていく。
 A型の場合、Hが16種類、Nが9種類あり、人間に感染するもの、鳥や豚など動物にしか感染しないものがある。A香港型はH3N2、ヒトへの大流行が懸念される強毒性の鳥インフルエンザはH5N1だ。B型はほぼ人にしか感染せず、HとNはそれぞれ1種類だ。
 09年の発生当初、若年層に死者や重症者が目立ったH1N1は、高齢者が重症や死亡の中心になるなど特徴が通常の季節性インフルエンザと変わらなくなった。国は11年3月、「新型」から季節性の「インフルエンザ(H1N1)2009」へ呼び方を変えた。
 国立感染症研究所感染症情報センターによると、全国の小児科や内科など約5000医療機関の1施設あたりの患者数は、11年12月初めに流行の目安である1を超えた。流行は中部・中国地方を中心に始まってから四国・関西地方にも広がり、最新週(12年1月16~22日)は22・73人に増えた。
 ウイルスの内訳は、A香港型が5シーズンぶりに流行の中心となり90%を超え、B型が9%。一方、インフルエンザ2009は1%に満たない
 同センター主任研究官の安井良則さんは「A香港型は、乳幼児には脳症、高齢者は細菌感染による肺炎を招き、重症化するケースも目立つ。ここ数年流行から遠ざかっていたこともあり注意してほしい」と呼びかける。
 インフルエンザは主に、せきやくしゃみでつばが飛ぶことによる「飛まつ感染」と、ウイルスが付着した手で口や鼻などに触れる「接触感染」で広がる。
 予防の基本は手洗い。手のひらや手の甲、指先や手首などを最低15秒以上、せっけんと流水で洗う。せきやくしゃみなどの症状があれば、マスクを着用。ティッシュなどで口と鼻を押さえ、周囲から1メートル以上離れることなどを心がける。

 国立感染症研究所感染症情報センターが公表している発生動向調査は、全国の医療機関の受診者数を1週間ごとに集計する。このため、実際の状況からは10日前後の遅れが生じる。
 そこで同センターは2009年4月から、全国の薬局に協力を求め、薬局が抗インフルエンザ薬を処方した数を集計。患者数を推定する「薬局サーベイランス」をウェブサイト上で公開している。
 前日のデータに基づく推計値が翌日には公開されるため、現在の状況に近い傾向がわかる。
 全国の薬局の13%にあたる約6700か所が参加。過去2シーズンとの比較や、都道府県別の流行状況なども示される。

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打診の名人、キツツキ

2012年02月04日 06時13分26秒 | 小児科診療
 BS放送の自然を扱う番組で、キツツキの仲間を特集していました。

 北海道に棲息するクマゲラはキツツキの仲間で、木の中に住む大きなアリを食べます。
 このアリはキノコが生えるような倒木や腐朽した木に寄生するのですが、あるとき、クマゲラが一見健康そうな木をつつき始めました。穴を開けるためでもなさそうだし、なぜ?・・・としばらく観察していると、木の奥の奥からアリの巣が見つかったのでした。

 なぜこの木にアリがいるのがわかったんだろう。

 解説では、クマゲラのくちばしに秘密があるとのこと。
 くちばしで木をつついて、その微妙な反響音の違いから木の中に腐った部位があるかどうかがわかってしまうらしいのです。

 すごい!

 医師の診察手技で「打診」というものがあります。
 指でカラダをトントンと叩いて、その反響音で体の内部の状態を推測・把握するスキル。
 学生時代に初めて覚えたその昔、長テーブルの裏に10円玉を貼りつけて、その場所を打診で探すというゲームを友達と競ったことを思い出しました。なかなか当たりませんでした(苦笑)。

 おそらく、クマゲラだったら百発百中だったでしょうね。
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「寒さに注意しましょう」って、どうすればいいの?

