【現代思想とジャーナリスト精神】

価値判断の基軸は自らが判断し思考し実践することの主体であるか否かであると考えております。

民衆の主張

2017-09-11 22:40:26 | 政治・文化・社会評論
【民衆の主張】
現象的段階:メルケル独首相、志位和夫日本共産党幹部会委員長の言説紹介
実体的段階:北朝鮮の軍事的取り組みをめぐる軍事解決優先派と国際的対話優先派との相克
本質的段階:原発廃止・核兵器廃絶を中核に据えた21世紀型の統一戦線政権の現実化

2017/09/11      櫻井 智志

序:

孫崎亨氏は本日配信のメルマガ評論において、北朝鮮の軍事的取り組みに対してメルケル独首相の言動を紹介している。
ドイツ・メルケル首相と日本共産党志位和夫幹部会委員長とでは、北朝鮮をめぐる国際社会の対応について、「対話の重要性」を大切にする点で、発想を近似した立場と考える。

けれど、孫崎亨宇氏の紹介するメルケル首相の言動と志位和夫氏の言説とでは、読んでいて微妙な差異を感じる。メルケル首相と志位和夫氏の双方に、私は親近感と政治的信念とに共感をもつ者である。ぜひ読者諸氏におかれては、私が感じるぼんやりとした「微妙な差異」とは、どのようなものか、私の個人的思い込みか、それぞれにおいてご判断いただければ、と願う。

最初に孫崎氏の「孫崎亨のつぶやき」を掲載する。それに次いで志位和夫氏の論文・声明を転載させていただくこととする。さらに、日本政府安倍政権の政策を掲載する。

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Ⅰ:【孫崎享のつぶやき】

【メルケル、北朝鮮危機に対して対イラン・スタイル対話(イラン+五安保理常任理事国+ドイツ)を呼びかけ。実現見通しは低いだろう。ただ、軍事解決はありえない、外交交渉が唯一の可能性を示す意味で価値】
2017-09-11 08:3917


A:事実関係
9月10日ロイター「メルケルは北朝鮮危機にイラン・スタイル対話を提言
「・メルケル首相は報道機関に、北朝鮮の核兵器、ミサイル開発危機を終焉させるため、外交イニシアティブに入る用意があり、その際対話ではイラン・スタイルを考えていると語った。

・数日前北朝鮮が第6回目の核実験を行い、国際金融を揺さぶったが、韓国は日曜日、北の新たなるミサイル・実験に備えていると発表した。
・メルケルは我々の関与が望ましいならすぐにイエスというとフランクフルター・アルゲマイネ ・ツァイトゥング紙に述べた。彼女は、経済制裁を解除する代わりに核兵器開発を止めることに合意したドイツ、国連安保理で拒否権を持つ五カ国とイランとの会合に言及した。メルケルは、イランとの対話は長い外交を要したが、いい結果をもたらしたと述べた。メルケルは「北朝鮮の危機を終わらせるために、このような対話が利用できる、欧州、特にドイツは積極的に介入する用意がある」と語った。彼女は「北朝鮮問題の唯一の解決は外交的解決である、この地域における新たな軍備拡大は誰にとっても利益でない」と述べた。彼女は、欧州は外交的解決をもたらすため結束すべきで、制裁ではあらゆることをすべきだと述べた。メルケルは9月24日の総選挙で勝利すると予測されている。ドイツでは、北朝鮮危機、英国のEU離脱、トランプ政権など国際的不確実性の中で安全パイとみなされている。メルケルは中国の習近平主席、安倍首相と話し、そして多分プーチンと電話会談するとみられている。


B:メルケルは過去、北朝鮮への軍事行動を行なおうとする米国には批判的である。
・ 米国と北朝鮮の間で続く軍事攻撃を示唆する威嚇の応酬を巡り、ドイツのメルケル首相は8月11日、「米国と北朝鮮の対立に軍事的な解決策はない」と述べた。これまでも、軍事的解決を志向するトランプ政権の発言に批判的である。
・メルケルの言うような会議が成立する可能性は低い。イランの問題では、イラン+安保理常任理事国+ドイツであったが、日本、韓国をどうするかという問題はある。外交交渉を重視するという立場ではドイツ、中国、ロシアが同じ方向にいる。他方「軍事も排除すべきでない」というのが、米国、これに追随する日本である。米国が自己に不利になる国際会議に前向きになるとは考えにくい。

