http://digital.asahi.com/articles/DA3S11904866.html 2015年8月8日05時00分
迷走の末に白紙撤回された新国立競技場の建設計画のずさんさがまたも明らかになった。計画見直しの経緯を検証する7日の第三者委員会の初会合では、事業主体の日本スポーツ振興センター(JSC)の対応のまずさや、主体性を欠いた文部科学省の実態も浮き彫りになった。一方、9月上旬までに計画をとりまとめる新たな新国立競技場の姿については議論が百出し、まだ定まっていない。
■招致時、既に縮小指示/建設業者と900億円差
初顔合わせの委員たちから、厳しい声が相次いだ。「予算にこだわらないと会社はつぶれる。民間では考えられない」「なんで国民が怒ったのか。数字の乱高下を一番検証すべきだ」
迷走した新国立競技場の建設計画の経緯を調べる第三者による検証委員会(委員長=柏木昇・東大名誉教授)の初会合。文科省が提出した資料で、初めて明らかになる事実があった。
東京が開催都市に決まった2013年9月の国際オリンピック委員会総会の直前、建設費が3千億円超に膨らむとの試算がすでにJSCから文科省に伝えられていた。総会で安倍晋三首相はザハ・ハディド氏のデザインをアピールしたが、その裏でJSCは設計会社に規模の縮小を指示していた。
また今年1~2月の時点で、大手建設会社が示した試算がやはり3千億円を超えたのに対し、JSCは建設会社案を示すとともに、独自に2100億円程度に収まるとの試算を文科省に報告。金額の異なる二つの報告を受けた文科省は対策を講じず、最終的に2520億円まで膨らんだ。
JSC関係者は「正直、ゼネコン側が工期の短さや資材費の高騰を盾に、相場より高い値段を提示してきたという認識はあった」と明かす。ある文科省幹部は「今年初めから切羽詰まった状況だと分かっていたのに、誰も主体的に動いていない」と5月の時点で指摘をしていた。検証委では今後、こうした経緯と責任の所在について議論する。
この日の衆院予算委員会で下村博文文科相は「(JSCと文科省の役割分担が)必ずしも明確でなかったという批判は謙虚に受け止めたい」と述べたが、引責辞任は否定した。 (稲垣康介)
■見直し論百出 「新設不要」「民設民営」
「民主党政権時代にザハ案で1300億円と決め、その後膨らんでいった。簡単にそれを撤回というわけにはいきませんよ」
安倍首相は7日の衆院予算委で、政権の対応の遅れを批判した民主党の小川淳也氏に色をなして反論すると、続けて質問した同党の玉木雄一郎氏には「政治的に批判し合うより、協力して良い物を造っていきましょうよ」と呼びかけた。
民主党の弱みを攻めつつ責任論に区切りをつけ、計画の見直しを急ぎたい政権だが、作業は始まったばかり。手探りの状態が続く。
この日、自民党は既存の競技場などを活用し、競技場を建設しない案などを盛り込んだ提言を安倍首相に提出した。建設する場合も民間が建設して運営を担う「民設民営」方式や、公費で建設して運営を民間が担う「公設民営」方式で、五輪後の運営に国費を投入しないよう求めた。
ただ、政権はこうした極端な案の採用には及び腰だ。複数の審査員の採点から最高点と最低点を除き、残りの平均で得点を出す「フィギュアスケートの審査のような感じ」。計画づくりを担う遠藤利明五輪担当相は、作業のイメージを周囲にこう語る。失敗が許されないだけに幅広く案を募った上で極端なものを落とし、「そこそこ」の計画で国民の納得を得たい、という狙いだ。
先月下旬からは元陸上選手の為末大氏らアスリートと面談を行い、今週からネット上でのアンケートも始めた。ただ、計画とりまとめの期限は9月上旬。それまでに、どこまで多様な意見を採り入れることができるのか。政権幹部は「そんなことまで考えている余裕はない。とにかく競技ができる会場を間に合うように造らないと」と話す。 (山岸一生、阿久津篤史)
