百田尚樹さんは、今多くの読者を引き付ける作家のお一人だと思います。一方、NHK経営委員としての発言では問題になったりしています。
「永遠のゼロ」、「海賊とよばれた男」など、驚異的なベストセラー作家でもあります。ウィキペデイアによると、放送作家の仕事を中断して、永遠のゼロの執筆に取り組んだところ、収入が途絶え妻から稼ぐように詰め寄られたそうです。そこで書きかけの「永遠のゼロ」を読ませたところ、妻から何が何でも完成させなさいとはっぱをかけられたそうです。
「永遠のゼロ」が処女作になります。放送作家として売れる本、つまり読まれる本を考えぬいて書いたそうです。確かに、引き込まれる作品でした。
「幸福な生活」は18の短編からなっています。タイトルからだけだと、まさに幸福な生活の話だと思います。実際は幸福な生活に隠れた怖い/恐ろしい背景があります。その背景の事実をページを変えて短い言葉で伝えています。ブラックショートショート(怖い短編小説)です。
幸せを手に入れるために、人はここまでできるか。幸せというより、生きるために人はどこまでできるかの話でした。それぞれの主人公は今の幸せに隠れているブラックな事実を知ります。それがとても恐ろしい事実なのです。
この本を読む少し前に、「いじめられている君へ」西原理恵子著を読みました。絵本でいじめに対する生きるためのメッセージがあります。その内容は以下のサイトに西原さんのインタビュー記事として掲載されています。
http://www.asahi.com/special/ijime/TKY201208040635.html より
”うそをついてください” 西原理恵子さんのインタビュー記事
『まず仮病を使おう。そして学校に行かない勇気を持とう。親に「頭が痛い」とでも言って欠席すればいい。うそは、あなたを守る大事な魔法。人を傷つけたり盗んだりするのでなければ、うそって大事よ。これからも、上手にうそついて生きていけばいいんだよ』
自分の幸せのために、嘘をつくこともあってもよいように思います。そこには人を傷つけないなどの最低限のルールもあるのでしょう。
嘘とは別に真実を言わずに”人に黙っている”ことで人を傷つけることもあります。自分の幸せのために黙っていることもあってもよいようにも思います。それによって相手が傷つくのをどう思うか。
山路さんの麻木さんへは「優しい嘘」を、大桃さんへは「残酷な沈黙」をの発言で話題になったのを思い出しました。それは結局、自分の幸せのためだったと思います。
「幸福な生活」は”真実を知らない幸せ”なのかもしれません。