2012年02月02日 08時10分52秒 | 小児科診療
 日本のTVではよく聞かれる言葉です。
 「インフルエンザが流行しているので、注意しましょう。」
 「余震の可能性があるので、注意しましょう。」
 「低温注意報が出ています。注意しましょう。」


 しかしここでニュースは終わってしまいます。
 では具体的に何をすべきか? を教えてくれません。片手落ちですよね。
 海外では事情はちょっと違うようです;

「寒さに注意」って,どうやって? 英・米当局の健康被害防止策から
2012年2月1日 メディカルトリビューン
 現在,強い寒気が襲来する日本では,寒さや大雪に関するニュースが連日報道されている。報道では「気象庁が注意を呼びかけている」が決まり文句だが,「どう注意」するのかについて触れられているニュースは少ないのではないだろうか。寒い季節には心血管疾患の発症が増えるなど,寒さが健康被害や超過死亡に関連することはよく知られている。同じく冬を迎えている英国や米国では,寒さによる健康被害防止について,かなり詳細な情報提供を行っている。報道する側の一員として自省を込めて紹介する。

英「公衆衛生警報発令中」,医師などがアットリスク者に毎日電話
 本日現在,英国では気象庁がレベル3の警報を出して寒さ対策を呼びかけている。レベル3とは,保健省(NHS)が昨年(2011年)11月に発行したCold Weather Plan for England - Protecting health and reducing harm from severe coldで策定された,冬季の公衆衛生対策の1つ。英国では毎年12~3月に,他の時期に比べ死亡率が15%上昇,平均2万7,000件の超過死亡が起こっているという。
 同計画では寒さの段階に応じてレベル4までの警報を設定。現在のレベル3では,“Response to severe winter weather”として,医師を含む医療・福祉関係者が,寒さに対するアットリスク者に毎日電話連絡を取ることなどが勧告されている

「温かい飲み物を取る」「薄手の衣服を重ね着」
 また,NHSは一般的な注意事項として以下のようなアドバイスを行っている。

・カーテンやドアなどですき間風を防ぐ
・可能であれば,温かい飲み物や温かい食事をきちんと取る。きちんと食事を取ることは代謝レベルの維持に役立つ
・薄手の衣服を数枚重ね着する(分厚い衣服を1枚着るよりもよい)
・できるだけ体を動かす
・寒い日の外出は温かい衣服を着込んで
・米CDC「家の目立つ場所に温度計」「車には余分に衣服を積んで出かける」


 一方,米疾病管理センター(CDC)は今年1月にEXTREME COLD – A Prevention Guide to Promote Your Personal Health and Safetyで,日常生活のさまざまな場面における,寒さへの備えを解説している。ここでは“extreme cold”を気温が氷点下近くまで下がることなどと定義。寒さで物流や交通が麻痺した場合に備え,家や車に用意すべき冬のサバイバルキットのリストが挙げられている。また,65歳以上の高齢者に対しては家の目立つ場所に,数値の見えやすい温度計を置くことも推奨されている。
 暖房器具に関する注意としては,周りに物を置かないことや指定された燃料を用いることなどのほか,電気ヒーターのコードをカーペットやラグの下に這わせないようにするなど,火事への対策も記されている。
 また,「外では皮膚をできるだけ露出しない」ことのほかに,外気温と風速からどの程度の時間で凍傷が起こるかを示すチャートも示されている。
 さらに車で出かける際には「事前に天気予報をチェック」「窓に付いた氷や雪を溶かす目的で絶対に水を使用しないこと。窓が破損する」「暖を取るために車を頼りにしない」「車の移動の際にはかならず余分に衣服を持つ」などと事細かい注意もある。

低体温症の発見は「周囲の人の介入」が重要
 それぞれ特色のある注意喚起だが,共通しているのは「低体温症」に関する注意だ。いずれにおいても,友人や親せき,近所の人など他人同士が,体温低下に陥りやすいアットリスク者に対し,低体温症の徴候(成人の場合;震えや疲労,記憶障害や言語不明瞭,眠気,小児の場合;赤味や皮膚の冷感,活動の低下)がないか気を付けることとされている。
 CDCのガイドでは,低体温症が身近で発生した場合には体温保持や救急サービス到着までに心肺蘇生法(CPR)を行うことも有効と紹介。自分や他の人の健康を守るために何をすべきかを知ることは重要と結んでいる。