■有識者会議文書、発言の一部削除し開示 JSC、情報公開請求に
新国立競技場建設の事業主体であるJSCが、2012年11月に開いた有識者会議での委員の発言を一部削除して情報公開請求者に開示していたことが明らかになった。
問題となったのは、ザハ・ハディド氏のデザイン案を最優秀作品とすることを承認した会議の議事録。朝日新聞が情報公開請求で入手した文書は、発言者が特定されるような意見が黒塗りにされただけでなく、委員の発言のうちハディド氏の案に否定的な部分などが削除されていた。
自民党の行政改革推進本部が、JSCから取り寄せた会議の発言全文を4日に公開。情報公開請求した文書と比べると、例えば、当時日本ラグビー協会長だった森喜朗元首相がハディド氏の案について、「神宮に宇宙から何かがおりてきたという感じ。(他の案も)カキフライのフライのないカキか、生ガキがいるって感じがして。違和感を(覚えた)」などと発言した部分などが削除されていた。
JSCの担当者は「自民党が詳細な検証に必要ということで、聞き書きした発言録を公開した。議事録はそれを要約したもので、削除したわけではない」と説明した。 (野村周平)
■検証委員会の顔ぶれ
◎柏木昇(東大名誉教授、元中大法科大学院教授)▽○横尾敬介(みずほ証券常任顧問)▽国井隆(公認会計士)▽黒田裕(弁護士)▽為末大(元陸上400メートル障害五輪代表選手)▽古阪秀三(京大院教授=建築学) (◎は委員長、○は委員長代理。敬称略)
感想;
あまりにもひどすぎる。自分のお金ではないのでお金がかかっても気にしないのでしょうか?
また、自分の任期は2~3なので、問題があっても自分が問題にすると自分の出世に影響するので、先送りしてきたように思います。
下村文部大臣ご自身も、問題を先送りされて来たけど、残念ながらその先がなかったので、先送りできなかったのでしょう。それにしても、問題を解決する力のない人が多いですね。せめて自分に問題を解決する力がないなら、その問題を開示する勇気を持って欲しいです。
迷走の末に白紙撤回された新国立競技場の建設計画のずさんさがまたも明らかになった。計画見直しの経緯を検証する7日の第三者委員会の初会合では、事業主体の日本スポーツ振興センター(JSC)の対応のまずさや、主体性を欠いた文部科学省の実態も浮き彫りになった。一方、9月上旬までに計画をとりまとめる新たな新国立競技場の姿については議論が百出し、まだ定まっていない。
■招致時、既に縮小指示/建設業者と900億円差
初顔合わせの委員たちから、厳しい声が相次いだ。「予算にこだわらないと会社はつぶれる。民間では考えられない」「なんで国民が怒ったのか。数字の乱高下を一番検証すべきだ」
迷走した新国立競技場の建設計画の経緯を調べる第三者による検証委員会(委員長=柏木昇・東大名誉教授)の初会合。文科省が提出した資料で、初めて明らかになる事実があった。
東京が開催都市に決まった2013年9月の国際オリンピック委員会総会の直前、建設費が3千億円超に膨らむとの試算がすでにJSCから文科省に伝えられていた。総会で安倍晋三首相はザハ・ハディド氏のデザインをアピールしたが、その裏でJSCは設計会社に規模の縮小を指示していた。
また今年1~2月の時点で、大手建設会社が示した試算がやはり3千億円を超えたのに対し、JSCは建設会社案を示すとともに、独自に2100億円程度に収まるとの試算を文科省に報告。金額の異なる二つの報告を受けた文科省は対策を講じず、最終的に2520億円まで膨らんだ。
JSC関係者は「正直、ゼネコン側が工期の短さや資材費の高騰を盾に、相場より高い値段を提示してきたという認識はあった」と明かす。ある文科省幹部は「今年初めから切羽詰まった状況だと分かっていたのに、誰も主体的に動いていない」と5月の時点で指摘をしていた。検証委では今後、こうした経緯と責任の所在について議論する。