・ただ、このメルケル発言の重要性は、軍事解決を志向する米国の考えが国際社会の主流ではないことを、改めて示している。

------<Ⅰ:終了>-------------------------------------------------

Ⅱ:【北朝鮮の核実験を厳しく糾弾する】
  ――危機打開のため直接対話がいよいよ緊急・切実な課題に
        2017年9月3日  日本共産党幹部会委員長 志位和夫

一、北朝鮮は本日、昨年9月に続く6回目の核実験を強行した。北朝鮮は、「ICBM(大陸間弾道ミサイル)搭載の水素爆弾の実験を成功させた」と主張している。
 北朝鮮の核実験は、今年だけでも13回行った弾道ミサイル発射とともに、世界と地域の平和と安定にとっての重大な脅威であり、累次の国連安保理決議、6カ国協議の共同声明、日朝平壌宣言に違反する暴挙である。それは、国際社会が追求している「対話による解決」に逆行する行為であり、核兵器禁止条約の採択など「核兵器のない世界」を求める世界の大勢に逆らうものである。
 日本共産党は、強い憤りをもって、この暴挙を糾弾し、抗議する。

一、いまの最大の危険は、米朝両国の軍事的緊張がエスカレートするもとで、当事者たちの意図にも反して、偶発的な事態や誤算などによって軍事衝突が引き起こされる現実の可能性が生まれ、強まっているということである。万が一にもそうした事態が引き起こされるならば、その被害は日本にも深刻な形で及ぶことになる。おびただしい犠牲をもたらす軍事衝突は、絶対に回避しなければならない。
 私は、8月12日に発表した「声明」で、現在の危機の打開のためには、米朝の直接対話が必要だと提起したが、それはいよいよ緊急で切実な課題となっている。(*以下、傍線で囲まれた声明文参照)

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『危機打開のため米朝は無条件で直接対話を』
2017年8月12日  日本共産党幹部会委員長 志位 和夫
一、北朝鮮の核兵器・ミサイル開発をめぐる米国と北朝鮮の間の緊張が、軍事衝突の危険性をはらむ新たな事態へと深刻化している。
 国連安保理が新たな制裁決議を採択したこと(5日)に対して、北朝鮮は7日、「断固たる報復で対処し、全面的に排撃する」と強く反発した。さらに10日、「アメリカに厳重な警告信号を送る」として、「グアム島周辺への包囲射撃」を検討していると表明し、米国を強く軍事的に威嚇した。
 一方、米国のトランプ大統領は、「北朝鮮がこれ以上アメリカを脅すのであれば、炎と激しい怒りに直面することになるだろう」(8日)、「グアムに何かしたら、誰も見たことのないようなことが北朝鮮で起こる」(10日)などと発言している。
 米朝両国が、直接相手の意図を確かめるすべのないまま、軍事的恫喝の応酬をエスカレートさせることは、たいへんに危険である。それは、当事者たちの意図にも反して、偶発的な事態や誤算による軍事衝突につながりかねないことを、強く憂慮している。
一、世界と地域の平和と安定を破壊し、おびただしい犠牲をもたらす軍事衝突は、絶対に回避しなければならない。
 日本共産党は、現在の危機を打開し、問題の平和的・外交的解決をはかるために、関係諸国に対して、次の諸点を緊急に要請する。
(1)現在の危機がひきおこされた根本は、北朝鮮が、累次の国連安保理決議に違反して、核兵器・ミサイル開発を進めてきたことにある。北朝鮮に、国連安保理決議を遵守し、これ以上の軍事的な挑発行為――とりわけ無謀きわまる「グアム島周辺への包囲射撃」の計画を中止することを強く求める。
(2)米朝両国に対して、強く自制を求めるとともに、現在の危機を打開するために無条件で直接対話に踏み出すように呼びかける。直接対話に踏み出すなかで、核・ミサイル問題を解決する可能性を追求すべきである。この点で、トランプ大統領が、北朝鮮との交渉に関して、「オバマ(前政権)は話すらしたがらなかったが、私は話す。誰かがやらなければならない」(10日)とのべていることに注目している。
(3)日本は、米朝間で何らかの軍事衝突が起こった場合に、最大の被害を受ける国の一つとなる。日本政府は、緊張をさらに高める軍事的対応の強化でなく、米朝の直接対話を実現し、核・ミサイル問題を平和的・外交的に解決するための努力をはかるべきである。
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一、北朝鮮に対して、これ以上の軍事的な挑発を中止することを厳重に求める。米朝両国に対して、強く自制を求めるとともに、現在の危機を打開するために、直接対話に踏み出すことを重ねて呼びかける。
 8月29日の国連安保理議長声明は「対話を通じた平和的で包括的な解決」を加盟国に呼びかけている。国際社会および日本政府に対して、米朝両国に直接対話をうながし、平和的・外交的な手段で核・ミサイル問題を解決するために、可能なあらゆる手立てをとることを強く要請する。
 とくに日本政府が、「対話否定論」に固執する態度をあらため、「いまこそ対話に踏み切るべきだ」ということを米国政府に説くことを、強く求める。

