徒然日記

街の小児科医のつれづれ日記です。

HPV(子宮頸がん)ワクチンに関する名古屋市の大規模調査

2016年01月06日 09時18分25秒 | 小児科診療
 HPVワクチンは現在も「積極的勧奨停止中」。
 そんな中、興味深い調査報告が公表されました;

「HPV(子宮頸がん)ワクチンに関する名古屋市の大規模調査」
2015.12.22:QLifePro
◇ 慢性症状などの24症状で、接種者が有意に多い症状ゼロ
接種後に慢性的な全身性疼痛やしびれなどを訴える事例が発生したことで、2013年6月以降、国の通知により積極的な接種勧奨を中止している子宮頸がんワクチン。名古屋市はこのほど同ワクチンの予防接種について、接種者と非接種者の合計2万人以上を対象にした24症状の有無に関するアンケート結果から、ワクチン非接種者に比べてワクチン接種者に多い症状はないとの速報結果を公表した。自治体レベルでこれほど大規模な調査が行われたのは全国でも初。今後の同ワクチン接種の方向性に一石を投じそうだ。

★ 名古屋市公式HP「子宮頸がん予防接種調査結果速報







 もし、HPVワクチンの副反応で痛みをはじめとした様々な症状が出るなら、接種者の方が症状の頻度が高いはずですが、なんと逆の結果です。
 統計学的には「HPVワクチンと諸症状との間に有意な関連なし」と判断されます。

 以前に取り上げた記事でも、
「ワクチン導入前(2007年)と導入後(2013年)における国民生活基礎調査から,10~19歳の女子の身体症状の訴えを検討した結果を提示。10~14歳に関しては,頭痛や肩凝り,関節の痛み,月経不順・月経痛などの訴えは,導入前と比べて導入後で増加しておらず,ワクチン導入自体が身体症状の訴えを増やしているわけではないこと」
 がわかっています。

 ワクチン接種後に症状が現れただけでは、ワクチンと症状に関連があるかどうかは分かりません。いろいろな条件をクリアして科学的に因果関係が証明されるか、それが困難なら統計学的に分析されます。ワクチンと副反応の関係は、科学的証明が困難な対象であり、統計学的手法がしばしば用いられます。

 以前イギリスで話題になった「MMRワクチンと自閉症」の関係も統計学的に否定された歴史的経緯があります。
 ただ、一度メディアが騒いで知れ渡ると、その偏見はなかなかなくなりません。
 そのため、イギリスではMMRを接種しない子どもたち中心に麻疹の小流行を反復し、なかには重症の合併症も発生するという事態に陥っています。

 これはメディアの罪だと思います。
 このブログでも何度も記してきましたが、報道メディアは医療問題に関して被害者視線のみでなく読者が冷静に判断できるよう偏りのない情報を提供していただきたい、と切に願います。
 
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2015年の出生数、5年ぶり増加へ

2016年01月03日 09時35分29秒 | 小児科診療
 明けましておめでとうございます。
 2016年が始まりました。

 当院も昨年開業10周年を迎え、新たな気持ちで診療に臨む所存です。
 今年はアレルギー診療をチーム医療としてシステム化し、「アレルギー科」標榜に恥じないレベルに到達することを目標にします。

 さて、今年初回は、出生率が久しぶりに上昇したという明るいニュースを;

■ 昨年の出生数、5年ぶり増加へ 人口減は9年連続
2016年1月1日:朝日新聞



 国内で2015年に生まれた日本人の子どもは100万8千人の見込みで、過去最少だった14年を4千人上回りそうだ。出生数の増加は5年ぶり。一方、死亡数は戦後初めて130万人を超え、出生数から引いた人口の自然減は過去最多の29万4千人。9年連続の人口減少となる。厚生労働省が12月31日に人口動態統計の年間推計を公表した。
 出生数は第2次ベビーブームだった1973年の209万2千人をピークに減少傾向が続き、14年は100万3539人と100万人割れ目前だった。15年は1~6月の30代女性による出生数が前年同期より約1万人増え、全体を押し上げた。特に30代前半が多かったという。出生数が増えた理由について、厚労省の担当者は「景気の回復傾向で収入が安定したり、共働き世帯で保育所に子どもを預けられそうだという期待感が高まったりしたことが考えられる」と分析する。
 死亡数は、前年より2万9千人多い130万2千人の見込み。29万4千人という自然減の数は、前年より2万5千人多い。婚姻は前年より9千組減って戦後最少の63万5千組となり、離婚は3千組増えて22万5千組となる見通しだ。


 現在、1年間に生まれる子どもは100万人、亡くなる人は130万人。
 人口減少に歯止めがかかりません。

 子どもを産んで育てる環境がストレスフルなので、子どもの笑い声が響きわたることが当たり前にならないと、逆転するのは困難です。
 しかし昨今、子どもの声は「騒音」扱いされる傾向があります;

■ 「子供がうるさい!」高さ3メートルの防音壁、開園延期…保育園が嫌われる理由とは
2015.8.20:産経新聞
 共働き家庭の増加とともに都心部などで保育園の新設が相次ぎ、近隣住民とトラブルになるケースが後を絶たない。「騒がしい」など従来の静かな環境を維持したい高齢者らの苦情を受けて開園を延期したり、「平穏な日常生活が侵害された」として、開園後に訴訟に発展したりするケースもある。「子供の声は騒音なのか」をめぐる議論は各地に広がり、波紋を呼んでいる。


 自分たちも「騒がしい」子どもだったことを忘れて、自分のことしか考えられない日本人・・・解決の糸口はあるのでしょうか。
 あ、明るいニュースではじめようとしたのに、微妙な空気になってしまいました(^^;)。
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