ジョー・マーチャント著、木村博江訳、 『アンティキテラ 古代ギリシアのコンピュータ』 (文藝春秋) を読みました。
1901年、ギリシアのアンティキテラ島の沖合いで偶然発見されたギリシア時代の難破船から、不思議な機械の残骸が引き上げられました。その機械の内部には30個を超える歯車がまるで複雑時計のように組み込まれており、何かの計算に使用した道具であることは容易に想像できました。
しかし……それはあり得ないことでした。何故なら、私達がそれまで知っていた歴史の上では、そのような機械が登場するのは、それより1000年以上も後のことだったのです。
結果として、この機械の存在は “キワモノ” 扱いになり、当時の学者達からはほとんど無視されることになりました。そりゃ私だって、竪穴住居に住んで、土器を使っていたはずの弥生時代の遺跡から複雑時計が出てきてしまったら、何かの間違いだと思うでしょう。何も見なかったことにして、そのまま埋めてしまうかもしれません (笑) 。ところが、その後の調査で、この機械が明らかに2000年以上前に製作されたものであることが判明することになります。
それでは、いつ、誰が、どのような目的でこのような機械を製作したのでしょうか?
この本では、 “アンティキテラの機械” が発見された経緯から、その謎を解こうと奮闘した人達の100年にわたる人間模様、現在分かっている構造やその機能までを紹介した本です。
それにしても、かつてこのような機械が存在していたという事実を知ってしまうと、 「失われた知識と技術」 の大きさに愕然としてしまいます。この機械はたまたま偶然が重なって、今日まで形を止めることになりましたが、恐らく誰にも継承されず、痕跡すら残さずに消滅してしまった 「知識と技術」 は他にも沢山あったのでしょうね。
この機械は 『アテネ国立考古学博物館』 に展示されているということなので、いつか見に行きたいと思います。