この日の衆院予算委員会で下村博文文科相は「(JSCと文科省の役割分担が)必ずしも明確でなかったという批判は謙虚に受け止めたい」と述べたが、引責辞任は否定した。 (稲垣康介)
■見直し論百出 「新設不要」「民設民営」
「民主党政権時代にザハ案で1300億円と決め、その後膨らんでいった。簡単にそれを撤回というわけにはいきませんよ」
安倍首相は7日の衆院予算委で、政権の対応の遅れを批判した民主党の小川淳也氏に色をなして反論すると、続けて質問した同党の玉木雄一郎氏には「政治的に批判し合うより、協力して良い物を造っていきましょうよ」と呼びかけた。
民主党の弱みを攻めつつ責任論に区切りをつけ、計画の見直しを急ぎたい政権だが、作業は始まったばかり。手探りの状態が続く。
この日、自民党は既存の競技場などを活用し、競技場を建設しない案などを盛り込んだ提言を安倍首相に提出した。建設する場合も民間が建設して運営を担う「民設民営」方式や、公費で建設して運営を民間が担う「公設民営」方式で、五輪後の運営に国費を投入しないよう求めた。
ただ、政権はこうした極端な案の採用には及び腰だ。複数の審査員の採点から最高点と最低点を除き、残りの平均で得点を出す「フィギュアスケートの審査のような感じ」。計画づくりを担う遠藤利明五輪担当相は、作業のイメージを周囲にこう語る。失敗が許されないだけに幅広く案を募った上で極端なものを落とし、「そこそこ」の計画で国民の納得を得たい、という狙いだ。
先月下旬からは元陸上選手の為末大氏らアスリートと面談を行い、今週からネット上でのアンケートも始めた。ただ、計画とりまとめの期限は9月上旬。それまでに、どこまで多様な意見を採り入れることができるのか。政権幹部は「そんなことまで考えている余裕はない。とにかく競技ができる会場を間に合うように造らないと」と話す。 (山岸一生、阿久津篤史)
■有識者会議文書、発言の一部削除し開示 JSC、情報公開請求に
新国立競技場建設の事業主体であるJSCが、2012年11月に開いた有識者会議での委員の発言を一部削除して情報公開請求者に開示していたことが明らかになった。
問題となったのは、ザハ・ハディド氏のデザイン案を最優秀作品とすることを承認した会議の議事録。朝日新聞が情報公開請求で入手した文書は、発言者が特定されるような意見が黒塗りにされただけでなく、委員の発言のうちハディド氏の案に否定的な部分などが削除されていた。
自民党の行政改革推進本部が、JSCから取り寄せた会議の発言全文を4日に公開。情報公開請求した文書と比べると、例えば、当時日本ラグビー協会長だった森喜朗元首相がハディド氏の案について、「神宮に宇宙から何かがおりてきたという感じ。(他の案も)カキフライのフライのないカキか、生ガキがいるって感じがして。違和感を(覚えた)」などと発言した部分などが削除されていた。
JSCの担当者は「自民党が詳細な検証に必要ということで、聞き書きした発言録を公開した。議事録はそれを要約したもので、削除したわけではない」と説明した。 (野村周平)
■検証委員会の顔ぶれ
◎柏木昇(東大名誉教授、元中大法科大学院教授)▽○横尾敬介(みずほ証券常任顧問)▽国井隆(公認会計士)▽黒田裕(弁護士)▽為末大(元陸上400メートル障害五輪代表選手)▽古阪秀三(京大院教授=建築学) (◎は委員長、○は委員長代理。敬称略)
感想;
あまりにもひどすぎる。自分のお金ではないのでお金がかかっても気にしないのでしょうか?
また、自分の任期は2~3なので、問題があっても自分が問題にすると自分の出世に影響するので、先送りしてきたように思います。
下村文部大臣ご自身も、問題を先送りされて来たけど、残念ながらその先がなかったので、先送りできなかったのでしょう。それにしても、問題を解決する力のない人が多いですね。せめて自分に問題を解決する力がないなら、その問題を開示する勇気を持って欲しいです。