学問空間

「『増鏡』を読む会」、第9回は2月22日(土)、テーマは「上西門院とその周辺」です。

山本悌二郎のコピー&ペースト

2014-12-14 | 将基面貴巳『言論抑圧-矢内原事件の構図』
投稿者:鈴木小太郎 投稿日:2014年12月14日(日)20時05分9秒

1935年(昭和10)3月12日の衆議院本会議における山本悌二郎の演説は憲政史上最高の傑作コントではないかと思われるので、少し引用しておきます。
宮沢俊義『天皇機関説事件:史料は語る』の該当部分はコピーし忘れたので、『天皇と東大』下、p136以下から引用しますが、立花隆氏も宮沢編著を引用しているだけです。

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「事は天皇機関説と云ふ学説に関するのでありまするが、是は二三十年来、(略)学者間の論議だけで、余り今迄は一般天下の問題とならなかつたが為に、実は斯く申す私初め世間の多数は、此問題に関しまして全く多くを知らず、又之を知るも、多くの注意を払わなかつたのでありまする。今更此問題の重大性に想致しますれば、公人としての自分等の不注意、不用意を痛感致す次第でありまする。此問題は今にして考へますれば、極めて重大な問題でありまする。(略)不注意や不用意の間に、天皇機関説が其儘看過されたる過去は兎も角として、既に今日一般公然の問題となり、焦点となりました以上は、之を此儘放任すべきものでは断じてないと信ずる者であります。(拍手)」

「美濃部君は貴族院に於て斯様に申されて居る。(略)『即ち法律学上の言葉を以て申せば、国家を一つの法人と観念いたしまして、天皇は此法人たる国家の元首の地位に在まし、国家を代表して国家の一切の権利を総攬し給ひ、天皇が憲法に従つて行はせられまする行為が、即ち国家の行為たる効力を生ずる。』
 試に此一節の文章を其儘にして、唯天皇と云ふ文字の代りに社長と云ふ文字を使ひ、国家と云ふ文字の代りに会社と云ふ文字を当嵌め、憲法と云ふ文字の代りに定款と云ふ名詞を置いて見たならば、斯うなるのです。『社長は此法人たる会社の元首たる地位にあり、会社を代表して会社の一切の権利を総攬し社長が定款に従ふて行う所の行為が、即ち会社の行為たる効力を生ずる』、即ち名詞を置換えて見ますると云ふと、天皇機関説の説明が、ぴつたりと会社の社長の地位の説明になるのではないか、即ち天皇の御地位も、会社の社長の地位も、共機関たるに於ては全然同一のものとなるではありませぬか。さあ是で天皇の尊厳が傷けられず、是で国民の伝統的観念が撹乱せられずして止みませうか」
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実にこの説明は天皇機関説の理解としては全く正しいのですが、山本悌二郎は「天皇機関説の説明が、ぴつたりと会社の社長の地位の説明になる」と気づいた瞬間、怒り出します。
山本悌二郎(1870-1937)は新潟佐渡生まれで、外交官有田八郎の兄。官費でドイツに留学後、宮内省御料局嘱託、第二高等学校教授を経て実業界に転じ、台湾精糖株式会社社長になった人ですが、ドイツ留学で西欧の最先端の学問を学び、官界・実業界・政界で幅広く活躍した最高レベルのインテリの山本悌二郎ですら「天皇の御地位も、会社の社長の地位も、共機関たるに於ては全然同一のもの」との認識を絶対に拒否する訳ですね。

山本悌二郎
https://rnavi.ndl.go.jp/kensei/entry/yamamototeijirou.php
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%B1%B1%E6%9C%AC%E6%82%8C%E4%BA%8C%E9%83%8E
コメント
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