--------<Ⅱ:終了>-------------------------------------------

Ⅲ :北朝鮮の核実験に対する日本政府の公式見解

(*上記のことばで検索したが発見できなかったので、とりあえず出てきたブログの記事を転載する。マスコミ報道によるかぎり、安倍政権は北朝鮮に強く批判し経済的制裁などを諸外国によびかけている。きょうのニュースではロシアや中国は北朝鮮に対する石油禁輸には反対の政治指導部の考えが報道されている。)

日本政府:北朝鮮が核実験の可能性、国家安全保障会議を開催へ
広川高史氏

 日本政府は3日、北朝鮮で発生した地震は核実験の可能性があるとみて、安倍晋三首相が関係省庁に情報収集を指示したほか、国家安全保障会議を開き、対応を協議する。仮に核実験と確認されれば昨年9月9日以来で、6回目。
  安倍首相は北朝鮮付近を震源とする地震波が感知されたとして、「自然地震ではない可能性があり、北朝鮮が核実験を強行した可能性がある」と述べた。その上で、「もし北朝鮮が核実験を強行したとするなら断じて容認できず、強く抗議をしなければならない」と語った。NHKが首相の発言を放映した。
  北朝鮮は7月4、28両日に日本の排他的経済水域(EEZ)内に落下したミサイルについて、大陸間弾道ミサイル(ICBM)の発射に成功したと発表。8月に入って中距離戦略弾道ミサイルを同時に4発発射し、米領グアム島への包囲攻撃を行う計画の検討を明らかにしていたが、同月29日に発射した中距離ミサイルは北海道上空を通過した。

---------<Ⅲ:終了>------------------------------------------------

Ⅳ:私見、原発廃止・核兵器廃絶を中核に据えた21世紀型の統一戦線政権を現実のものとする営みを

①北朝鮮を批判する日本政府は、さまざまな伝手で外交的対話を絶たないことだ。アントニオ猪木国会議員の訪朝はきちんと評価されるべきものであり、訪朝を牽制する政府・外務省のほうに問題がある。
②外交政策は2時間ドラマのように簡単に起承転結では終わらない。しぶとい外交交渉こそ必要だ。
③志位氏の言うように、核兵器を弄ぶようでは、周辺諸国に危機と不安、戦争拡大など意図せぬところで暴発の危険が高い。
④核保有国が北朝鮮の核開発を批判しているが、核保有国そのものが国際社会の「核禁止条約」に参加して、世界的核兵器廃絶を近い時点で実現しないと、核のゴミや環境汚染など取り返しのつかない環境危機に連なる。
⑤ヨーロッパ随一の知性メルケルドイツ首相の外交政策と、国際的な「核兵器禁止条約」締結の120カ国と連帯して、アジアからメルケル首相や核禁止条約締結国と連携しうる非核政権を日本に樹立する段階にきている。それは自民党の反核平和派の政治家から日本共産党に至る迄、広範な「非核」実現を公約とできる政治勢力である。政党・団体・個人の広範囲な「国民的規模の統一戦線」を結成して、原発廃止・核兵器廃絶を中核に据えた21世紀の統一戦線政権を現実のものとする営みである。

    -了-