ああ、今日も雪。
雪が迫ってくる、雪の圧力を感じる。
明日もまた雪らしい。
雪に押さえつけられたダケカンバの枝が窓を開ければ手の届くところまで下がってしまった。
このダケカンバは遠いところから風に飛ばされやってきた種が庭に落ち、芽吹き10数年、いまや6,7m、2階の屋根を越える大木にまで成長した。
付近にダケカンバはない。おそらく磐梯山から飛んできたのであろうか?
そのダケカンバの小枝の冬芽が日に日に大きくなるように見える。
この冬芽が萌えるのは5月上旬、ずっと先、だが毎日窓越しに見ていると・・・そう思えてしまう。
もうすぐ若葉が萌える・・・そう思えてしまう。
このフンショウロウを家に運び込んだのが12月下旬、そしてきょう開花、2ヶ月と経っていない、早い・・・
純白、極薄の花びら、すばらしい香り。
願わくばピンクの花が見たかった。これがフンショウロウ?誰もがそう思うだろう。
条件によってこんなに変わってしまう、これもフンショウロウの魅力としておこう・・・
今、氷壁を読んでいる。そして半世紀前に感情移入し、激しく感動して読んだ頃を懐かしく思い起こしながら違った視点から読み直している。
今尚新鮮な感動がある。氷壁・・・
前穂東壁ザイル事件がおきたのが昭和30年、井上靖は翌31年朝日新聞に氷壁を連載開始し、32年に単行本を出版している。(新潮社)
山登りに詳しいと思えない彼が係争中のこのセンセーショナルな事件を取材し、短期間に氷壁を書き上げた事実は驚くべきことである。
学生時代山登りが好きでよく山に登った。当然ながら山好きの人間がたどる自然な成り行きで井上靖の氷壁を熟読し、
多くの山登りが好きな若者がそうであったようにヒロイン、八代美那子に、小坂かおるに憧れ、そして恋した。
前穂東壁に登りたい、せめて無雪期の東壁に登らなければならない、という強迫観念に取り付かれた。氷壁の世界に入り込むためにはバリエーションルートを克服しなければならない・・・
岩登りのゲレンデ、三ツ峠通いが始まった。岩壁の登り下りの繰り返し、三つ峠の短いすべてのルートの繰り返し登った、岩場の前にテントを張って頑張った。
山登りはいつも簡単な入門コースの岩登りになった。だが、臆病者は高所を、垂直をどうしても克服することができなかった、トップを登る自分を想像し、いつも手に汗をかいた、いつも岩壁を前にすくんだ。
そして友との計画、トップで登る自分にまったく自信が持てなかった、北岳バットレスを中止し、一月の一般ルートでお茶を濁した。バットレスは岩登りの入門コースであるにもかかわらず・・・
一緒に岩を登っていた友の誘いがなくなった。東壁どころではなかった、私の氷壁の世界は、八代美那子は憧れで終わってしまった。
氷壁は苦い思い出でもある・・・
用事があって喜多方に行く。往復とも山道は行かず猪苗代経由で。
気温は低いが日差しは早、春、とても強い。
青空に白い磐梯山の山頂がくっきり。
いや、会津盆地をぐるり取り囲む山々すべて春の日差しにくっきり。
ふと餌台に目をやると珍しくもカケスがきている。
黙々とヒマワリを食べている。それも殻をむかずそのまま飲み込んでいる。
消化できるのだろうか、あとで吐き出し殻を割って食べなおすのだろうか?ドングリのように。
カケスは頭がよくとても注意深い。人間の接近を察知し、飛び立ってしまうので近づくことが難しい。
明日も来てくれるだろうか・・・
数日前に園芸店で買ったイチゴの苗に花が。
暖かい窓辺、イチゴの名前は初恋、あと数週間すれば初恋が実る・・・
外はまた雪が降り始めている、気温相変わらず低い。
今年になってプライベートの部屋側の除雪をやっていない。
すでに窓は埋まり始めている。寝室のFFストーブの排気筒はずっと前に埋まってしまい使用できない。
隣室ストーブはつけたまたドアを開け、寝室の暖房としていた。
スキー室の屋根の雪がいまだ落ちず、危険で作業ができないでいたのだ。このままでは・・・
思い切って除雪作業、積雪は3mを超え、除雪作業は半日、およそ5時間、倒れこんでしまった木を掘り起し、伐採作業に手間取る。
除雪が終わったのは3時、昼食もとらずぶっとうしの作業、落雪なく無事作業終了、狭い場所で、除雪機のディーゼルエンジンの排ガスを吸いながらの作業はつらい。
スコッブで高い雪を崩しながらの作業、さす疲れる。
これで寝室の暖房が使える。ドアを閉め、ぬくぬくと暖かい部屋で眠ることができる。部屋の中から雪の壁を見上げ一人ニヤリ。
海辺の香り、潮の香りを胸いっぱい吸い込みたい、ただそれだけで雪の世界から波頭きらめく海、いわきの海、太平洋に向かう。
波静か、暖かい、春の海。
浜辺に立ち、海の空気を深呼吸、数回。
このために・・・・
200km車を走らせた。
朝方-10℃、晴天、無風。
太陽が上がるにつれ気温上がるり、久しぶり真冬日脱出。
怠惰な生活、風邪気味、鈍った体に活を入れる目的で五色沼の森を散策する。
荷物はカメラのみ、スノーシュー等もなし、空身。
毘沙門沼をショートカットせず、歩き始める。踏み跡無し。毘沙門沼は視覚内では全面結氷。
時々、雪を踏み抜き股まですっぽり、スノーシューを持参しなかったことを悔いる。今日の主目的はトレーニング、体に活を入れること、これでいいと言い聞かせる。
残念なことに毘沙門沼の終わる頃、キャンプ場からのショートカットコースに出合い、しっかりした楽な雪道、靴がほんの少し埋まるほどの軽いラッセル。
風なく森は実に静か、聞こえるは雪を踏む音、沼に浮かぶ鴨、木々を渡り歩くエナガ、コゲラ、飛び立つ臆病なツグミの鳴き声、そして沢音。
出会った雪の森を歩く人はたった一組。そんな厳寒の五色沼の森フルウインドウでご覧くださいませ。
昨夜も雪が降り続いたようだ。
今年の雪はしつっこい。いい加減にしてほしいとおもう。
今朝もお腹をすかした野鳥の餌やりから。
餌台に毎年やってきていた孤独なシメの姿がない。
ただ一羽でやってきてヒマワリの種を黙々と食べ、雪の森にまた静かに帰ってゆくシメ・・・
その姿を見ることができないのはとても寂しい。