 まあ、日本のメディアの特徴は「不安を煽って尻ぬぐいをしない」ことですから、期待はしていませんけど。
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ロタウイルスワクチンも定期接種化を検討

2012年02月02日 06時24分47秒 | 小児科診療
 ヒブ/肺炎球菌/おたふくかぜ/水痘ワクチンに続いて、ロタウイルスワクチンも定期接種化の動きがあると報道されました;

定期接種化めぐる検討、ロタワクチンも- 承認受け予防接種部会
2012年01月27日 キャリアブレイン
 厚生科学審議会感染症分科会の予防接種部会(部会長=加藤達夫・国立成育医療研究センター総長)は27日、昨年7月まで製造販売承認されたワクチンがなかったロタウイルスワクチンの定期接種化に向けた効果検証に着手することを決めた。
 同部会では現在、子宮頸がんを予防するヒトパピローマウイルス(HPV)ワクチンなど、7種類のワクチンの定期接種化を検討している。検討が始まった当時、製造販売承認を取得していたロタウイルスのワクチンはなかったが、昨年7月にロタリックス、今年1月にロタテックが相次いで承認された。
 ロタウイルスワクチンの定期接種化に向けた検証は、7種類のワクチンと同じ手順で進める。まず、国立感染症研究所が中心となって、疫学情報などをまとめた「ファクトシート」を作成。その後、予防接種部会の下部組織である「ワクチン評価に関する小委員会」の下に作業チームが設置され、ファクトシートに基づいて、予防接種法上どのように位置付けるべきかをまとめる。作業チームは、予防接種部会に検討結果を報告。同部会は、定期接種化の是非をめぐる議論を年明けにもスタートさせる見通しだ。


 ・・・これから情報を集めて、年明けというと2013年に議論を始める、とありますね。すると実現は来年度以降でしょうか。待ち遠しい。
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2012年全豪オープン、ジョコビッチが制す。

2012年02月01日 06時43分40秒 | テニス

〔AFP=時事〕より


 男子シングルス決勝はノバク・ジョコビッチ vs ラファエル・ナダル。第一シードと第二シードの対戦となりました。
 終わってみれば昨シーズンからナダルに6連勝中のジョコビッチ勝利ですが、今回はずっと「どちらが勝つかわからない」状況の死闘が30℃を超す真夏のオーストラリアを舞台に繰り広げられました。試合時間はなんと5時間53分。全豪オープン最長記録であり、グランドスラム(4大大会)決勝の最長記録をも更新しました。

 プレースタイルからいうと、攻めのジョコビッチとディフェンス&切り返しのナダル。
 ナダルのショットが短くなるとジョコビッチの餌食になる傾向があります。
 試合の流れが双方に揺れ動き、手に汗握る展開。
 しかし、今回のナダルの集中力はすごい!
 第四セット終盤はナダルのスーパーショットが炸裂し、勢いは完全にナダルと思われました。

 今度こそナダルが勝つ!?

 でも私は「このハイテンションが果たしてあと1セット持続できるものだろうか?」と一抹の不安を感じていました。最終セットは、双方体力・精神力の限界を越えた驚異的なテニスを披露しました。31回続いたストローク戦の後にジョコビッチが倒れ込む場面さえありました。ナダルは見当するものの「あと一つ」というポイントを悉くジョコビッチにさらわれ、敗北を喫したのでした。

 観客席には伝説の名選手、ロッド・レーバー氏(写真中央の人物)の姿もありました。彼はオープン化(1968年、プロ・アマ問わず出場可能)後のテニスの歴史の中で唯一「年間グランドスラム」を達成した偉人です。ボルグもサンプラスもフェデラーも成し得なかった偉業・・・しかし、ジョコビッチはその可能性を感じさせてくれる勢いがあります。

 今回の全豪オープンでは、日本のエース錦織圭の躍進も話題になりました。
 世界ランキング6位のツォンガに勝利し初のベストエイト。
 しかし、準々決勝で対戦したマレー(ランキング4位)との試合をみると、まだ頂点を目指すには高い壁が存在することを感じさせました。
 彼自身の世界ランキングも20位まで上がり(日本人記録)、今後が楽しみです。
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